高校時代は引きこもってただけに、とんでもない数の本を読み耽ってました。

洋書や洋雑誌まで手当たり次第、自分では数えてなかったのですが、図書館の貸し出しチェックだけで「年間365冊を超えてる」と、担任の教師に驚かれたのを覚えています。

実際には図書館で一日中何冊も読んで、貸し出しチェックに記録されていないものも相当数ありましたし、リング誌など和洋雑誌は持ち出せず、漫画などまで含めると「1日1冊」なんてもんじゃありませんでした。

それが、今では1ヶ月に1冊程度。どうしてあんなに貪り読めたのか、自分でも不思議です。

まあ、仕事もないし、引きこもってたら時間はたっぷりあるから、読めるといえば読めるのですが、当時は間違いなく活字中毒でした。

娯楽小説から戯曲、歴史書まで本当に手当たり次第な乱読で、17世紀の歴史家トーマス・フラーの著作に出てくる名言探しが数日間のマイブームだったことがあります。

「不幸によって磨かれる人もいれば、駄目になってしまう人もいる」「どこにでもいる人は、いないのと同じだ」「結婚前には両眼を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ」なんてのが有名で「夜明け前の闇が最も暗い」もそうです。

「It’s always darkest before the dawn.」。フラーの言葉は、まさに「夜明け前の闇が最も暗い」です。

フラーではありませんが、同じ意味の英語に「For every dark night, there’s a brighter day.(暗い夜があるから、光り輝く日がある)」「After the dark night, the sun shines.(暗い夜の後は、太陽が輝く朝が来る)」も、同じ意味です。

やはり高校の図書館で読んだウルフガイシリーズにも 「夜明け前の闇が最も暗い」という犬神明のセリフが出てきますし、のちの受験時に役立った日本や中国の歴史モノ小説を書いた吉岡英治のエッセイにも「朝の来ない夜はない」は何度も登場します。

しかし、この言葉の〝出典〟として最も有名なのは、ご存知のようにシェークスピアの「マクベス」です。

ただし、原文はフラーらのような肯定的なニュアンスではありません。

The night is long that never finds the day.(William Shakespeare『Macbeth』)。「夜明けが来ない夜は長い」 。

「朝の来ない夜はない」「夜明け前の闇が最も暗い」 とは、逆の意味すら帯びているように読めてしまいます。

どうしてこんなことを書いたかというと、今日の読売新聞朝刊 の短いコラム(編集手帳)で、マクベスの中に出てくるこのセリフを演劇評論家の松岡和子さんが「朝が来なければ夜は永遠に続くから…」と訳したと知ったからです。

原文を損なわない名訳です。 

「朝の来ない夜はない」「夜明け前の闇が最も暗い」 よりも、積極的に朝を迎えに行く感じもします。


bs_series@2x

シェークスピアは坪内逍遥でしか読んでませでしたが、松岡さんは「坪内逍遥、小田島雄志に続く3人目の偉業  25年の時を経て、堂々完結」させたそうです。

知らなんだ。

こんなのが、高校時代の図書館にあったら1週間で読破しちゃうんだろうけど、今は全部読む気力はありません…。