赤煉瓦遺構の魅力の一つは、現役で活躍しているということです。

日本は諸行無常が染み付いた社会で、観光地でもない限り、欧米のように古い建造物や街並みを大切にする習慣は稀薄です。

しかし、赤煉瓦建造物の中には街の中に溶け込み、現役バリバリのものも珍しくありません。

東京藝術大学の校舎のように当時の赤煉瓦の外観を残しながら、鉄筋などで補強して今も使われている建物や、東京駅のように大正バージョンを見た目だけ完全復元したものは、現役とはいえ、構造物の芯まで当時のままではありません。

それに対して、JR高架の新永間市街線高架橋などは、110年以上も〝芯から〟当時のまま東京を支えるインフラです。赤煉瓦が支える高架の上を山手線がガンガン走り、すぐ横を新幹線が通っているのは壮観です。

今日のご紹介は東京都北区中央図書館。

残念ながら〝芯から〟ではありませんが、現役バリバリです。
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見た目は普通の公立図書館ですが、左に見える赤茶屋根の建物、コイツが見事な赤煉瓦建築なのです。

図書館脇の階段を降りると、町にある赤煉瓦遺構の多くがそうであるように、唐突にそれが出現します。
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そして、しばらく見入っていると、唐突感は不思議なほど全くなくなり、周囲に溶け込んでゆくのです。

やはり、愛想のない重厚なイギリス積み。この建物が頑固な性格を持っているように思えてきます。
旧日本陸軍の東京砲兵工廠銃砲製造の敷地に、大正8年(1919年)に弾丸を製造する工場として建てられました。

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昭和20年に終戦を迎えてから、昭和33年に土地の一部が日本に返還、日本の陸上自衛隊が倉庫として使用していました。

その後、赤レンガ棟は北区へと移管され、平成20年6月28日に図書館としてオーブンしました。

日本陸軍の軍事施設が、北区中央図書館=赤レンガ図書館=に変わったのです。

戦乱の世から、平和の時代へ。

100年の時間を経過した建物は「図書館自体が過去から現在に繋がっている知や時空の体験として表現したい」というデザイナーの思いが込められているそうです。
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照明装置を建物の足元にいくつか見つけました。

夜にライトアップされると、さぞかし美しいことでしょう。