フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 村田がカネロを倒す!

日本のボクシングファンが〝ラスベガス〟への想いを募らせる病因は一体どこにあるのでしょうか…?

××××××××× 

①明治維新から連なる脱亜入欧思想。

②米国から届く桁外れのメガファイトの刺激。

③野球やサッカーで一般化した「世界最高峰」で戦うことへの憧憬。

とりあえず、こんな三点が思い浮かびましたが、どれも一緒、結局は同根です。
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>①についてはスポーツに限らず、音楽やカルチャー全般でもいえることです。

木村翔は中国のスポーツファンなら知らない人はいない存在ですが、米国で同じ人口の認知度を獲得したなら、日本での知名度・尊敬度は全く違ったでしょう。

地球的に巨大な人口と面積を抱えるアジアで大人気を博すよりも、僻地の欧米で注目される方がカッコいい、というのはもはや哀しき奴隷根性にも思えてきます。

かくいう私もお隣の国で使われるハングルや中国語は全く読めない書けない理解できないのに、英語はなんとか読み書きできます。

一方で、韓国や中国は日本語を理解する方が想像以上にに多いんです。

これって、やっぱりおかしなことだと思うんです。


>②は、スポーツの国際化です。

70年代のアリの時代に衛生放送を通して世界中のスポーツファンが生中継で試合を目撃できるようになり、放映権料も高騰します。

トップレベルのプロアスリートが手にする報酬は、パンデミックで小休止とはいえ、劇的に向上し続けている基調は変わりません。

ボクシングではクローズドサーキットやPPVによる高額の〝集金制度〟によってもほんの一握りの選手報酬が跳ね上がっています。

しかし、これらの事象は人気階級の人気選手と、そうではない選手との貧富を大きく広げる格差も生み出しています。

日本を例外に、格差の底辺である軽量級でもメガファイトがラスベガスで出来る、というのは全くの大間違い、幼稚な妄想に過ぎません。


>③は、長谷川穂積や西岡利晃、井上尚弥とその信者らに連なるラスベガス幻覚症状を引き起こした、主要な〝病因〟でしょう。

米国や欧州の世界最高峰リーグでプレーする野球やサッカー選手を目の当たりにしたボクサーやファンは「カッコいい!」「ボクシングにもあの舞台がきっとあるはず」と思い込み、軽量級と外国人という取り返しのつかない二つの重い十字架をどこかに置き忘れて妄想だけを膨らませてしまうのです。

①②③が行き着く、挙げ句の果ては「西岡のMGMメイン」です。

〝戦犯〟のWOWOWは「日本スポーツ史に残る大快挙」を無かったことにしていますが、もうあんなことは二度と繰り返してはいけません。

西岡には過酷ですが、そのためにも、忘れてはいけないのです。


それでは、ラスベガスを中心とするネバダ州で行われた「本物のメガファイト」を振り返りましょう。
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ネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)が公表しているゲート収入ランキングをもとに、日本人ボクサーがそこに食い込む可能性はあるのか?

日本人がラスベガスのメガファイトのメインを張る。

現状、最も可能性が高いのは村田諒太がカネロ・アルバレスを東京ドームで粉砕、カネロが再戦条項を行使して、T-Mobileアリーナにミドル級金メダリストを引っ張り上げることです。

十分にありえます。

そして、第二、第三の村田諒太が生まれれば、夢は何度も見ることが出来るでしょう。

屈指の人気階級ミドル、あるいは米国で最も注目されるウェルターでタレントを輩出し続ければ、日本人がラスベガスで大魚を釣り上げる日が必ず訪れるでしょう。

一方、井上尚弥のケースは軽量級にとどまる限り、可能性は限りなくゼロです。

メキシカンの超人気選手がバンタムやジュニアフェザーに2、3人突如出現するなどの僥倖がもたらされるのなら、風向きは変わってきますが…それでも軽量級にとどまっている限り、相当に厳しいです。

ここで、一番下のネバダ州史上最多観客試合を見て下さい。

1982年6月11日にシーザースパレスで行われたラリー・ホームズvsゲリー・クーニー。2万9214人の有料入場者を集めました。これが、最高です。

この試合を除くと、歴史上、ネバダ州で有料入場者が2万人に乗ったイベントはありません。

さいたまスーパーアリーナがネバダ州にあれば、昨年の井上vsドネアは史上2位だったということです。

確かにゲート収入を取り上げると、35位のカネロvsジェイコブスでも868万5750ドル、日本円で約10億円と、推定3億円前後の「さいたま」を圧倒しています。

これは席料の差、客層の差です。

ラスベガスに来る客は富裕な観光客やハイローラー、カネロvsジェイコブスは1万5730人が入ったとはいえ前座で空席が目立ったように純粋なボクシングファンばかりではありません。


先程、私はNSACのゲート収入ランキングを「本物のメガファイト」とご紹介しました。

さて、たまアリの井上vsドネアと、T-Mobileアリーナのカネロvsジェイコブス、どちらが本物のメガファイトだと思いますか?
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9月12日に予定されていたカネロ・アルバレスの試合まで33日。

カラム・スミスで内定と言われた対戦相手もいまだに正式発表はありません。
 
当初はスミスが当初提示の報酬600万ドルを拒否して交渉が行き詰まったと報道されましたが、その後スミスは態度を軟化。

今度は、DAZNが要求する報酬減額にゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)とカネロ陣営が難色を示していることが大きな障害になっています。

DAZNはパンデミックでスポーツ産業が大打撃を受けている環境下、米国で無名のスミスでは視聴者数が伸び悩むのは目に見えていることから、カネロの報酬と放映権料などを含んだ4000万ドルの最低保障の金額は捻出できないと主張しています。

舞台を英国に移すとなると「DAZNの米国戦略の橋頭堡」として、カネロと巨額の契約を締結した経営方針から外れてしまいます。

というよりも。スミスの人気は英国でもトップクラスではありません。「人気があればWBSSなんかに出場しない」(ビリー・ジョー・サンダース) のです。

「不人気ボクサーによる詐欺的トーナメント」がWBSSの正体ですが、井上尚弥だけは例外でした。
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But with Callum Smith, he’s an unknown with American casual boxing fan. Callum isn’t even popular in the U.K.

DAZN may not get their money’s worth with Canelo if he spends the remainder of his 11-fight, $365 million contract fighting guys like Saunders, Callum, and fighting Ryota Murata in USA.

スミスは米国では無名、それどころか英国でも人気が高いわけじゃない。

もし、カネロがスミスやサンダース、村田諒太のような米国で人気のないボクサーと戦い続けるとしたら、11戦3億6500万ドルという巨額の投資は回収できない(村田の場合は東京でやるなら話は変わるが、大観衆を入れることができない現状では東京開催は難しい)。


スミスのトレーナー、ジョー・ギャラハーは「我々はファンに楽しんでもらうために、あらゆる譲歩に応じた。あとは向こうの問題。カネロがDAZNと良好な関係にないこと、GBPとも確執が生じていることが事態を複雑にしている」と、障害物が二つあると指摘。

「エディ・レイノソがスミスと戦うと公言していること、DAZNもスミスが落とし所とわかっている。我々に出来ることはもう一つも残されていない。あとはカネロの事情だけだ。日程は後ろ倒しされるだろう」とも。

ギャラハーは日程後ろ倒しと考える理由を明らかにしていませんが、同じ9月12日に予定されているマイク・タイソンvsロイ・ジョーンズJr.とのバッティングを避けるべき、ということはDAZNも含めたカネロ陣営はしっかり把握しているはずです。

