いよいよあと10日を切ってきました。
WBA世界ミドル級タイトルマッチ。アッサン・エンダムvs村田諒太。
今朝、銀座駅を降りると電飾の柱広告がズラリ。試合までの一週間あまりで、フジテレビだけでなくNHKや、他の東京キー局でも村田の特集番組を放映するというのですから、ボクシングの試合としては異例中の異例です。
今から22年前、竹原慎二が1995年にやはりWBAミドル級に挑戦した時は事前の特集番組はおろか、実際の試合もテレビ東京が深夜に録画放送するというひっそりとしたものでした。不公平感は否めませんが、これが五輪金メダリストと無名の叩き上げとの差なのでしょう。
【銀座駅構内の柱広告が目立ってました。竹原が見たら「ワシの時と何でここまで扱いが違うんかいのぅ!」と怒りそうですが…】
現在の世界ミドル級勢力図を見渡すと、WBAスーパー/WBC/IBFのベルトを巻くゲンナディ・ゴロフキン(GGG)が実力No.1、その対抗馬がリング誌公認王者のカネロ・アルバレス。3番手はGGGの連続KOをストップさせたダニエル・ジェイコブス。トップ3がこの3人ということには、多くのファンも異論はないと思います。
9月16日にGGGの3つのベルトと、カネロのリング誌ベルトを合わせた4本のベルトを、この二人のどちらかが独占することになります。そして、英国の人気者ビリー・ジョー・サンダースも自らのWBOベルトを賭けてこの勝者との対戦を熱望するでしょう。
5番手以降は混戦状態です。トップ戦線で戦う実力のある「元王者」グループにはデビッド・レミューに、アンディ・リー。階級屈指の強打者レミューと、妙な勝負強さを発揮するリーは不気味な存在です。また、このグループにはアッサン・エンダムも控えていることを忘れてはなりません。トップ5には入らないかもしれませんが、エンダムをトップ10に入れない人もいないでしょう。スピード、パワー、テクニックはもちろん、信じられないほどの回復力も持つタフなカメルーン人です。
これからタイトルを狙うグループは充実しています。先月22日に英国の無敗ホープ、トミー・ラングフォードを5ラウンドで葬ったアブタンディル・クルティゼは、7月8日にサンダースのWBO王座に挑戦します。勢いに乗るジョージア人がラングフォードに続き、英国人を敵地で撃破するようなことがあると、ミドル級戦線は一層混沌としてきます。
このクルティゼ、2010年にエンダムに完敗してるんです。7年前とはいえ、エンダムの実力は疑う余地のない本物です。エンダムが敗れたのは2012年にピーター・クイリン、2015年にレミューの2度だけ。当時のクイリンは無敗のWBO王者でGGGにとって最大の脅威と考えられていましたし、レミューとの一戦もGGGへの挑戦者決定戦でした。そして、クイリンに6度、レミューには4度も倒されながらも判定に持ち込んだだけでなく「ダウンがなければ勝っていた」というメディアもいるほどの脅威の粘りを見せたのです。
「エンダムをノックアウトすることは至難の技(というか今まで誰一人それを成し遂げたボクサーはいません)。しかし、倒さないと(ダウンでポイントを稼がないと)勝てない」。誰が戦うにしても、どうにもこうにも厄介な相手です。
【昨年12月12日に強豪アルフォンソ・ブランコを、わずか1ラウンド22秒で失神させたエンダムを世界10傑に数えないメディアはありません。】
勢いといえば、セルゲイ・デレフヤンチェンコ。ウクライナ生まれのニューヨーカーはまだ10戦しか戦っていませんが、ESPN、リング誌ともにミドル級10位と高い評価を得ています。元王者サム・ソリマンを2ラウンド、無敗の快進撃を続けていたケマール・ラッセルを5ラウンドで粉砕、次戦はトレアノ・ジョンソンとGGGのIBFタイトル挑戦権をかけて戦うことが決まっています。村田がエンダムに勝てば13戦目での王座奪取で、ミドル級史上最短記録となりますが、デレフヤンチェンコがジョンソンに勝って、GGG(カネロ?)から番狂わせで王座も奪うと12戦目となり、村田の記録は短命で終わってしまいます。
