カテゴリ: 軽量級のメガファイト

「巨大スタジアムでメインを張った日本人」というと、白井義男です。

世界戦7試合の全て!を後楽園球場で戦った白井は、当時の世界で最も集客力のあるファイターでした。

ノンタイトル戦でも2試合、計9試合も後楽園球場のリングに上がった白井は大阪球場でも1試合、10試合を巨大スタジアムで戦ったのです。

こんなボクサーは不世出でしょう。

娯楽の少ない時代、世界で戦う日本人を応援できるのはボクシングだけだった時代。そして何よりも、1団体8階級の時代。地球上に世界王者が8人しかいなかった時代です。

世界タイトルマッチは、五輪やサッカーW杯のような国際的メガイベントで、それを受け入れる器は巨大スタジアムしか考えらない、そんな時代だったのでしょう。

当然のことながら、世界チャンピオンの価値は今とは比べようもなく大きく、重いものでした。


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日本ボクシング界は、1950年代の白井を超える熱狂をいまだに超えられていません。

60年〜70年代まで日本ボクシングは人気と社会的ステイタスが高止まり、ファイティング原田や大場政夫、輪島功一、具志堅用高ら国民的英雄を輩出しながら黄金時代を謳歌しましたが、80年代から団体と階級の増殖の中で世界タイトルの価値は暴落。

90年代から野茂英雄や中田英寿が世界で活躍するとはどういうことなのかを見せつけると、ボクシングの「世界」とは何なのか?という疑念が大きく渦巻き、人気もステイタスもさらに凋落してしまいます。


そんな90年代に咲き誇った一輪の花が辰吉丈一郎です。

イチローも熱狂的な辰吉ファンで、何度もリングサイドに駆けつけていました。

そして、辰吉は、1955年5月30日に白井義男が後楽園球場で戦ってから44年も遠ざかっていたスタジアム興行を復活させるのです。

1999年8月29日、大阪ドーム。

「日本人がメインでドームのリングに上がるのは史上初」「2万7000人の観客動員は屋内のボクシング興行では史上最高」…いずれも白井の方が上という事実に対する詭弁に過ぎませんが、辰吉人気はとにかく凄まじいものがありました。

そこには「腐敗団体と水増し階級で堕落したボクシングのタイトルマッチ、ましてや軽量級の価値は低い」なんていう冷めた目も焦がしてしまうほどの熱気が溢れていました。

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今の大谷翔平のような全国区・老若男女の支持を集める全方位の国民的英雄ではなかったものの、大谷のように書店では〝辰吉本〟が積まれていたのです。

大谷のような最高峰の舞台で圧倒的なパフォーマンスを見せるのではなく、絶望的な敗北から立ち上がる生き様こそ辰吉丈一郎が人を惹きつける磁力でした。





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そして、井上尚弥の東京ドーム。

白井ほど時代に恵まれず、辰吉ほど熱狂されることもない井上。

しかし、モンスターは二人が招かれなかった殿堂入りが確実視されています。

21世紀で初めてボクシング興行が行われる東京ドーム。そこで井上は何を見せてくれるのでしょうか?


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ボクシングの会場は、そのほとんど全てが特設会場です。

後楽園ホールはリングが常設状態の世界的でも珍しい会場で、ほぼ連日ボクシングや,キックボクシング、プロレスなど格闘技イベントが行われていますが、ボクシング専用アリーナとは呼べません。

世界的に見ると最も大きなハコのボクシング会場はサッカーやアメフトの巨大スタジアム。

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屋根付きアリーナではニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)は、コンサートやイベント会場、球技、そしてボクシングでも100年にわたって聖地であり続けています。

より近代的でキャバも大きいバークレイズセンターがブルックリンに建てられても、MSGのブランドイメージは今なお高いものがあります。

そして、西に目を向けるとやはりラスベガス。東のMSGのような100年聖地はここには存在しません。

ヒルトンからシーザースパレス、MGMとカジノ&リゾートがその時代、時代のメガファイトを招致してきました。

現在、ラスベガス最高の舞台はT-Mobileアリーナ。

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5月6日の東京ドームは、アリーナでは収容できない大観衆を飲み込むことができる巨大スタジアムです。