条件交渉が難航していることを理由に、日程を先送りする。

そうだとしたら、賢明な判断です。

まさか正直に「タイソンvsジョーンズに勝てないから延期します」とは口が裂けても言えませんから…。


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どうも雲間が晴れません。

4月25日にラスベガスのマンダレイベイ・イベンツセンターで行われる予定だった「井上尚弥vsジョンリール・カシメロ」の世界バンタム級3団体統一戦は、このパンデミックで延期。

当初、トップランクが「9月」と発表していた再調整の日程は、先月上旬に「9月か10月」と幅を持たされてしまい、その後は音沙汰無し。

先日のWOWOWエキサイトマッチではジョー小泉が「日本開催もありえる。どちらでやるにしても年内で試合をさせてあげたい」と話していましたが、先行きは非常に不透明なままです。

井上を共同プロモートするトップランクは先月から米国での興行を再開、当面の問題は「井上がいつ米国に入国できるのか?」だけに見えます。

しかし、現実には感染防止の設備と態勢が整ったラスベガスのMGMグランド・カンファレンスセンター(The Bubble)の〝一点限定〟の興行しか出来ていません。

米国の感染状況を見ても、パデミック対策が完備されたThe Bubble から離れて、MGMグランドガーデンアリーナなどの通常会場への移行にはもうしばらく時間がかかりそうです。

井上の興行が9月か10月とすると The Bubbleでの無観客になるか、それともキャパの30%前後の観客を入れる形になるのか微妙なタイミングですが、いずれにしてもハコはラスベガスに限定されますから、井上の渡米許可の以前の問題が立ち塞がります。

つまり、トップランク内での優先順位です。
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昨年11月7日のWBSS決勝での勝利を前提に、井上と複数年契約を結んだトップランク。

ボブ・アラムが「2020年は米国で2試合、年末の日本で1試合」と計画を語りましたが「米国の試合では日本の富裕層が2000人は詰めかける」「年末の日本は埼玉に匹敵するメガファイト」と完全日本依存の皮算用でした。

井上信者が見た「もう日本では見られない。米国でPPVスターになる」「米国に高額条件で引き抜かれた」という不憫な幻覚とはあまりにも大きなギャップです。

トップランクとしても、ゲート収入が見込めない現状に加えて、ESPNとしても米国で無名の井上が多くの視聴者数を獲得することなど期待できるわけもなく、後回しにされるのは仕方がありません。

日本のボクシングファンも、米国からは全く情報が発信されずに、より米国から離れたフィリピンメディアからの情報しか届いていない現実がそろそろ理解できてきたはずです。

井上尚弥に込めた日米の期待の温度差にいかに巨大なギャップがあるかを、ようやく実感しているのではないでしょうか。

トップランクの腰が重いままなら、違約金支払ってでも契約解除でいいと思います。井上の価値が日米であまりにもかけ離れすぎです。

とにかく、年内日本開催は実現しなければなりません。

来日の問題を含めて、カシメロとの調整がつかないなら、今月から入国緩和を段階的に進めているベトナム、タイ、豪州、ニュージーランドのボクサーや、日本人との対戦も視野に入れるべきです。

入国緩和の第二弾にも米国とフィリピンがリストアップされていませんが、滞米中のカシメロが緩和された第三国経由での来日は出来るかもしれません。

しかし「14日間隔離」などが義務付けられると、やはり事実上不可能です。

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村田諒太のケースも井上とよく似ています。

1月にはカネロ・アルバレスとの日本ボクシング史上最大のメガファイトが「年末に内定」とまで報じられましたが、交渉が大詰めを迎えていたといわれるこのイベントも完全棚上げ。

村田も米国での知名度が低いにもかかわらず、カネロの対戦候補に挙げられたことには複数の理由がありますが、やはり井上と同じく「ジャパンマネーの引力」です。

カネロと超大型契約を結んだDAZNの狙いは「米国での契約者」でしたが、完全な見込み違いに終わり、赤毛は巨大な不良債権と化して大炎上しています。

このDAZNを焼き払いかねない火の車を一時的にでも止めることができるのは「東京ドームの村田戦」と考えるのは、日米で失敗を繰り返すDAZNにしては鋭い目の付け所です。

ただし、このパンデミック。東京ドームにアリーナ席含めて4~5万人をスシ詰めするなんて来年でもありえない状況です。

当たり前ですが、「村田vsカネロ」をThe Bubble で無観客なんてのは絶対にありえません。

DAZNは当初、東京ドーム戦を通常枠でなく「3000〜6000円のPPV」「日本企業のCMを入れる」という2本の〝消火器ホース〟を考えていたようですが、これならThe Bubbleでも日本のゴールデンタイムに合わせれば一定の売り上げは収めそうです。

しかし、日本のホースはどちらも不発に終わるんじゃないでしょうか?

「カネロvs村田」はPPV文化のない日本で3000円*30万件も売れません。数が売れなきゃ、CM出稿効果もありませんからスポンサーも集まりません。

さらに、カネロが日本に入国できるかという大前提もあります。カルロス・ゴーンのようにプライベートジェットで来日して隠密入国はできそうですが、犯罪ですね、悪い冗談です。

トップランクからは井上同様に村田の試合の情報発信も、ケアする発言もありません。

「それどころじゃない」のはわかりますが…。 
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ボクシングで、誰の目からも納得出来る採点なんて出来るのか?

100年以上もこのスポーツに取り憑いて離れない問題です。簡単に解決出来るわけがありません。

カネロ・アルバレスとゲンナディ・ゴロフキンの第3戦が9月にAT&Tスタジアム(前カウボーイ・スタジアム)で開催されることで基本合意されました。

DAZNとカネロの間に報酬面で妥協できていないという噂もありますが、この試合をするために2人と大型契約を結んだだけに、このあと交渉決裂する心配はないでしょう。

カネロvsGGG。過去2戦ともに、採点の問題が噴出しました。 

誰もがGGGの勝利を確信した初戦。カネロを118−110で支持したアダレイド・バードは論外としても、日本のボクシングファンには「僅差だがGGGこそ勝利にふさわしい」(ESPN:ダン・ラファエル)という米国メディアの採点には戸惑いを覚えたはずです。

「またラスベガスでカネロ・ジャッジが作動した」(ボクシングニューズ24)のような見方もありましたが、リング誌も115−113とGGGの勝利はわずか1ラウンド差だったと見ています。

あの試合のどこが僅差なんだ? 

互いに手を出しながらも決定打がないラウンド。日本なら単なる突進でも前に出ているボクサーを評価します。そして、ボクシングが格闘技である限り、その見方は正しいはずです。

しかし、ラスベガスではジャブを出しながら下がるボクサーを評価すると言われています。これなら百歩譲って納得できますが、ジャブすらつかずに下がるボクサーが評価されることも普通にあります。

あの砂漠の街は、ジャッジの脳みそまで乾燥させてしまうのかもしれません。

三連休の初日、春分の日にお届けするのはESPNから「ボクシングのスコアリグについて」です。

私見も交えています。




【オープンスコアリングは是か非か?】

ン・ラファエル絶対に反対、これから先もその姿勢は変わりようがない。

WBCがサービスとして始め、日本など一部の地域では「ルール」として完全導入しているが、米国では認めていない。これは正しい判断だ。

途中採点を知ることで、選手が作戦変更することはあってはいけない。

かつてシェーン・モズリーも「8ラウンドの採点発表でリードしていたら、残りの4ラウンドの戦い方は明らかに変わる。試合の3分の1が価値のないものになってしまう」とオープンスコアリングに疑義を呈していた。

