井上尚弥のリング誌pound-for-pound =PFP1位で日本のメディアが大きく取り上げたPFP。

そこには「サッカーでいうとパロンドールを獲るようなもの」(上田晋也)という、大きな勘違いも横行しています。
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パロンドールは年間最高選手賞ですから、PFP1位ではなく、文字通りFighter of The the yearに該当します。

PFPと違い、Fighter of The the yearを受賞すると全米ボクシング記者協会(BWAA)ではトロフィー授与の式典を開催、リング誌でも「Fighter of The the year」と刻印されたベルトが贈られます。

最近のように、月に何度も交代するPFP1位でこれをやると大混乱を招いてしまいます。
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シュガー・レイ・ロビンソン トロフィーを手にするパッキャオ。

ボクサーの名誉には、先週末に式典が開催されたIBHOF=International Boxing Hall of Fame=国際ボクシング名誉の殿堂もあります。

この三つ、価値のある順番に並べたらどうなるのでしょうか?

もちろん、評価基準が違う三つを比較することに意味はありません。

とはいえ、格付けするなら、評価基準が曖昧で表彰制度もなく「意味がない」と揶揄されることもあるPFPキングがまず脱落するのでしょうか?

PFP1位になっても、Fighter of The the yearを受賞しても泣かなかったフロイド・メイウェザーが殿堂入りで咽び泣いたのは単純に年を取ったからなのでしょうか?

そもそもが泣き虫のマネーですからPFPやFighter of The the yearで泣いても良いんじゃないでしょうか?

ただ、メイウェザーやマニー・パッキャオはPFP1位はもちろん、Fighter of The the year、一発殿堂入り(パッキャオはまだ3年後ですが一発殿堂は疑いようもありません)、全てを手にしています。

そして、リング誌とESPNのPFP1位経験者は必ず殿堂入りしていますが、一発殿堂のウラジミール・クリチコがPFP1位になったことがないように、その逆もまた然りではありません。

それどころか、一発殿堂のアーツロ・ガッティやダニエル・サラゴサはFighter of The the yearはもちろん、PFPのベスト10経験すらありません。

彼らの全盛期は、今ほどインターネットの普及が進んでいなかったこともPFPに入りにくい環境にありました。

サラゴサに至ってはインターネットそのものが存在しない時代でした。

「サラゴサがカルロス・サラテを下して2階級制覇に成功した1988年2月のPFPは誰?」。この質問に答えることが出来る人は、世界中を探しても1人もいません。

PFPランキングっていつからあるの?という疑問は、そもそも今でもPFPランキングって本当に存在してるのか?という真理に突き刺さります。

例えば、今日2022年6月15日のリング誌PFPは井上尚弥ですが、6月11日まではオレクサンダー・ウシク、でした。

そして5月12日まではカネロ・アルバレスが1位。

1年後ですら「去年のPFP1位って誰?」という質問に誰も答えることは出来ません。

それでも…PFP1位は必ず一発殿堂入り。PFP1位は必ずしもFighter of The the yearではないが、Fighter of The the yearはPFP1位とは限らないという事実が横たわっています。

ややこしい書き方になってしまいましたが、ローマン・ゴンサレスはPFP1位に2年間も君臨、一発殿堂確実ですが、Fighter of The the yearには一度も獲れていません。

また、最近でもBWAAとリング誌で2020年のFighter of The the yearに輝いたテオフィモ・ロペスはPFP1位経験はなく、現状では殿堂入りもあり得ません。

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この相関関係を考えると、PFP1位>Fighter of The the year>殿堂入り という不等式が成り立ちそうで、同時にジャンケンのような関係性が浮かび上がってきます。

ただ、PFPの目を覆うばかりの液状的性格から、PFPの2位以下は記録はもちろん記憶にもとどまりにくいことはお分かりでしょう。

PFPはキングになって初めてマナイタの上に乗ることが出来るのです。

評価基準もその成り立ちも、歴史も全く違うPFPとFighter of The the year、そして殿堂。

PFPに関しては「井上が日本人初の1位」と言われても、具志堅用高らは「俺たちの時代はそんなの雑誌のお遊び企画でしかなかった」と笑うでしょう。

まあ、今でも雑誌のお遊びですが。

しかし、もっと、突き詰めてしまうと…。



さて、PFPとFighter of The the year、殿堂の評価基準と成り立ち、歴史を振り返ってゆきましょう。