フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 軽量級のメガファイト

日本時間10月31日、ネバダ州ラスベガスはMGMグランド・カンファレンスセンターに特設された完全防疫のThe Bubble でゴングが打ち鳴らされる、井上尚弥vsジェイソン・マロニー

井上が保持するバンタム級のリング誌とIBF、WBAのストラップが賭けられた団体統一戦です。

試合まであと40日と迫った現在でも、残念ながらどのカジノ、どのブッカーもオッズを立ち上げていない欧米では完全無視された世界戦ですが、日本のボクシングファンは違います。

一年近く待たされたエースの試合、バンタム級完全統一に向けて絶対に躓くことは許されません。
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オッズは出てい無いとはいえ、ノニト・ドネア戦で露呈した防御面での欠陥から一方的な賭け率にはなら無いでしょう。

参考までに、対戦が消滅した井上vsジョンリール・カシメロのオッズはウィリアム・ヒルで井上1/6(1.17倍)、カシメロ7/2(4.5倍)。

ドネア戦では井上1/10(1.1倍)、ドネア11/2(6.5倍)でしたから「カシメロはドネアよりも強い」「ドネア戦で井上の評価に疑問符」、その両方が掛け率に現れました。

ちなみにテテ戦でのカシメロは12/5(3.4倍) テテが4/11(1.36倍)。

井上はPFPではランクアップしたものの、この流れを含むとマロニー戦はかなり接近したオッズになる模様です。そして、戦前予想もドネア戦のように一方的ではないでしょう。

さて、このモンロー。オージーらしいタフネスを、河野公平とエマヌエル・ロドリゲスとの戦いで証明しました。世界レベルの相手とは、井上が圧倒したこの二人とだけで、それを考えると苦戦する相手とは思えません。

しかし、直近7月25日のレオナルド・バエス戦を見ると、かなり進化してるようにも見えます。

身長・リーチともに10㎝上回るバエスはフェザー級を主戦場に戦いながら、北米ジュニアフェザー級のタイトリスト。

マロニーがスピードとテクニックでバエスをコントロール、棄権に追い込んだ試合は結果と7回までのスコアカードから受ける楽勝ではありませんでした。

しかし、出入りの速さに旺盛なスタミナで大きな相手を追い込んでいくスタイルは、井上が言うように「一番面倒くさいタイプ」です。

テレビ画面からは21勝18KO(1敗)という、軽量級離れしたパワーは感じることはできませんが、バエスが「とにかくパンチが強かった」とコメントしたのが意外でした。

井上のパンチも受けている河野が「キャリア最強」とマロニーの強打を高く評価しているのも気になります。

見た目では一発のパンチはないように見えますが、受け手からすると「これはヤバい」と引き気味になることでまともな被弾を防いでいるうちに徐々に削られていく…そんな過小評価される種類のパンチャーかもしれません。

いずれにしても、ラフではあっても重いバエスをコントロールして最後はギブアップさせたことから、井上の最大のアドバンテージである「リバウンド」は大きな効果をあげられないかもしれません。

そして、最近のトレーニング風景で井上の表情を見ても右目が元通りになったかどうかは疑問です。

「ドネア戦は期待されていたパフォーマンスが見せれなかった。マロニー相手ではグズグズした試合はできない」という意気込みが、裏目に出なければいいのですが…。
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やっと本題に入ります。

長谷川穂積と西岡利晃、そして井上尚弥。井上の場合は現在進行形ですが、キャリアを終えた二人との比較ということでここまでの19試合だけを切り取っての評価となります。

①3人の中で日本ボクシング界の命題「ファイティング原田超え」を果たしたボクサーはいるのか?

②そして、この3人のレガシーに順位をつけるとどうなるのか?
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まず「①ファイティング原田超え」は、もちろんリング内だけに限定します。日本列島を揺るがした人気の沸騰度で比較してしまうと、現代のボクサーは原田に指一本触れることさえできません。

ボクシングマガジンの独自調査(2020年7月号)によると、人気を測る主要な尺度の一つ、テレビ視聴率においてかつてのべ68人の世界王者が30%ラインを突破しました。

しかし、この3人は全くお呼びじゃありません。

対する原田はトップ10に5回も名前を刻んでいます。最高は63.7%(エデル・ジョフレ第2戦)。もはや、長谷川らと比較する対象ではありません。

価値観が単一的だった時代と現代を視聴率で比較するのは不公平という見方もありますが、現代でもサッカー日本代表の試合は50%ラインも突き破るケースがありますし、ボクシングでも亀田興毅が24位と26位にランキングされています。

長谷川と西岡、井上は「国民的関心事」のレベルには全く届きませんでした。

さらに、リング内での業績でも1団体10階級の時代に2階級制覇した原田の偉業は、現代のボクサーが超えるのはほぼ不可能です。

バンタム級史上最強はエデル・ジョフレで世界評価はほぼ一致していますが、防衛回数はわずか8。世界戦も13試合の経験しかなく星勘定は11勝2敗。

数字だけを眺めると長谷川の防衛回数10、世界戦15勝3敗も遜色ありません。リング誌は「60年代最強はモハメド・アリではなくジョフレ」と評価しましたが、だったら長谷川も「アリ以上」な気がしてきます。

さらに、井上に至っては3階級制覇で世界戦14と、数字の上ではすでに「ジョフレ超え」。内容も14戦全勝。もはや、ジョフレは眼中になくシュガー・レイ・ロビンソンと比較すべきかもしれません。

