ファン・ドミンゴ・ロルダン

世界のボクシングファンは、このミドル級のアルゼンティーナの名前を忘れることはありません。

生涯戦績67勝47KO5敗2分。

酒樽のような分厚い胸板と、タフで無骨な戦闘スタイル。そして、リング上での戦いっぷりとは反対の、ハンサムな容姿。

1978年プロデビュー、88年引退。そのキャリアは11年。もう少し長くしぶとくリングで暴れていたと思い込んでしまう、生粋のプライズファイターでした。

しかしながら、当時、南米最強のミドルとはいえ、世界王者には届かず。

本来なら余程のマニアでも、30年前のコンテンダーの名前を記憶に刻むことはなかったでしょう。

本来なら…。

完全統一王者マービン・ハグラーに挑んだ一戦は10ラウンドTKOに散りますが、初回に左フックで史上最強のミドル級王者から生涯唯一のダウンを奪いました。

ハグラーから唯一のダウンを奪った男。そんな、ファイターを誰が忘れますか?!

試合後に、いつも冷静沈着なハグラーが「あれはスリップだ。全く効いていなかった」と激しく抗議する姿に、「あのハグラーが効かされたんだ」と確信、アルゼンチンの〝Hammer〟の威力に戦慄したものでした。

ロルダンはハグラー戦の後、13連勝8KO。アルゼンチンの鋼鉄ハンマーが、再び大旋回します。

そして、トーマス・ハーンズが史上初の4階級制覇を達成した相手もロルダン。

あのロルダンを4ラウンドで仕留めたデトロイトのヒットマンは、シュガー・レイ・レナードとハグラーに喫した二つの敗北を〝贖罪〟することができませんでした。

しかし、4-キングスの大戦が不規則なラウンドロビンソン=総当たりではなく、本当の実力が浮き上がるリーグ戦ならハーンズが〝優勝〟していたかもしれません。

ロルダンも世界タイトルに挑戦したのはハグラーとハーンズという、対戦したことだけで栄光な二人。

1988年11月4日にIBFミドル級王者マイケル・ナンに8ラウンドKO負け、グローブを吊るしました。
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それにしても、ファン・ドミンゴ・ロルダン。彼もまたUndefeated、敗れざる者でした。

しかし、まだ63歳。さよならを言うには早すぎます。

…出先なので、また補足していきますね。