リング誌 THEN AND NOW: COMPUBOX ANALYZES MIKE TYSON-ROY JONES JR. EXHIBITION から、拙訳と補足です。
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 桜の紅葉もなかなか味わい深いものです。↑
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2003年3月1日、世界中のボクシングメディアが集まった前に、ロイ・ジョーンズJr.が座っていた。

ジョーンズは12ラウンド大差判定でWBA世界ヘビー級王者ジョン・ルイスを下したあとの記者会見。ミドル級の世界王者を経てヘビー級を制したのは、ボブ・フィッツモンズ以来のなんと106年ぶりの出来事だった。

ジョーンズの初防衛戦の相手が誰になるのか?様々な憶測が飛び交っていたが、最初に名前が挙がり、その対戦が熱望されたのがマイク・タイソンだった。

▶︎当時、ジョーンズはPFP1位、歴代でも上位に推すメディアもあるほど、その評価は天井知らずでした。一方で「弱い相手を圧倒するが、強い相手と戦っていない」という指摘も多く〝106年ぶりの快挙〟にしても「階級最弱王者を狙い撃ちにしただけ」「初防衛戦が注目」と冷ややかな目も向けられていました。

当時のタイソンは3年間の服役などでブランクを作り、レノックス・ルイスに予想通りに惨敗するなど化けの皮は剥がれていましたが、まだ36歳の危険なヘビー級ボクサーと見られていました。

タイソン戦は、その実力が報酬に正当に反映されていなかったジョーンズにとって巨額のファイトマネーが保証されるメガファイトになるはずだった。

気の早いラスベガスのオッズメーカーは両者の勢いから2-1で元ミドル級王者有利の数字を立ち上げ、試合を煽った。

しかし、あの記者会見の途中で、ヘビー級挑戦のためにジョーンズが返上したWBCとIBFのライトヘビー級王座に就いていたアントニオ・ターバーが「ジョーンズはライトヘビーですら最強を証明していない」と対戦要求をぶちまけた。

この要求を無視して、タイソン戦を選択することができたジョーンズだったがあまりにも直接的で無礼なターバーの挑発に、ヘビー級の新王者はメディアやファンが望むのとは違う選択をしてしまう。

その意味で、ターバーはボクシングの歴史を変えてしまったと言えるだろう。

ジョーンズはターバー戦に向けて少なくとも18ポンドの減量を強いられ、ライトヘビー級タイトルマッチのリングに上がる。

この試合は大苦戦の末に2-0のマジョリティデジションで、ライトヘビー級王者に返り咲いたが、ジョーンズにとってこの勝利は、長く険しい劣化との戦いの幕開けであった。

一方のタイソンは、ダニー・ウィリアムスとケビン・マクブライトという無名のボクサーに連続KO負け、そのキャリアを閉じた。

あれから17年、二人はついにリングの上で相まみえることになる。

しかし、この試合は彼らのキャリアに記録される公式戦ではなく見世物であること当時実現していたであろう試合とは何もかも様相が違う。

全盛期の彼らは階級こそ違え、圧倒的な強さでリングを支配していた点で、非常によく似ていた。

タイソンは①史上最年少(20歳と150日)で世界ヘビー級のピース(WBC)を獲得、②世界戦は12勝10KO4敗、③リング誌とBWAAの年間最高選手に2度選出(1986年/1988年)、④リング誌の歴代ヘビー級ランキングで14位(1988年)、全階級歴代ランキングで72位(2002年)、⑤2011年に国際ボクシング名誉の殿堂入り(一発殿堂)。

▶︎タイソンの全盛期はまだ高校生、その強さと日本国内メディアの絶対評価に対して、リング誌の14位の理由について「強い相手とは一人も戦っていない」という評価に、日米評価の激しい乖離に少し驚きました。

ジョーンズは①ソウル1988でライトミドル級に出場「史上最悪の判定」に泣いて銀メダル、②アマ戦績は122勝13敗、③プロデビューから17試合連続KO、④世界戦22勝14KO3敗、⑤のべ22人の元・前世界王者と対戦して18勝8KO8敗、⑥リング誌の年間最高選手(2004年)、⑦BWAAの年間最高選手賞は一度も獲得できなかったが、90年代のFIGHTER OF THE DECADE(10年間最高選手賞)には選出。

▶︎BWAAのFIGHTER OF THE DECADEに選出されていたら、常識的には年間最高選手を何度か獲得しているはずですが、これはある意味ありです。「年間でみるとより傑出していたボクサーがいたが、10年間で見るとジョーンズが一番」ということです。

とはいえ〝106年ぶりの快挙〟を「たまたまタイトルを持っていた最弱王者を狙い撃ちしただけ」と評価しないあたりはさすが米国メディアです


Prediction:(勝敗予想)全盛期は格下相手に圧倒的なパフォーマンスを見せながら、強い相手に技術と精神の欠点を暴露された二人。

2018年2月が最終戦のジョーンズは51歳、2005年6月のタイソンは54歳。両者の試合勘には大きな差があるかもしれない。

一方で、この見世物はヘビー級で行われる。もし、この試合が真剣勝負になると、タイソンのTKOを予想する。

ただし、これはexhibition(フロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガーとは違う)。

二人はexhibitionの暗黙のルールを知っているはずだから「フリオ・セサール・チャベスvsホルヘ・アルセ」の3連戦のようなプロレス的な展開になるかもしれない。

そして、それが見るファンにとっても、二人にとっても最もハッピーなやり方だろう。