Breez is Nice!

いよいよあと10日を切ってきました。

WBA世界ミドル級タイトルマッチ。アッサン・エンダムvs村田諒太。

今朝、銀座駅を降りると電飾の柱広告がズラリ。試合までの一週間あまりで、フジテレビだけでなくNHKや、他の東京キー局でも村田の特集番組を放映するというのですから、ボクシングの試合としては異例中の異例です。

今から22年前、竹原慎二が1995年にやはりWBAミドル級に挑戦した時は事前の特集番組はおろか、実際の試合もテレビ東京が深夜に録画放送するというひっそりとしたものでした。不公平感は否めませんが、これが五輪金メダリストと無名の叩き上げとの差なのでしょう。


【銀座駅構内の柱広告が目立ってました。竹原が見たら「ワシの時と何でここまで扱いが違うんかいのぅ!」と怒りそうですが…】

現在の世界ミドル級勢力図を見渡すと、WBAスーパー/WBC/IBFのベルトを巻くゲンナディ・ゴロフキン(GGG)が実力No.1、その対抗馬がリング誌公認王者のカネロ・アルバレス。3番手はGGGの連続KOをストップさせたダニエル・ジェイコブス。トップ3がこの3人ということには、多くのファンも異論はないと思います。

9月16日にGGGの3つのベルトと、カネロのリング誌ベルトを合わせた4本のベルトを、この二人のどちらかが独占することになります。そして、英国の人気者ビリー・ジョー・サンダースも自らのWBOベルトを賭けてこの勝者との対戦を熱望するでしょう。

5番手以降は混戦状態です。トップ戦線で戦う実力のある「元王者」グループにはデビッド・レミューに、アンディ・リー。階級屈指の強打者レミューと、妙な勝負強さを発揮するリーは不気味な存在です。また、このグループにはアッサン・エンダムも控えていることを忘れてはなりません。トップ5には入らないかもしれませんが、エンダムをトップ10に入れない人もいないでしょう。スピード、パワー、テクニックはもちろん、信じられないほどの回復力も持つタフなカメルーン人です。

これからタイトルを狙うグループは充実しています。先月22日に英国の無敗ホープ、トミー・ラングフォードを5ラウンドで葬ったアブタンディル・クルティゼは、7月8日にサンダースのWBO王座に挑戦します。勢いに乗るジョージア人がラングフォードに続き、英国人を敵地で撃破するようなことがあると、ミドル級戦線は一層混沌としてきます。

このクルティゼ、2010年にエンダムに完敗してるんです。7年前とはいえ、エンダムの実力は疑う余地のない本物です。エンダムが敗れたのは2012年にピーター・クイリン、2015年にレミューの2度だけ。当時のクイリンは無敗のWBO王者でGGGにとって最大の脅威と考えられていましたし、レミューとの一戦もGGGへの挑戦者決定戦でした。そして、クイリンに6度、レミューには4度も倒されながらも判定に持ち込んだだけでなく「ダウンがなければ勝っていた」というメディアもいるほどの脅威の粘りを見せたのです。

「エンダムをノックアウトすることは至難の技(というか今まで誰一人それを成し遂げたボクサーはいません)。しかし、倒さないと(ダウンでポイントを稼がないと)勝てない」。誰が戦うにしても、どうにもこうにも厄介な相手です。


【昨年12月12日に強豪アルフォンソ・ブランコを、わずか1ラウンド22秒で失神させたエンダムを世界10傑に数えないメディアはありません。】

勢いといえば、セルゲイ・デレフヤンチェンコ。ウクライナ生まれのニューヨーカーはまだ10戦しか戦っていませんが、ESPN、リング誌ともにミドル級10位と高い評価を得ています。元王者サム・ソリマンを2ラウンド、無敗の快進撃を続けていたケマール・ラッセルを5ラウンドで粉砕、次戦はトレアノ・ジョンソンとGGGのIBFタイトル挑戦権をかけて戦うことが決まっています。村田がエンダムに勝てば13戦目での王座奪取で、ミドル級史上最短記録となりますが、デレフヤンチェンコがジョンソンに勝って、GGG(カネロ?)から番狂わせで王座も奪うと12戦目となり、村田の記録は短命で終わってしまいます。

