オリンピックには魔物が棲んでいる。

大きな舞台に、魔物が棲んでいるのは当たり前です。

しかし、これほどオリンピックの女神から嫌われたアスリートは見たことがありません。

どうして、オリンピックは彼女をここまで残酷な目に遭わせるのか。 

2014年のソチ五輪から、ずっと、ずっと不思議に思っていました。

そして、今日のスキージャンプ混合団体戦。

1回目で大ジャンプを飛んだ高梨。

しかし、まさか、まさか、スーツの規定違反で失格。

それでも、2回目。K点越えの素晴らしいジャンプを見せてくれました。普通なら、飛べません。

どんなスポーツでも、本物の強さが発揮される状況は同じです。

打ちのめされたとき、傷つき倒されたとき、そこからどう立ち上がるのか。

高梨沙羅は、まともな人間じゃない。怪物です。

そりゃ、オリンピックの女神が妬むはずです。

敗れざる者、なんて安易な言葉で片付けるのも失礼な、10年以上もの長きにわたって世界のトップで勝利を重ねてきた小さな巨人。

スポーツという小さな世界の卑小なルールに照らせば、今日の高梨は確かに敗者なのかもしれません。

しかし、綺麗事でもなんでもなく、今日の高梨、正確には2回目も大ジャンプを飛んだ高梨は、どう見ても、どう考えても、敗者ではありません。