…もちろん、そんわけはありません。団体と階級の増殖に加え、それによる承認団体の我田引水ランキングが横行している現代と、原田の時代は同列に語れません。

ジョフレのバンタム級8連続防衛全KOは、4団体と17階級のフィルターを掛けると70連続防衛全KOにも匹敵しますが、穴王者と雑魚挑戦者を量産する我田引水ランキングを考慮すると、大橋秀行会長ではありませんがそれこそ70どころか「天文学的数字」になります。

そんな、ジョフレのキャリアにたった二つだけの黒星、それを刻み込んだ原田を超えるには、ジョフレ級の途轍もない強敵を倒すしかありません。それを考えると、そもそもそんな本物の怪物に井上が勝てるわけがありません…。

「国際ボクシング名誉の殿堂」でファイティング原田は長らく「アジア最高のボクサー」でしたが、マニー・パッキャオの進撃によって2007年に「アジア」は「日本」に格下げされてしまいました。

当時は、マルコ・アントニオ・バレラにエリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスの一発殿堂&PFPファイターのメキシコ包囲網を突破していた頃です。階級ではフェザーからジュニアライト。

これをやらないと「原田超え」に届かないとしたら…現状の貧相極まる軽量級シーンでは絶対不可能です。
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ということで、「原田超え」からは退散して。

②この3人のレガシーに順位をつけるとどうなるのか?です。

現時点で、長谷川と西岡、井上に序列をつけるとしたらどうなるのか?

まずは、長谷川の41戦36勝(16KO)5敗のキャリアから振り返ってみます。

一発殿堂はおろか、殿堂選手との対戦経験もありません。現役のPFP選手との手合わせもゼロです。

現役の世界王者との対戦成績は2勝2敗。

勝利した最強の相手はウィラポン・ナコンルンプロモーション。バンタム級で第二次政権を樹立、14連続防衛中の安定王者でしたが、当時36歳の劣化バージョンでした。

安定していたとはいえ二次政権の内容は王座を奪った辰吉丈一郎と2試合、西岡と4試合と安易な日本人相手に6試合もあてたばかりか、強豪との手合わせはなく長谷川戦時の戦績(46勝1敗2分)に14連続防衛という数字の華々しさにもかかわらずPFPの俎上にもあがらない典型的な〝数字先行〟ボクサーでした。

長谷川は、アジアを代表するPFPファイターだったクリス・ジョンに引導を渡すことになるシンピウェ・ヴェチェカを判定でかわしていますが、やはり対戦相手の質は高いとはいえませんでした。

リング誌とESPNのPFP入りは果たせませんでした。それでも、リング誌のベストファイター100位で13位、ESPNでも得票するなど激しくドアをノックしました。そして、boxing scene.com では日本人初の海外メディアPFP入り。

しかし、世界王者になってからの3敗はいずれも中途半端な相手に凄惨なKO負け。

強い相手とはついに対戦がかなわず、中途半端な相手に粉砕された長谷川。

全盛期でもけして世界評価が高いと言えなかったウィラポンの劣化版から奪ったタイトルを、満場一致の階級最弱王者フェルナンド・モンティエルに奪われ、メキシコのファンも愛想をつかすジョニー・ゴンザレスと、英国のスター選手に狙い撃ちにされた典型的な穴王者キコ・マルチネスに圧倒された長谷川。

日本テレビは亀田一家へのアンチテーゼとして「THE REAL」と打ち出しましたが、長谷川は本物だったのでしょうか?少なくとも本物の強豪とはついに拳を交えることはありませんでした。

もちろん、軽量級で本物の強豪、それもビッグネームとなると「いない」というのがデフォルトです。世界の軽量級シーンで長谷川こそが最も大きな名前だったのです。

もちろん、日本のエースに危険な橋を渡らせたいと考える関係者はいません。それを最も嫌ったのは、山下会長が「恩義がある」とカメラの前で明言したWBCでしょう。

引退から4年経ちますが、殿堂入りとは無縁のまま、あの頃の「日本史上最高」の喧騒は何だったのでしょうか?
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2010年代。この直近10年をリードしたチャンピオンは長谷川穂積、亀田興毅、西岡利晃、内山高志、井岡一翔、山中慎介、井上尚弥、村田諒太らが挙げられます。

国内で圧倒的な人気(アンチも含めて)を集めていた亀田を除くと、全員が「世界志向」を明白に表明していました。

ボストン・レッドソックスに60億円以上で〝落札〟され、6年60億円の大型契約でメジャーに渡った松坂大輔と対談し「ぼくもそっちに行くから」と羨望した長谷川の思いは、その世界志向を象徴するものでした。

しかし、長谷川らの「勘違い」と直訳できる「世界志向」と、内山のケースは少し事情が違いました。

長谷川や西岡、井上らは「ラスベガス」「ビッグファイト」と抽象的な言葉が宙に浮く一方で、内山の場合は「ユリオルキス・ガンボア」や「マイキー・ガルシア」といった具体的な名前を何度も聞くことが出来ました。

キャリア晩年に、人気階級の入り口でもあるジュニアライト級の内山が絞り出した「今回もいつもと同じ(無名のジェスレス・コラレス)だったら、さすがに」という言葉は、欧米で全く人気がないバンタム級の井上らには当てはまりようがありません。

