カナト〝QazaQ〟イスラムは、世界王者が彼から逃げ回っていると固く信じています。

しかし、中国で生まれた無敗のカザフスタン人に残された時間は、多くは残されていません。 

9月には38歳になるイスラムは、北京2008で銅メダルを獲得したエリートアマ。2012年にプロ転向。ジュニアミドルからミドル級を主戦場に、 22戦全勝22KOのレコードを積み重ねます。

それでも、この10年間でついに世界戦の舞台は用意されませんでした。 

「世界王者から逃げられている、そう感じている。ボクシングを始めて30年、五輪に2度出場し、プロで10年間戦ってきた。2018年と2020年は一度も試合が組んでもらえなかったが、トレーニングはずっと続けてきた。ボクシングは私の人生なんだ」。

「チャンスを掴もうと米国に来たが、マネージャーやプロモーターに恵まれなかった」。

「米国はチャンスの国」というのは、ある意味で本当で、ある意味で嘘です。

優れた実力を持つボクサーにとって、米国は日本など他の国よりも多くのチャンスが与えられます。しかし、それはあくまで〝他の国と比べたら〟という注釈付きです。

つまらない試合を繰り返すと、米国のプロモーターはそのボクサーを見捨てます。「勝ち方」が求められるのです。そして、ゲンナディ・ゴロフキンやワシル・ロマチェンコのように見映えのするボクシングをしても米国に強固なファンベースのあるヒスパニックでなければ不遇から脱出することができません。

井上尚弥のように米国で馴染みのない軽量級になると、有力なプロモーターが推すメキシカンでもない限り、見向きもされないのが現実です。

大きな市場を抱える母国がある井上はまだ幸せです。しかし、GGGやハイテクは母国を離れて戦うしか選択肢はありません。

イスラムがメキシコ人や日本人なら、世界戦のチャンスが複数回あたえられていたのは間違いありませんが、悲しいかな、彼は中国系カザフスタン人なのです。

現在はギャリー・ジョナスのプロボックス・プロモーションズと契約、世界挑戦の日を待っています。

2月25日にはフロリダ州プラントシティのホワイトサンズ・イベンツセンターで、英国のジミー〝キルレイン〟ケリーと空位のWBOグローバルのミドル級のストラップを争います。

「ケリーは強いボクサーだが、彼を倒してジャモール・チャーロやハイメ・ムンギアと戦いたい。ミドル級でもジュニアミドル級でも、どちらでも問題ない。一歩一歩、前に進んでいく」。

アラフォーのQazaQ(カザフ人)にビッグネームの世界王者から声がかかる、その日はやって来るでしょうか?