リング誌で毎号連載されるようになったMMAコーナー「ENTER THE OCTAGON」。

私を含めて多くのボクシングファンは微妙な心境で受け止めていましたが、なかなか読み応えがあるんです。さすがリング誌です。

今月号(5月号)はいつもと趣旨が少し違って「MMA'S GREATEST STRUGGLE:THE BATTLE FOR OLYMPIC STATUS AND WORLDWIDE ACCEPTANCE」。

直訳すると「MMAの偉大な戦い:五輪種目への道と国際的な認知」といったところです。
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ボクシングの関係者やファンは、キックボクシングやMMAなど他のプロ格闘技に対してある種の優越感を抱いています。

「プロボクサーと他のプロ格闘家では報酬が違う」「プロボクシングの結果は一般紙で報道されるが、他のプロ格闘技は扱われない。つまりスポーツとして認められていない」…。

米国ではプロのMMAはプロボクシングと同等に見られていますが、日本では事情が違います。

スポーツとしてMMAを見た場合、UFCのチャンピオンになることはボクシングの軽量級でアルファベット団体のタイトルを獲るよりも遥かに難易度が上ですが、 MMAは一般的にはスポーツと認められていません。

昨年末に那須川天心が〝奴隷契約〟で、フロイド・メイウェザーとのエキシビションに飛びついたのは、まさにこの「格差」を見せつけられる象徴的な事件でした。

逆の事態(カネロ・アルバレスが〝奴隷契約〟でキックボクサーとキックボクシングのエキシビションのリングに上がる)は、どう考えてもありえません。 

かつて前田日明は、自ら立ち上げた格闘技団体「リングス」について「将来、五輪種目にしたい」と夢を語ったこともありました(真剣勝負ではないリングスはそもそもスポーツと呼べる代物ではありませんが)。

「五輪種目になる」「一般紙のスポーツ欄で報道される」。

これは、世間的な認知を得ていないスポーツにとっては悲願です。

この悲願を東京2020で達成したのがKARATEです。

現在、68の国と地域が加盟している国際総合格闘技連盟も「空手に続け」とMMAの五輪種目化を目指しています。

WADA(世界アンチドーピング機関)への加盟が拒否されるなど〝国際的な認知〟に向けて前途多難なMMAですが、デンシン・ホワイト代表は「柔道やテコンドー、ボクシング、レスリングと並んで空手は総合格闘技の重要なエッセンスの一つ。空手が五輪種目になったことは、我々にも希望をもたらしてくれた。必要案件を満たせば必ず五輪種目として受け入れられるはずだ」と期待を寄せています。

ドーピング問題はもちろん、プロで当たり前の残酷なシーンを〝国際ルール〟によってどう〝婉曲〟させるかなど問題は山積しています。

そして、2024年五輪で採用されるかどうかは「ロスアンゼルスがパリに勝って開催都市に選ばれる」ことが大きなポイントになると見られています。

もし、MMAが盛んな米国西海岸のロス開催となると、その門戸は大きく開かれるはずです。

一方で、MMAが事実上禁止され、柔道の地位が高いフランス、パリ五輪となると見通しは絶望的。

個人的には、総合格闘技が五輪種目になるのは歓迎ですが…。



柔道は、世界的なスポーツとなることを目指してJUDOとなり、ポイント制・判定による決着はもちろん、カラー道着まで受け入れ〝変質〟ました。

一方で、競技の本質を守るために、五輪種目になることに消極的な剣道のようなスポーツもあります。

そしてボクシングは、この権威の最上段のステージである「五輪種目であること」からの転落危機に直面しています。  

認知されたくて懸命なMMAと、〝権威〟にあぐらをかいてアマもプロも谷底へ転がり落ちているボクシング。

もしかしたらボクシングは一度、落ちるところまで落ちた方がいいのかもしれません。