それを言い出したら超軽量級に常駐する井上らの心は、もうずーーーーっと、永遠に折れっぱなしです。

しかし、日本では多くのボクシングファンの頭の中に「階級と人気」という概念が欠落しています。

それは「黄金のバンタム」や「PFP」という人気の尺度と勘違いしかねない言葉があちこちに踊っていることも原因で、かつての長谷川や、現在の井上の信者の無知蒙昧だけを責めるのはお門違いです。

長谷川や西岡、井上のプロモートには帝拳も大きな役割を果たしてきました。

最初に押さえておかなければいけないのは、バブルというとんでもない追い風が吹いていたとはいえ「マイク・タイソン 」を赤字覚悟で東京ドームに2試合も招致した帝拳の業績は途轍もなく偉大だということです。

しかし、一方で「長谷川vsモンティエル」の〝自腹アナ〟(ジミー・レノンJr.に「世界中が注目するビッグファイトのコールができるのは人生最高の幸せ。ノーギャラでいいからとこの仕事をいただいた」と大嘘をつかせた)に、「西岡のMGMメイン」(パッキャオやタイソンが戦ったMGMでメインを張り報酬100万ドル)という欺瞞に手にかけてしまいます。

帝拳もまたファンを騙してでも「世界志向」 に突っ走りたいという、もしかしたら他のメジャースポーツへの醜い嫉妬に身を焦がしているのかもしれません。

その血は、大橋秀行会長にも受け継がれてるのかもしれません。

本当にくだらないことです。

このブログでは当初から「日本のアスリートで最も大きな栄光をつかんだのは誰か? 」という答えの出ない堂々巡りを続けていますが、それはこれがメインテーマだからです。

「スポーツに貴賎はあるか?」ということです。

昨日だか今日だかのコメントに、 日本のアスリートで最も大きな栄光をつかんだのは「内村航平」と寄せてくれた方がいました。

正解です。

熱心な体操ファンには、内村がやってのけたことがどれだけ偉大か、そして何よりも体操競技がどれほど奥深くて面白いのかを、よく識っているのでしょう。

そんな本当の識者にとってはBBCもニューヨークタイムスもただの一メディアに過ぎません。「彼らが騒いでるから凄い」なんて低脳な発想はありえないのです。

「大坂なおみの方がイチローよりも上。ニューヨークタイムスと英国BBCがともにトップで報道する大坂と比べるとニューヨークでも怪しかったイチローはシアトルのローカルヒーローに過ぎない」…そんなの報道の地図的な広さや量の事実を羅列しているだけで、テニスや野球の面白さや凄さには全く踏み込めていない浅すぎる話です。

正直、先進国のメディアがトップ報道する大坂は、素直にすごいとは思います。BBCもCNNもNHKもみんなトップです。確かに野球ではありえません。

それでも、私が受けた感動の量や質は野茂英雄やイチローと比べると、大坂は劣ります。

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これでいいのだ、と思います。 

軽量級を無視する国でも、ラスベガスが格好いいから押し売りでもする。

欧米にトップリーグが存在するサッカーや野球が 羨ましいから嘘でもいいから、ボクシングでも幻覚を見たい…そんな考えは間違っています。卑屈すぎます。

ボクシング軽量級だけでなくキックもそうです。無い物ねだりは人間の性がもしれませんが、それを抑えきれずに押し売りや捏造に走るのは、あまりにも惨めすぎます。

「ラスベガスへの憧れは誰にでもあるが、日本のボクサーにおいてはそれは特別」(ボブ・アラム)という言葉は「日本のテレビ局が巨額の放映権を支払うのは当然。それだけの価値があるから」という優越感につながります。

法外な放映権料は「ラスベガスへの憧れ料」です。そんなの絶対、払っちゃいけません。

奴らの方に「是非ラスベガスで興行を打ってください」と土下座させて、招致フィーを差し出させるのが筋です。

「いつもお世話になってるのにごねんね、今回はカウボーイズスタジアムの方が高額の条件だったから。カウボーイより高い金額出してくれたら次からまた戻るから」と断るのが格好いいんです。

本気でパッキャオに憧れてるなら、目指すところはそこです!

いきなりラスベガスでメイン。日本では大々的に報道されてるけど、現地ではさっぱりどころかオッズも立ち上がらない…。

もうそろそろやめにしましょう。

やるなら「ナジーム・ハメド」のように5000万ドルとか半端じゃない放映権を差し出して、高品質のPVを製作して街に広告を溢れさせ、タダ券配りまくればいいのです。

メディアに流すパブリシティ(記事掲載料)も十分ですから、THE ANSWERなどのメディアが血眼になってフィリピンやプエルトリコのメディアまで「井上尚弥」を探す苦労もなくなります。

プロモーショナルツアーの記者会見にはカジノの責任者も招待して歓待、それならオッズも早々に出るでしょう。

…前置きが長くなりました。
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ボクシングマガジン7月号によると、これまで日本のジムから誕生した世界王者はちょうど90人。

1952年にダド・マリノを破った白井義男が開いた狭き門を、約70年もの歳月をかけて89人が通ったことになります。

直近のディケイド=2010年代(2010〜2019)では第60代の石田順裕から、第90代の井上拓真まで31人がチャンピオンベルトを腰に巻きました。

70年の歴史では14%程度に過ぎない時間で、34%の王者を量産したことになります。 

最も不毛だったのは1950年代で白井ただ一人。2010年代は過去に例を見ない大豊作のディケイドでした。しかも、複数階級制覇がトレンドになっていることからも獲得王座数は45と他のディケイドを寄せ付けません。