ティーブ・キム全く賛同できない。

マーク・ジョンソンは1999年、空位のIBFジュニアバンタム級タイトルをラタナチャイ・ソーウォラピンと争って精力的に動いて素晴らしいボクシング教室を披露したが、この試合で実験的な公開採点が取り入れられていた。

8ラウンド終了のアナウンスで大量リードを聞いたジョンソンは、残りの4ラウンドを時計の針を進めることだけに注力してしまう。

「危険を冒す必要が一切ないことを知ったらだれでもあの戦い方になる」(ジョンソン)。

見ているファンも、途中採点を聞いて試合の興味が削がれることはあっても、ワクワクすることはない。

「ジャッジの傾向を知らずに試合終了のコールを聞いて選手が後悔することを減らしたい」というなら、採点公開のタイミングは3ラウンドと6ラウンドにすべき。

それでも、反対だけど。


+++2人が反対するように、プロボクシングがファンを喜ばせるエンタテインメントである限り、それを阻害する可能性は極力排除すべきです。

さらに、ジャッジは教育や研修制度が充実しておらず、自分の採点に不安を持っているケースもすくなくありません。正確な採点眼を持っている優秀なジャッジでも、他のジャッジの採点を知ることで、不要のバイアスがかかります。

私も公開採点は反対ですが、キムの「3、6ラウンド」は現行の「4、8」よりもマシかもしれません。



【ジャッジ3人は少ない?】

ダン:ジャッジを増やしても問題解決にならない。今以上に混乱した採点、議論を呼ぶ採点が噴出してしまうだろう。

現行の3人制はそれぞれが別のサイドから試合を採点するが、例えば5人制にするならどこに配置するのだ?

量が質を補うことはない。それよりもジャッジの研修や勉強会の機会を劇的に増やして教育体制を充実・持続させることが大切。


キム:絶対に反対。より混乱を深めるだけ。

ジャッジの数を増やせばより公平な採点につながると考える人もいるが、問題は数ではなく能力の低いジャッジが普通に採点席に座っていること。

教育体制を充実させて、明らかにおかしな採点をしたジャッジは排除すべき。


+++これは、難しいですね。私はお二人のように「断固反対」じゃないです。

元レフェリーでジャッジもつとめていたジョー・コルテスの「Elevate the judges」の提案は面白いと思います。ジャッジを高く上げろ。つまり、テニスのチェアアンパイアのように、高椅子に座ってジャッジするというアイデアです。

現在のジャッジの位置からは死角が多すぎるというもので、高椅子が観客の邪魔になるなどの問題が解消できたら実験導入はありだと思いますが…。

さらに、ダウンかスリップかなどの微妙な場面はVARで修正はありだと思います。現行ではスリップだったのにダウンと宣告されると10−8が覆りません。




【レフェリーも「第四の男」として採点に参加すべき?】

ダン:英国ではレフェリーだけが採点する時代もあったが、このスタイルが良いとは思えない。

レフェリーは選手を守ること、ルールを徹底することに集中すべき。それ以外のことを考えながら、試合をさばくべきではない。

この問題についてレフェリーと話す機会もあるが、採点に参加すべきという意見は誰からも出ていない。


キム:レフェリーはリングの中で「第三の男」に徹すべき。

選手にルールを遵守させ、試合を円滑に進めること。そして、選手の安全を優先すること。それ以外の仕事をレフェリーにさせるべきではない。


+++何も言うことありません。


【リプレー録画を判断の材料にすべきか?】

ダン:ネバダ州ですでに取り入れられているように、録画は活用すべき。リプレーを見たオフィシャルがすぐにレフェリーに「事実」を伝えている。

ダウンかスリップか。カットはパンチのよるものか、それともバッティングなのか。ノックダウンのパンチはゴングの前か後か。

そういうケースはリプレー録画で判断すべきだ。

ただし、録画判定で試合が止まったり、遅れてしまうことはあってはいけない。

野球やフットボールと違い、エキストラタイムはどちらかの選手に有利に休息を与えかねず、録画の精査に時間はかけるべきではない。

ボクシングにおけるビデオ判定に許される時間は、ラウンド間の60秒だけだ。


キム:簡単なこと。リプレーで検証すべきは、ダウンがパンチかスリップか。カットはパンチかヘッドバットか。ヘッドバットは偶然か故意か。有効打かローブロウか。

ただし、リプレーが試合の自然な流れに反する懸念は常に存在する。


+++ここで出てきちゃいましたVAR。

大方は賛成ですが、キムの指摘する「自然な流れ」への懸念はありますね。例えば、アンドレ・ウォードvsセルゲイ・コバレフの第2戦。コバレフはローブロウで倒されましたが、あの試合を「無効試合」にしてしまうのは問題です。

話は飛躍しますが、VARの前ではディエゴ・マラドーナの「神の手」もあっさりハンド判定です。「神の手」は神のままでいて欲しいのですが…。



【パンチスタッツも採点の中に組み込むべきか?】

ダン:パンチスタッツが必ずしも試合の実態を表さないのは周知の事実。
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もちろん、パッキャオvsホーンのような「単なる突進を最も評価する」明らかに間違ったジャッジが下された試合では、スタッツが採点したほうが良いが…。

リードをジャブ、後ろの手をパワーパンチと人間がテレビモニターを見ながらボタンを押してカウントするスタッツでは、本当に強力で効果的な小さな左フックを読み取ることはできない。

ボクシングは野球やバスケットボールと違い、スタッツが意味を持たないスポーツ。100本のシングルヒットが一発の本塁打で精算されてしまうスポーツだ。

スタッツをカウントする仕事人の技術には尊敬しかないが、彼らはパンチを数えているに過ぎない。パンチの質を精査しているわけではないのだ。


キム:ありえない。パンチスタッツは試合を振り返り、試合の実態を概観するには有効だが、その材料以上の使い道はない。

スタッツはパンチ数しか表さない。実際の勝負を分けるのはパンチの質。

「私たちの仕事はたくさんパンチを打つことじゃない。効果的なダメージを相手に与えること」。シュガー・レイ・ロビンソンの言葉が全て。


+++スタッツを採点の材料に取り入れるべきという意見は根強いですが、やはりありえないです。

こんなものを採点材料にしてしまうと、今以上にタッチボクシングが隆盛するだけです。




【ジャッジの質を向上させることは可能か?】

ダン:可能だ。やるしかない。トレーニングに尽きる。

業界の体質がぬるま湯すぎる。おかしな採点をしたジャッジが翌週のビッグファイトでもジャッジ席に座ってるなんてことがまかり通っている。

どうして私たち以外は声を上げない?