1988年と1990年にマイク・タイソンがメイイベントを飾っていますが、日本人がメインとなると東京ドームでは史上初。

巨大スタジアムとなると、1999年の辰吉丈一郎の大阪ドーム、さらに遡って1950年代に後楽園ホールのリングに何度も上がっていた白井義男以来となります。

サッカーや野球、テニスとは違い常設のハコを持たないボクシングですが、サッカーや野球のスタジアム、テニス場にリングを特設する、それもまた面白いところです。

オーストラリア・オープンの舞台、ロッド・レーバーアリーナにリングを特設したアペンドありました。ああいうの、大好きです。

日本でも武道館や国技館なんてのもあって、なかなか楽しめます。



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2024年3月31日(日)
  

名古屋国際会議場

コミッション:JBC/プロモーター:亀田興毅/メディア:ABEMA




WBCストロー級12回戦

ジムの先輩、谷口将隆からWBOストラップを強奪したジェルサレムは、初防衛戦でオスカー・コラーゾに7ラウンドでストップされベルトを失った元王者。
そのコラーゾは、優大が対戦を熱望する軽量級のスター候補。

いろんなアングルから「どう勝つか?」が求められる相手です。

bet fairのオッズは26歳の優大の勝利が1/6(1.67倍)、30歳のジェルサレム4/1(5倍)。




IBFストロー級12回戦


銀次朗の相手もフィリピン人ですが、アンダレスは同い年の24歳。

大橋ジムや亀田プロの興行で便利に使われてきた、日本でもお馴染みのアンダレス。

bet fairのオッズ1/12(1.08倍)と13/2(7.5倍)の数字の通りに、アクシデントがない限り王者の圧勝は固いところ。






▶︎▶︎▶︎報酬の遅配やプロモーターの不手際、本人たちには全く責任のないことで集中力を削がれることもある重岡兄弟。

国内でも亀プロの興行に参加していること、そしてストロー級ということで過小評価されていますが、二人とも面白いボクシングをします。

軽ければ軽いほど、スピードやパンチの回転の見映えは上がりますから、PFP的な視点ではストロー級が最も有利。

完全統一には兄弟という大きな障壁がありますが、評価の高いパンヤ・プラダブスリからタイトルを奪った優大がコラーゾにも勝って2団体王者になればPFP入りは確実。

「誰に勝ったのか?」で兄に劣る銀次朗ですが、実力評価は非常に高く2〜3年後にPFP上位をクルーズしていても驚きはありません。

優大vsコラーゾ、銀次朗vsノックアウト・CPフレッシュマートが今年実現したら、最高です。







それにしても、105ポンド(47.62kg)級の呼称ですが「ミニマム級」ってなんとかなりませんかね?まだ言ってるのか?といわれそうですが。

世界的には「ストロー」が主流ですが、JBCと日本のメディアは「ミニマム」。スーパー呼称にした理由は、わかりやすくいうと「ジュニアだとカッコ悪い」だったはずなのに。

「やっぱりミニマムって言われ方はイヤですよね。僕らの時代のストローでいいのでは」(大橋秀行)というのは、真っ当すぎる意見です。




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ファン・フランシスコ・エストラーダとバム・ロドリゲスのビッグファイトが決定してしまいました。

「6月29日」「アリゾナ州デザート・ダイアモンド・アリーナ」と、具体的な日時と会場も明らかになっています。

井岡一翔は昨年大晦日のエストラーダ戦を目指して交渉していましたが、報酬面をめぐって決裂。

それでも粘り強く交渉再開していましたが、マッチルームとDAZNが井岡戦よりも高額のファイトマネーを用意したようです。

仕方がありません。これがプロボクシングです。

前向きに考えると、エストラーダとバムの勝者と戦える可能性は残されています。

現地に乗り込んで、試合終了後のリングに上がるのも悪くありません。


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日本人が4つのストラップ全てを掴む可能性に沸いているバンタム級は、WBAが井上拓真、WBOが中谷潤人と、すでのその半分を掌握しています。

一方で、2022年12月に井上尚弥が完全統一、つまり目ぼしい王者をKOして焼け野原にしてから時間は経っておらず、井上のレフトオーバー、いわゆる残飯と呼ばれるボクサーもトップ戦線にとどまっています。

IBF王者エマヌエル・ロドリゲスとWBO王者ジェイソン・モロニーは言うまでもなく、ノニト・ドネアに敗れた系譜としては拓真も間接的なレフトオーバー。

どれもこれも傷物だらけ、最強を極める戦いというよりも敗者復活戦の色合いが濃い、日本のボクシングファン以外の目には興味の失せる階級になっているといえば言い過ぎでしょうか?

