スターというのはみんなの期待に応える存在。

でもスーパースターの条件は、その期待を超えること。(長嶋茂雄)


この50年、日本のボクシング界をリードした世界王者11人を【みんなの期待に応えたか?】【その期待を超えたか?】の2点から独断と偏見で評価してゆきます。

時系列に沿ってお届けしてきたこのシリーズ。

本来なら井岡一翔から井上尚弥と続いて、大トリの村田諒太につなぐ順番でしたが…。



⑪村田諒太
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軽量級に偏向した日本ボクシング界に、突如出現した突然変異。

ミドル級でフィジカルの強さが特筆される村田は、ロンドン2012で金メダルを獲得した瞬間から日本のボクシングファンから「夢」や「悲願」を期待される存在になりました。


【みんなの期待に応えたか?】
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アッサン・エンダムとの再戦でWBAミドル級のセカンドタイトルを勝ち取ったとき、顔をくしゃくしゃにして男泣きした村田。

村田が泣くわけない、と信じていた私には意外すぎる涙でした。

「五輪メダリストはプロでは王者になれない」という訳のわからないジンクスを破った村田の頬を伝ったのは 、本人が言い張る「汗」なんかではなく、最低限のノルマを果たした安堵の涙でした。

エンダムとの初戦の敗北は、世界中が「盗まれた」と非難しましたが、ロブ・ブラントとの初戦は完敗でした。

エンダムへの世界初挑戦と、次戦にもビッグマッチが企画されていたブラント1。この2試合を悪い意味で慎重に戦ってしまったのは、失敗できないという大きな責任を感じて大切に行きすぎたからでした。

それだけ、村田諒太はボクサーとしてはもちろん、人間としても多くの人を巻き込んだ神輿に担がれていたのです。

この敗北で村田に失望した人がいるかもしれませんが、そんな人たちも鮮やかにも程がある再戦で の勝利に酔い痴れたはずです。
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【その期待を超えたか?】

世界ミドル級王者として、WBA御用達の〝世界ランカー〟を圧倒。期待通りの実力を見せてくれました。

このレベルの世界ミドル級王者を、日本のボクシングファンが次にいつ応援することができるのかを考えると、村田と時代を共有できた幸運を感謝せずには入られません。

そして、昨夜。私たちの期待を間違いなく超えてくれました。
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この「夢」に続きがあるのかどうかは、まだわかりません。

ただ、2011年のアゼルバイジャン・バクーの世界選手権で銀メダルを獲得してから足掛け11年。村田諒太は、日本のボクシングファンの夢を乗せて走り続けてくれました。

2012年、ロンドンのエクセル展覧会センターでエスキバ・ファルカンを下した五輪決勝は、日本ボクシング史100年の歴史の中でもクライマックスの一つです。

そして、昨夜のさいたまスーパーアリーナ。

村田諒太は私たちの期待を優に超えてゆきました。