さらに、イマニュエル・アリームも17戦全勝無敗。WBAとWBCでランキング10位内に突入、世界挑戦の時が迫っています。魑魅魍魎が跋扈するボクシング界でも異彩を放つ怪人プロモーター、アル・ヘイモンがどこでこのカードを切ってくるのか、注目です。また、2世ボクサー、クリス・ユーバンクJr.もゴロフキン戦のキャンセルなどマイナスイメージが先行していますが、スピード、パワーともに備えた実力者です。リーに足元をすくわれたマット・コロボフもパンチ力と技術は一級品。
最後に、村田です。承認料目当ての多くのアルファベット団体は上位にランク、リング誌でもミドル級10位に滑り込んでいますが、ESPNでは10位圏外。当たり前の話ですがメディアのランキングが正常な評価でしょう。わずか12戦のキャリアは、、デレフヤンチェンコの10戦よりは多いとはいえ内容が違い過ぎます。ウクライナ人は過酷な露地栽培を逞しく生き残ってきましたが、村田は負けるわけがない12人を選んでここまで来た過剰なまでの温室育ちです。
リング誌やESPNなど海外メディアは「村田は栄誉ある金メダリストだが、プロでは何一つ試されていない」と切り捨てています。
ただし、経済大国の金メダリストからプロに転向するエリートは、ほとんど例外なく温室で育てられます。最近ではアンソニー・ジョシュアもそうでした。オスカー・デラホーヤは世界王者になってからも叩かれていました。古くはシュガー・レイ・レナードも、ジョージ・フォアマンも。
もちろん、金メダルの温室栽培が全て花を咲かせたわけではありません。米国史上最強と謳われた1984年ロス五輪チームのエースでスーパーヘビー級金メダルを獲得したタイレル・ビッグス、英国の夢だ未来だと嘱望されたシドニー金のオードリー・ハリソンは、温室の中で朽ち果てました。
とはいえ、温室育ちが全て脆弱なわけじゃありません。認めたくない気持ちもありますが、スーパースターの多くは、温室から生まれます。ロベルト・デュランは温室に入ったこともない豪傑、実力ではトップに立ったものの、人気の面では最高のバイプレイヤーが限界でした。数少ない例外はマニー・パッキャオと、J・C・チャベスくらいでしょう。
【ボクシング界のスーパースターで、過保護な温室栽培を経験しない例はまずありません。数少ない例外が、アジアの誇りマニー・パッキャオです。彼の場合は〝逆温室栽培〟とでも呼べるイバラのマッチメイクを突き付けられ、そして自らも選んできました(今はその反動で、晩年になって温室にこもるという異色のキャリアを紡いでいますが)。〜タイム誌の表紙を飾ったボクサーは偉大なアリら数えるほど、この30年間ではパックマンだけです。そして「世界に最も影響を与える100人」に選ばれた現役ボクサーは往年のアリとパッキャオだけ。】
温室育ちは、メディアやファンの風当たりが強いのは当たり前です。これはもう、有名税ですね。結構高くつく税ですが。
それでも。それでも、本物なら、温室を出されてからその実力を煌めかせます。
厳寒の風雪や、荒れ狂う暴風雨の中でこそ大輪の花を咲かせるのです。その花の大きさに、メディアもファンも、気持ち良く、その手の平を返すわけです。
さて。村田諒太は、どっちなのか。
スピード、パワー、テクニック、経験、そして恐るべきタフネス…全てを世界基準で備えたカメルーン人は、これ以上ない最高の試験問題になるでしょう。
満点回答して下さい!…と言いたいところですが、とにかく、何が何でも勝って欲しいですね。勝てば、日本のボクシングファンが今まで見たことがない、日本人が関わることなど絶対に無いと諦めていた、大きな大きな大きな夢が繋がります。
ケッパレ!!!村田!!!!!
