中谷正義がフェリックス・デルベホを逆転ノックアウトした試合は、様々な意味で典型的に「現代的」なドラマでした。
18番目のブリッジャー級が新設され「4belt−18class 」 時代が幕開けようとしている今、もはや世界タイトルそのものの価値は限りなく透明に希釈されてしまいました。
その一方で、散逸した世界タイトルのピースをコンプリートする作業は、歴史上最も困難な時代を迎えています…そのはずです。
そして、この3年間でテレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクという完全統一王者が生まれました。
薄っぺらい世界王者が量産される時代に、この二人は濃厚に階級最強を証明しました。
しかし、ウェルター級にもかかわらず地味を極めるクロフォードと、WBSS優勝のウシクもまた、完全統一を果たしたがゆえに、現代においてタイトルが大きな意味を持たないことを皮肉にも証明しています。
WBSSは「完全統一王者を決める」という大義名分を掲げ、米国で人気のない階級を狙って羊頭狗肉の賞金を掲げた〝新手のアルファベット承認団体〟でした。
当初ぶち上げた「賞金総額5000万ドル、優勝賞金1000万ドル」は、ついにどの階級でも支払われることなくフェイドアウトしている〝詐欺的蜃気楼〟。それがWBSSの正体です。
もちろん、米国の不人気階級とはいえ、日本では特別なバンタム級で井上尚弥という異才がジャンプしたという意味でWBSSは、日本のファンに素晴らしい機会を与えてくれました(もちろん犯罪的に杜撰な運営は別の話ですが)。
そして、アルファベット団体の恣意によって如何様にも世界タイトルが分配されることを、テオフィモ・ロペスが新たに完全統一王者の仲間入りを果たすことで証明してくれました。
21世紀の完全統一王者は〝人気のない実力者たちの駆け込み寺〟でしたが、そこに駆け込むには高いハードルがいくつもありました。
それでも、人気者ロペスがWBCに「フランチャイズもステイクして欲しい」とリクエストすると、WBCは「フランチャイズが上位タイトル」と二つ返事で了解。WBC王者デビン・ヘイニーは、いきなり「セカンド王者」に落とされてしまうのです。
タイトルの価値が失墜「中谷vsベルデホ」にもWBOインターコンチネンタルという、地域タイトルがステイクされていましたが「日本vsプエルトリコ」で争う地域タイトル…もう悲劇も喜劇も超えてどこまでもシュールです。
中谷の劇的な逆転勝ちに「よっしゃー!WBOインターコンチ王者や!!!」と喜んだファンは、一人でもいるのでしょうか?
どこまでも、シューリアルです。前衛芸術のように、常人の理解を超えているのはWBOインターコンチ王座だけではありません。アルファベット団体の世界タイトル自体が、悪夢の中の虚構です。
中谷の勝利に、日本のボクシングファンが巨大な価値を見出しているのは、①ライト級という人気階級で、②ベルデホという名前のあるスター候補を粉砕した、という2点からです。
「人気階級」は競技人口だけからは推し量ることはできませんが、BoxRecによると、今日12月15日現在の競技人口は以下のとおりです。
ストロー267人、ジュニアフライ469人、フライ776人、ジュニアバンタム853人、バンタム1095人、ジュニアフェザー1372人、フェザー1654人、ジュニアライト1767人、ライト2359人、ジュニアウェルター2259人、ウェルター2380人、ジュニアミドル2067人、ミドル1745人、スーパーミドル1512人、ライトヘビー1269人、クルーザー1293人、ヘビー1449人。
以前、このブログで取り上げた数字から全体的に伸長している原因は、BoxRecの情報収集能力の向上、つまり試合経験のあるボクサーだけでなく、ライセンス発行されたデビュー前のボクサーまで、各地域のコミッションから吸い上げているからです。
この種の数字を見て、多くの人が最初に驚くのは「ミドル級が1番層が厚いと思ってた」です。しかし「ミドルが最も層が厚い」というのは幻想ではありません…そういえば書きかけの話がありました、続きを書くときですね。
競技人口は、それぞれの階級レベルを推し量る指標の一つですが、あくまで「指標の一つ」に過ぎません。
例えば、ヘビー級の競技人口は1449人で、フェザー級の1654人を下回りますが、この数字を持って「階級難易度(レベル)でフェザーが上」と考える馬鹿はどこにもいないでしょう。