もちろん、この〝黄金時代〟の背景には17の階級に加えて、4団体が同一階級に複数王座を乱造し、さらにはアルファベット団体の世界ランキングが腐敗していることから富裕国である日本の磁力に特に軽量級のベルトが吸引されたというカラクリが隠されています。

そして、誰が本当に強いのか?という格闘技の本質は、どの時代にも増して不透明に混濁してしまっています。

具志堅用高の時代まで、メジャースポーツとして肩を並べていた野球はMLBという「正真正銘の世界」への道が開かれ、後発のサッカーはそもそも「正真正銘の世界ありき」でした。

かつてのライバルたちの「正真正銘の世界」へのまばゆい挑戦を横目に見ながら、ボクシング界の思いは歪に屈折してゆきます。
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ヘビー級やウェルター級のトップ選手が繰り広げるメガファイトが「軽量級にも存在する」という歴史上一度もない幻覚を信じ込み、そこを目指すようになるのです。

長谷川穂積は「ラスベガスでビッグマネー」と語り、西岡利晃に至っては「MGMグランドでメイン」という詭弁のリングに上がってしまうのです。

そして、井上尚弥も含めた3人ともに熱狂的な信者から「世界的な評価を集めた日本史上最高のボクサー」と崇め奉られます。

最近、長谷川や西岡をオンタイムで知らないファンは「そんなアホな」と思うかもしれませんが、嘘ではありません。

そして今、また井上尚弥の周囲で同じ虫が湧いています。

「道半ばで倒れた長谷川や西岡はとっくに抜いてる」というのが井上信者の教義かもしれませんが、それははたして事実でしょうか?

3人のキャリアを振り返り、そのレガシーを測定してゆきます。
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◉ワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス◉
10月17日、会場はすっかりお馴染みになってしまったMGMグランドのカンファレンスセンター、The Bubble。
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WBA/WBOのストラップを持つハイテクに、IBFをピックアップしたロペスが挑む三団体統一戦。

オッズはウクライナ人の勝利が2/7:1.28倍、ホンジュラスにルーツを持つ〝エル・ブルックリン〟は16/5:4.2倍とESPN推しのPFPキング有利。

このオッズは当日までひっくり返ることはないでしょう。

ロペスはキャリア初のアンダードッグとして、リングに上がります。

ウクライナの32歳はまだ老け込む年齢ではないとはいえ、ライト級では何度か綻びを見せています。

一方のロペスは23歳、15戦のキャリアで中谷正義に手こずるなど不安定要素も見せながらも伸び盛り。

身長で3㎝、リーチで8㎝上回る173㎝/174㎝の体格に加えて、大きくリバウンドしてくるロペスに、ロマチェンコがどう立ち向かうのか?

Battle of Age =世代の戦いのテーマは常にたった一つのテーマに集約されます。Too Soon or Too Late ?=早すぎたのか、それとも遅すぎたのか?

このビッグファイトはロペスにとって早過ぎたのか、それともロマチェンコにとって遅過ぎたのか?

…その答えが出るまであと1カ月です。
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「軽量級にもラスベガスはある」。

それは「ソフトボールにもメジャーリーグがある」と考えるのと根本的には何ら変わらない、幻覚症状です。

90年代、辰吉丈一郎がラスベガスでメインを張り、リングサイドにはフリオ・セサール・チャベスらビッグネームが座りましたが「辰吉がベガスでメイン!世界的なスターになった!」「チャベスがバンタム級最強の一人と認めてる!」なんて浮ついた報道はありませんでした。

この時の辰吉はJBCの「網膜剥離の診断を受けた選手の国内試合は許可しない」という規定から、仕方なくラスベガスで戦った、消去法でした。

「日本のファンに見せたかったけどゴメンやで」。辰吉の言葉が真実の全てを物語っています。
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1995年11月25日、帝拳プロモートで開催されたラスベガスの〝 Japan Fes〟。その舞台はミラージュ・ホテル&カジノ、辰吉はメインで坂本博之がセミファイナル。日本からの応援団や旅行客を中心に2500人を超える有料入場者を集めました。

辰吉から10年、長谷川穂積や西岡利晃の時代には、何が歪んで、何が変節してしまったのでしょうか?

様々な要素が考えられますが、野球とサッカー、日本の二大メジャースポーツで「欧米のトップリーグで戦う選手が最も格好いい」ということが完全に浸透したことが単細胞の信者のスイッチを押してしまったのでしょう。

同じ「ラスベガス信仰」は、キックボクシングにも見られます。魔裟斗が「ラスベガスに進出したい」と言ったのと、同根のセリフを今は那須川天心が幻覚しています。

米国でもキックは存在しますし、ラスベガスでも興行はあります。しかし、それは日本で地上波生中継されることもあるRIZINのようなビッグイベントではありません。

バンタム級に「ラスベガス」がないのと同じように、キックにも「ラスベガス」などないのです。バンタムもキックも、「ラスベガス」は彼らにとっては残念ですが日本にしかないのです。

暗愚な信者たちは「バンタム級にも〝世界のトップリーグ〟がある、それがラスベガスだ!」と倒錯し、それを煽るメディアも出現しています。

では、欧米で全く関心の払われないバンタム級や軽量級がニューヨークやラスベガスの大会場でメガファイトのメインを張ることは、絶対不可能なのでしょうか?
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靴を知らない国の住民に靴を売るのは「偉大な挑戦」です。

