ノニトとレイチェル、そしてビクター・コンテ。

8月14日に内定していたWBC王者ノニト・ドネアと、WBO王者ジョンリール・カシメロのフィリピン対決は、日本国内では「カシメロがドーピング検査を拒否した」と勧善懲悪的に語られていますが、両陣営が嘘の応酬で事態を険悪化させたのは明らかです。

カシメロ陣営の決定的な非は、レイチェルに事実に基づかない誹謗中傷を浴びせたことです。

その他のカシメロ陣営の主張は、レイチェルは否定しているものの、おそらく事実に近いでしょう。

「数年前にドネアをスパーリングパートナーに指名したが、逃げられた」。→これはカシメロがこれまでも何度も口にしていたことで、事実でしょう。

ただ、ドネアが逃げたのはボコボコにされるのが怖いのではなく「後輩のパートナー」にまで落ちることにプライドが邪魔したのかもしれません。

「今回のVADAのプログラムは3万ドルと、軽量級ボクサーにとっては世界戦のファイトマネーに匹敵する金額で、自己負担ではすぐに登録できるものではなかった」。→レイチェルは「3万ドルなんてありえない」と言いますが、帝拳がルイス・ネリのVADAプログラムを肩代わりしたのが150万円でしたから、より厳格な「五輪式」なら全く見当違いの金額ではありません。

カシメロをマネジメントするショーン・ギボンズはマニー・パッキャオの右腕でもあり、パッキャオと常に距離を置こうとするドネアをSNSでいつもバカにしてきた。

「パッキャオは強い階級に登るが、ドネアは弱い階級に落ちぶれる」。

「コンテが司法取引で釈放されると真っ先にすり寄ったのがドネア。まともなアスリートならコンテとは関わらないはずなのに、どうしてだろうか?」。

レイチェルは反論します。

「フロイド・メイウェザーとは違いからノニトは無視されるが、ノニトは五輪式ランダム検査を提唱したパイオニア。酒も飲まないし葉っぱ(大麻)も吸わない。ノニトほど健全なアスリートはいない。一市民に戻ったコンテを犯罪者扱いするのは名誉毀損」。

Nonito had to deal with pressure as being maybe the next big thing from the Philippines, post Pacquiao.

「ノニトはパッキャオの後継者という重圧にいつも晒されていました」。

「フェルナンド・モンティエルを2ラウンドでKOしたのは、パッキャオのリッキー・ハットン戦のミニチュア版だった」「パッキャオが名前を挙げたフェザー級であなたは酷い挫折を経験した。引退しないのか?」「パッキャオにとっては通過点だったライト級でPPVスターが夢だと語ってしましたが、それが破れてはるかに下の階級で細々と闘うモチベーションはどこから来る?」…。

「トップランク時代にパッキャオの前座に起用されるのを、常に断り続けたのは当然でした」。

「ゴールデンボーイ・プロモーションズへの移籍がトップランクの訴訟によって妨害された後、ボブ・アラムは無理難題を押し付けてきました。ギレルモ・リゴンドーにニコラス・ウォース…」。

「最後にマッチメイクが提案されたのは、スパーリングでウォータースを追いかけまわしていたオスカル・バルデスでした。ノニトはそこでトップランクに頭を下げました。もう無理だと」。

トップランクは「ドネアはトップランクの厳しいマッチメイクに耐えられないとリリースを要求してきた。ドネアは偉大なファイター。契約期間はまだ残っているがフリーエージェントにしてあげました」。

裏切り者に大恥をかかせたアラムは、さぞかし気持ちよかったでしょう。嫌な年寄りです。

「その頃にはもう、オスカー・デラホーヤもノニトへの興味を完全に失っていました。彼はアラムが大切なものを横取りしたかっただけでした。アラムが捨てたものには関心を示しませんでした」。

その頃、釈放されたコンテが、Scientific Nutrition for Advanced Conditioning (SNAC)という健全な?サプリメント提供会社を創立しました。

彼は、禁止薬物PED(Performance enhancing drug)をルールを無視してアスリートに提供したことで収監されていたのです。

米国的なセカンドチャンスの考え方は、あるべきだと思います。更生した人物がその知見を活かして、正しく社会に貢献するなら大賛成です。

しかし、コンテは自分が制作したサプリメントなどに「PED」とブランディングしているのです。

それを問われたコンテは「Performance Energy Drink」の略だと言い放ったのです。もちろん、どんな名前をつけようが自由です。

しかし、そんな元犯罪者を信じられますか?反省の色が全く見えません。 完全にボクシング界をナメています。
 
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ンテは「ボクシングの検査はザル」とことあるごとに嘲笑しています。そして、ボクサーの顧客を集めています。

社会的な影響力の低いボクシングではドーピングが発覚しても試合結果が有効という、完全治外法権の世界です。

コンテはメジャースポーツに手を出したから世紀のスキャンダルに発展しましたが 、マイナースポーツのボクシングではドーピングは野放しです。

ドーピング問題で揺れた「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」から1年後の2016年にWBC は「クリーン・ボクシング・プログラム」をキックオフさせますが、VADAと業務提携したその内容はネバダ州アスレティック・コミッションが「私たちの方が厳格」というような酷い内容でした。

WBCのプログラムはパスカルを〝摘発〟するなど一定の効果はありますが「私たちはやってますよ」という主張のためだけのポーズに過ぎず、あの腐敗団体がフリオ・セサール・チャベスJr.など人気選手に検査が甘いのは変わりません。

〝パスカル〟たちも、今後は「マスキングをうっかり忘れた」とかの凡ミスしなくなるだけです。イタチごっこですらありません。

そして、ここが重要なポイントです。

多くのケースでドーピングが発覚したとき、選手は「知らなかった」と主張します。

ジャン・パスカルは複数の筋肉増強剤に陽性反応を示したことに驚き「即刻、栄養コンディションイングコーチを解雇した」と釈明しました。

本当に知らなかったのかどうかはがわかりませんが、パスカルが過去にメモ・エレディアら〝その道〟の達人をアドバイザーにしていたのは事実。

憶測でものをいうべきではありませんが、ドネアの検査はもっと厳格にしなければなりません。もし、何かが出ても「知らなかった。コンテを信じていたのに」と弁解するだけです。

ドネアがドーパーかどうかは、わかりません。

ただ、確実な事実はノニト・ドネアは「李下に冠を正した」ということです。

日本人的な感覚では到底理解できません。
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そのことについては、レイチェルもノニトも「セカンドチャンスを奪われる国はおしまいだ」というだけです。

私たちが聞いているのは「どうして李下に冠を正したのか?それまでしてコンテの〝力〟が必要だったのか」ということでしたが。

ドネアは「ボクシングをクリーンにしたい。子供たちの手本になりたい。今までに何度もドーピングで罰金を支払った選手を見てきた。彼らを軽蔑するし、私は不正をする必要がないから堂々としている」と胸を張りますが、コンテを軽蔑しないのは、なぜでしょうか?