終電にはまだ間に合いそうでしたが、会社前にタクシーが止まってたので乗りました。

飲食店も大変ですが、タクシーはもっと大変でしょう。以前は会社の入ってるビル前に、ズラーッと並んで客待ちしていたというのに…。
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ファイティング原田と、矢吹丈は幸せでした。

日本は今とは比べ物にならないくらいに貧しい国でしたが、目の前にある一本道を走り抜くことができれば、必ずゴールが約束されていた時代です。

どんなに貧窮しようが、あの時代に生きた原田にも、ジョーにも「あした」が確かにありました。


勝ち続けていれば、必ず辿り着ける「あした」が。



しかし、現代の4Belt-Era は二桁防衛しても「あした」の輪郭さえ見えない非常に複雑で困難な時代です。

日米共にボクシングのステイタスが下落した現在、〝ファイティング原田〟や〝モハメド・アリ〟が再びリングに登場することは、永遠にないでしょう。

「世界と戦う日本人」に熱狂出来る舞台がボクシングのリングしかなかった時代は、とうの昔に終わってしまいました。

私たちは阪神タイガースや横浜FCに愛を送り、MLBや欧州リーグでプレーする〝選ばれし日本人〟に尊敬と夢を懸けます。

欧米に華やかな本場が存在するメジャースポーツの選手は、国内で技術を磨き、優れた者がより高いステージを目指して海を渡ります。

そして、ふと思い当たってしまうのは、私たちが「世界で戦う日本人」だと信じていたボクサーたちは本当に「世界で戦っていた」のか?という疑問です。

マイナースポーツのボクシングで、なおかつマイナー階級の軽量級には、欧米に華やかな舞台など、そもそも存在しません。

村田諒太や井上尚弥、井岡一翔らは〝我らの時代〟が「目の前に敷かれた一本道を疾走すれば事足りる」という安易な時代でないことを自覚しています。

メジャーな世界を釣り上げる巨大なフックを持つ村田は、大物に食らいつく機会をじっと待っています。

メジャーな世界とはかけ離れた階級で戦う井上と井岡は、階級最強、完全統一王者を成し遂げることで存在証明しようと着実に階段を上がっています。
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今日のお昼ご飯。

移動時間などに酔っ払って書いた「あしたのジョーの〝あさって〟の話」は、書き終わってから「救いようのない話になった」と少し後悔してしまいましたが、どんなヘタクソな話にも救いどころはあるものです。


▶︎はじめまして。 読んで笑いと共に納得の内容でした。 


このストーリーでは、マンモス西とは離婚した? 結婚自体を無かった事になっているのでしょうか?


2021-03-10 18:31:22 返信編集レイジェス126.88.87.85



レイジェスの硬質な拳に刺激され、暗いタクシーの中で続きが思い浮かびました。 
 

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◉マンモス「おっちゃん、元気にしとったか?」


◎段平「おう、西じゃねえか。お前こそ、紀ちゃんに偽装結婚されて、肖像権全部買われたんじゃろ?大丈夫か?」


◉マンモス「わしは大丈夫やで。紀子はんが出してくる、ぎょうさんの書類に実印押しただけのことや。おっちゃんこそ元気そうで何よりや。しかし、豪華な施設の個室って聞いてたんやけど…こんなプレハブで狭い相部屋でっか?」。


◎段平「紀ちゃんは王侯貴族の城とか言ってだけどな。騙される俺の方が悪いってこった」


◉マンモス「紀子はんを悪ぅゆうんはやめてや。『あした』を目指してたんはジョーだけやなかったってこっちゃ。紀子はんには紀子はんの『あした』があるんやから」


◎段平「しかし、ジョーの野郎はうまくやりやがったもんよ。泪橋を逆に渡れとは言ったが、ドブ川を埋め立てて、泪橋も丹下ジムもろともぶっ壊して、今じゃ世界一の億万長者か。泪橋を逆に渡るも何も、もう橋がねぇんだから」。


◉マンモス「ほんまに変わってもうたなあ。林屋があった跡にまさか東京タワーより高いスカイツリーが建つなんて、紀子はんは先見の明ありまっせ、ほんま」


◎段平「それにしても紀ちゃんがあんな女とはなあ…『丹下ジムブランド』の日本酒やおでんは購入者アンケートで最下位、売れ行きも悪いから生産中止。今じゃ世界で売れまくる「あしたのジョー」ブランドでも黒歴史扱い、ホームページでも『丹下ブランド』は抹消されてるし、ワシは主なキャラクターどころか、脇役からも消された。ジョーも白木ジムからデビューしたことにされちまってよ」。


◉マンモス「おっちゃん、毒吐いたらあかん。そういう抜け目のなさが、ビル・ケイツはんらを抜いてフォーブスの世界長者番付で1位にならはったんやで」。 


◎段平「おめぇが鑑別所で新入りイジメで使ってたねじり雑巾を大量生産して5000円で売るなんざ、堅気の商売じゃねぇ。カラー雑巾は1万円だぞ?あんなボロ雑巾、原価10円もしねぇだろ」。
 