階級難易度を正確に測るには「競技人口」「報酬」「専業ボクサーの比率」「注目度(人気選手の存在によっても変動します)」など、いくつものフィルターを濾過しなければ、その実態には迫れません。
「競技人口が多い」ことよりも「報酬が高いこと」の方がレベルを引き上げるのは当然です。その結果として「専業ボクサーの比率」にも差が出ます。
例えば、バンタム級の1095人に対してジュニアミドル(2067人)は約2倍ですが、階級難易度も2倍かというと、それはおそらく違います。ウェルターとミドルに挟まれたジュニアミドルの方がもっと上です。
これは、ライト級2359人と、ウェルター級2380人の競技人口トップ2にも当てはまります。今日の競技人口ではほぼ同じの二つの階級、その攻略難易度も同じと考える人はいません。
「中谷はロペスだけでなくライト級の誰にとっても試練」(今日のリング誌)ですが「エロールやテレンスに試練を与える日本人はいるか?出てくるか?」と問い詰められると、目をそらしちゃいますね。
軽量級の世界ランカーや王者は井上尚弥の対戦相手を見るまでもなく、人気階級と比べると同じスポーツとは思えないほどに報酬は劣悪、本職は引っ越し屋さんや銀行員だったり、あるいはボクシングが本業でも副業を持つケースも珍しくありません。
一方で、井上が憧れる「パッキャオの世界」では、本業が引っ越し屋さんとか、銀行員はまずいないのです。
中谷が粉砕したフェリックス・ベルデホも、おそらく引っ越し屋さんとか銀行員が本業ではありません。
こういう風に書くと、勝手に曲解してひねくれちゃう脳足りんちゃんも湧いてくるでしょうが、コメント欄はいくらでも開放しています。
前置きが長くなりましたが、今夜のお題は「タイトル自体の価値が失墜した今、誰に勝つのが大きなトライアンフか?」です。
実現可能性を無視するなら「日本人がタイソン・フューリーをノックアウトする」が最大の勝利でしょうが、じゃあ誰が?となると一人も思い浮かびません。
18番目のブリッジャー級が新設され「4belt−18class 」 時代が幕開けようとしている今、もはや世界タイトルそのものの価値は限りなく透明に希釈されてしまいました。
その一方で、散逸した世界タイトルのピースをコンプリートする作業は、歴史上最も困難な時代を迎えています…そのはずです。
そして、この3年間でテレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシクという完全統一王者が生まれました。
薄っぺらい世界王者が量産される時代に、この二人は濃厚に階級最強を証明しました。
しかし、ウェルター級にもかかわらず地味を極めるクロフォードと、WBSS優勝のウシクもまた、完全統一を果たしたがゆえに、現代においてタイトルが大きな意味を持たないことを皮肉にも証明しています。
WBSSは「完全統一王者を決める」という大義名分を掲げ、米国で人気のない階級を狙って羊頭狗肉の賞金を掲げた〝新手のアルファベット承認団体〟でした。
当初ぶち上げた「賞金総額5000万ドル、優勝賞金1000万ドル」は、ついにどの階級でも支払われることなくフェイドアウトしている〝詐欺的蜃気楼〟。それがWBSSの正体です。
もちろん、米国の不人気階級とはいえ、日本では特別なバンタム級で井上尚弥という異才がジャンプしたという意味でWBSSは、日本のファンに素晴らしい機会を与えてくれました(もちろん犯罪的に杜撰な運営は別の話ですが)。
そして、アルファベット団体の恣意によって如何様にも世界タイトルが分配されることを、テオフィモ・ロペスが新たに完全統一王者の仲間入りを果たすことで証明してくれました。
21世紀の完全統一王者は〝人気のない実力者たちの駆け込み寺〟でしたが、そこに駆け込むには高いハードルがいくつもありました。
それでも、人気者ロペスがWBCに「フランチャイズもステイクして欲しい」とリクエストすると、WBCは「フランチャイズが上位タイトル」と二つ返事で了解。WBC王者デビン・ヘイニーは、いきなり「セカンド王者」に落とされてしまうのです。
タイトルの価値が失墜「中谷vsベルデホ」にもWBOインターコンチネンタルという、地域タイトルがステイクされていましたが「日本vsプエルトリコ」で争う地域タイトル…もう悲劇も喜劇も超えてどこまでもシュールです。
中谷の劇的な逆転勝ちに「よっしゃー!WBOインターコンチ王者や!!!」と喜んだファンは、一人でもいるのでしょうか?