それでもただ1人、中谷潤人だけが残飯と落武者に溢れるバンタム級で特異な光を放っています。

バンタム級で戦ったのは1試合だけにも関わらず、ESPNとリング誌の階級ランキングですでに1位。

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5月4日に西田凌佑がIBF王者ロドリゲスを攻略、5月6日に武居由樹がWBO王者ジェイソンをKOすると、5月上旬で4団体コンプリート。

ここに、非・残飯系の那須川天心、堤聖也、栗原慶太らが絡んでくるはずです。

日本のボクシングファンにとっては、これから豪華なご馳走にどんどんありつけそうです。

そして。

この焼け野原から井上尚弥を打ち倒すファイターが生まれるとしたら、映画みたいな筋書きになります。


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低迷期の階級をハシゴしながら、バンタム級に続いてジュニアフェザー級も焼け野原にしようとしているモンスター、井上尚弥。

ルイス・ネリはモンスターの凶拳の餌食にはなっていませんが、すでに傷物で、その技術の拙さと、パンチの無さはボクシングマニアに広く知れ渡っています。

その欠陥をパンチの回転力で補ってきたネリは、足掛け13年のプロキャリアで36戦35勝27KO1敗の星勘定を残してきました。

バンタム級とジュニアフェザー級の2階級でアルファベットタイトルを獲得していますが、バンタムは劣化バージョンの山中慎介、ジュニアフェザーはアーロン・アラメダとの決定戦。決定戦で就いた王座は格が下がると見る向きもあるかもしれませんが、要は「誰に勝ったのか」です。ネリはアラメダです…失笑するしかありません。

そのタイトルもWBA王者ブランドン・フィゲロアとの団体統一戦に敗れて失います。

立派な戦績に比べると世界評価はあまりにも低く、せいぜい「雑魚挑戦者とは呼べない」レベル、それがネリです。



井上が上げた階級のレベルは、PFPファイターが量産される前のジュニアバンタム級でだったり、強豪席捲が一段落したバンタム級やジュニアバンタム級と、非常に悪い巡り合わせになっています。

「ストロー級はレベルが低いけどウェルター級は高い」なんていう階級格差を排除したPFPのような考え方では井上も評価されますが、「誰に勝ったのか?」となると「それは聞かないでくれ!」というレベルです。

5月6日のネリ戦は、とりもなおさず、絶対に負けられない相手との戦いということ。

テレンス・クロフォードはエロール・スペンスJr.に勝ってPFP1位の座をコンクリートし、スペンスはリング誌など多くのPFPランキングに名前を残しています。

しかし、ネリごときに圧勝しても井上の強さではなくネリの弱さが改めて際立つだけ。万が一、ネリが勝ってもPFPに入るでしょうか?

その意味では、この試合は井上にとってローリスク・ローリターン。圧勝で当たり前と見られています。 


What's at stake in Naoya Inoue vs Luis Nery ?

それでも、井上がステイクしているのは「すべて」と言い切って良いでしょう。負けたら「すべて」を失う、それほど意味のない相手だということです。

そして、ネリは、軽量級であるがゆえにけして人気があるわけでもなかった立場が大きく変わります。アブネル・マレスやレオ・サンタクルスのような、軽量級としては人気のあるスターの座を手に入れるはずです。何よりも「井上に勝った」という偉業はボクシング大国メキシコでは大きく取り上げられるでしょう。

アンディ・ルイスJr.のように大統領府に招かれることは、さすがにないかもしれませんが、凱旋帰国の暁には大歓迎を受けるのは間違いありません。



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2017年8月15日 京都 島津アリーナ

WBCバンタム級タイトルマッチ



まず、リング誌の試合レポートの冒頭から。


First,there was an upset.  Then there was controversy.

まず、結果は番狂せだった。それから、大きな議論が巻き起こった。


そうです。

試合前は対戦相手の質と経験値で上回る山中が、のちに指導したフレディ・ローチが「ジャブすらまともに打てない」と嘆いた欠陥ボクサーを後半までに沈めると見られていました。

現実は初戦も、7ヶ月後の再戦も惨敗でした。

初戦でタオルを投げた大和心トレーナーを本田明彦と浜田剛史は「まだこれからというときに」と、大和を非難しましたが、まともなボクシングファンが見ればワンサイドゲーム、あそこで止めなければ悲惨な結末が直後に起こっていたでしょう。

山中も「まだできた」とタオル投入にあからさまに不快感を示しました。

ネリが山中との2試合で見せたパフォーマンスは、キャリア最高の出来でした。

ネリは過小評価されていたのでしょうか?結論から言うと、相性が悪すぎました。

拳をしっかり返したあとさらに下方に押し込む「神の左」は、その威力の代償として引きの遅さが欠点でした。そして、山中は12度の防衛を重ねる中で、左のウィニングショット以外のパンチまで引きが遅くなっていました。




対戦相手を事前に呼んで記者会見。村田諒太の世界戦ではデフォルトでしたが、軽量級では日本史上初ではないでしょうか?



