全国の公立私立中学校には男性で約5万9000、女子で約5万4000の運動部があります(2021年度:日本中学校体育連盟)。

その全てに、最低1人の教員の顧問がついています。土日でも試合や練習がある部活も珍しくなく、顧問になると大きな負担を無償で引き受けることになります。

競技経験のない部活の顧問になることも珍しくなく、その場合は自宅でルールや指導法の勉強をすることになります。もちろん、残業代など1円も出ません。

なかなかのブラック職場です。この問題は、今に始まったことではありません。

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スポーツ庁の有識者会議は、まず公立中を対象に23年度からの3年間で「休日の部活動の地域移行を完了させる」という提言をまとめました。

その後、平日も地域移行を進め、今月中にガイドラインを発表します。

「地域移行」は地域のスポーツクラブや、スポーツ少年団、実業団やプロチームに協力を仰ぐ形になります。

1日限定なら元Jリーガーやプロ野球選手、地元の体育大学などから特別コーチを招く試みは着手されていますが、それはまた別の話。

元プロ選手に平日の練習から土日の試合まで通年でコーチをしてもらうには、当然それなりの報酬が発生します。

大学生などに依頼するにも〝家庭教師〟のようなもので報酬は発生しますし、土日は自分たちの試合を優先するのは当然です。

また、元プロや体育大学の学生を顧問にするというのは、たびたび問題を引き起こしている強豪校と同じスタイルを取ることになります。過熱指導や、教員教育を経ていないコーチが立場を利用した犯罪を犯す危険も孕んでいます。

教員のボランティア精神で支えられてきた学校教育は、完全に行き詰まっています。保護者負担が増えるのはもちろん、税金も今以上に投入しなければ地域移行、つまり外部委託なんてままなりません。

私も近所の中学校の野球部のお手伝いを無償でしています。顧問の先生と旧友問うことからお願いされたのですが、面倒なことは数え切れません。

スポーツ指導者資格の取得などは、まだ良い方です。



伝説の山口良治は、公立高校ラグビー部の顧問でした。

ある試合の日、待ち合わせの駅で部員全員分の切符を買って待つ山口。反発した生徒たちは誰1人来なかったというエピソードは、熱血教師の情熱に不良たちが感応していく感動物語のプロローグでした。

しかし、現在、あらためて考えると、複雑な思いも混じり合わせてしまいます。休日出勤に、生徒の交通費まで負担する教師、しかも生徒は来ない…。

教員全員が山口なら問題ないでしょうが、そんなわけもなく、普通の人なら過労と心労で精神を病んで当然です…。