ボクシングには、メジャーリーグは存在しません。サッカーの欧州トップリーグも存在しません。

もっと、正確に言うとボクシングの軽量級には「憧憬する最高峰の本場」は、格好良い米国や欧州にはありません。

アスリートは、最高峰の戦いを公平な舞台で求めます。4年に一度のオリンピック、そこでの採点競技では地元選手が有利になるのは納得できます。

しかし、ボクシングの舞台は富裕国に限定されます。

ノニト・ドネアは優れたボクサーですが、軽量級であるがために米国でドサ周の旅しました。もちろん、捨てた母国フィリピンで戦うよりも何十倍もの報酬を手にすることが出来るから、プロとして当然です。

ドネアと違い、ゲンナジー・ゴロフキンは人気階級のミドル級で圧倒的な存在感を示しましたが、母国カザフスタンのアルトマイでカネロ・アルバレス戦や村田諒太戦を開催するなど、微塵も考えていなかったでしょう。

ゴロフキンほどの実力と実績を残しても、米国のリングで異邦人は脇役です。

そもそも主役が存在しない軽量級では、脇役にすらなれません。

たった一つの例外が、マニー・パッキャオです。ドネアはパッキャオのように、人気階級にのしあがれば良かったのです。ゴロフキンも「強豪選手が逃げる」なんて言わずに、アンドレ・ウォードやセルゲイ・コバレフを粉砕していれば、パッキャオになれました。
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今月7日の井上尚弥との決戦で、ドネアは「米国で開催するのがフェア」としながらも「私も井上も米国では経済的な価値が小さすぎる。金銭的な観点から米国で開催するのは意味がない」と諦観していました。

米国では井上のリングサイド席は150ドル。それでも売れないのです。それが、日本では20倍近くに跳ね上がり、MGMグランドガーデンアリーナよりも巨大なさいたまスーパーアリーナをフルハウスにできるのです。

ゴールデンボーイ・プロモーションズとの綱引きで、ドネアの報酬は一時期100万ドルを超えることがありましたが、ボブ・アラムは「いつも小さな会場で、客も集まらない、HBOも大きな予算を割かないから赤字だった。フェルナンド・モンティエル戦も大赤字」と、GBPと契約しようとしていた裏切り者のドネアを名指しで「お荷物」と非難していました。

モンティエル戦のドネアは当時キャリア最高の35万ドルを獲得しましたが、チケットの売れ行きが絶望的に悪くマンダレイベイのアリーナは中上階席を封鎖、チケット料も破格の安さでしたがそれでも売れず「あれは興行でもビジネスでもなかった。ただの不幸な事故」と言われる始末。

交通宿泊費などを考慮すると現実的ではありませんが、後楽園ホールでやれば、普通の世界戦以上に注目され、チケットはソールドアウトだったでしょう。

「フィリピンは論外。日本なら米国の10倍以上のビジネスになって、多くの人が尊敬してくれる。どこでやるか、なんてもう最初から決まってた」(ドネア)。

PFPキングに2年間も君臨していたロマゴンも、井上ほどではありませんが米国で無名でした。

もし、ニカラグアが富裕国でロマゴンが、井上のように母国を中心に試合を重ねていたら、さらに無名の闇は深まっていたでしょう。 

専門家評価では井上を絶対的に上回り、米国での認知度も目クソ鼻クソとはいえ、井上よりは上のチョコラティトがリング誌の表紙をカバーできなかったこと、井上よりもはるかに少ない報酬に甘んじている理由は、たった一つです。

日本とニカラグアの富裕度の違い、だけです。