世界基準ではけしてスピードがあるタイプではないネリですが、34歳バージョンの山中にとっては速過ぎ、パンチの引きが遅い山中には最も対応しずらい相手でした。

さらに良い意味で鈍感なネリは山中のパンチを全く恐れずにクロスレンジで連打を繋いできました。

ネリの強さはこの矢継ぎ早の連打を強引に打てることに尽きます。

そうです、それに尽きる、それだけが武器なのです。もちろん、強引な連打は大きな隙も晒しますから、対戦相手が怯まなければ、フィゲロア戦のような消耗戦に突入してしまします。

自分よりも威力のあるパンチを持つフィゲロア相手に、あの展開は自殺行為でしたが、不器用なパンテラはBプランなど持ち合わせていません。

ボクシングの基礎技術は無い。1発のパンチもない。当て勘も特筆するレベルではない。井上尚弥は「打たれ強い」と警戒しましたが、それも非常に怪しい。

スティーブン・フルトンやマーロン・タパレスよりは打たれ強いかもしれませんが。

この連打に巻き込まれてしまうと厄介ですが、それでも1発のパンチがないので決定力に欠け、減量苦で階級アップ目前のブランドン・フィゲロアにさえグズグズの打撃戦の末に悶絶KOされてしまいました。

いいパンチも当てていましたが、悲しいかな世界基準ではとにかくパワー不足、フィゲロアがネリの距離に付き合ってくれたのに前半戦を耐えるのが精一杯。

井上相手にポール・バトラーのように、とにかく防御専心で戦えば判定まで逃げ込めるかもしれませんが、逃げ慣れてないネリではそれも難しそうです。

ネリが1発で局面を変えることができるパンチャーなら、まだ怖さがあるのですが…。

現在の井上は〝魔法のガウン〟を完全に着こなしている状態です。

直近3試合の対戦相手バトラー、フルトン、タパレスはモンスターへの敬意を十二分に表明して序盤で破壊されないよう慎重に戦いました。

ただ、ネリはスタイル的にあれしか出来ない、ノニト・ドネアと同じ単細胞です。そして、ドネアほどの気持ちの強さは持ち合わせていません。それ以前に、パンチ力が全く違います。

かつて、井上はジョンリール・カシメロの戦いぶりを「アホです、アホ」と表現しましたが、それはクアドロ・アラスの危地に躊躇なく飛び込む剥き出しの勇気と勝負根性への最大級の賛辞でした。

大橋秀行は「井上にとって怖さは過去一番。パンチがある。ドネアもあったけど、怖さもネリはある」とリップサービスしてますが、1発のパンチはありません。




 Then there was controversy.


山中との初戦から9日後、WBCはVADAによる試合前のドーピング検査(検査費用約150万円は帝拳が負担)で陽性反応が出たと発表。

WBCは結果的に「ドーピングは食事に含まれた成分で故意ではなかった」と不問にしましたが、リング誌はネリに移動したバンタム級タイトルを山中に差し戻し。汚れたパンテラをランキングから追放します。

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【左】一旦はネリを新王者と認定したリング誌でしたが、【右】Bサンプルも陽性反応を示した時点で、ネリを追放。


引退も考えた山中は「ネリとの再戦」のリングに上がります。

2018年3月1日、両国国技館。ネリは体重超過を犯して、秤の上でWBCストラップを失う大失態。

キャリア唯一の黒星を雪辱して引退する。山中の描いていた有終の美は、わずか2ラウンド63秒で打ち砕かれてしまいました。

これを受けてJBCはネリに対して無期限の活動停止処分(ライセンスを発行しない)を決定。事実上の永久追放です。

今回、井上に選ばれたことで、JBCはネリのライセンス申請資格回復を認めて、晴れて試合ができることになりました。

ちなみに、山中との再戦でネリが犯した体重超過について、WBCの処分は6ヶ月間の活動停止処分、つまり9月1日にライセンスが交付されるという大甘裁定。もちろん、これはWBCやネリに限ったことではありません。