さらに、イマニュエル・アリームも17戦全勝無敗。WBAとWBCでランキング10位内に突入、世界挑戦の時が迫っています。魑魅魍魎が跋扈するボクシング界でも異彩を放つ怪人プロモーター、アル・ヘイモンがどこでこのカードを切ってくるのか、注目です。また、2世ボクサー、クリス・ユーバンクJr.もゴロフキン戦のキャンセルなどマイナスイメージが先行していますが、スピード、パワーともに備えた実力者です。リーに足元をすくわれたマット・コロボフもパンチ力と技術は一級品。

最後に、村田です。承認料目当ての多くのアルファベット団体は上位にランク、リング誌でもミドル級10位に滑り込んでいますが、ESPNでは10位圏外。当たり前の話ですがメディアのランキングが正常な評価でしょう。わずか12戦のキャリアは、、デレフヤンチェンコの10戦よりは多いとはいえ内容が違い過ぎます。ウクライナ人は過酷な露地栽培を逞しく生き残ってきましたが、村田は負けるわけがない12人を選んでここまで来た過剰なまでの温室育ちです。

リング誌やESPNなど海外メディアは「村田は栄誉ある金メダリストだが、プロでは何一つ試されていない」と切り捨てています。

ただし、経済大国の金メダリストからプロに転向するエリートは、ほとんど例外なく温室で育てられます。最近ではアンソニー・ジョシュアもそうでした。オスカー・デラホーヤは世界王者になってからも叩かれていました。古くはシュガー・レイ・レナードも、ジョージ・フォアマンも。

もちろん、金メダルの温室栽培が全て花を咲かせたわけではありません。米国史上最強と謳われた1984年ロス五輪チームのエースでスーパーヘビー級金メダルを獲得したタイレル・ビッグス、英国の夢だ未来だと嘱望されたシドニー金のオードリー・ハリソンは、温室の中で朽ち果てました。

とはいえ、温室育ちが全て脆弱なわけじゃありません。認めたくない気持ちもありますが、スーパースターの多くは、温室から生まれます。ロベルト・デュランは温室に入ったこともない豪傑、実力ではトップに立ったものの、人気の面では最高のバイプレイヤーが限界でした。数少ない例外はマニー・パッキャオと、J・C・チャベスくらいでしょう。

【ボクシング界のスーパースターで、過保護な温室栽培を経験しない例はまずありません。数少ない例外が、アジアの誇りマニー・パッキャオです。彼の場合は〝逆温室栽培〟とでも呼べるイバラのマッチメイクを突き付けられ、そして自らも選んできました(今はその反動で、晩年になって温室にこもるという異色のキャリアを紡いでいますが)。〜タイム誌の表紙を飾ったボクサーは偉大なアリら数えるほど、この30年間ではパックマンだけです。そして「世界に最も影響を与える100人」に選ばれた現役ボクサーは往年のアリとパッキャオだけ。】

温室育ちは、メディアやファンの風当たりが強いのは当たり前です。これはもう、有名税ですね。結構高くつく税ですが。

それでも。それでも、本物なら、温室を出されてからその実力を煌めかせます。

厳寒の風雪や、荒れ狂う暴風雨の中でこそ大輪の花を咲かせるのです。その花の大きさに、メディアもファンも、気持ち良く、その手の平を返すわけです。

さて。村田諒太は、どっちなのか。

スピード、パワー、テクニック、経験、そして恐るべきタフネス…全てを世界基準で備えたカメルーン人は、これ以上ない最高の試験問題になるでしょう。

満点回答して下さい!…と言いたいところですが、とにかく、何が何でも勝って欲しいですね。勝てば、日本のボクシングファンが今まで見たことがない、日本人が関わることなど絶対に無いと諦めていた、大きな大きな大きな夢が繋がります。

ケッパレ!!!村田!!!!!

