Moon Shot (ムーンショット)

内閣府が今年3月15日〜5月7日までの期間で公募した「ムーンショット型研究開発制度に関する提案・アイデア」など、最近よく耳にする言葉ですが、1961年にケネディ大統領がアポロ計画について語ったのが最初でした。

その意味は「独創的だが実現不可能にしか思えないミッション。達成の暁には社会に巨大なインパクトを与え、その影響は後世に引き継がれる」というものです。
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かれこれ60年も前に生まれた言葉ですが、浅学ボクヲタの私が初めて「ムーンショット」と発音されるのを聞いたのは、フレディ・ローチの口からでした。

2008年3月に世界ジュニアライト級(WBC王者ファン・マヌエル・マルケス戦)、6月にライト級(WBSS王者デビッド・ディアス戦)と3カ月で2階級を制覇したマニー・パッキャオが12月にウェルター級のオスカー・デラホーヤと戦うと、ローチがブチ上げたのです。

当時のデラホーヤはウェルター級王者ではありませんでしたが、前の年にフロイド・メイウェザーと互角の勝負を繰り広げていました。

衰えたとはいえ、まだPFP10傑にも名前が残っている文句なしのウェルター級の強豪でした。

「わずか10カ月で三つの階級のトップ選手を撃破する」。

この偉業が、当時で70年前のヘンリー・アームストロングが成し遂げた「10カ月で三階級制覇」を意識したものであることは明らかでした。

さらに陣営は「アームストロングは生涯で三階級制覇だったが、パッキャオはすでに五階級制覇をしている」(アレックス・アリザ)と、アームストロングを凌ぐ偉業であるとまで豪語します。

現時点の井上尚弥は a champion(数多く存在する王者の中の1人です)です。
WBSSで優勝するとリング誌とIBF、WBAのファースト王者の三つの〝メジャー〟を手に入れることになりますが、他にもWBO、WBC王者が存在する現場ではUndisputed Champion(議論する余地のない王者=完全統一王者)を名乗ることは出来ません。

ドネアを退けた後、残る二つのベルトを吸収してU ndisputed Champion になれば、上位選手の敗北などが条件になりますがPFP1位もないとは言えません。

しかし、ローマン・ゴンザレスがすでに軽量級史上初のPFP1位の足跡が残る山頂は、通過点ではあってもムーンショットを放つ標的ではありません。

井上にとってのムーンショットとは…を考えてみます。