どこまでも、シューリアルです。前衛芸術のように、常人の理解を超えているのはWBOインターコンチ王座だけではありません。アルファベット団体の世界タイトル自体が、悪夢の中の虚構です。
中谷の勝利に、日本のボクシングファンが巨大な価値を見出しているのは、①ライト級という人気階級で、②ベルデホという名前のあるスター候補を粉砕した、という2点からです。
「人気階級」は競技人口だけからは推し量ることはできませんが、BoxRecによると、今日12月15日現在の競技人口は以下のとおりです。
ストロー267人、ジュニアフライ469人、フライ776人、ジュニアバンタム853人、バンタム1095人、ジュニアフェザー1372人、フェザー1654人、ジュニアライト1767人、ライト2359人、ジュニアウェルター2259人、ウェルター2380人、ジュニアミドル2067人、ミドル1745人、スーパーミドル1512人、ライトヘビー1269人、クルーザー1293人、ヘビー1449人。
以前、このブログで取り上げた数字から全体的に伸長している原因は、BoxRecの情報収集能力の向上、つまり試合経験のあるボクサーだけでなく、ライセンス発行されたデビュー前のボクサーまで、各地域のコミッションから吸い上げているからです。
この種の数字を見て、多くの人が最初に驚くのは「ミドル級が1番層が厚いと思ってた」です。しかし「ミドルが最も層が厚い」というのは幻想ではありません…そういえば書きかけの話がありました、続きを書くときですね。
競技人口は、それぞれの階級レベルを推し量る指標の一つですが、あくまで「指標の一つ」に過ぎません。
例えば、ヘビー級の競技人口は1449人で、フェザー級の1654人を下回りますが、この数字を持って「階級難易度(レベル)でフェザーが上」と考える馬鹿はどこにもいないでしょう。
階級難易度を正確に測るには「競技人口」「報酬」「専業ボクサーの比率」「注目度(人気選手の存在によっても変動します)」など、いくつものフィルターを濾過しなければ、その実態には迫れません。
「競技人口が多い」ことよりも「報酬が高いこと」の方がレベルを引き上げるのは当然です。その結果として「専業ボクサーの比率」にも差が出ます。
例えば、バンタム級の1095人に対してジュニアミドル(2067人)は約2倍ですが、階級難易度も2倍かというと、それはおそらく違います。ウェルターとミドルに挟まれたジュニアミドルの方がもっと上です。
これは、ライト級2359人と、ウェルター級2380人の競技人口トップ2にも当てはまります。今日の競技人口ではほぼ同じの二つの階級、その攻略難易度も同じと考える人はいません。
「中谷はロペスだけでなくライト級の誰にとっても試練」(今日のリング誌)ですが「エロールやテレンスに試練を与える日本人はいるか?出てくるか?」と問い詰められると、目をそらしちゃいますね。
軽量級の世界ランカーや王者は井上尚弥の対戦相手を見るまでもなく、人気階級と比べると同じスポーツとは思えないほどに報酬は劣悪、本職は引っ越し屋さんや銀行員だったり、あるいはボクシングが本業でも副業を持つケースも珍しくありません。
一方で、井上が憧れる「パッキャオの世界」では、本業が引っ越し屋さんとか、銀行員はまずいないのです。
中谷が粉砕したフェリックス・ベルデホも、おそらく引っ越し屋さんとか銀行員が本業ではありません。
こういう風に書くと、勝手に曲解してひねくれちゃう脳足りんちゃんも湧いてくるでしょうが、コメント欄はいくらでも開放しています。
前置きが長くなりましたが、今夜のお題は「タイトル自体の価値が失墜した今、誰に勝つのが大きなトライアンフか?」です。
実現可能性を無視するなら「日本人がタイソン・フューリーをノックアウトする」が最大の勝利でしょうが、じゃあ誰が?となると一人も思い浮かびません。
ある程度はリアルの匂いを残して欲しいですね。
「村田諒太がカネロをKO」「中谷がテオフィモをぶっ倒す」が普通に思い浮かびますが、「ジュニアライトに落としたロマチェンコを圧倒して切り刻んでストップしたシャクールを井上が死闘の末にSD勝利」もいいですね。
それにしても、中谷が初回に痛烈に倒されたときは「最悪のパターン」と、早い結末を覚悟しましたが、ボクシングは頭の固いフシ穴の浅はかな予感を鮮やかにひっくり返してくれるから面白い、感動します。
「村田諒太がカネロをKO」「中谷がテオフィモをぶっ倒す」が普通に思い浮かびますが、「ジュニアライトに落としたロマチェンコを圧倒して切り刻んでストップしたシャクールを井上が死闘の末にSD勝利」もいいですね。
それにしても、中谷が初回に痛烈に倒されたときは「最悪のパターン」と、早い結末を覚悟しましたが、ボクシングは頭の固いフシ穴の浅はかな予感を鮮やかにひっくり返してくれるから面白い、感動します。

コメント
コメント一覧 (7)
フシ穴の眼
が
しました
報酬的には村田がカネロKOでしょうけどね。
フシ穴の眼
が
しました
しかも、アメリカ、ラスベガスでライト級で強豪のベルデボをKO勝ちしたのは大きいですね。
イギリス人のテイラーはロンドンで試合をやってますが、あとアメリカ人、メキシコ人、フィリピン人ですが、アメリカを主戦場としてます。
フシ穴の眼
が
しました
それにしても中谷、改めて見返してもとてつもないタフネスですね。ベルデホのダイアモンドの拳をも跳ね返す中谷の顎を形容するには、鋼鉄では足りない気がします。
フシ穴の眼
が
しました