「4団体17階級」 は王者を大量生産する狂乱の時代です。

他団体の不義を糺すため、正義の王者を打ち立て、ボクサーの安全・健康と適正なパフォーマンス発揮にために階級を細分化している、という見方も1億歩くらい譲れば、そういう状況も考えられるかもしれません。

しかし「4団体17階級」時代の本当の闇はそこではありません。

それだけなら、WBAからWBCが分離独立した1960年代から続く承認団体の大義名分、正義の問題と本質は変わりません。団体と階級が増えただけですから。

それでも「同一団体複数王者」は、どんな理屈も通用しない狂気の沙汰です。

「我が団体の王者こそが本当の王者」なら、まだありえる主張ですが「我が団体には王者(No.1)が複数いる」となると、もはや重度な精神病、脳障害です。

4−Belt Eraとは、17階級にわたってアルファベットが組み合わされた世界王者が粗製乱造されているだけでなく、同一団体の中でスーパーやフランチャイズ、ダイアモンドなどの冠王者が都合良く増殖されている時代なのです。

ボクシングほどわかりやすくて、衝撃的な結末が用意されているスポーツは他にありません。

しかし「誰が一番なのかは誰にもわからない」という、スポーツにとって致命的というか、スポーツとしてはありえない状況が当たり前に常態化してしまっているのです。

マイナーの谷底に叩き落とされ、1970年代のスポーツ界ですでにDying industry(衰退する産業)の烙印を押されていたボクシングは、いまや瀕死の状態。蘇生の最も有効な治療法は新しいファンを増やすことですが、ボクシング同様に〝老い先短い〟年配のマニアが支えているのが現実です。
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こんな状態で、最もスポーツライクで、最も分かりやすいLINEAL CHAMPIONが間歇的に脚光を浴びるのは自然の流れなのかもしれません。

The adjective “Lineal” is in reference to the manner in which titles in prize fighting traditionally passed from one champion to the next via contests in the ring – commonly described as, “the man who beat the man.”  

"Lineal "はプロボクシングのタイトルがリングの中で防衛か簒奪かで決定される伝統である 。「王者を倒した者だけが王者」という至極真っ当な考え方だ。


“the man who beat the man.”  〜王者を倒した者だけが王者。

この、目には見えませんが、概念としては最も単純明快な王者、それがLINEAL CHAMPIONです。

もちろん、王者の引退などで空位になった場合は決定戦が行われますが、ランキング1位と2位で争われる場合のみ新王者が誕生します(特別な事情が認められた場合は1位と3位)。

見覚えのあるレギュレーションです。

そう、リング誌のチャンピオンシップがLINEAL CHAMPIONの考え方に則っています。※「リング誌王者はリネラル王者か?」という問いの答えはYesとNOです。これまでにも何度かやったお話な気がするので、ここでは先を急いで割愛。
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昔、むかしのボクシングファンはジョン・L・サリバンからモハメド・アリまでLINEAL CHAMPIONの名前を誦じて、自分の子供たちにも語り継いだといいます。


私がボクシングを見るようになって40年、LINEAL CHAMPIONが大きな話題になったのは二度、最初は80年代中盤のマイケル・スピンクス、そして2010年代後半のタイソン・フューリーです。

やはり、いずれも世界ヘビー級チャンピオンにおいてのことでした。

スピンクスはWBA/WBC/IBF王者マイク・タイソンに、フューリーはWBC王者デオンティ・ワイルダー に〝挑戦〟するときに LIEAL CAHAMPIONとして紹介されました。

「タイソンこそが完全統一王者で The Undisputed champion=議論する余地の無い王者、他に王者なんていない」。

「長いブランクを作って無冠になったフューリーが正統王者だなんて屁理屈だ」。

多くのファンは戸惑いました。

自己都合でタイソン戦を後回しにしてIBF王座を返上したスピンクス。引退宣言までしてリングを離れたフューリー。

アルファベット団体はさっさと決定戦を行い新王者を作りましたが、リング誌はスピンクスの王座を剥奪せず、フューリーも規定の18ヶ月の経過と本人にリング復帰の意思が無いことを確認するまで王座を空けませんでした。
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腐敗と混沌の4−Belt Eraだから関心を集めるLIEAL CAHAMPIONですが、もはやここまで王者の価値が失墜してしまうとファンの興味は「誰と誰が戦うのか?」に尽きてしまっています。 

ボクシングファンなら誰もがのめり込んで見たに違いない「メイウェザーvsパッキャオ」ですら、あの試合に賭けられたタイトルを正確に覚えている人がどれだけいるでしょうか?

いたとしても、タイトル争奪への関心がどれほどあったでしょうか?
 
LIEAL CAHAMPIONとは畢竟、タイトルへの最高の尊敬を具現化した概念です。形としてないのに具現化なんて、全くおかしな話ですが。

タイトルへの尊敬が限りなく軽くなっている時代、LIEAL CAHAMPIONの持つ意味もまた希釈されてしまっているのです。

王者乱立時代でも大きな存在感を示してきたThe Undisputed championですら、4−Belt Eraではバーナード・ホプキンスとテレンス・クロフォード、アレキサンダー・ウシクと人気の無い選手が実力証明するためのコレクションに成り果てました。

そして、このコレクションをコンプリートしても、けして人気の頂点には近づくこともできないのです。

「テオフィモ・ロペスはライト級としては十分人気があるぞ」というかもしれませんが、あれは「The Undisputed championになって人気者になった」のではありません。「人気者がThe Undisputed championになった」のです。

もっと正確に言うと、テオフィモは本来はその条件が揃っていなかったにもかかわらず「人気者だからThe Undisputed championにしつらえてもらった」のです(WBCフランチャイズを王座として受け入れ彼をThe Undisputed championと認めるなら、ですが)。



さて、LIEAL CAHAMPIONです。このチャンピオンシップ制度で最も尊敬すべき称号が話題に上がるのは、ヘビー級に限定されているといっても過言ではありません。

ジョンLサリバンからモハメド・アリ。スピンクスやフューリー…全部ヘビー級です。

では、LINEAL CAHAMPIONはヘビー級にしか生息しない概念なのでしょうか。

そんなことはありません。

広義では「王者を倒したものだけが王者」。それがLINEAL CAHAMPIONですから、17階級のどの階級にも存在します。

ただし、やはり伝統的にヘビー級は別格、ヘビー級だからこそジョン・L・サリバンへの関心が強烈なのでしょう。

ジョン・L・サリバンは、ボクシングファンなら誰でも聞いたことがあります。 

他の階級でジョン・L・サリバンは誰に当たるのか?

この問いに、一つの階級でもいいから、自信持って言える人が何人いるでしょうか?

というか、歴史的に一貫したリミット体重を持たないケースも多いヘビー級以外の階級で「誰が最初の一人か?」を決めるのは無理難題です。

団体分裂後に創作されたジュニア階級やストロー、クルーザーなどのクラスは「最初の一人」ではなく、複数の始祖を持つわけで、本来なら一本道(LINE)でなければならないLINEAL CAHAMPIONの〝始発駅〟が複数あるのですから、非常にややこしい話になります。

その、非常にややこしい話をバンタム級で始めます。

オリジナル8に数えられながら、黎明期は体重リミットが安定せず、呼称も一定しなかったバンタム級の始発駅をどこに定めるか…誰にもできませんが「こいつは LINEAL CAHAMPION 」と認めることができる王者を見つけることは簡単です。

そこから始めましょうか。