しかし、ウェルター級やヘビー級という立派で歴史ある革靴をすでに履いている国で、革靴と同じ値段で草履や雪駄が売れると思い込んでる人がいるとしたら、彼らは正真正銘の馬鹿です。

マニー・パッキャオが米国進出したときに足にしていたのは草履でしたが、彼はあろうことか最高級の革靴を履きこなしてみせました。

とどのつまり、あのパッキャオですら、草履は売れなかったのです。

日本から渡米した金持ちに買ってもらうという、小さな会場を「MGMでメイン」「パッキャオやタイソンも戦った」と詭弁を弄し、だったら日本で売れよ…と突っ込みたくなる愚行をやっちゃったのが西岡利晃でした。

長谷川穂積はついに憧れのラスベガスのリングに上がることはできませんでしたが、フェルナンド・モンティエル戦ではジミー・レノンJr.に「世界中が注目する大試合。だから私は無償でリングアナを引き受けました」と最低の嘘までつかせました。

西岡の「MGMメイン」は今ではWOWOWでもタブーです。西岡がゲストでいるスタジオで京口紘人の「(井上のラスベガスメインは)日本人では初めてのことで凄い」というコメントは、完全にスルーされました。

「西岡さんの前でそれはダメですよ!」と言えないんです、もはやカラクリがバレちゃってるから。

長谷川の「自腹アナ」も多くの人が忘れつつあるでしょう。

そして、井上尚弥が同じ轍を今、踏もうとしているのです。



では、ラスベガスで草履を高級革靴並みの高額で売るのは絶対不可能なのでしょうか? 
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昨年11月7日のWBSSバンタム級トーナメント決勝を勝ち抜いた井上尚弥。そのリング上で、少し気になったのがWBCから贈られるはずの「WBSSチャンピオンベルト」が見当たらなかったことでした。

おそらく法外な「承認料」が要求されたはずの WBSSチャンピオンベルトの購入を井上陣営が拒否したのなら痛快な話です。

リング誌などで年間最高試合賞に輝いたとはいえ、その試合内容はリング誌ではまともな記事にもされませんでした。昨年、2度も単独カバーしておきながら、この扱いには首を傾げざるをえません。

欧米を驚かせたのはバンタム級の試合を見るために、ラスベガスのどのハコよりも巨大なさいたまスーパーアリーナに2万2000人もの観客が詰めかけ、1億3000万人の人口を抱える富裕国で20%近い視聴率を弾き出した事実でした。

バンタム級シーンを見渡すと貧弱な名前しか見つけることはできません。

軽量級に造詣が深い日本のマニアにとって、ジョンリール・カシメロ戦は非常に興味深いマッチメイクでした。

しかし、キャリアハイの報酬が7万5000ドルでわかるように、カシメロの米国での存在感は限りなく軽いものです。

では、ジュニアフェザーなら? 
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どう考えても日本で岩佐亮佑らとの日本人対決の方がビッグファイトになりそうな、寂しい面々です。

では、井上が「(ラスベガスでメインを張るのに)最低でもフェザー」と口にした126ポンドの顔ぶれはどうでしょうか?

バンタムとジュニアフェザーにも明らかに溝がありますが、やはりフェザーになるとさらにカラフルになります。

ここに10月9日にシャクール・スティーブンソンが「ビッグファイト」を求めて転級、空位となったWBO王者決定戦に出場するエマヌエル・ナバレッテ(10月9日:ルーベン・ビラ戦)が割って入る見込みです。
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WBAセカンド王者シュー・ツァンとはスパーリングで〝対戦〟済みで、井上が戦うとなると五分か、やや不利と見られるかもしれません。

ゲイリー・ラッセルJr.とジョシュ・ウォリントン相手では、間違いなく不利予想のフラグが立つでしょう。


井上がドネア戦で上がった評価はPFPランキングだけでした。

カシメロ戦のオッズが示していたように、井上はバンタム級最強と目されてはいますが、ドネア戦前の絶対無敵とは考えられていません。

しかし、本気で「パッキャオが見た風景」に憧れるなら、アンダードッグでリングに上がり番狂わせを起こすのは最低必要条件です。

もちろん、フェザーで最も大きな名前のラッセルJr.ですら米国では「無名であることに苛立っている不遇の軽量級」の一人に過ぎないのですが…。 
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かつて、井上尚弥がローマン・ゴンザレスとの対決を熱望していた頃。

日本のモンスターは「別に海外にこだわらない。多くのお客さんが喜んでくれるなら日本でいい」と語っていました。

「無理やり米国で戦う必要はない」。その考えは、おそらく今も変わらないでしょう。

それでも、米国を目指した動機は、繰り返し口にしているように「パッキャオが見た風景を見てみたい」ということかもしれません。

「パッキャオが見た風景」。

唯物的にはMGMグランドガーデンアリーナやカウボーイズスタジアム(現AT&Tスタジアム)のようなプレミアム会場でメガファイトのメインを張ることです。

アジア人とバンタム級という重すぎる十字架を二つも背負っていては、到底上がれるリングではありません。

それでも、米国初参戦の「THE SUPERFLY」でジャパンマネー補填を受けて報酬が倍増したように、さらに巨大な日本からのバックアップが期待できるなら、米国人が購入するPPVイベントのメインは不可能にしても、それなりのビッグファイトの舞台は作れるかもしれません。