WBA世界ミドル級タイトルマッチ。アッサン・エンダムvs村田諒太。
今朝、銀座駅を降りると電飾の柱広告がズラリ。試合までの一週間あまりで、フジテレビだけでなくNHKや、他の東京キー局でも村田の特集番組を放映するというのですから、ボクシングの試合としては異例中の異例です。
今から22年前、竹原慎二が1995年にやはりWBAミドル級に挑戦した時は事前の特集番組はおろか、実際の試合もテレビ東京が深夜に録画放送するというひっそりとしたものでした。不公平感は否めませんが、これが五輪金メダリストと無名の叩き上げとの差なのでしょう。
【銀座駅構内の柱広告が目立ってました。竹原が見たら「ワシの時と何でここまで扱いが違うんかいのぅ!」と怒りそうですが…】
現在の世界ミドル級勢力図を見渡すと、WBAスーパー/WBC/IBFのベルトを巻くゲンナディ・ゴロフキン(GGG)が実力No.1、その対抗馬がリング誌公認王者のカネロ・アルバレス。3番手はGGGの連続KOをストップさせたダニエル・ジェイコブス。トップ3がこの3人ということには、多くのファンも異論はないと思います。
9月16日にGGGの3つのベルトと、カネロのリング誌ベルトを合わせた4本のベルトを、この二人のどちらかが独占することになります。そして、英国の人気者ビリー・ジョー・サンダースも自らのWBOベルトを賭けてこの勝者との対戦を熱望するでしょう。
5番手以降は混戦状態です。トップ戦線で戦う実力のある「元王者」グループにはデビッド・レミューに、アンディ・リー。階級屈指の強打者レミューと、妙な勝負強さを発揮するリーは不気味な存在です。また、このグループにはアッサン・エンダムも控えていることを忘れてはなりません。トップ5には入らないかもしれませんが、エンダムをトップ10に入れない人もいないでしょう。スピード、パワー、テクニックはもちろん、信じられないほどの回復力も持つタフなカメルーン人です。
これからタイトルを狙うグループは充実しています。先月22日に英国の無敗ホープ、トミー・ラングフォードを5ラウンドで葬ったアブタンディル・クルティゼは、7月8日にサンダースのWBO王座に挑戦します。勢いに乗るジョージア人がラングフォードに続き、英国人を敵地で撃破するようなことがあると、ミドル級戦線は一層混沌としてきます。
このクルティゼ、2010年にエンダムに完敗してるんです。7年前とはいえ、エンダムの実力は疑う余地のない本物です。エンダムが敗れたのは2012年にピーター・クイリン、2015年にレミューの2度だけ。当時のクイリンは無敗のWBO王者でGGGにとって最大の脅威と考えられていましたし、レミューとの一戦もGGGへの挑戦者決定戦でした。そして、クイリンに6度、レミューには4度も倒されながらも判定に持ち込んだだけでなく「ダウンがなければ勝っていた」というメディアもいるほどの脅威の粘りを見せたのです。
「エンダムをノックアウトすることは至難の技(というか今まで誰一人それを成し遂げたボクサーはいません)。しかし、倒さないと(ダウンでポイントを稼がないと)勝てない」。誰が戦うにしても、どうにもこうにも厄介な相手です。
【昨年12月12日に強豪アルフォンソ・ブランコを、わずか1ラウンド22秒で失神させたエンダムを世界10傑に数えないメディアはありません。】
勢いといえば、セルゲイ・デレフヤンチェンコ。ウクライナ生まれのニューヨーカーはまだ10戦しか戦っていませんが、ESPN、リング誌ともにミドル級10位と高い評価を得ています。元王者サム・ソリマンを2ラウンド、無敗の快進撃を続けていたケマール・ラッセルを5ラウンドで粉砕、次戦はトレアノ・ジョンソンとGGGのIBFタイトル挑戦権をかけて戦うことが決まっています。村田がエンダムに勝てば13戦目での王座奪取で、ミドル級史上最短記録となりますが、デレフヤンチェンコがジョンソンに勝って、GGG(カネロ?)から番狂わせで王座も奪うと12戦目となり、村田の記録は短命で終わってしまいます。
