もし、現在の〝日めくりPFP〟が60年代にも存在していたなら、ファイティング原田は間違いなく1位の座に就いていたでしょう。

しかし、1団体10階級時代の純粋な時代に、薄汚い脳内妄想など入り込む余地はありません。

ただ、60年代ディケイドでエデル・ジョフレを1位、原田を5位にランクしているリング誌ですが、これは後付けです。 原田は妥当ですが、ジョフレ1位は多数意見ではありません。

当時、世界のボクシング関係者がこぞって「パウンド・フォー・パウンド」のナンバー1と(ジョフレを)評価していた。 〜「黄金のバンタムを破った男」百田尚樹〜

当時を知る由もない私ですが、それでもこれは小説的な〝嘘〟だとすぐにわかります。 

まず、1団体10階級時代でPFPランキングなど作成しても、10人の世界王者をそのまま当てはめるだけの作業になってしまいます。

あのくだらない脳内妄想は4団体17階級、アバウト68人の世界王者のランキング遊びに過ぎないのです。

つまり、当時は「パウンド・フォー・パウンド」という言葉はそこまで一般的ではなかったはずです。

そして、小説的な〝嘘〟だと断定できるのは、ジョフレを「 世界のボクシング関係者がこぞって」パウンド・フォー・パウンドのナンバー1と評価していた、というくだりです。

ありえません。

実際、ジョフレを60年代1位に推したリング誌も「異端の考えかもしれない」と認めています。

高校や大学時代に、当時のリング誌やスポーツイラストレイテッド誌も貪り読みましたが、60年代のボクシングは人気(好き嫌い併せ呑む意味で)は圧倒的にモハメド・アリ、その存在感の大きさは実力評価でもアリでした。
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これは、軽量級に傾倒する日本のボクシングファンやメディアですら、そうだったでしょう。

80年代、中高生の私は、アリが嫌いでした。「そんなもん、マイク・タイソンの方が強いに決まってるだろ。アリやフォアマン、フレージャーなんて70年代の化石」と思っていました。

スポイラやリング誌が史上最高のボクサーとして扱っているばかりか、ボクシングジムの古参の方や、有名な文筆家の中には「アリ最強」を信じてる人が多く、そういう懐古的な思考に対する反発もありました。 

そうだ、アリの話じゃありません… 。脱線する前に面舵いっぱい、原田とジョフレに戻します。

とにかく、アリがボクシングという枠を突き破った偉大な現象であったがために、ジョフレを60年代2位にランクする専門家が多いのは、ボクシングという枠内で考える場合は間違っている、というのがリング誌の主張でした。

リング誌がコンクリートした60年代1位ジョフレ、5位原田。

さて、2020年代が締めくくられた後世、井上尚弥はディケイド何位と評価されているのでしょうか?