村田諒太の次戦がゲンナディ・ゴロフキン、そして年末にカネロ・アルバレス。そんな連続メインディッシュな話が、ボクシング180年の歴史であったでしょうか?

。。。。。まだ、何も決まってないんですけどね。

ただ、何事にも準備は大切です。

まずは、一部メディアでPFPキングに推されている赤毛のメキシカンからです。
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カネロで特徴的なことは、身長173㎝/リーチ179㎝のミドル〜スーパーミドル級としては極端に小さなフレームです。

リング誌のスーパーミドル級ランキングの上位選手を見渡すと、1位:デビッド・ベナビデス(187㎝/196㎝)、2位:ケイレブ・プラント(185㎝/188㎝)、3位:カラム・スミス(191㎝/198㎝)、4位:アンソニー・ディレル(188㎝/189㎝)、5位:ビリー・ジョー・サンダース(180㎝/)…カネロの小さな骨格は異様なほど際立っています。

単純な身長・リーチでは、井上尚弥(165㎝/171㎝)らのバンタム級の方がまだしっくりくるほどです。

もちろん、ボクシングは身長・リーチでクラス分けされていません。

体重です。身長やリーチの差を跳ね返す〝ダビデ〟はボクシング界では珍しくありません。

しかし、それにしても〝ゴリアテ〟揃いのスーパーミドル級のカネロはあまりにも異質です。

ダビデに必須の戦力はスピードです。そこに、フロイド・メイウェザーの完璧な防御や、マニー・パッキャオの波状攻撃が上乗せされると、大抵のゴリアテは倒壊します。

いずれにしても卓越したスピードを大前提に、高度で独創的な攻防技術でゴリアテとの正面衝突を避けるのが必勝のメソッドです。

しかし、カネロは違います。ゴリアテ相手に、一見パワーボクシングを仕掛けているように見えます。

もちろん、実態はそうではありません。

メイともパックとも違うスタイルです。

あえて近似したサンプルに挙げるとしたら、マイク・タイソンでしょうか。

しかし、タイソンがバックステップを踏めない欠陥品だったのに対して、カネロは下がったとしても優位に試合を進めることが出来る万能型です。

「現時点でフリオ・セサール・チャベスを凌ぐメキシコ史上最高ボクサー」「現在生きているボクサーでもPFPキング」という声まで聞こえて来る30歳のメキシカンは、完全無欠のファイターなのでしょうか?

ボクシング大国、メキシコでは偏執的なまでに打撃戦が好まれ、拳の戦争を回避するボクサーには容赦無いブーングが浴びせられます。

たとえ異邦人でも、打撃戦から一歩も引かないパッキャオのような恐れを知らないファイターが、かの国では支持されるのです。

それがメキシカンスタイルです。

メキシコ史上最高の人気者カネロですら、ゲンナディ・ゴロフキンとの初戦で引いて戦ったことには会場でもメキシコメディアでも批判が集まりました。

メキシカンはある意味、十字架を背負っています。

リカルド・ロペスのような美しいボクシングは好まれません。

メキシコの人気者、グレートは誰もが地獄の一丁目で喧嘩ファイトを繰り広げてきたスラッガーたちでした。

カネロもメキシコのスラッガーの系譜に名前を連ねるファイターに見えます。

しかし、データはそうではありません。
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名だたるメキシコのグレートと比較してもカネロの防御技術は図抜けています。

これは2年前のデータですから、今はその〝防御率〟は更に研ぎ澄まされています。

本来は両立しないはずの「精密で高度な防御技術を操る強打のファイター」。理想のファイター像にカネロが接近しているのは間違いありません。

誰がカネロに勝てるのか?

もしかしたら、その段階はとっくに過ぎて「誰がカネロといい勝負ができるのか?」のステージに突入しているのかもしれません。



マービン・ハグラーやシュガー・レイ・レナードはカネロを粉砕したでしょうか?

アンドレ・ウォードならメイウェザーがキャッチウェイトでやった授業を、スーパーミドルでカネロにほどこすことができるでしょうか?

「誰が168ポンドでカネロに勝てるのか?」。

…仮想対決に続きます。