ナジーム・ハメドとイエメン王朝、アラブ諸国が5000万ドル以上といわれる高額な放映権料をHBOに支払ったことで大々的な前宣伝を展開してもらったような構図です。

ただ、それでもバンタム級では弱すぎます。ジョンリール・カシメロもジェイソン・マロニーもノルデーヌ・ウーバーリも米国でのネームバリューはビッグファイトのリングに上がる次元ではありません。

そして、それは当の井上も同じです。

INOUE is lauded in his native Japan but does not get as much attention as the other pound-for-pound stars. For me, only Lomachenko and Canelo Alvarez are better pound-for-pound, yet many fight fans have never heard of Inoue.〜ESPN~
 
日本では大きな評価を得ている井上だが、他のPFPファイターと比べても米国での関心は低い。PFPランキングだけならロマチェンコとカネロに次ぐような存在だが、多くのボクシングファンは井上の名前すらも聞いたことがない。それほどまでに無名なのだ。

井上がPFP上位に評価されていることを知っている日本のボクシングファンは多いでしょう。

しかし、ロマゴンが2年間もPFP1位の座に君臨していたことを知る人はどれだけいるでしょうか?

もちろん、これは報道量の差です。井上には〝PFP警察〟のようなメディアが、井上の小さな海外報道を針小棒大に取り上げていますが、ロマゴンのときは無視し続けました。

現状の井上についても「パッキャオのようになれるかもしれない」という飛躍しまくりの煽り記事はあっても「PFP1位になれば軽量級ではロマゴンに続いて史上二人目」という冷静な報道は少なくとも私は見たことがありません。
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コロナ下での興行はゲート収入が激減する片翼飛行。

井上vsマロニーは無観客、PPVイベントになるわけがありませんから、放映権収入だけが頼りです。

米国や英国のブックメーカーは11月に予定されている「エロール・スペンスJr.vsダニー・ガルシア」や「テレンス・クロフォードvsケル・ブルック」「アレキサンダー・ポベトキンvsディリアン・ホワイト2」などはもちろん12月のオッズも開帳していますが、10月31日の「井上vsマロニー」はどこにも見当たりません。

これはもちろん、早々に決まっていた「ウーバーリvsドネア」も同様です。重い十字架を二つ背負ったマッチアップは、米国では人気がないというよりも、全く関心が払われないと表現したほうが正確です。


そんな軽量級不毛の地で、まともにメガファイトなど実現できる道理がないのです。
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シュガー・レイ・レナードはわずか11試合で5階級制覇を達成しました。1階級あたりの所要試合数は、あろうことか、わずか2.2試合!でした。

井上が戦う4BELT−ERA 4団体時代は、1団体時代から単純に4倍希釈されただけではありません。オリジナル8から17階級にクラスが2倍以上に細分化されただけではありません。

一つの団体が複数の「世界王者」を擁立する狂乱と倒錯の時代です。

これが何を意味するか?

タイトルの価値が暴落しているのは当然です。もちろん、無名のボクサーにとってはアルファベットタイトル、特にメジャー4団体のベルトはスターへの「通行手形」です。

カネロ・アルバレスでもパッキャオでもメイウェザーでもアルファベットタイトルなくしてスーパースターへの道は拓かれませんでした。

ただし、スーパースターになれば「通行手形」は不要です。承認団体の方から「ダイアモンド」だ「フランチャイズ」だと勝手に擦り寄ってきて奉りますが、そのパワーバランスは悲しいほどの差が開いてしまっています。

1団体時代は世界王者のベルトは「通行手形」などではなく「議論する余地のない王者」の証でした。

2団体時代はWBAとWBCの確執が生々しく、ミドル級など人気階級でしか「議論する余地のない王者」が誕生しにくい土壌が出来上がっていました。

そして3BELT−ERAになると「議論する余地のない王者=完全統一王者」は確固たるステイタスであり続けますが、一方でレナードに代表される「スーパースター絶対主義」がまかり通り始めます。

さらに闇が深まる4BELT−ERAでは各団体が同一階級で複数の王者を擁立するのは当たり前、そのランキングも以前にも増して我田引水の操作がなされ、もはや強いボクサーの順番ではなくなっていきます。

そして、ボクシングファンはあってはいけない光景、真実を突きつけられることになります。

ハグラーやタイソンが躍動した3BELT−ERAでは確固たるステイタスであり商品価値があった「議論する余地のない王者」は、4BELT−ERAでは様相が全く違ってくるのです。

確かな指標を見失った混沌の4BELT−ERAで、自力による完全統一に成功して議論する余地のない王者の座に就いたのはバーナード・ホプキンス(ミドル級)とテレンス・クロフォード(ジュニアウェルター級)、オレクサンダー・ウシク(クルーザー級)の3人です。

彼らはハグラーやタイソンとは異なる動機で、全てのベルトを集めることに情熱を燃やしました。

人気が欲しい。莫大な報酬を手にしたい。メガファイトのリングに上がりたい。

つまりは、不人気選手が注目を集めようと躍起になった「通行手形」が「完全統一王者=議論する余地のない王者」でした。

そして、残念ながら、4BELT−ERAでは、その「通行手形」でメインストリートのゲートが開くことはありませんでした。

パッキャオやメイウェザーのメガファイトで「何のタイトルが懸かっているのか」は二の次、三の次で、パッキャオの出世試合にはメジャータイトルが一つも懸からないことも珍しくありませんでした。

オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザーJr.、マニー・パッキャオ、カネロ・アルバレス…4BELT−ERAを代表するスーパースターは一人も完全統一王者になっていません。

