カネロ・アルバレスのライトヘビー級戦があと3日に迫りました。

私のようなアンチがカネロを嫌う理由は、①過保護なマッチメイク、②ドーピング騒動の2点に集約されるでしょう。

①については、カネロだけでなく、村田諒太やオスカー・デラホーヤ、古くはジョージ・フォアマンも過保護なマッチメイクでプロキャリアに線路が敷かれました。

それなのに、どうしてカネロだけが嫌悪されるのか?

あらためて問いかけるのも無駄なことですが〝村田ゲート〟を通るには「富裕国の五輪金メダリスト」という絶対的な手形が必要なのに、カネロはボクシング大国のメキシコの生まれとはいえ、五輪に出場すら出来なかった馬の骨です。

馬の骨の分際で、温室の中に丁寧に線路が敷かれたから反感を買うのです。世界王者になってからもキャッチウェイトや、当日リバウンド制限などを対戦相手に強いて(現実には相手は喜んで受け入れてるのですが)、リスクの大きいパンチャーを徹底的に回避してきたのが腹立たしいのです。

もちろん、五輪金メダリスト以外は〝村田ゲート〟を通るべからず、なんて国際法はありません。ボクソングが盛んでない国や、人気のない階級で五輪メダルを獲るよりも、メキシコの人気者の方が優遇されるにふさわしい、今はそんなメキシコの時代だといわれたら返す言葉もありません。

②のドーピングについては、世界的な統括団体が不在というボクシングの構造上の問題です。「五輪選手がドーピングしたら永久追放に匹敵するペナルティを科せられるのに、プロボクシングでは6ヶ月のライセンス剥奪なんて甘すぎる」なんて騒いでもなんの意味もありません。

ライセンスを剥奪できるのは米国なら各州のコミッション、日本ならJBCです。世界中のコミッションがライセンスを剥奪しないと意味がないのですが、足並みを揃えるなんて不可能。それができるなら、国際連合的なコミッションが出来ています。

ドーピングが発覚すると、ランキングから一定期間追放するリング誌やESPNなどのメディアでもドーパーが殿堂入りすることに異論を挟むことはありません。

そして、おそらくカネロは①にも②にも、自分が主体的となって絡んでいません。カネロだけを蛇蝎のように嫌うのは、江川卓や桑田真澄に罵声を浴びせた多くの野球ファンと同じレベルです。

それでも、カネロを忌み嫌うのは、江川や桑田のように孤立無援、四面楚歌の中で戦っていないからです。
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ネバダ州の経済に大きなインパクトを与えた2015年のメガファイト。↑ファン投票の勝敗予想ではパッキャオが圧倒的に支持されていましたが…。

およそ年間200試合、課税対象のファイトマネー合計1億5000万ドルもの興行を打つネバダ州アスレティック・コミッションにとって、カネロの試合は200分の1か2に過ぎません。しかし、カネロがファイトマネー合計の50%以上を占める年も珍しくないのが現状です。

この数字にはカネロの試合目当てにラスベガスのホテルに宿泊し、カジノやショーも楽しむ経済効果は換算されていません。

承認料が収益のほとんどを占める承認団体にとっても、収益の中でカネロ戦は大きな割合を占めているでしょう。カネロに4団体統一してもらうことは、団体に取っても最高の形です。

カネロ戦を開催するために1000万ドル単位のサイト・フィー(招致料金)を支払うMGMグループや、毎度特別ベルトを製作して買い取ってもらうWBCにとってカネロは神様みたいなものです。

カネロがテキサス州のAT&Tスタジアムや、ニューヨーク州のマディソン・スクエア・ガーデンで試合をされると、ネバダ州全体の大損失なのです。