これが、ボクシング界の常識です。

ボクシングの場合、世界的な統括団体が存在せず、厳しい処分を科したとしてもJBCの日本ローカルが限界です。そもそも、ドーピングに対する規定も各国・各地域のコミッションによってまちまち。

他のスポーツなら選手生命を絶たれるような長期間の出場停止処分が下され、どんな偉大な実績を残していても殿堂入りなどあり得ません。

ボクシングの常識は、他のスポーツから見れば非常識も甚だしいのが現実です。

それにしても活動停止処分6ヶ月なんて、年に3試合やれば多いトップ選手にとっては痛くも痒くもありません。

喜劇的に人気のなかったゲーリー・ラッセルJr.は「ドーピングしてないのに、年にせいぜい1回しか試合組んでもらえない俺ってある意味、無実の活動停止処分を受けてるよね?人気がないのってドーピングよりも悪なの?」と泣き出すでしょう。

カネロ・アルバレスは6ヶ月の活動停止処分をこれ幸いと、古傷の膝の手術・クリーニング期間にあてました。

ラッセルには申し訳ありませんが、このスポーツで人気がないということはドーピングするよりも悪なのです。

まあ、ネリも人気があるとは口が裂けても言えませんが、ラッセルよりはマシです。

ネリは〝復帰戦〟でいきなり空位のWBCバンタム級シルバー王座がメキシコで用意され、2019年3月16日にはエロール・スペンスJr.とマイキー・ガルシアのメガファイト、AT&Tタジアムのアンダーカードに抜擢されます。

しかし、エディ・レイノソから「普段の生活から規律が出来ていない」と注意される自堕落は治りません。

目指していた「バンタム級での王者復帰」は当然、難しくなりました。

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井上尚弥とルイス・ネリの試合が5月6日、東京ドームで決定しました。

ボクシングの興行としては1990年のマイク・タイソンvsジェームス・ダグラス以来、34年ぶり。

さて、トップランクが制作したポスターです。

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安易な構図です…これ以上は言いませんが。

ここでは、JUNIOR FEATHERの階級表示が少し気になりました。

この試合が最も注目されている日本では、ジュニア表記は一般メディアやほとんど全てのファンの間では〝絶滅〟。

中には、世界的にジュニアからスーパーに表記が変わって統一されたと思い込んでいる人もかなり多そうです。

実際には全米ボクシング記者協会がジュニア表記、ESPNもリング誌もジュニア表記です。

この場末のブログではジュニアを使い、その理由も説明済みですが、今回のように日本の一般のスポーツファンにも告知したい場合はSUPER BANTUM、スーパー表記で差し支えないと思います。

なんにせよ、実際の試合でも日本では間違いなく「スーパーバンタム」とコールされるはず。

海外でもこの試合に興味津々なのはコアなマニアたちですから、スーパー表記に戸惑うことはないでしょう。


次にPVのお話。

海外のビッグファイト、メガファイトでは、試合の前景気を煽るために〝嵐の前の静かさ〟をベースとしたPVが制作され、全米主要都市をサーキットするプロモーショナル・ツアーまで実施されます。

もちろん、予算など諸々の問題があるでしょうから、ツアーは難しいにしても、格闘技ファンの映画監督や映像作家にPV制作を依頼するのはありだとおもいます。

フロイド・メイウェザーのPVなんて、試合よりも面白かったです。



試合とは関係のない話で恐縮でした。

まあなにわともあれ、5月6日、今から楽しみです。
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5月6日(月・こどもの日の振替休日)

文京区水道橋 東京ドーム

コミッション:日本ボクシング・コミッション

プロモーター:ボブ・アラム
     本田明彦
     大橋秀行

メディア:アマゾンプライムビデオ

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Jr.feather-weight Undisputed championship



井上の完全統一ジュニアフェザー級タイトル初防衛戦。

29歳のメキシカンは回転の速い攻撃が特長ですが、ボクシングの組み立ては一面的、打ち終わりのディフェンスには大きな欠陥を抱えています。

井上は「過去の因縁は関係ない」と口にしていますが、観客のニーズに敏感なモンスターはフニッシュにもこだわっているかもしれません。

一番分かりやすく、両者の技術・スタイルから簡単に帰結しそうなのは「ボディで悶絶KO」ですが、すでにブランドン・フィゲロアがやっちゃっています。

さて、どんな幕切れになるでしょうか?