もちろん、ボクシングの採点はきわめて主観的なものだ。それでも「相手に与えたダメージで測る有効打」「有効打につながる攻勢」「相手の攻撃を無力化し攻撃に繋げる防御」…採点基準は明らかだ。


キム:常軌を逸した採点をしてもまた翌週のジャッジをする。そんなことが繰り返されているうちは、ジャッジの質は向上しない。

これはジャッジの問題ではない。ジャッジだって何のお咎めもなければ、改善しようがない。

他のスポーツではジャッジの教育は厳格で継続的だ。格付けまでされ、解雇されることもある。そしてジャッジを希望する若者たちを積極的に受け入れて、厳しい研修と教育でふるいにかけている。

ボクシングのジャッジには教育も研修も若者への門戸開放もない。ジャッジにも競争を持ち込むことだ。

+++GGGvsカネロの第1戦で世界中の誰が見ても間違った採点をしたバードが、3ヶ月後に日本で二つの世界タイトルマッチのジャッジ席に着いたことは日本のファンはもっとNOと声を上げるべきでしたが…。

不可解な採点をなくす最も効果的な方法はジャッジの質を高めることです。一番簡単に見えますが、これが非常に難しいというのが、ボクシング界が魑魅魍魎である所以のひとつです。

 
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Canelo Alvarez is Boxing's Biggest SuperStar.
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ネロ・ルバレスはクシング界の最ーパーターである。

この事実は受け入れざるをえません。

世界ミドル級のLineal ChampionでPFP1位、そして何よりもメキシカン。 

ボクシングは「人気」が全てのスポーツです。

もちろん、プロスポーツである限り「人気」が最も重要です。
しかし、他のスポーツでは「人気」と「実力」の間には等式が存在しますが、ボクシングの場合は「人気」だけが先行することも珍しくありません。

PFP1位=実力No.1の座に2年も君臨したローマン・ゴンザレスがただの一度も100万ドルの報酬を手に出来なかった 理由は、軽量級だったことと、ニカラグア人だったこと、この2点に尽きます。

もしロマゴンがウェルター級やヘビー級でPFP1位のポジションを2年間キープしていたなら…1試合の報酬は現実のキャリア最高60万ドルの100倍は得ていたでしょう。

欧米で軽視される軽量級でもメキシカンなら、100倍は不可能にしても5〜6倍のファイトマネーを当たり前に手にしていたはずです。 

ロマゴンが日本人だったなら…。

PFP3位の井上尚弥ですらファンの間で神扱いされ、2万人の会場をフルハウスにするのですから、2年間PFP1位なら狂乱の信者が溢れかえっていたでしょう。

しかし、悲しいかな、ロマゴンは軽量級でニカラグア人でした。

もちろん、他のスポーツでも大なり小なりその〝出自〟が問われることはあります。

もし、ロジャー・フェデラーが米国人なら、錦織圭のフォーブス・ランキングの高さを見るまでもなく、さらにとんでもないスポーツセレブになっていたことは間違いありません。

もし、リオネル・メッシが日本人ならどれほどのスポンサー収入があったか、本田圭佑を持ち出すまでもなく、尋常でない金額になることが想像できます。

しかし、テニスでもサッカーでもボクシング以外のあらゆるスポーツでは「人気」はスポンサー収入にしか反映されません。

そして、試合報酬の大きさを決めるのは「実力」だけ、なのです。

ボクシングのスーパースターの系譜を振り返ると①五輪金メダルから慎重な温室マッチメイク→スーパースター(ジョージ・フォアマン、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ)②実力+キャラ設定(フロイド・メイウェザーJr.)③圧倒的実力+運(マニー・パッキャオ)の3パターンに限定されてきました。

五輪金という問答無用の印籠を手にしてプロ入りする、メイパックのような前代未聞のスタイルを確立する…それらある程度納得出来る「正攻法」でした。

ところが、カネロは金メダルどころか五輪にも出れないカスアマにもかかわらず、メキシコのリアリティ番組で人気者になり、プロデビューから温室の中に線路が用意されたのです。

ちなみにカネロのアマ戦績は「44勝0敗」「44勝2敗」「20戦無敗」「20戦2敗」「約20戦して勝ったり負けたり」など諸説乱れています。つまり、大したことなかったのです。

プロ入りしてからは弱い相手があてがわれますが、3戦目でプロデビューの選手相手にスプリットデジションの命拾い(弱いと思ってたのに実は強かった、のちのIBFライト級王者でした)。

このあたりはマイケル・カルバハルのデビュー戦にも共通した「温室栽培なりの難しさ」です。

ただ、カルバハルでも銀メダルでした。

「そのうち躓く」。

誰もが、そう思っていました。

初の世界タイトルを不可思議な相手との決定戦で獲ったときですら「この人気者は練習熱心でボクシングに全身全霊を捧げている。しかし本物の世界基準の選手を相手にしたらひとたまりもない」(リング誌)と、世界王者としての実力評価は最低でした。

温室と線路を与えるほどのアマ実績もないのに、プロ入り後は過保護のマッチメイク。

どう考えても「そのうち躓く」。

誰もがそう思っていましたが…。 

ただ、一つだけ気がかりなことがあるとしたら…。

赤毛の少年がプロ入りしたのは、15歳のときでした。 
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現在のミドル級シーンはどうなっておるのか?!

リング誌とESPNのランキングを見ると…。

【リング誌】王者:カネロ・アルバレス ①ゲンナディ・ゴロフキン ②デメトリアス・アンドラーデ ③ジャーモル・チャーロ ④セルゲイ・デレビャンチェンコ ⑤村田諒太 ⑥カミル・シェルメタ ⑦クリス・ユーバンクJr. ⑧マチェイ・スレッキ ⑨ロブ・ブラント ⑩リーアム・ウィリアムス

※リング誌はチャンピオン制度を採用しているので王者も含めて11人。

【ESPN】①カネロ・アルバレス ②ゲンナディ・ゴロフキン ③デメトリアス・アンドラーデ ④ジャーモル・チャーロ ⑤セルゲイ・デレビャンチェンコ ⑥村田諒太 ⑦ロブ・ブラント ⑧クリス・ユーバンクJr. ⑨マット・コロボフ ⑩ハイメ・ムングイア
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2大メディアのランキングは村田を6位とするトップ6までが完全一致。

それ以下ではブラントとユーバンクJr.が共通してランクインしているものの、順位は食い違っています。

またリング誌はスレッキとウィリアムス、ESPNはコロボフとムングイアを10位内に数えており、ここでも相違が見られます。

リング誌とESPNのセレクトから漏れてしまった強豪となると、エスキバ・ファルカンくらいで、そのファルカンも人気が上がらず、対戦相手のあまりの低さとトップ戦線に乗り出せないジレンマに悩んでいます。

リング誌とESPNでともにミドル級6番目評価の村田ですが、上位評価の選手と戦うとなるとデレビャンチェンコ以外は不利のオッズが立つでしょう。

では、下克上を起こされるとしたら?明らかに不利のオッズが立つ相手は下位に見当たりません。無敗のムングイアの評価が高いものの、ゲイリー・オサリバン戦を見るとミドル級へのアジャストは時間がかかりそう。

昨年も井上岳史を仕留めることが出来ず、デニス・ホーガンを持て余し、今年はオサリバンに押されたムングイアは現時点ではメキシカンの恩恵に浴した過大評価の23歳です。



前回で取り上げさせていただいた「ななし」さんの〝4軍構想〟は3つのリーグにカネロ、ゴロフキン、チャーロ兄、アンドラーテ、デレビャンチェンコ、ユーバンクジュニア、コロボフのわずか7人がまたがる考え方が誤解を生むのであって、実態はリング誌やESPNと大きな齟齬はありません。
 
つまり、どう自虐的に見ても、現在の村田の実力がミドル級トップ10からこぼれることはないでしょう。

もちろん、カネロと戦うとなると不利予想は免れませんが、そもそもカネロと五分の評価を受けているなら、ボクシングファンもここまで大騒ぎはしません。

ラグビーでいうとスーパーラグビーにおけるサンウルブスみたいなもんですが、村田の場合はカネとヒトのかけ方が半端ないです。

カネロも同じプロテクトされまくりのキャリアを歩んでいます。

ただ、村田の場合はプロで世界王者になるよりも遥かに難関の五輪で優勝しているわけですから、カネロが享受している脈絡のないプロテクトとは色彩が違います。
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Should he be successful on May 2, a much anticipated third bout with Golovkin is likely for September. After that, a possible trip to Japan to face 2012 Olympic Gold medalist Ryota Murata could be next !!!

It’ON !!!