◉マンモス「10円で売っとったらフォーブス長者なんかになれまへんで」。


◎段平「そういや西よ『マンモス西うどん』を鼻から出す遊びが小中学校で流行って大問題になってるらしいじゃねぇか」。



◉マンモス「そうなんや、実はそのことでおっちゃんに挨拶に来たんや。明日、謝罪会見するんや」。


◎段平「紀ちゃんに偽装結婚されて、お前の権利は全部買われちまったからな、お前は関係ない。明日の謝罪会見が楽しみじゃ、ざまあみろってこった」。


◉マンモス「それが、紀子はんが半年前に肖像権も販売権も全部、わしに無料で戻してくれはったんや。今やわしはハヤシヤ・ドットコムとは完全別会社の、マンモス商事の社長なんや」。


◎段平「西ぃ!おめぇ騙されてるのがわかんねぇのか!?半年前って〝鼻からうどん〟が国会で問題になった頃じゃねえか!…まさか、謝罪会見ってお前が?」


◉マンモス「そらそうや。紀子はんもジョーも関係あらへんからな」。


◎段平「紀ちゃんから直接電話があったのか?」


◉マンモス「まさか、使者という黒服の若い男性が来はって『西さんが謝罪する場所も時間も取ってる』ゆうて」


◎段平「西よぉ、おめぇはどこまでお人好しなんだ、騙されてるんだよ!


◉マンモス「黒服のお兄さんに謝罪のセリフを教えてもろうたし。もうほとんど暗記したんやで。え〜っと…この度はマンモス商事の商品が子供たちの不適切な遊びを助長する結果になってしまい、誠に申し訳ございませんでした。この件に関して、一部メディアで親会社のハヤシヤ・ドットコムに責任があるという報道が流れていますが、マンモス商事とハヤシヤ・ドットコムは全くの別会社であります。今回の責任はは全て、マンモス商事社長のわたくし…」。


◎段平「西!やめろ!もう、やめろ!!!明日の謝罪会見も行く必要はねぇからな!!!わかったか!!!!」。


◉マンモス「おっちゃん、大声出したらあかんで、黒服のお兄さんがすぐそこで見張ってんねんから。心配してくれるんはありがたいけど、わしもそこまでアホやおまへん」。


◎段平「だったら、どうして謝罪会見なんて引き受けるんだ、西よぉ〜」。


◉マンモス「おっちゃん、よう聞いてくおくれなはれ。貧乏人が大金持ちになるゆうんが、どういうことか、わし、気づいてもうたんや」。


◎段平「貧乏人が大金持ちになったっていいじゃねぇか!」。


◉マンモス「その通りや、せやけどそれは貧乏人が貧乏人のまま大金持ちになれるんとは違うんや。貧乏人が大金を手にするっちゅうことは、必ずなんかを売ってるんやで。目ぇには見えへん何かを売ってるんや」。


◎段平「紀ちゃんはジョーや力石ブランドのダイエット・ストーブや、西のうどんなんかを法外な価格で売りまくってるだけじゃないか!?」。
 

◉マンモス「おっちゃん、そういうことやないんや、貧乏人のときには体のずっと奥の方にあったはずの人間の芯みたいなもんも、知らんうちに売ってしもうてるんやで。貧乏人が大金持ちになるゆうんは、そういうことやって気づいてん、わし」。


◎段平「人間の芯だとぉ?そいつは魂ってことだろ?、そんなもんまで売っちゃいかんだろうが…」。 


◉マンモス「だからわしは、そこまでしてる紀子はんを責めることはできまへんねん」。


◎段平「そんなこと言い出したら貧乏人は幸せになったらダメってことじゃねえか?!」

 
◉マンモス「そんなことあらへん。紀子はんもジョーも大豪邸に住んで毎日美味しいもん食べて、世界中からチヤホヤされて、幸せそうにしてるがな。そういや、この間、紀子はんがオーストラリアを買ったニュースが流れてましたな。ジョーはオアフとグアム買ったし」。
 

◎段平「はあ???それが幸せかよ?今じゃ、あいつらは直接話すこともなく、会話も全部、弁護士を通してるんだぜ。それが、あいつらか憧れた幸せなのかよぉ?それがあいつらの『あした』なのかよぉ?」。


◉ マンモス「おっちゃん、時間が来たようや。黒服さんたちが呼んでるから、もう行かんと」。


◎段平「西、西よぉ〜、行くな、行っちゃいけねえんだよ」。


◉マンモス「大丈夫や、わしは紀子はんとジョーが幸せに暮らしてるならそれでええんや」。


◎段平「西よぉ〜、行くな〜〜〜〜」。


◉マンモス「おっちゃん、安心してや。おっちゃんには絶対手ェ出さへんて約束してもらってるから」。


◎段平「西、おい、おめぇまさか、…謝罪会見が終わったら…」。


◉マンモス「せやから、最初に挨拶に来たゆうたやんか。おっちゃん、長い間お世話になったな」。


◎段平「西よぉ〜、頼むから行くな〜〜〜〜!」。




*******「救いどころ」のある話にしようと思ってたら、怖い話になってもうたーーー!深夜タクシーの薄暗い中で書いたらあかーん!!!

 

※「あしたのジョー」は全巻田舎に置いたまま、タクシーの中でちょっと車酔いしながら書いたので、マンモス西と丹下段平の一人称があやふやです。