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いやー、期待はずれでした。

「ハンドスピード、フットワーク、いずれも大きく劣るジュニアが離れて戦える時間は長くはない」とは予想していましたが、まさかスタートから最終ゴングまで一度もそれが出来ないなんて。

この一週間、固形物は一切口にできずに、ジュースやヨーグルトで凌いできたというチャベスJr.の動きは、最初から衰弱しきっているように見えました。計量後は「185ポンドまで戻す」と話していたジュニアですが、体調不良でそこまで戻せなかったのではないでしょうか。一方のカネロは、減量はしたでしょうが、過去最高の力強さでした。

ジュニアが「距離をとって戦う作戦だったが、彼のパンチが強すぎた。私は体に力が入らなかった」と、まさかのパワー負けを認めています。カネロは逆に、〝元〟ライバルのパンチ力はもちろん、体の力でも自分の方が上だとかなり早い段階で確信できたでしょう。

スピードと技術でカネロ、ジュニアが上回るのは体格とパワー。その予想は根底から崩れます。唯一上回る体格でも、頑健な筋肉で武装したカネロに対して、ジュニアはひ弱なノッポにしか見えませんでした。

1ラウンド終了、最初のインタバルでは、二人ともコーナーで座らず立ちっ放し。これから、メキシカン同士の意地のぶつかり合いが展開されると期待しましたが、2ラウンド目のインタバルでジュニアが早速ストゥール(椅子)を要求、深々と腰を降ろしてしまいます。一方のカネロは、最終ラウンドまで一度も座らずにコーナーを飛び出しました。

誰がどう見ても120−108という一方的な試合で、無策のジュニアが攻め込まれるラウンドを重ねました。それでも、一度も大きくグラつかなかったのはさすがですが、期待を大きく裏切る内容になってしまいました。

ジュニアは捨て身でも見せ場を作りたかったでしょうが、スピード、技術、パワー、全てで圧倒されては何も出来ません。「ナチョ・ベリスタインはロープに詰めてパンチを集めろと指示したが、カネロは私を誘っていたからその通りにしたらカウンターの餌食になるだけだ。ナチョの作戦は機能しなかった」とコーナーを批判するようなコメントも残しています。

ブーイングの中で試合終了のゴングが鳴らされた拍子抜けのメキシカン対決でしたが、クライマックスは試合後でしたね。カネロの呼びかけで、ゴロフキンが花道を通ってリングイン。9月16日、焦らしに焦らされたGGG対カネロが実現する、と発表されました。

【「SEE YOU SEPTEMBER!」GGGもカネロとの対決を今度こそは確信している様子です。】

ケル・ブルック戦から劣化が指摘されてきたGGGが、キャリア最強のダニエル・ジェイコブス戦でも課題をはっきりと露呈。カネロ陣営が待ち構えていた衰えの兆候をGGGが見せた今、GBPにとって「機は熟した」ということでしょう。最新のオッズはGGG勝利が約1.6倍、カネロが2.5倍と、かつての5−1レベルから急接近中、この数字は9月に向けてさらに拮抗するかもしれません。

今日の試合で「勝者も9月のリングに上がる準備が出来ない」ことが心配でしたが、それも全く無いですね。

現在のミドル級のトップ二人が9月に激突、どちらが階級最強なのか決着がつくわけです。試合内容によっては、ダイレクトリマッチもあるでしょうが、階級最強の座に就いた勝者が、ミドル級タイトルの他のピースを集めようとすることは必然です。9月に村田がWBAタイトルを保持していれば、当然そのターゲットになります。

【まやかしじゃない本当の「ラスベガスのビッグファイトでメイン」へ、村田の夢が膨らみます。】

あと13日後に有明で不撓不屈のカメルーン人を倒せば、9月16日のリングサイド席に村田諒太が座っているはずです。来年の早い段階でカネロかGGGと、村田がベガスで戦うなんてことも、アッサン・エンダムに勝った時点で十分に起こりうるマッチメイクです。

9月16日の試合後のリング上で勝者がリングサイドに向かって叫ぶわけです。「リングに上がって来い!村田!次はお前だ!」と。それがGGGの英語なのか、カネロのスペイン語なのか。

日本人初の正真正銘のラスベガスのビッグファイトへ!

