1950年代に黄金時代を謳歌した米国ボクシング。

60年代から明らかに凋落の傾向が見て取れたにもかかわらず、モハメド・アリという巨人の存在によって斜陽を実感できないまま80年代を迎えます。

80年代から90年代にかけては、ウェルター級とミドル級、そしてヒスパニックという新しいコンテンツでボクシングファンをつなぎとめたものの、メジャースポーツから完全に脱落。

五指に満たないスーパースターは、一般のスポーツファンには敷居と観戦料が高すぎるPPVというブラックボックスの中でメガファイトを繰り広げて来ましたが、そのビジネススタイルはただでさえ瀕死のボクシングというスポーツを窒息させる行為でした。
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マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズ、ロジャー・フェデラーが1年間試合に出場して、スポンサー収入に支えられて、やっと手に届く1億ドル(約100億円)という報酬を、フロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオは、たった一晩どころか、たった36分間で稼いでしまうのです。

そこには、現代アスリート長者にとって必須のスポンサー収入は全く計上されていません。基本的に、単価100ドルのPPVを460万世帯が購入してくれた、その恩恵です。

スポンサーに依存しないで、コアなマニアの〝投げ銭〟で莫大な報酬を得る。ある意味、最も格好良いアスリート像にも見えますが、一般のスポーツファンを置き去りにしているという点で、それは間違いです。
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パンデミックという人類にとって100年周期の試練に直面している2020年代も、ボクシングのマイナー化とニッチ化は歯止めがかかるどころか、ずるずると底なし沼にはまっています。

現代最高の稼ぎ頭、カネロ・アルバレスもまた、その報酬の巨大さからは考えられないほど〝無名〟のプロボクサーです。

スーパーミドル級でUndisputed Championの座を賭けて明日、ラスベガスのリングに上がるカネロは4000万ドルが最低保障されています。

今年3試合目となるカネロの、年間収入は1億ドルに迫ると見られ、大坂なおみをダブルスコアで凌駕します。しかし、日本はもちろん、米国での知名度ですら2分の1どころか10分の1にも満たないでしょう。

そんな屈折した〝ボクシングヒーロー〟のメガファイトまで、あと36時間あまりとなりました。