日本電産サンキョーがスケート部を、3月31日をもって廃部すると発表しました。

1957年の創部以来、オリンピックのスピードスケートで金3個、銀2個、銅3個の計8個のメダルを獲得した超名門の実業団でした。

廃部理由は「近年強いリーダーの不足に加えて、ここ数年スケート選手を目指す若者も減り、そのレベルも落ちてきたことから、企業がスピードスケート競技の発展に貢献するという当初の目的についての展望が持てないと判断した」ということです。

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残念ながら、実業団スポーツは企業の中で利益を上げる部門ではなく、コストだけがかかる福利厚生の一環です。

社員の意気や会社の団結心を高める役割を果たしてきた実業団は、娯楽も少なく、何よりも終身雇用が当たり前だった昭和の時代なら、存在意義が確かにありました。

しかし、雇用が流動化、娯楽も多様化が進む中で、実業団は押し付けがましい永遠の赤字部署でしかなくなります。

企業にとって宣伝効果は期待できるとはいえ、選手・指導者への報酬、競技場の維持費、住居、遠征費などのコストを考えると、費用対効果は劣悪です。

企業と社員が家族のような結びついていた時代は、完全に終わりました。

学校と企業が受け皿になってきた日本のスポーツ構造は、大きな転換期を迎えています。

運動部の担任教師は、個人の生活を脅かされる時間外労働を強いられ、企業が赤字の実業団を抱えることは株主はもちろん、社員からですら許されなくなりました。

昨年、やはり年度終わりの3月に陸上部を廃止した日清食品のトップは「錦織圭や大坂なおみをスポンサードするならいくらでも出せるけど、陸上部に毎年何億円もかける意味はない」と断を下しました。

フルスペック(選手・指導者・競技場・住居・遠征費等)ではなく、人気スポーツのスター選手に資源を効率良く集中投下する、そんなスタイルが一般的になりました。

高木美帆や小平奈緒、高梨沙羅ら麗しいヒロインを多く抱えるウインタースポーツですが、大きな注目を集めるのは4年に一度の刹那に限られます。

65年以上もこのスポーツを支えてきた名門が「展望が持てない」と絶望して撤退してしまう。

重い話です。