とにかく、もう、何が何でも勝たねばなりません!

がまだせーーッ!!村田!!!

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「自堕落なチャベスJr.が5年間も落とせていないウェイトを作れるわけがない」
「1ポンド100万ドルの罰金を支払って意図的に体重オーバーする」

チャベスJr.が、悪意のある大方の予想を裏切って、計量をクリア。私も彼が164.5ポンドまで落とせるとは思いませんでした。

この試合が持つ意味、この試合にクリーンに勝つことの意味がいかに大きなものか、ボクシング界最悪の愚息でもしっかり理解していたということでしょう。何はともあれ、素晴らしいと思います。ジュニア、見直しました。


【カネロ、ジュニアともに、契約体重に0.5ポンド余裕を持って164ポンドで計量をクリア!】

前日の記者会見も穏やかなムードに終始。両者とも、遺恨も意地も嫉妬も全部胸の奥にしまって、すべてをリングの上でぶちまけるということでしょう。

無様な試合を重ねるだけでなく、度重なる自堕落な体重管理、薬物中毒、飲酒運転…転落するキャリアを立て直すにはあまりにも重い荷物を自ら背負いこんでしまったジュニアにとって、カネロ戦は千載一遇のチャンス。ボクサーとしての生命は瀕死の状態、このどん底から抜け出すには気の遠くなるような時間が必要なはずでした。深い泥沼に沈んだボクシング人生をたった1試合でひっくり返すことが出来るとしたら、カネロとの決戦以外にはありえませんでした。

一方のカネロ。ジュニアと争っていたメキシコNo.1のスターの座はすでにカネロが手にしています。カネロにとって、今更ジュニアと戦うことに大きな意味はありません。

もしかしたら、ジュニアはカネロに心の底から感謝しているのかもしれません。カネロも長い遺恨だけでなく、メキシコのスターとして同じ時代を生きて来たジュニアに奇妙な友情を感じていたのかもしれません。

オッズは5.5倍でカネロ有利。メディアの予想も一方的に偏っています。「偉大な父親から何も引き継がれていない」と批判されるジュニアですが、その頑丈なアゴだけは間違いなく偉大な血を受け継いでいます。肉体的にも、そして今回ばかりは精神的にもジュニアが簡単に倒れたり、試合を投げ出すことはないでしょう。

【予想】ジュニアは体格的にも相性的にもインファイトを避けて、距離を置いて戦う腹積りです。逆に、カネロは距離を潰して、ボディ攻撃から、アッパーを狙ってくるでしょう。ハンドスピード、フットワーク、いずれも大きく劣るジュニアが、離れて戦える時間は長くはないでしょうから、ダメージが蓄積してくる中盤以降は一発狙いのボクシングを選択せざるをえなくなります。セルヒオ・マルチネスに一泡吹かせた12ラウンドを、もう少し早い回で再現したいところですが、慎重なカネロにクリーンヒットは出来ません。ジュニアが一方的に打ち込まれた10ラウンド前後でストップ。

それまでは、意地と意地が正面衝突するすごいファイトが展開されるますように!