日本ボクシング史上最大のイベントが内定しました。
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12. ななし 2020年03月07日 09:16
 
シビアなアメリカを主戦場に3軍から4軍レベルのボクサーに、3000万レベルのファイトマネーでアメリカでブランドにボコボコにされ、日本でようやく勝利したマッチメイクに守られているガラパゴス第2のベルト村田がいきなり、一軍でボクサーの中でもっとも稼ぐカネロとの対戦だから笑えます。
ゴロフキン、チャーロ、アンドラーテ、ジェイコブス、デレビチャンチェンコ、ムンギア、クリスユーバンクをさしおいてだから、実績もないのに、4軍クラスが1軍のトップと試合する。ある意味すごいことです。 (原文ママ)


村田諒太はどんなに自虐的に見ても「4軍」じゃないですね。

ななしさんも「1軍から4軍までの所属選手をそれぞれ教えて」と聞かれたら涙目になって黙り込んじゃうんじゃないでしょうか。

シビアな欧米メディアで、村田の評価は lower-top-10 contender(ミドル級トップ10だが下位)です。「1軍だけどトップじゃない」という見立てです。

もちろん「村田諒太vsカネロ・アルバレス」は日本ボクシング史上で「図抜けて大きなイベント」になりますが「ステージと技術において最高の試合」か?…となると、限りなく大きな疑問符が付いてしまいます。

ボクシングと他のスポーツで決定的な違いは世界的な統括団体が存在しないにもかかわらず、怪しい承認団体がいくつも跳梁跋扈していることから生じています。

もっとわかりやすく言うと、まともなスポーツでは「ステージと技術において最高の試合」と「最も大きなイベント」は美しいイコールで結ばれています。

そして、その試合は全く公平な条件で行われます(スキージャンプのように身長とスキー板の長さを比例させるあからさまな後出しルール改正や、「中東の笛」のような露骨すぎる地元判定もありますが)。

しかし、ボクシングにおいては人気選手の試合が「最も大きなイベント」であり、そこには(最強決定戦などの)ステージや技術の精度は全く関係がありません。

さらには、Aサイドの人気選手はキャッチウェイトやリングの大きさ、カンバスの硬さ、ロープの張りなどもオーダーメイド、対戦相手は〝手枷足枷〟を嵌められた状態でリングに上がります。

他のスポーツで言えば「フェデラーのコートだけ異常に狭くて相手のコートは広い」「バルセロナのゴールは小さくて相手チームのゴールは大きい」みたいなものです。

そもそも、他のスポーツでは選手が対戦相手を決めるなんてありえません。チャンピオンの前に現れるのは過酷な挑戦権争いを勝ち抜いてきた手強い猛者ばかりです。

「フェデラーがまた雑魚狩り」なんて批判は聞いたことがありません。

このAサイドの利益を満身で享受し「カネロウェイト(自分に都合の良い契約体重を相手に押し付ける:155ポンドという数字を指すことも)」「カネロピック(危険の少ない相手や劣化した過去の強豪を選ぶ)」と後ろ指も差されながら成長してきた〝過保護な怪物〟がカネロです。

そして、村田も日本ボクシング史上、最もプロテクトされたボクサーでしょう。

その意味でも「村田vsカネロ」は、プロボクシングが内包する現実を見事に映し出した象徴的なイベントです。

では「村田vsカネロ」は YouTuber 対決やメイウェザーvs那須川と同根の茶番劇か?となると、そうじゃないから、ボクシングの魔宮は奥深いのです。

世界屈指の広告代理店がプロジェクトチームを結成してプロ入りした「スポーツよりもマーケティングの世界」に翻弄されながら、五輪金メダリストなのに無骨な戦車のように拳を振り回す日本人。

「1戦1戦積み重ねた叩き上げのプロなのに超過保護」という錯乱したキャリアを歩みながら、端正なボクシングを完成させつつあるメキシコのドーピング青年。

ピクサーのアニメでも、こんな奇想天外なキャラクターは創造できません。

しかも、完全実写版。 
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温室育ちの分際で、逞しく成長を続けている、ボクシング界きってのスーパースター。

カネロ・アルバレスとは何者なのか?
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カネロ・マガジン化が進行するリング誌ですが、井上も9ヶ月で2回単独カバーするなど勢いづいています。カネロと井上が交互にカバーする日も近い?

DAZNと結んだ5年11試合で最低保証3億6500万ドル(約410億円)、1試合平均では37億4000万円にのぼります。

井上尚弥らがトップグループを形成するバンタム級のプロボクサーは、全世界で784人(2月22日現在:BoxRecから)。

彼らの1試合平均のファイトマネーは100万円にも遠く届かないでしょう。

仮にありえない平均100万円と見積もっても、全世界のバンタム級ボクサーの1試合あたりのファイトマネー合計は7億8400万円に過ぎません。

カネロの5分の1です。実際にはもっともっと下でしょう。

全世界のバンタム級ボクサー、全員のファイトマネーを積み上げても、カネロ1試合の5分の1にも満たないのです。

これが、ボクシングの現実です。

「中量級と比べて軽量級の報酬は不当に低すぎる」とファン・フランシスコ・エストラーダらがいくら泣きついても、これが現実なのです。

残酷な言い方ですが、人気がないんだからロマゴンのストーカーなんてしないでサンタクルスにでも喧嘩売れば良かったんです。

それが嫌なら、おとなしくしてるしかありません。

リカルド・ロペスの報酬は、女子ボクサーのクリスティー・マーティンの10分の1以下でしたが、それが現実です。ロペスはマーティンの前座です。

悔しければ、軽量級ではありえない人気者ウンベルト・ゴンザレスやマイケル・カルバハルの挑発に答えれば良かったのです。

ロペスを非難しているのではありません。

「自分が最高のパフォーマンスを発揮することを優先する」というロペスのスタイルは、おそらく井上もそうでしょう。

最高のパフォーマンスを犠牲にしてまで、ビッグファイトを求める。そんな馬鹿げたことに意味を見いだせないと反発するアスリートの価値観は十分理解できます。

「最高のパフォーマンスなんてどうでもいい。みんなを驚かせたい、とにかく目立ちたい、何よりカネが欲しい」というパッキャオは軽率で浅ましい。そういう見方も十分納得できます。

バチカンや大金持ちのパトロンから「宗教画を描け」「彫刻もやれ」と言われて「俺は自分が好きな絵を描く」「彫刻なんてやったこともないから出来ない」と拒んだのが、芸術家ロペス。

そして、おそらく井上も。

パトロンが大喜びする画風に合わせて何枚も描きまくり「彫刻も出来るか?」というリクエストに「今から彫刻刀買って来ます!大理石だけご用意下さい!」と蕎麦屋の出前みたいに答えるのがパッキャオです。

この、パッキャオの後を追って早々に頓挫したのがドネアでした。もしかしたら、ドネアも本当はロペス型だったのかもしれません。

そもそも論で、ボクシングで蕎麦屋の出前みたいに注文(オファー)が来たら「喜んで!」みたいなパッキャオみたいなのは、歴史上存在しないのです。

正確に言うと、存在はしても最初の出前か、2回目の出前、何れにしても早い段階で破滅、破綻を迎えているはずなのです。

孤高の芸術家か、あ〜らよッの蕎麦屋か。

どっちが好きな生き方なのかは、人それぞれです。


パックメイやカネロが1試合で数十億円を当たり前に稼ぐ一方で、井上の最大のライバルと目されたエマヌエル・ロドリゲスはキャリアハイで7万5000ドル(試合は行われませんでしたがvsルイス・ネリ)。

