「アンソニー・ジョシュアvsタイソン・フューリー」の英国対決だって実現しないじゃないか。

「カネロ・アルバレスvsフリオ・セサール・チャベスJr.」だって賞味期限切れだったじゃないか。 

確かにその通り。

プロモーターが手中の大駒を失うかもしれない大勝負に出ることは、めったにない。あるとしたら、手中や懐中に大駒を複数持っているケースだけ。

「マニー・パッキャオ」という絶対の大駒を抱えていたトップランクは「ミゲール・コット」「アントニオ・マルガリート」「ファン・マヌエル・マルケス」と〝家内制手工業〟的にマッチメイクを重ねる一方、興行権を掌握できないフロイド・メイウェザーとの超弩級メガファイトには挑発的な態度を取りながら、ボブ・アラムは明らかに腰が引けていた。
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米国では、プロモーターとテレビ局の壁が日本以上に高く分厚い障害になっているのは周知の事実。

日本で「長谷川穂積vs西岡利晃」のようなライバル対決が実現しなかったこと、「井上尚弥vs井岡一翔」が具体的な交渉に入りそうもないことも、米国と同じ〝大人の事情〟を考えると当たり前。

しかし、米国ではファンが声をあげて渇望する、実現できない興行サイドを非難する。

それなのに、この国のボクシングファンは最初から諦めてる。

もしかしたら、日本人スター同士をぶつけるのは文字通りの〝星のつぶし合い〟と考えてるのかもしれません。

〝星のつぶし合い〟は確かに負けたほうが光を失い、二つあった星は一つだけになってしまいます。

しかし、それは勝った方の星がより大きな輝きを手に入れ、より大きな星になることを意味しています。
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欧米でほとんど注目されることがないジュニアフェザー級以下の超軽量級に、人気選手はまずいません。

超軽量級で超レアに評価が盛り上がってるジュニアバンタム級でトップのファン・フランシスコ・エストラーダ でもキャリア最高報酬は20万ドル。

2年間もリング誌PFPキングを守ったローマン・ゴンザレスは最高50万ドルのファイトマネーを手にしましたが、それは破綻寸前のHBOボクシングが総額100万ドルの超低価格イベント「スーパーフライ」の景気付けで捻出したもので、ロマゴンの米国での人気が50万ドルというわけではありませんでした。

ジュニアバンタム級でもマネーという感覚ではスター選手など一人もいません。バンタムに至ってはもっと悲惨です。井上尚弥だけを例外に、トップ選手ですらマネーでも認知度でも評価でも底辺のボクサーが乞食のように井上戦を求めています。

井上のプロモートに全く熱意が感じられないトップランク、日本から入る放映権に不満タラタラのESPN…。

バンタム級を統一して、ESPN=トップランクのテレンス・クロフォードと、リング誌=ゴールデンボーイ・プロモーションズのカネロ・アルバレスがコケたら井上はPFP1位になるでしょう。

しかし、それはマイケル・ダスマリナスやジョンリール・カシメロ、ノルディン・ウバーリら米国で目くそ鼻くそとはいえ井上以上に無名なばかりか、日本のサラリーマンから見ても羨ましくない貧困ボクサーに勝ってのバンタム級統一です。

ユダヤ人のおじいさんは、井上に対して「パッキャオのようなスターになる」と何度も語ってますが、明らかにやる気はないです。

89歳のおじいさんにとって、人生のロスタイムでもう一度鮮やかなゴールを決めたい気持ちは強いでしょう。

パンデミックに見舞われ、トップランクもライバルに蹴落とされて一気に落ち目になった今「超軽量級のアジア人をかまってる時間はない」と考えたとしても無理はありません。

おじいさんが、井上のバンタム統一を見ることは二つの意味でないかもしれません。

①その意欲も能力もない、②寿命。

井上には、埒があかないバンタム級統一に固執するよりも、やることがあるような気がします…。

そもそも、このまま米国ラスベガスにしがみつくと〝西岡利晃〟と同じことを繰り返すだけです。

矮小な会場とマイナーなテレビ放送とは全く不釣り合いの100万ドル報酬…。西岡は1回でしたが…井上は上塗りしてしまうのでしょうか?