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いやあ、WBCは期待を裏切りません。日本時間の日曜日に迫ったカネロ対チャベスJr.の勝者に「特別ベルト」を贈呈するというのです。

通常のベルトが40〜50万円ですが、今回は中身はともかく、興行規模だけなら間違いなくメガファイト、ダイアモンドベルトと同じ約500万円くらいで売りつけるつもりでしょうか。

メキシコの高級なお土産でも有名なウイチョール族のカラフルなビーズをふんだんに使ったメキシコ風情溢れる、シンコデマヨ(メキシコ独立祭)仕様の美しいベルトですが、カネロは「WBCとは一切関わりたくない」と勝ってもそんなベルトは要らない(買わない)と表明しました。


【色鮮やかなビーズをちりばめた非常に美しいベルトなのですが…】
「私がミゲール・コットから血と汗を引き換えに命がけで勝ち取った(WBC世界ミドル級の)ベルトを返上したのは、WBCが勝手な期限を設けてゴロフキンとの試合を強要しようとしたから。いきなり目の前にタイマーを突きつけるような行為が許せなかったんだ。しかも、そのベルトを汗一滴も流していないゲンナディ・ゴロフキンに渡したのもWBCだ。ベルトは戦って勝ち取るものなのに、WBCは試合どころか、キャンプもしていない男に贈ったんだ。そんな団体は誰も信じることはできない」。

ロスアンゼルスタイムズ紙に激白するカネロの怒りは収まりません。

ジュニアがWBCの寵愛を一身に受けて来たことに対する嫉妬、怨念も、その背景に感じられます。WBCミドル級王者時代のジュニアは「意図的に見えるエルボーやヘッドバットを主審が黙認」「試合前後のドーピング検査が行われなかった」(2度目の防衛戦:対アントニオ・マルコ・ルビオ)、「リングのサイズが規定の下限よりも小さかった」「前日計量から20ポンド増の180ポンドでリングイン(前日計量の秤は正しかったのか?)」「試合前後の薬物検査無し」(3度目の防衛戦:対アンディ・リー)など、各州のコミッションも抱き込んだ不正疑惑(今風に言うなら伝説の息子にWBCやコミッションが〝忖度〟した?)が囁かれています。

カネロはPFP10傑にも名前を連ねるハイレベルなボクサーですが、この試合には普段より10ポンド近い164.5ポンドに膨張してリングに上がります。凡庸なファイターに堕落した(元々が凡庸なファイター?)ジュニアも164.5ポンド以下で秤から降りたのは2012年のセルヒオ・マルチネス戦まで遡りますから、もう5年も経ちます。

両者ともベストウェイトとは大きくかけ離れた体重で戦うのですから、これほど不条理で奇天烈な試合は滅多にありません。「お金を儲けることが最優先」という興行側と、「面白ければ何でもいい」というファンの思惑が一致したメガファイトは、大いに結構なのですが、この試合を行うことでミドル級トップ戦線のシナリオが崩される心配があります。

ゴロフキンをマネジメントするK2プロモーションのトム・ラフラーは「カリフォルニアに自宅を構えるゴロフキンだが、土曜日に観戦に行く予定は今の所ない。予定にあるのは9月に試合を行うということだけだ。もしジュニアが大番狂わせを起こせば?我々はビッグファイトを望んでいる。もしジュニアが勝って、彼が現実にゴロフキンとの対戦に合意するなら可能性はある」とジュニア戦も視野に入れていますが、この試合に勝ってもジュニアがミドル級の世界ランクに入る道理は無く、もしゴロフキン対ジュニアが実現してもノンタイトル戦になりますね。

もちろん、非常識こそが常識のWBCを筆頭にアルファベット団体は、何の根拠が無くてもジュニアをランキングに入れるのは疑いようがありませんが。

約5倍のオッズ通りにカネロが勝っても、ジュニアが大番狂わせを起こしても、その勝者が9月にゴロフキン戦を行うと期待するのは早計です。すでに下交渉が進んでいるカネロの場合は、万一敗退してもゴロフキンと戦う可能性があるとも言われていますが、負けたらありえないでしょう。

