まだBoxRecには反映されていませんが、WBAフライ級王者の藤岡奈穂子が、WBC王者マーレン・エスパーザとの統一戦を行います。

ご存知の通り、藤岡はストロー→ジュニアバンタム→バンタム→フライ→ジュニアフライの順で5階級制覇、日本歴代最多の階級制覇を達成したレジェンド。 

昨年7月に、ゴールデンボーイ・プロモーションズ主催のヒルベルト・ラミレスや〝Jo Jo〟ディアスが登場するビッグファイトのアンダーカードで勝利したことでスポットライトが当たった藤岡。

アメリカンドリームの尻尾を掴みました。

先日も書きましたが、もはや世界戦でも地上波生放送されないボクシング冬の時代、村田諒太や井上尚弥などほんの一握りのスターを例外に、海外に呼ばれる方がファイトマネーが高いという状況が出来上がっています。

スター手前の男子ボクサー以上に、女子も「米国の方がファイトマネーが高い」(藤岡)。

村田や井上のような100万ドルファイターを背負える市場は日本にしかありませんが、木村翔なら中国、藤岡なら米国のように日本では1万ドル稼げるかどうかの〝スター未満〟や、女子は海外で名前を挙げる道が開けているのです。

他のスポーツではありえない、非常に興味深い、そして悲哀に満ちたパラドクスです。

才能豊かでプロテクトされたスターは潤沢な内需に支えられ、そうではない〝未満〟や女子は出稼ぎの方が魅力的。

そもそも潤沢な内需などないフィリピンとは市場構造が全く違いますから、日本からも〝パッキャオ〟が生まれるかもしれないという期待は早計です。

村田や井上のような大将は国内にとどまり、足軽が世界に打って出るというのが、現在の日本のプロボクシングの構造なのです。
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仕方がありません。潤沢な内需は、才能豊かなスターに集中するのは当然です。

そして、木村や藤岡が「海外の方が報酬が高い」というのも、彼らのレベルの話です。

ゲンナジー・ゴロフキンと戦い、カネロ・アルバレスの口からも名前が出る村田諒太は別格にしても、英米で大きな需要が全く期待できないバンタム級であるがために、その才能の受け皿が日本にしかない井上尚弥のポジションは難しく、そして悲しい、悲しい、悲しいです。

そもそも、バンタム級あたりでは、自分よりも遥かに恵まれない、ずっとずっと貧乏な選手を叩きのめすしかないのですから。