世界戦で体重超過が相次いでいる原因は、①世界タイトルの価値が暴落していること、②前日計量によって減量方法に悪しき革命がもたらされたこと、の2点に集約されます。

①と②は無関係ではなく、相互に絡み合っているプロボクシング界の暗部です。

世界タイトルの価値とは何か?もっと突き詰めた言い方をすると、モノの価値とは何で決まるのか?

価値を決める最も決定的な要素はレアであること、です。

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約60年前のオリジナル「8」の時代と、4団体17階級時代の「68」の時代で世界王者の権威が同じであるはずがありません。

ましてや、この60年でボクシングはマイナー競技に転落してしまっているのです。

しかも、4団体時代は同一団体が同一階級で世界王者を複数抱えることも珍しくない、「団体数*階級数=王者数」 という常識が通用しない時代です。実際は「68」以上に膨張しているのです。

オリジナル8の時代は世界王者に挑戦できる、そのチャンスもレア。せっかく掴んだ王座を、体重超過はもちろん、簡単に手放すなど、まともな神経では考えられませんでした。

翻って、現代。特にスター選手にとって、タイトル(承認団体)は向こうから擦り寄ってくるものです。そして、前日計量によって広がったウェイトコントロール幅は、安易な複数階級制覇を助長することになります。

①の世界タイトルの価値暴落が「無理に減量してキャリアに黒星を付けるくらいなら、スケールの上で王座を剥奪される方を選ぶ」という考えにつながるのは当然のことです。

そして、②の前日計量による減量方法の悪しき革命。現代のボクサーの多くは、より失敗の可能性を孕む減量方法を選んでいます。

世界的には、トップ選手の試合数の減少、つまり試合間隔が空きすぎることも、コンディション維持に問題が生じやすい状況を作ってしまっています。
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本来の減量とは「脂肪を減らすこと」と「水分を抜くこと」の二本立て。

減量が過酷を極めると、力石徹のようにボクサーは水を求めて半狂乱になることもあります。

しかし、そんな減量風景は今や昔になりつつあるのです。