【ゴロフキン対カネロ、待望の一戦は9月に見られる?】
まず、このいびつな体重で行われる遺恨対決の敗者が精神的にはもちろん、肉体的にも深刻なダメージを負うのは必定です。ゴロフキンと対峙するのに4ヶ月という時間は短すぎます。さらに勝者も4ヶ月後にミドル級最強王者と拳を交えるのに十分なほどフレッシュな状態でリングを降りることができるとは考えられません。そうなると、勝者が9月にゴロフキンと戦うというのも現実的ではありません。ましてや、カネロが負けた場合、商品価値の回復を図るために、再戦条項を使ってジュニアとのリマッチを模索するはずです。これなら「時計の針を進めれば進めるほど有利になる」ゴロフキン戦を先延ばしにする大義名分にもなります。

この異様なメガファイトで一番割りを食うのは、ゴロフキンかもしれません。今回の試合がどうなるか、何がベストかは立場によって変わるでしょうが、プライムタイムの砂時計の砂が全部落ちてしまう前にビッグファイトのリングに上がりたいカザフスタン人にとっては、カネロが早いラウンドでジュニアをノックアウト、無傷でリングを降りることでしょう。

エキサイティングな試合を常に期待するファンも、今回に限ってはカネロがあっさりKO勝ちしてくれることを望んでいる人が多いのではないでしょうか。

【カネロが勝つと、この美しいベルトは誰の腰に巻かれることなく寂しくリングを後にするのでしょうか。】

今月は20日に村田諒太の大一番も控えています。ハッサン・エンダム対村田の試合で、明白にわかっていることは「エンダムが正真正銘の実力を持った世界ランカー」ということだけで、その他はすべてがベールに包まれているといっても過言ではありません。ミドル級という世界注目の階級で世界戦が行われるというのに、どこのブッカーも正式のオッズを公表できない背景には不透明な部分が多過ぎるからです。特に、①村田の実力、②日本が全力でバックアップしている試合の判定がどう転ぶのか、この二点への不信感がブッカーを戸惑わせています。

もしこの試合が有明でなく、エンダムの地元パリやラスベガスで開催されたなら、普通にエンダム有利でしょう。しかし、電通とフジテレビが全力を挙げてこのタイトルマッチを日本に引っ張り込みました。日本開催にこだわらないなら、頓挫したビリー・ジョー・サンダース戦を含めてもっと簡単に成立していたでしょう。これまで大金かけて大切に育ててきた村田が、不運な判定に泣くことだけはしたくないとの一心です。

これはフライ級やバンタム級ではありません。この試合に勝って、人気スターとの対戦となるともはや日本開催なんて寝言は言ってられません。これは、日本が村田に贈る最後のプレゼントになるでしょう。

ビッグイフですが、カネロ対ジュニアの勝者がどちらであれ、双方にダメージが残って9月のゴロフキン戦が難しいとなった時、20日の試合で村田があのエンダムを序盤で一方的に粉砕したら?

カネロ対ジュニアは日本時間で日曜日の真昼の決闘、この試合の内容は村田にも小さくない意味を持ちます。日本人が史上初めて、ビッグファイトのメインを張る可能性が一気に膨らむのです。

2017年9月16日(土)ニューヨーク・マジソンスクエアガーデン
(やりようによっては東京ドームにも引っ張れる?):世界ミドル級王座統一戦
WBAスーパー/WBC/IBF王者=ゲンナディ・ゴロフキンvsWBA王者=村田諒太
…オファーがあっても「時期尚早」ということで断るでしょうねぇ。

2018年5月5日(土)ラスベガス・T-モバイルアリーナ
:世界ミドル級統一/リング誌ミドル級王座
WBA/WBC/IBF王者=村田諒太vsリング誌世界ミドル級王者=カネロ・アルバレス
…カネロの環境がどうなるかですが、あっても不思議じゃないです。その場合、T-モバイルのスタンドはカネロを熱狂的に応援するファンで埋め尽くされて、村田は超ヒールでしょうね。村田がエンダムを豪快に沈める映像がオーロラビジョンに映し出されると耳をつんざくブーングの嵐。

カメルーン人に勝てば、こんな夢も実現しえないとは言えませぬぞ!