長谷川穂積を破壊したフェルナンド・モンティエルに至っては、2階級制覇したときに手にした報酬がわずか1万5000ドル、税金やスタッフの費用などを引かれると、日本で1年間バイトしてた方が遥かに稼げます。

そこまで人気のないモンティエルですが、長谷川戦ではなんと50万ドル以上を手に入れました。それは、モンティエルのキャリアでは、信じられないほど飛び抜けた金額でした。

ノニト・ドネアもトップランクとゴールデンボーイ・プロモーションズの確執で漁夫の利的に100万ドルファイターとして数試合を戦いましたが、実質は20万ドルがやっとのエストラーダ以下の人気しかありませんでした。

悲しくて悔しい話ですが、井上や井岡一翔ら日本のエース級や、レオ・サンタクルス、アブネル・マレスら両手の指でも余る一部の選手を除くと、ボクシング軽量級は恵まれたプロスポーツとは到底言えません。

「2%のボクサーが全体市場の98%の利益を享受する」。ジャック・デンプシーの時代から ボクシング界で語られる格言です。

パックメイとカネロの「光」と、井上や井岡らを例外とした軽量級の「影」。

「光」を見て「影のバンタム級でも(大手)PPVがある」「井上はラスベガスで何十億円も稼ぐ」なんて妄想するのは大間違いです。

ありえません。

「光」と「影」、やってることは同じボクシングに見えますが、報酬という一点では全く別のスポーツです。 「光」と「影」をごっちゃにして扇動的な報道をするメディアがいるから始末に負えないのです。

「黄金のバンタム」なんて、ミスリードの典型です。バカやアホは勘違いします。

世界中のバンタム級ボクサー全員のファイトマネーを合わせてもカネロ1試合の1/10以下です。これのどこが「黄金」ですか?

「黄金のバンタム」はエデル・ジョフレを指した称号です。

バンタムのような階級にもジョフレのような凄いボクサーがいるという賞賛です。つまり「黄金のバンタム」を訳すと「掃き溜めに鶴」ということです。

バンタム級を指す形容詞としては「黄金」なんてありえません。黄金に代わって正確に形容したいなら「貧困のバンタム」が妥当です。

誤解を恐れずに書いていますが、私は軽量級ボクシングが最も面白いと心酔しています。

その大好きなスポーツを、意図的に読者をミスリードするような報道には、幻滅しかありません。

日本ではおかしなメディアがフェイクニュースまがいの「井上がラスベガスでメガファイト」を垂れ流しています。

「ラスベガスの中でも聖地マンダレイベイ」「ESPN+が全米生中継」「チケットが500万円即売」…。

よく考えれば、おかしいのはわかるはずなのですが…「井上20億円」の脳は「チケット500万円」をすげーと受け入れている人がいるのでしょうか?


米国の会場ランキングもやってみたら面白いですね。

これはカジノとダウンタウンの2部門でやるべきでしょうが、、、。「ベスト10」でいつか。

あちこちで蔓延する詐欺的ニュースに「井上ってすごい!」と反応する単細胞は、事実を知れば去っていくでしょう。

トップランクが井上との契約にちゃっかり「日本での試合」を入れ込んでいる意味を考えれば簡単にわかることなのに。

圧倒的有利で井上勝利が確信されていた「さいたま」で、トップランクが査定したのは試合内容ではありません。

米国の軽量級ではありえない巨大アリーナに本当に有料入場者が2万人も集まるのか?1億2000万人の国の地上波でどれだけの人が観るのか?

全てが合格でした。トップランクだけでなく、世界中の軽量級ボクサーにとって埼玉は憧れの場所になっています。

カシメロらが井上との対戦を熱望したのは「埼玉でやりたい」ということでした。それが、井上の希望でなぜか興行規模が極端に縮小してしまうラスベガス…いろんな意味でカシメロはムカついているでしょう。

それにしても、埼玉のバリューがここまで高騰するのは歴史上初めてでしょう(埼玉に御免なさい!)。

つまりは、ボブ・アラムの本音は「全試合日本開催でトップランクに主催させて」ということです。

「ラスベガスでメイン」を夢見る井上と、「全試合サイタマ」なトップランク。その両者の思惑の絶妙の折衷案が「最初はベガス、年末に日本」です。


前置きが長くなりました。

歪みきったボクシングの世界、その歪みやら捩れやら矛盾やら、そんな闇の力学が作用して現出したのがカネロ・アルバレスです。

カネロ自身は、純粋なボクシング小僧が力の限り努力して、ここまで登り詰めたアスリートです。

しかし、彼がのめりこんだスポーツは不幸かな、まともなスポーツではありません。

潔白なカネロが、ボクシングの邪悪な毒素に染められていくのは当然の帰結です。


プロボクシングという歪んだプロスポーツの「光」(いやいやこれぞ「闇」?)の象徴、カネロ・アルバレスとは何者なのか?

カネロはボクシング大国メキシコの歴史でも、屈指の実力の持ち主なのか。

2017年にこのブログを始めた当初のお話をお色直ししてのお披露目です。

ピンクが付け加えた箇所になります。
 

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VIVA MEXICO! メキシコ上最なのか!?
 
現在、世界で最も大きなボクシング市場はどの国か?

トータルの市場規模ではやはり米国でしょうが、1試合の市場規模、メガファイトの盛り上がり、観客の熱狂という尺度では英国です。

米国のビッグファイトは、カジノ&リゾートのショーと抱き合わせで集客することも珍しくありません。

メインイベントが始まるまではカジノで賭けに興じたり、コンサートやマジックショーなどを楽しむ人が多く、前座試合の客席はガラガラなんてことも普通にあるばかりか、メインイベントでも空席が目立つなんてことも珍しくありません。

招致フィーを払うカジノ側は、上客に無料券をばら撒きます。ボクシングに興味ないお金持ちにとってはただの紙切れです。そんな客にとって、ギャンブルで大当たりしていたら、メインイベントの時間になってもバカラの席から離れるわけがありません。
 

一方、英国では純粋に贔屓のボクサーを応援する熱狂的なサポーターが多く駆けつけます。

お目当てのスター選手が出て来るまでにも、前座の自国選手に声援を送り、そこで面白い試合を見せようものなら、次はその選手の試合も観戦に行くーまさに理想的な雪だるま式発展を続けているのです。

熱狂的なファンが増え、注目度と報酬が跳ね上がることで選手層も分厚くなり、レベルも上昇。

軽量級からヘビー級まで人気選手を抱える英国の盛況ぶりは、外国人のライバルを見つけるだけでなく、同国人対決も厭わない姿勢にも支えられています。

(2017年当時)現在、外国人ライバルの筆頭が我らがホルヘ・リナレスです。

アンソニー・クロラに明白に2連勝、それでもこの階級には無敗の対抗王者テリー・フラナガン、地元ロンドン五輪金メダリストのルーク・キャンベルがウエイティングサークルに控えています。

キャンベルは先日のジョシュア対クリチコの前座でオーバーウェイトのダーレイス・ペレスに快勝、リナレスへの挑戦権を獲得しました。

リナレス包囲網が出来上がっているのです。この辺りはマニー・パッキャオを巡るメキシコ三銃士の激闘を彷彿とさせます(この4人はPFPの上位を席巻していましたからレベルはかなり違いますが)。

日本でもアメリカでも満足のいく待遇、報酬を得られなかった(本人の躓きも原因ですが)リナレスは、熱狂する大会場のメインを張り、東京やベガスよりも遥かに高待遇で英国に受け入れられました。流浪のベネズエラ人はついに安住の地を手に入れたのです。