さらに、イマニュエル・アリームも17戦全勝無敗。WBAとWBCでランキング10位内に突入、世界挑戦の時が迫っています。魑魅魍魎が跋扈するボクシング界でも異彩を放つ怪人プロモーター、アル・ヘイモンがどこでこのカードを切ってくるのか、注目です。また、2世ボクサー、クリス・ユーバンクJr.もゴロフキン戦のキャンセルなどマイナスイメージが先行していますが、スピード、パワーともに備えた実力者です。リーに足元をすくわれたマット・コロボフもパンチ力と技術は一級品。
最後に、村田です。承認料目当ての多くのアルファベット団体は上位にランク、リング誌でもミドル級10位に滑り込んでいますが、ESPNでは10位圏外。当たり前の話ですがメディアのランキングが正常な評価でしょう。わずか12戦のキャリアは、、デレフヤンチェンコの10戦よりは多いとはいえ内容が違い過ぎます。ウクライナ人は過酷な露地栽培を逞しく生き残ってきましたが、村田は負けるわけがない12人を選んでここまで来た過剰なまでの温室育ちです。
リング誌やESPNなど海外メディアは「村田は栄誉ある金メダリストだが、プロでは何一つ試されていない」と切り捨てています。
ただし、経済大国の金メダリストからプロに転向するエリートは、ほとんど例外なく温室で育てられます。最近ではアンソニー・ジョシュアもそうでした。オスカー・デラホーヤは世界王者になってからも叩かれていました。古くはシュガー・レイ・レナードも、ジョージ・フォアマンも。
もちろん、金メダルの温室栽培が全て花を咲かせたわけではありません。米国史上最強と謳われた1984年ロス五輪チームのエースでスーパーヘビー級金メダルを獲得したタイレル・ビッグス、英国の夢だ未来だと嘱望されたシドニー金のオードリー・ハリソンは、温室の中で朽ち果てました。
とはいえ、温室育ちが全て脆弱なわけじゃありません。認めたくない気持ちもありますが、スーパースターの多くは、温室から生まれます。ロベルト・デュランは温室に入ったこともない豪傑、実力ではトップに立ったものの、人気の面では最高のバイプレイヤーが限界でした。数少ない例外はマニー・パッキャオと、J・C・チャベスくらいでしょう。
【ボクシング界のスーパースターで、過保護な温室栽培を経験しない例はまずありません。数少ない例外が、アジアの誇りマニー・パッキャオです。彼の場合は〝逆温室栽培〟とでも呼べるイバラのマッチメイクを突き付けられ、そして自らも選んできました(今はその反動で、晩年になって温室にこもるという異色のキャリアを紡いでいますが)。〜タイム誌の表紙を飾ったボクサーは偉大なアリら数えるほど、この30年間ではパックマンだけです。そして「世界に最も影響を与える100人」に選ばれた現役ボクサーは往年のアリとパッキャオだけ。】
温室育ちは、メディアやファンの風当たりが強いのは当たり前です。これはもう、有名税ですね。結構高くつく税ですが。
それでも。それでも、本物なら、温室を出されてからその実力を煌めかせます。
厳寒の風雪や、荒れ狂う暴風雨の中でこそ大輪の花を咲かせるのです。その花の大きさに、メディアもファンも、気持ち良く、その手の平を返すわけです。
さて。村田諒太は、どっちなのか。
スピード、パワー、テクニック、経験、そして恐るべきタフネス…全てを世界基準で備えたカメルーン人は、これ以上ない最高の試験問題になるでしょう。
満点回答して下さい!…と言いたいところですが、とにかく、何が何でも勝って欲しいですね。勝てば、日本のボクシングファンが今まで見たことがない、日本人が関わることなど絶対に無いと諦めていた、大きな大きな大きな夢が繋がります。
ケッパレ!!!村田!!!!!