今の時代、ファンもスーパースターも完全統一への執着はほとんど無いと言い切って差し支えないでしょう。


さて、今日のテーマ「パッキャオが見た風景」とはそいうことなのです。

「通行手形」としては重宝したアルファベットタイトルも、スーパースターの座を手に入れるとその必要性は下がり、承認団体の方から変なベルトをこしらえて参拝してくるようになります。

「パッキャオが見た風景」のランドスケープは、完全統一王者には目もくれないで、いかに自分の商品価値を上げてメガファイトを繰り広げるか、でした。

一方で、現状の井上が目指しているのはクロフォードやウシクの道です。

意地悪な見方になりますが、バンタム級を完全統一した地点から見える風景は「パッキャオが見た」ものではありません。

それは「クロフォードやウシクらが見た」風景です。
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井上尚弥vsジェイソン・マロニーが米国時間10月31日のハロウィーンに決定しました。

Whether or not the fight will actually take place Oct. 31 will depend largely on Inoue’s Japanese broadcaster, Arum said.

なかなか日程が決まらなかった井上戦について、ボブ・アラムは「この試合が実現するかどうかは、日本のテレビ局(が放映権料をいくら支払うか)にかかっていた」と本音を漏らしました。

会場はすっかりお馴染みとなったMGMグランドのカンファレンスセンターを改造、防疫・衛生管理を徹底した特設リング。

無観客は寂しいものの、トップランクとMGMが思考を凝らしてテレビ映えする装置や演出を用意しています。

井上は、米国では1試合戦っているとはいえ、注目度が極端に低い軽量級メインの「スーパーフライ」のリング、ESPNが日本のメディアに再三説明しているように米国ではボクシングファンですら井上の名前も聞いたことがないのが現状です。

彼らの苛つきを意訳すると「そんな無名選手の試合をメインという縛りまでかけられたら出来るわけがない」「日本のテレビ局が高額で買えば出来るが、そうでなければ日本からの観客ゼロの現状では試合を組めない」ということです。

この試合、日本時間では11月1日日曜日の正午過ぎにゴングが鳴らされることになりそうです。

けして視聴率が稼げる日時とは言えないだけに、放映権料を巡って綱引きがあったことは容易に想像出来ます。

米国での軽量級は「ビッグファイトのメイン」の需要を喪失してしまってから長い時間が経ってしまいました。特にジュニアフェザー以下の需要は全くありません。

一方で、日本ではリング誌がPFP3位と評価、ドネア戦を昨年の年間最高試合に選んだことが、それまでも深まっていた誤解の溝をさらに掘り下げてしまいました。

ボクサーの報酬、すなわち人気とPFPはなんの関係もないということ、そして欧米の最高試合は激闘に付けられるタグで、本当に洗練された試合が選ばれることは稀なのです。

そして、そもそもPFPも年間最高試合賞も、井上信者がそうであるようにボクシングファンでもほとんど知りません。

「(日本では)どれだけ凄いことかわかってない人が多くて、それがもどかしくて」(松本人志)というのは大間違いで、井上の名声は日本ではマックス、米国では全く無名というのが現実なのです。

バンタムやフェザーで戦っている限り、無名状態に劇的な変化は期待出来ません。

ゲイリー・ラッセルやジョシュ・ウォリントンを日本に呼んで日本で試合をすればその限りではありません。

皮肉なことですが、欧米の専門メディアが井上を最も大きく取り上げたのは、ラスベガスにも存在しない大会場・さいたまスーパーアリーナをバンタム級の試合でフルハウスにしたからです。

同じように、ドネアと比べればはるかに有名なラッセルあたりをたまアリで倒せば、大きなインパクトを届けることが出来るでしょう。

それでも、無名の状態から劇的な変化を起こせるかとなると極めて難しいでしょうが…。

米国はライト級のロマチェンコですら大会場はフルハウスに出来ないのが現実です。

バンタム級の日本人の試合が、無観客試合ですら逡巡されるのは仕方がありません。


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ウィルフレド・ゴメスはどうなのでしょう? 私は軽量級スパースターの認識を持っていましたが、彼もまた、世界のボクシングシーンの力学によってスルーされていた存在なのでしょうか? 

vsサラテ戦、vsサンチェス戦、vsピントール戦、いづれもリアタイ視聴の僥倖に恵まれましたが、いまYouTubedなどで当時の映像を見直しても、それは思い出補正などではなく、まごうことなきメガマッチに見えます。vsピントール戦はハーンズvsベニテスの前座でしたがね。 

まあ、メガマッチの定義にもよるのでしょう。ボクシングで動くお金の額は時を重ねるにつれて大きくなっていますが、人々の関心やプレゼンスに関しては、必ずしもお金の増大に比例していないと感じますね。
2020-08-31 14:25:51 返信編集 匿名 111.239.147.191


ボクシングの「ビッグネーム」や「メガファイト」に明確な定義など存在しません。

井上尚弥や井岡一翔、ノニト・ドネアらは米国ではコアなボクシングマニアがようやく認知する、一般のスポーツファンはおろかボクシングファンにすら「全く無名の存在」ですが、彼らを「ビッグネーム」と表現することは間違いではありません。

Many fight fans have never heard of Inoue.〜米国のボクシングファンの多くは井上の名前すらも聞いたことがない。

そして、多くの井上信者らが幻覚している「メガファイト」の定義は「ラスベガスやニューヨークの大会場でPPV50万件セールスをマーク、両者それぞれの報酬が1000万ドル越え」となるでしょうか。

