このパンデミックで、富裕層が使うお金の流れが実体経済からアート市場に流入しています。

「週刊東洋経済」の特集で、クリスティーズ・ジャパンの山口桂社長は「世界の富裕層が家で楽しむためにアートを買っている。活況なのは現代アート」と説明しています。 

パンデミック前でも前澤友作ZOZO元社長がジャン・ミシェル・バスキアの絵画を約115億円で落札してニュースになりましたが、驚くべきはその金額だけではありません。

この絵画が33年前に取引されたときの価格が〝わずか〟220万円だったという事実です。 
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私の中で「人生七不思議」の一つ、村上隆。どこがいいのか全くわからないばかりか、むしろ不快に感じてしまいます。

常識的に考えれば、評価が固まっていない現代アートは、気まぐれな富裕層の購買力が落ちると、その相場が暴落する危険を孕んでいます。

それでも、根強い買い漁りに拍車がかかっているのは「コロナ禍で急な資金需要ができた企業などがコレクションを売却し、市場に名品が出回っているから」(東洋経済)。

富裕層に現代アートを理解する審美眼があるとは到底思えませんが、彼らが期待しているのは「前澤のバスキア」に見る高利回りの資産性です。 

これまで、史上最高額で落札された美術品は、ニューヨークのクリスティーズで出品された「サルバトール・ムンディ」(レオナルド・ダ・ビンチ)で、その金額は約4億5000万ドル、510億円。
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こんなのが510億円…。

史上最大のメガファイト(パッキャオvsメイウエザーの興行規模に匹敵するメガ油絵です。カンバスのサイズは縦70㎝弱ですから、小さいメガ油絵です。

この絵も2005年に米国のマイナーなオークションで出品されたときの落札価格は1175ドル、たったの12万円でした。12年後に4億5000万ドル、38万3000倍になった訳ですから、どんなマルチ商法もびっくりのありえない超をいくつ付けても表現できない高金利です。

年3万倍なんて金利、どんな馬鹿でも騙されませんが、これが実際に起きているのが現代アートの世界です。

「サルバートール・ムンディ」にはもちろんカラクリがあって、2005年当時はダビンチではなく弟子の作品とされていたから12万円だったのです。

世界に十数点しかないというダビンチの油絵と認定された、男性版「モナ・リザ」が〝パックメイ〟に化けるのは、ある意味当然の帰結でした。

極論ですが、誰が描こうがその作品の芸術性は変わらないはずです。

作者不詳の「サルバトール・ムンディ」に、聡明な美術界が510億円の値を付け、後から「あれよくよく調べたらダビンチが描いたみたい」というなら、全面的に美術界を尊敬します。

しかし、実態はおぞましいばかりの権威主義です。

「勝ったヤツが強い」のではなく「名前のあるヤツが必ず勝つ」という反吐が出る世界です。

本当に暗愚な世界です。

とはいえ、YouTuberや50過ぎのグレートのexhibitionが持て囃される今のボクシングも「現代アート」の亜種かもしれません。


考えてみると、カネロ・アルバレスも一種の現代アートでしょうなあ。

あ〜あ、なんだかなあ。。。 

なんて書き連ねながらも、画商の知人と話をしてると非常に面白い世界だとは感じています。


それにしても、名前と物語と誇大広告…ボクシング界と美術界は酷似しています。 

でも、美術界にはパッキャオみたいな大番狂わせは起きないのです。