私は、日本赤軍の元最高幹部・重信房子を〝リアルタイム〟で知りません。

彼女が何をしたのかは、〝全てが終わった〟ずっと後の〝事後報告〟で知りました。

2000年11月に、潜伏先の大阪で逮捕。オランダのフランス大使館を占拠したハーグ事件(1974年)の関与していたとされ、懲役20年の実刑判決を受け、服役していました。

昨日、収容先の東日本成人矯正医療センター(昭島市)から出て、近くの公園で取材に応じた重信は「自分たちの戦闘を第一にしたことで、無辜の人たちに被害を与えた」と謝罪。

私が高校、大学時代を過ごした1980年後半〜では学生運動は完全に沈静化していましたが、熾火とも言えない余熱が少しだけ残っていたかもしれません。

大学に入学した春、学生運動の真似事をしていたサークルに誘われ、古い校舎の屋根裏部屋で「戦艦ポチョムキン」を見たことがありました



昨日からの報道を見ると、2022年の日本が重信房子とどう向きあって良いのか戸惑っているように思えます。

彼女を全く知らない人が昨日からのニュースを見たり聞いたりするだけだと「極悪人」というよりも「時代遅れの革命家」「稀代のカリスマ」と受け止めたかもしれません。

学生運動が〝絶滅〟し、バブルに突入した時代に大学生だった私たちの頃でも、重信房子らを英雄視する空気が少なからずありました。

のちに日本を震撼させたオウム真理教が誰からも共感されなかったのに対して、同じテロリストでも彼女たちは明らかに違いました。

オウムの首謀者の麻原彰晃は教団施設の狭い隠し部屋で札束にまみれて息を潜めているところを逮捕され、自分の口からは何も発しませんでした。

そして、麻原とは対照的に重信は笑みさえ浮かべ、手錠をかけられた両手でガッツポーズのような構えをを何度もとって逮捕されました。

私はオウム事件はリアルタイムで知っています。彼らの凶悪犯罪に怒りを覚えましたが、たった一つだけ恐れていたのは機動隊が強行突入したとき、麻原が笑みを浮かべて自ら〝ゴルゴダの丘〟を歩くように機動隊に投降することでした。

彼らの劇場型犯罪の数々はテレビカメラに収められていました。もし、麻原が「信者たちには何の罪もない」と堂々と投降していたなら、暗愚な人は麻原に共感したかもしれません。

当たり前ですが、そんなことはなく、麻原は最後の最後まで誰にでもわかる卑怯者のままでした。

重信房子も卑怯者と呼んで差し支えないでしょうが、彼女や彼女の支援者はそうは思っていないようです。

「間違った世の中を正しくするための革命、そのためには武力行使も致し方がない」。というのが大間違いです。


「スターウォーズ」は帝国軍に対するレジスタンスを描いたSF映画ですが、ラストは帝国軍の巨大兵器デススターを破壊してハッピーエンドになります。

デススターに勤務する突撃兵たちは宇宙の辺境から集められた無辜の若者たちで、そこには彼らなりの生活があり、あれほど巨大な人工惑星ですから、家族や町のコミュニティーも存在していたでしょう。

スカイウォーカーたちはそんな無辜の人々を含めて、デススターごと破壊したのでした。

レジスタンスに憧れるのは若者の特権ですが、彼らは共産主義の末路が必ず独裁者を生み出してしまう大きな矛盾を深く考えることはありません。



彼女は私と違い圧倒的なカリスマ性の持ち主ですが、間違いなく見た映画やスポーツ、読んだ小説や漫画が極端に少ない人でしょう。

何も見ていない、何も読んでいない、何も知らないのに、机の上だけの狭い正義を振り回し邪魔する人は殺しても良いという、まさにオウムと同根の間違った正義に固まったロボットです。

ロボットにカリスマ性があるというのも、なんだかなあですが。



70年代に学生生活を送っていた諸先輩がたはもちろん、私たちの世代でも大きなニュースだったのですが、世間の扱いはそうでもなくて「よくよく考えたらそうだようなぁ」と思いました。

大きなニュースにならなくて良かったのでしょう、きっと。