これをクリアするには、フォーブス誌のThe World’s Highest-Paid Athletesで上位40位には食い込まなければ話にならないレベルです。

ボクサーではタイソン・フューリーが11位にランクイン。ファイトマネー5000万ドル+エンドースメント(スポンサー収入)700万ドル=5700万ドルを稼ぎました。

続いて、19位にアンソニー・ジョシュア。ファイトマネー3600万ドル+エンドースメント1100万ドル=4700万ドル。

デオンティ・ワイルダーがジョシュアに肉薄、20位。4600万ドル+50万ドル=4650万ドル。

メイウェザーの退場から北米ボクシング界の顔だったカネロ・アルバレスはパンデミックの影響から1試合はやり逃してしまい3500万ドル+200万ドル=3700万ドルの30位と伸び悩みました。

日本の大坂なおみは29位で、そのカネロをかわしました。メキシコと日本という経済格差、endorsementを考慮すると経済的インパクトにおいて、大坂はもちろん錦織圭もあらゆるボクサーを上回っていると言えるかもしれません。

さらに、欧米のスポーツファンの認知度で、フューリーやカネロは大阪と錦織の足元にも及ばないでしょう。さらに、バンタム級で戦う井上尚弥に至っては、同列で語るべきではない、もはや別の惑星の生き物です。

これは、ニッチスポーツ、ボクシングの中でも不人気階級で開催されたWBSSのような舞台の延長上にある世界ではありません。

ただ、フォーブス誌のThe World’s Highest-Paid Athletes 企画は1990年に始まっていることに注目すると、20世紀末にアスリートの報酬が大きな変革期を迎えたことも透けて見えてきます。

何度も書いているので簡単におさらいしますが、プロスポーツ選手の報酬は長らく「ゲート収入」によって決められていました。誤解を恐れずに言えば、ゲート収入は選手報酬と直結していました。

ラジオやテレビの時代を迎えて「放映権料」が大きな存在になり、選手に宣伝タレントとしての魅力が見出されると「スポンサー収入」が巨額になります。

報酬を決める最も大きな要素は「ゲート収入」(古代ローマ時代〜1950年代)➡︎「放映権料」(1950年代〜1990年代)➡︎「スポンサー収入」(1990年代〜)と変遷してきました。

そうです、1990年代からは「スポンサー料」こそがThe World’s Highest-Paid Athletesの上位に食い込むための最も重要な要素になっているのです。

もちろん、スポーツによって年代や構造は違います。ゴルフでは1990年以前から「スポンサー料」が選手報酬を大きく上回っていました。

一方で、ボクシングは特別な階級のほんの一握りの選手が「放映権料」の亜種といえるクローズド・サーキットやPPVで莫大な富を手にして、他のスポーツのトップを圧倒してきましたが「スポンサー料」はゼロに等しく〝スポンサー料〟時代に完全に乗り遅れています。

もし、スポンサー料を差し引いた選手報酬だけだと1位のロジャー・フェデラーはわずか630万ドルに過ぎないのです。$1億630万ドル(114億5900万円)のうちの1億ドルがスポンサー料という、ボクシングの世界では考えられない構成比です。

スポンサー収入の時代を迎えてもほとんど選手報酬だけで The World’s Highest-Paid Athletes の上位30位にランクされるフューリーら4人はまさしく特別な階級のほんの一握りのボクサーです。

あろうことか2015年にワンツーフィニッシュを飾ったメイパックに至っては、特別な階級なども超越した突然変異の二人だったと言えるでしょう。

ちなみにジュニアウェルター級以下のボクサーがこのランキングの100位以内に入ったことは過去一度もありません。
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大坂は女子アスリートの歴史で最も巨額の報酬を稼ぎました。

前置きが長くなりました。

スポーツとしてのステイタスが泥沼のジリ貧を辿り、スポンサー収入から見放されたボクシング。

しかし、時代を遡るとステイタスは上昇するわけです。そして、ボクサーが恩恵に浴せないスポンサー収入の存在感も希薄になります。

もし、フォーブス誌が20世紀初頭からThe World’s Highest-Paid Athletes を企画編集していたら…おそらく1970年代まではプロボクサーが上位を独占し続けていたでしょう。

1923年に2万3000人を収容したポログラウンズで行われたジミー・ワイルドvsパンチョ・ビラの世界タイトルマッチは、堂々のメガファイト、その報酬はメジャーリーグのタイトルホルダーを凌駕していたはずです。フライ級の試合だというのに、です。

1920年代のThe World’s Highest-Paid Athleteの記録はあるはずもないですが、ジャック・デンプシーで100%間違いありません。多くのメディアで「デンプシーの1試合のファイトマネーは大統領の年収を凌ぐ」と報じられ、当時のもう一人のアメリカンヒーローであったベーブ・ルースも「私の年俸はデンプシーと比べて低すぎる」と嘆いています。

もちろん、デンプシーやルースの時代はアスリートの報酬が大統領の年収を超えることがニュースになった時代です。

今では到底考えられません。総資産はともかく、大統領報酬と選手報酬の比較では、トランプよりもバンタム級の井上ですら上です。

The World’s Highest-Paid Athletes がスタートした、いわゆる〝ポスト1990年〟とは時代背景も、スポーツ興行の仕組みも全く違う時代です。

では…。米国でいつから軽量級のメガファイトが絶滅してしまったのでしょうか?

そして「パンチョ・ビラ」はもう二度と生き返ることはないのでしょうか?
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