World Boxing Super Series(WBSS)セカンドシーズンのバンタム級決勝。

「井上尚弥vsノニト・ドネア=第1戦=」を振り返る前に、WBSSという〝詐欺団体〟の功罪をおさらいします。
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【罪】米国で人気のない階級を狙い撃ちに、支払い能力のない高額の賞金を掲げ、ファイトマネーの大幅減額はもちろん、支払い遅延に日程管理も出来ない無能ぶりをさらけ出し、事務局と音信不通になるなど、選手とメネージャーが不信感を爆発させた杜撰極まる犯罪的トーナメントでした。

特別推薦的に出場が認められた、主催者側の選手であるドネアですら「試合日程の案内が来ない。事務局の電話しても繋がらない、メールしても返事がない。離脱を考えている」と最後通告したほど。

マニー・パッキャオやカネロ・アルバレス、デオンティ・ワイルダーら、米国で人気のあるウェルター級やミドル級、ヘビー級などの選手にとっては、WBSSの報酬は全く魅力てけなく「怪しい団体にそんなカネを用意できるのか?」という不信感だけしか持たれませんでした。

しかし「米国で人気のない階級の選手」は「優勝賞金が30万ドルでも素晴らしい」(ゾラニ・テテ)と騙されてしまいます。

「井上vsドネア」の際に来日したカレ・ザウアーラントは賞金金額を質問されると「400万」と答えると、すぐに「ドルか円かは想像して」とはぐらかす始末でした。

おそらく、あの壮大な決勝戦も日本からの持ち出しだったのでしょう。その後の「なんちゃってラスベガス」も含めて、日本の軽量級スターはカモネギです。



【功】WBSSが犯罪的な組織でした。ほとんどの選手にとっては、約束された報酬が支払われないだけでなく、支払期日も守らない、試合日程も管理できない、連絡もつかないという「騙された」という忌々しいトーナメントでした。

米国で人気のない階級の、報酬に満足していない選手を甘い言葉で誘う、リングの中の貧困ビジネス、それがWBSSの正体でした。

性懲りも無くジュニアフライ級や女子でサードシーズンを模索したWBSSでしたが、詐欺集団であることが明るみに出ている現状では誰も相手にしてくれません。

「嘘の高額賞金」と「Undisputed Champion(完全統一王者)決定トーナメント」という謳い文句は、公約通りの賞金は一度も支払われずに終わりましたが、Undisputed Championはファーストシーズンのクルーザー級(オレクサンダー・ウシク)で誕生しました。

バルト三国やロシア、ドイツなどのクルーザー級市場を刺激したのも「功」でしょう。

そして、日本と井上尚弥にとっても嘘の高額報酬や杜撰な日程管理に翻弄されたとはいえ、ライアン・バーネットやエマヌエル・ロドリゲス、テテらが参加するトーナメントで優勝したことは、日本市場も活性化させました。

軽量級であるがゆえに米国では大舞台には全く無縁だったドネアも、さいたまスーパーアリーナの2万人を超える大観衆で戦うエクスタシーを体験できました。

WBSSの盛り上がりがフックとなって、カモネギ狙いのトップランク+ESPNと契約してしまったのは痛恨のミスでしたが、それは結果論です。

日本で井上と戦えなかった(バンタム級ではありえない大舞台と大観衆を経験できなかった)ロドリゲスは可哀想でしたが、井上と日本にとってのWBSSは間違いなく「功」でした。

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Ring magazine  Bantam Title 
WBA Bantam Title 
IBFBantam Title
 
Thursday 7, November 2019
Super Arena, Saitama, Saitama, Japan  

commission:Japan Boxing Commission
promoter:Hideyuki Ohashi 
media:Fuji TV

WBSS開幕前の優勝オッズ(ウィリアムヒル)は、鉄板の井上をロドリゲスとバーネット、テテの3人が追う図式で、ミハエル・アロイヤン以下の4人は大穴と見られていました。

◎井上尚弥1.62倍
△エマヌエル・ロドリゲス5倍
△ライアン・バーネット5倍
△ゾラニ・テテ6倍
✖️ミハエル・アロイヤン20倍
✖️ノニト・ドネア33倍
✖️ジェイソン・マロニー50倍
✖️ファン・カルロス・パヤノ50倍

モンスターは下馬評通りにパヤノを90秒、ロドリゲスを259秒で破壊して決勝進出。

一方のドネアもバーネットを大番狂わせで下すと、準決勝で離脱位したテテの代打ステフォン・ヤングに手を焼きながらも、左フック一閃で試合を終わらせます。

しかし、バーネットはキャリアを終わらせるような重傷を負っての棄権、ヤングは間違っても世界基準のボクサーとは言えません。

井上の対抗馬と見られたバーネット、ロドリゲス、テテは姿を消し、決勝の相手は幸運で勝ち上がってきた老いたドネア。

ドネア戦を控えて、井上は今回とまったく同じセリフを吐いていました。

「ドネアをこの試合で引退させる」。

偉大なレジェンドの介錯をする、そう宣言していたのです。

井上1/13(1.08倍)、ドネア15/2(8.5倍)というオッズ以上に専門家予想は「期待感からでも、身びいきでもない。井上のKO勝ちしか考えられない」(ボクシングマガジン)と、一方的なもので、勝敗よりも「井上が何ラウンドで仕留めるか」が焦点でした。

今回も井上1/5(1.2倍)、ドネア7/2(4.5倍)と日本のモンスターが明白に有利と見られていますが、その差は接近しています。

そして、勝敗予想も井上に支持が集まっていますが、前回は皆無といっても言い過ぎではなかったドネアを推す声も少なくありません。

 「ドネアをこの試合で引退させる」。

さて〝二度目の正直〟は実現できるでしょうか?