さて、沸騰する英国市場を「バブル」と見る向きも少なくありませんが、今回のテーマ、メキシコのボクシング熱は英国以上です。しかもその歴史も長く、深く、もはや「文化」の領域なのです。
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【メキシコのボクサーにとって近接する米国は最も身近な憧れの国です。暗愚なドナルド・トランプが作った壁など彼らは易々と乗り越えてゆくでしょう。】

メキシコで最も人気があるスポーツはサッカー、ボクシングは2番手ですが「フットボーラーは女子供の歓声を浴び、ボクサーは男の尊敬を集める」のです。

これは60年代までの米国におけるヘビー級とMLB選手の関係にもよく似ています。

そんなディープな歴史を抱えるメキシコボクシングのオールタイムPFP10傑を数えていきます。

カネロもジュニアもこの濃厚で深遠なランキングにはお呼びではありません。

ここからはリング誌2012年12月号を参考にしましたが、この8年間で情勢は大きく様変わりしてしまいました。

ジュニアは確かにお呼びじゃありませんでした。

カネロも似たり寄ったりだと、思っていましたが…。
 



▲第10位=ファン・マニュエル・マルケス=このランキング唯一の現役選手でしたが、2016年に引退して今年、見事に一発殿堂です。

メキセキューショナー(メキシコ人死刑執行人)、パッキャオからエリック・モラレスに次いで二人目の勝利を、衝撃的なKOで母国にもたらした遅咲きのヒーロー。

アントニオ・マルコ・バレラ、モラレスと同時代に若くから才能を爆発させたグレートが存在したため、月見草の印象が強かったマルケスですが、最後の最後に太陽を掴み取りました。

殿堂入り、それも一発殿堂間違い無しです。

➡︎
豆知識:パッキャオとの3戦目までは全て判定。そのジャッジ、延べ9人のスコアを合計すると1024−1017。1試合1ジャッジあたりに換算すると、0.777…、なんと1ポイントの差もない超接戦を繰り広げていたのです。

このランキングはパッキャオをKOした第4戦を前にした特集で組まれたものなので、今のマルケスのランクはもっと上になりますね。人気はNo.1ではありませんでしたが、全盛期のナジーム・ハメドが公然と対戦を忌避するなど、同業者からはその実力が高く認められていました。
 

▲第9位=ビセンテ・サルディバル=ルーベン・オリバレスもフリオ・セサール・チャベスも憧れのボクサーを聞かれて真っ先にその名前を挙げるメキシコ屈指の人気者。

1964年にシュガー・ラモスから奪った世界フェザー級タイトルの8度目の防衛に成功したアステカスタジアムのリング上で24歳の時に引退宣言。

「もう十分に稼いだし、若いうちに人生を楽しみたいんだ」。

多くのファンが涙を流して英雄の引退を惜しんだと伝えられています。

しかし、莫大な貯金は2年足らずで底を尽き、リングに舞い戻るとファイティング・原田が三階級制覇を阻まれたジョニー・ファメションを判定で下してWBCフェザー級王者に返り咲き。

初防衛戦で地元ティファナに柴田国明を迎えますが、大番狂わせのKO負け。

日本では「ティファナの歓喜」でしたが当地では「ティファナの悲劇」。

メキシコでミドルネームに「シバタ」と付けるメキシコ人ボクサーが何人も現れたことからも、この試合の衝撃がいかに大きかったかを物語っています。

柴田に敗北した後、カムバックを果たし、あのエデル・ジョフレが持つ世界フェザー級王座に挑みますが4ラウンドKO負け。

サルディバルにしろ、ジョフレにしろ日本人に馴染み深いファイターが高い評価を受けているのを知ると嬉しくなりますね。もちろん、一発殿堂入り。

➡︎
1960年ローマ五輪に16歳の若さで出場、1回戦で敗退しています。
 

第8位=リカルド・ロペス=敗北の味を知らないまま引退した永遠の王者。

超絶のテクニシャンでありながら、一打必倒のパワーも兼ね備えていました。

フィニートの異名通り、完全無欠のファイターでしたが、メキシコファンの評価は意外なほど低いんです。

これがリング誌ではなく、メキシコのメディアのランキングなら下手したら10傑に入っていないかもしれません。

ウンベルト・ゴンザレスらとの対戦を頑なに拒んで、長らくミニマム級の井戸の中にこもって最高技術の習得に研鑽した姿勢は、泥臭い激闘を好むメキシコ人の目には逃亡に見えたのかもしれません。

ウンゴンがビッグファイトのメインを何度も張った一方で、フィニートはメキシコの不人気王者がそうであるように日本でも防衛戦を重ね、挙句は女子ボクサーの前座までつとめるなど、その実力を考えると待遇面では全く恵まれませんでした。

とはいえ国際的な評価は抜群、もちろん一発殿堂です。

➡︎
スラムの喧嘩自慢の少年からボクサーへ。そんな典型的なストーリーとは違い、父親が時計職人の中流家庭で育ちました。

その父親も珍しくボクシングには興味がなく、知人から「ボクシングはものすごく危険なスポーツだけど、あんたの息子のボクシングだけは安心して見てられるぞ」と聞かされ、初めて試合会場に足を運んだと言われています。


第7位=ミゲール・カント=ロペスほどではありませんが、マエストロと呼ばれたスマートなテクニシャンでした。

小熊正二からタイトルを奪ったベツリオ・ゴンザレスを下して獲得したWBCフライ級王座を14度(当時のフライ級記録)も防衛。花形進、王者奪回を狙った小熊の挑戦も退けました。

カントが15度目の防衛を阻まれた朴賛希は、1980年に小熊から改名した大熊に戒厳令下のソウルで9ラウンドKO負けしてベルトを手放します。

この戒厳令が敷かれるきっかけになったのが、前年に世界を震撼させた朴正熙大統領(朴槿恵の父親ですね)暗殺事件でした。

➡︎カントが師事したヘスス・リベロは後にオスカー・デラホーヤも指導。リベロがコーナーについた3試合(父チャベス第二戦、ミゲール・アンヘル・ゴンザレス/東京三太、パーネル・ウィテカー)は全勝、ゴールデンボーイの防御技術を格段に引き上げたと言われています。


第6位=エリック・モラレス=ものすごい人気者です。

とにかく好戦的な強打者なのに鋼鉄のアゴまで持っていました。

高度な防御技術を持っているにもかかわらず、真正面からの打撃戦を選択する生粋のファイター。メキシコファンの理想を具現化したのがエル・テリブルです。

21歳の若さで同胞のテクニシャン、ダニエル・サラゴサを粉砕してWBC世界ジュニアフェザー級王者に登り詰めると、あとはもうスーパースターの道をまっしぐら。

全盛期を過ぎてからも「自殺行為」と言われたジュニアウェルター級随一の強打者マルコス・マイダナ戦では、あろうことか打撃戦に応じて互角に渡り合いました。

正式な引退宣言はしていないため、殿堂入りの資格がいつ発生するか不明ですが、一発殿堂確実です。

2018年、一発殿堂。 

パッキャオ、バレラとラバーマッチまでもつれたトリオロジーを展開、世界中のボクシングファンも魅了しました。

特に、覚醒直後のパックマンの猛攻を12ラウンドに渡って捌ききったパッキャオとの第1戦はメキシコファンの心を鷲掴みにしました。

➡︎二人の弟もプロボクサー。ディエゴは元WBO世界ジュニアバンタム級王者。イヴァンは元バンタム級の世界ランカー。


第5位=マルコ・アントニオ・バレラ=有り余る才能を打撃戦に特化したモラレスに対して、バレラは自らの才能を、若い頃は強打者、年齢を重ねてからは変幻自在のベテランに昇華させました。