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Aサイドの選手がパワハラ的にBサイドに要求するキャッチウェイトは、言い訳のできない〝悪〟です。

しかし、プロボクシングを見世物、興行として見るなら、TV視聴率が上がる、チケットが売れるマッチメイクを追求するのは自然の流れです。世界一を決めるまともなシステムすら持たないプロボクシングを純粋なスポーツと考えている人はいないでしょうから、キャッチウェイトごときでゴタゴタ言う方が野暮なのかもしれません。

カネロやチャベスJr.を「過保護に作られたスター」と揶揄しても、「明らかに階級の違う選手を無理やり戦わせるナンセンスな試合」と糾弾しても、それでも今年一番の興行になってしまうわけです。そして、週末の日曜日、私も仕事先の移動中にタブレットに見入ってしまうことになります。


【ミドル級の世界戦を155ポンドで行う「カネロ級」も興行優先のプロボクシングの世界では必要悪?】

考えてみれば、フルマラソン世界記録保持者のデメス・キメットとウサイン・ボルトを600mで対決させるようなものです。実現することのない、その必要もない、全く意味がないレースですが、正直、見てみたい気もします。400mまで圧倒的に先行するボルトがそこから失速、キメットとの差がどんどん詰まる、しかし、残りの距離が微妙…。美しく800mを走り切る専門選手のレースの方が遥かにハイレベルなことはよくわかっているのですが…、下世話な見世物以外の何物でもありませんが、野次馬根性が刺激されますね、見たいです。

興行の名の下には、キャッチウェイトは必要悪とも言えます。これがなければ最近だと、マニー・パッキャオの〝空前絶後〟の8階級制覇はおそらく無かったでしょうし、カネロが155ポンドで〝ミドル級〟王者になって防衛までしちゃうなんて滑稽なこともありえませんでした。

それでも、今回のカネロ対ジュニアはタイトルも賭けられていませんから、罪は軽い方です。164.5ポンドじゃ賭けようがないからですが、レナードだったらWBCに掛け合ってミドル級とスーパーミドル級の二階級を賭けた双子のダイアモンドベルトを作らせていたかもしれませんね。

宿命のライバルと早くからその対決が渇望されていたカネロとジュニア。しかし、若くから注目されていたがゆえに、歳月の経過とともに二人の階級の隔たりは広がり、激突の日は永遠に訪れないと諦められていました。そんな試合が実現しちゃうんです。

キメットとボルトを対決させようなんて発想は、国際陸上競技連盟や国際オリンピック委員会が統括していてはありえません。魑魅魍魎が跋扈する、何でもありのボクシング界だから、こんな荒唐無稽なマッチメイクも簡単に実現しちゃったのです。

先週のジョシュア対クリチコは、スポーツとしても純粋に楽しめるアスリートの激突でした。

しかし今週は、深く考えないで、因縁の対決をとにかく楽しむショウです。メキシカンのスター同士の激突は、ただでさえ盛り上がりますが、今回は過保護な温室栽培のスーパースターが拳を交えるわけですから、燻り続けた遺恨、ねじ曲がった嫉妬、醜悪な怨念は想像を絶するものがあります。

そもそも、ジュニアがまともに計量をパスできるのか。巷間囁かれている、意図的なオーバーウェイトはあるのか。計量後のフェイスオフ(睨み合い)は乱闘に発展するのか。

デラホーヤと父チャベスは、3度目の殴り合いを今回はグローブをはめずに、スーツ姿で見せてくれるのか。

実際の試合もダーティファイトに陥る可能性が十二分にありますね。泥試合の発端はカネロの度重なるローブローか、ジュニアの過剰なプッシングか。

ジュニアが負けたら、「誰に負けても構わないがカネロに負けることだけは絶対に許されない」と震える声で語っていた父チャベスは気が狂うのではないでしょうか。一方、カネロが負けたら、経営難が噂されるGBPの虎の子を失い、血の気が引いて真っ青になったデラホーヤが拝めるでしょう。

全部、ひっくるめて楽しみましょう!いやー、日曜日の昼時が楽しみになってきました!

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