とにかく、とりもなおさず、井上のKO勝利は揺るぎません。



WBAバンタム級



拓真はノルディーヌ・ウバーリ、石田はカリド・ヤファイに完敗はしていますが、惨敗経験のないタフな日本人同士の対決。

予想の難しい試合です。

絶対間違い無いのは、スペクタクルな展開にはならないということだけ。

良い意味では、プライド剥き出しの戦いになるはずです。

12ラウンド終了してもどっちが勝ったかわからない、ジャッジペーパーが読み上げられるときがクライマックス、そんな試合になりそうです。




WBAフライ級



アルテム・ダラキアンを番狂せで破った阿久井の初防衛戦。

2021年7月、当時の日本王者・阿久井に桑原が挑戦して以来の再戦です。

初戦は強打の阿久井にスピードの桑原と、実力伯仲の好カードと見られていましたが、王者が初回にダウンを奪うとそのまま主導権を握り続けて、最終10ラウンドに挑戦者を痛烈に沈めると染谷道朗がノーカウントで試合を止めました。

桑原はキャリア初黒星から5連勝(4KO)と、阿久井へのリベンジと世界を目指して突っ走り、その二つのチャンスを同時に掴みました。

3年前の結果だけでなく、強豪ダラキアンを破って戴冠、充実している阿久井の有利は動きませんが、初戦からレベルアップした2人の激突、興味の尽きない再戦です。




WBOバンタム級



那須川天心、お先に。

元K1ファイター武居が挑戦するのは、井上のレフトオーバー、モロニー。

井上に大敗してから6連勝中のオーストラリア人ですが、世界戦2試合ではいずれもMDと精彩を欠き、自慢の強打も鳴りを潜めています。

攻撃力とガッツが取り柄の王者ですが、その防御はサウル・サンチェスのような世界基準にないファイターのパンチでも当てられてしまうザル。

サンチェスよりもパワーに優れ、見ずらいサウスポーの武井のパンチを受けると、ガッツだけでは判定に持ち込めないでしょう。

武居の不安材料を挙げるとしたら世界基準の相手との対戦が一度もないまま、モロニーへ挑戦するということ。

モロニーが武居のプレッシャーに下がるようなら、井上戦以上の惨敗が待っています。

中盤KOで新王者誕生。
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2022年でリング誌が廃刊に追い込まれてから、英語のボクシング専門誌として孤軍奮闘のボクシンニューズ(BN)誌。

毎週木曜日発売のBN誌、いま私の手元にある最新号は2月22日号。

2月24日に東京・両国国技館で行われるトリプル世界戦を4ページにわたって特集。

英国人でも米国人でもない軽量級の選手を大きく扱うことは、インターネットもユーチューブも存在しなかった時代では考えられないことでしたが、時代は変わりました。

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>>>>>>〝本流〟のヘビー級に興味がない一般的なボクシングファンはいない。彼らは、ミドル級やウェルター級といった〝人気〟階級もチェックするかもしれない。

しかし、そこから外れた軽量級は、母国の選手が活躍して初めて少し目が向くという程度。

それでも、カルトといっても良いかもしれない熱心でコアなマニアは、井上尚弥や井岡一翔、寺地拳四朗、重岡兄弟、田中恒成といった日本の軽量級を熱心に観察し続けている。

「極東の軽量級ボクサー」というだけで、興味を失ってしまうボクシングファンも多いだろう。

あるいは、万一興味を持っても彼らの試合は中継されないこともあり、されたとしても(英国時間の)平日の夜明け前に行われるのだから「Attention(注目しろ)」という方がおかしい。

Attention please、騙されたと思って一度見てください、というのが適切だろう。

明後日、東京でWBC王者アレハンドロ・サンチアゴに挑戦する中谷潤人は、マニアたちが追いかけまわす日本人軽量級ファイターの中でも異彩を放ってきた。

15歳で単身ロスアンゼルスに乗り込み、ルディ・エルナンデスに師事した中谷。

米国の名匠は「私が指導したボクサーの中で、今の所、中谷が最高だ。非常に規律が高く、練習に貪欲で、試合ではやるべきことを落ち着いて執行してゆく」と絶賛している。

多くのメディアでPFP1位と評価されるボクサーを目指す中谷は、そこにたどり着く効率的な方法をすでに知っている。

「現時点で井上尚弥と戦う資格はない」と断りながらも、「中谷は井上と戦うべき、と多くのファンから言われるようになれば、喜んでそのリングに上がる」と、日本の頂点を倒すつもりだ。

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