飲み歩けないホテル暮らしも3週間。もはや罰ゲームみたいな感覚です。

会社からは「ルームサービスは24時間、酒も飲める」と送り込まれたものの、それって動物園の動物と一緒なんですよね。

檻の中で飲み食いしたないんじゃ!

感染者数は減っているとはいえ、通勤ラッシュは引き続き変わっていませんから「感染リスクを減らしたい」というのはわかりますが…。

コロナを恨むしかないんでしょう。


気を取り直して、プロボクシングのチャンピオンベルト、タイトルのお話。

現在、ボクシングの世界には主要4団体とリング誌、5つのチャンピオンベルトが存在します。
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リング誌には階級別王者だけでなく、Fighter  Of The Year のベルトもあります。かつてはBest Fighter Poll(年間PFP)ベルトが存在しましたが、経営難からこの企画自体が廃止され、年間PFPなんて存在しないわけですからPFPベルトは贈られていません。

主要4団体はsanctioning bodyと呼ばれる「承認団体」で、リング誌はボクシング雑誌出版を生業とする「メディア」です。

承認団体はタイトルマッチを承認することが生業ですから、そのベルトは全て有料、承認料は対戦する両者の報酬によって決まる〝時価・累進〟制と狂乱と矛盾に溢れています。

トロフィーが有料なんて、場末の市民マラソンでもありえません。 

さらには、承認ビジネスという本性には「タイトルは多ければ多いほど事業が発展する」という絶対普遍の遺伝子が染み付いていますから、同一階級に複数の世界王者を擁立する愚行に突っ走ることすら躊躇しません。

承認団体にとって事業(家業?)の存続・繁栄が「ボクシング界の健全な発展」よりも優先されるのは当然なのです。

一方で、リング誌。チャンピオンを承認している点では承認団体と変わりませんが、チャンピオンベルトや承認の代金は一切かかりません。

その意味で、リング誌は少なくとも直接的には承認「ビジネス」を手掛けていません。

また、アルファベット団体のランキングやタイトルマッチが極めて恣意的にデッチ上げられるのに対して、リング誌のランキングは厳格で、基本的に1位と2位が激突する王者決定戦においては階級最強対決になるケースも珍しくありません。

リング誌がアルファベット団体の王者も含めた公明正大なランキングであるのに対して、アルファベット団体は他団体王者を外し、自らの地域タイトルを獲得した〝承認料支払いの与信実績〟の高い選手を優遇する〝我田引水〟ランキング。

リング誌やESPNのランキングがほぼ一致するのに対して、アルファベット団体のランキングはバラバラ、怪しい選手があちこちで跋扈しているのは当然なのです。
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承認団体はわかりやすく言えば「ベルトメーカー」です。彼らに「ベルトを大量生産するな!」というのは、ビールメーカーに「新商品を出すな!」というのと同じです。マウリシオ・スライマンがいつも嬉しそうに新しいベルトを披露するのは「新商品発表〜」だからです。

そして、リング誌チャンピオンも二つの大きな問題を抱えています。

一つ目は「空位が多すぎること」です。

階級を代表する強豪が居並ぶリング誌ランキングでは基本的に1位と2位で争われる王者決定戦はもちろん、防衛戦も強豪相手になります。

プロモーターやテレビ局が傘下のボクサーを危険に晒したがらない風潮では、強豪同士のマッチメイクに障害は付き物です。

また、安易な階級制覇が蔓延している現状もリング誌王者が空位になりがちな原因となっています。

リング誌タイトルは1月26日現在で17階級中、半分以上の9階級が空位。

タイトルホルダーはジュニアフライの京口紘人やバンタムの井上尚弥、スーパーミドルのカネロ・アルバレスら8階級にとどまります。いくらなんでも空位が多すぎます。

リング誌が試合・興行も管理する統括団体なら、空位の階級で1位と2位の決定戦を義務付けることで新王者が誕生、空位だらけなんてことにはなりません。

しかし、悲しいかな、リング誌は米国ボクシング市場の没落の煽りを食って慢性的な経営難に悩む零細の専門誌に過ぎません。そこまでのパワーは持ち合わせていないのです。
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中野区役所で展示された山中慎介のリング誌ベルト。格好よろしい、美しい、です。

リング誌が抱える二つ目の問題は、この慢性的な経営難です。

買い手の付かない〝権威ある〟リング誌は、2007年にゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)に買収されます。

プロモーターに買われる専門誌ーーどんな御託を並べようが、それがどういうことなのかは誰の目にも明らかです。

オスカー・デラホーヤは「リング誌の編集にGBPが指図することは絶対にない」と声明を出しますが、そんなの当たり前です。

愛読者の1人として、個人的感想ですがランキングはGBP贔屓だとは思いません。

GBPの経営も揺らいでいるここ5年はMMAコーナーを常設、リンダ・ラウジーや井上尚弥を単独カバーに起用するなど新規顧客獲得に必死ですが、全く成果はあがっていません。

理想的な哲学に支えられるリング誌のチャンピオンシップですが、財政面の脆弱さは大きな影を落としています。

米国ボクシング市場が瀕死の状態なのにありえないことですが、リング誌に潤沢な資金があればタイトルマッチに賞金を供出することもできるのですが…。

リング誌タイトルマッチには「ノーベル賞式」に階級一律で王者に100万ドル、挑戦者に50万ドルを用意する。

こんなことが実現したら、日本人以外のボクサーが不遇に嘆く軽量級にも光が当てられ、カネロやパッキャオ、フューリー、ジョシュア以外のボクサーにとっては無視できない金額です。

そして、もしリング誌タイトルにそこまでのステイタス、磁力が発生するなら、今度はカネロやパッキャオも無視できないでしょう。

ただ、そんなことにななりません。

アルファベット団体が一致団結してそんなことは阻止するでしょう。