ケネディ・マッキニーを挑戦者に迎えたWBO世界ジュニアフェザー級戦は、HBOのボクシング番組「 BOXING AFTER DARK」の初回メインイベントに起用され、その後も当時無敗のナジーム・ハメドに完勝するなど、ヒスパニック時代の象徴的なファイターでした。

もちろん、一発殿堂。

ハメドに勝利を収めてからもエンリケ・サンチェス、モラレス、ジョニー・タピア、ケビン・ケリーと錚々たる相手から白星を重ねた実績が評価されて、ゴールデンボーイプロモーションと超大型契約を締結。

その初っ端に「ボーナス」として用意されたのがパッキャオでした(今から考えると全然ボーナスなんかじゃない…)。

世紀の番狂わせで惨敗したこの試合は、GBPと大型契約を結んだボクサーは直後に負けるというジンクス「ゴールデンボーイの呪い」の始まりとなってしまいます(リナレスもこの呪いの犠牲者ですね)。

➡︎アマチュア時代は56戦4敗の好成績で、5つの国内タイトルを獲得しましたがこの60試合は15歳でプロ転向するまでに積み重ねられたものです。
 

第4位=カルロス・サラテ=「KOモンスター」「KOアーティスト」、強打を表現する大袈裟な表現が大安売りの昨今ですが、サラテこそは本物中の本物です。

生涯66勝4敗、66勝のうち63がKO。対戦相手もバンタムからジュニアフェザーの強豪がずらりと居並ぶ中での数字です。アルフォンソ・サモラとの全勝全KO対決、今なおメキシコ対プエルトリコ、宿命のライバルのシンボリックなビッグファイト、ウィルフレド・ゴメス戦、議論を呼ぶ判定で王座を失ったルペ・ピントール戦…軽量級へのリスペクトが強い日本のファンにとっては伝説を通り越して神話の登場人物です。

もちろん一発殿堂。

軽量級にもかかわらずファイトマネーも高額のサラテは、日本に呼べない大物でした。

というか、あんな化け物、呼びません。自分のジムの有望な若手とは絶対に戦わせたくありませんから。

➡︎サラテの息子もライト級の有望株で、7割以上のKO率を誇っていましたが、父親が父親だけに「全然、パンチないじゃないか」と非難される始末。父親のKO率と比べられるとゴロフキンやワイルダーでも色褪せてしまいます。


★★第3位=サルバドール・サンチェス=個人的に最も好きなファイターの一人です。

1980年、軽量級ながら米国で人気のダニー〝リトルレッド〟ロペスをTKOしてWBC世界フェザー級のベルトを腰に巻きました。

当時、サンチェスは弱冠20歳。メキシコ人好みの打ち合い上等の頑健な若きハードパンチャーは、あっという間にスターダムに駆け上がりました。

このタイトルはルーベン・カスティージョ、ファン・ラポルテ、若き日のアズマー・ネルソンら強豪相手に9連続防衛しましたが、出色は2階級制覇を狙ってフェザー級に上げて来たウィルフレド・ゴメスとのメガファイトです。

どんなに心拍数を上げても40秒もあれば平静時まで回復するという恐るべき心肺機能を持ったサンチェスにとって1分間のインタバルは十分すぎる休息でした。

常にフレッシュな状態でラウンドを飛び出して、消耗・疲弊した相手を思う存分攻撃したのです。

1981年8月21日、シーザースパレス。

メキシコからシーザースパレスに詰めかけたファンの目には、母国の英雄サラテを打ち砕いたゴメスの強打が焼き付いています。シーザースパレスのオッズは6−5でゴメス。

大観衆が心配そうに見守る中で、第1ラウンド開始のゴングが打ち鳴らされます。

わずか40秒後にサンチェス得意の左フックでゴメスがダウン!ニュートラルコーナーに下がって、冷静にゴメスのダメージを測るメキシコ人の風格は到底22歳には見えませんでした。

迎えた8ラウンド、サンチェスの冷酷なコンビネーションにゴメスが前のめりに崩れ落ちたとき、メキシコの宿願であったリベンジが完遂されたのです。

この1ヶ月後にやはりシーザースパレスでボクシング史上最高傑作と賞賛されるレナード対ハーンズの第1戦が行われましたが、その年の最高選手賞はサンチェスとレナードが分け合います。

しかし、そのことに異を唱えるファンは誰一人いませんでした。

翌年、のちに2階級制覇するガーナの〝プロフェッサー〟アズマー・ネルソンを14ラウンドで撃ち落とします。

試合後の会見で23歳の若者は「次はラポルテとの再戦(10度目の防衛戦)の予定だが、そのあとは(ジュニアライトを飛び越して)一気にライト級に上げる。評価の高いニカラグア人をぶっ倒す」。

サンチェス対アレクシス・アルゲリョ…世界中のボクシングファンがよだれを流して喜ぶようなカードです。

しかし、ファンの夢はネルソン戦からわずか22日後に潰えてしまいます。その悲報を聞いた世界中のボクシングファンが同じ言葉を発したでしょう。「嘘だろ!何かの間違いだろ?」。

もちろん一発殿堂入りしましたが、栄誉ある式典に本人が参加することは叶いませんでした。

あれから、純白のポルシェ928を見かけたことはありませんが、ポルシェが走るのを見るたびに、今でも感傷に浸ってしまいます。
 

★☆第2位=ルーベン・オリバレス=引退から四半世紀以上が経つというのにメキシコはもちろん、ロスアンゼルスのヒスパニックの多い通りでは彼は道をまっすぐに歩けないと言われています。

なぜそこまで人気があるのか?

簡単な話です、試合が面白いからです。デビューからの61試合を60勝1分で進撃した小さな巨人は、その後のビッグファイトにいつも勝利を収めたわけではありません。しかし、彼のチケットを買った人には無上のスペクタクルが約束されていたのです。

金沢和良との死闘は有名ですね。

私はYouTubeで初めて見ましたが、精魂尽き果ててダウンした金沢が必死に立ち上がり「このやろー!!」と絶叫する有名なシーン。

あれをリアルタイムで観ることが出来た幸運な人の感動がいかほどだったか、PC画面からでも容易に想像出来ます。

➡︎怪物の来日に日本列島も大騒ぎで、オリバレスがいく先々でサインを求めるファンが大行列を作ったというエピソードからは、ボクシング全盛期の熱気が伝わってきます。

昨年、原宿にパッキャオジムをオープンする告知のために来日したパックマンが銀座のブランド店をハシゴして爆買いしてるところに遭遇しました。メディアクルーがカメラを回しているのに気づいた通行人からは「あれ誰?誰なの?」「アメリカのプロボクサーだって」「有名人?」そんな声が聞こえました。

日本でのパッキャオの知名度って、どの程度なんでしょうか。


☆☆☆第1位=フリオ・セサール・チャベス=好戦的で鉄のアゴを持つ男。メキシコ人がオーダーメイドで作ったかのようなファイターです。

何よりも規律を重んじ、過酷で単調な練習を黙々とこなし、絶え間なく試合を重ね、強豪をことごとく撃破しました…それにしても、ジュニアには父親の血は一滴も受け継がれなかったのでしょうか?

同胞との覇権争い、カマチョやロサリオらプエルトリコとのライバル対決だけでなく、ロジャー・メイウェザーやグレグ・ホーゲン、メルドリック・テーラーら米国人のビッグネームも撃ち落とし、PFP1位に長らく君臨したことでも母国の評価は神の領域です。

➡︎豆知識:フランキー・ランドールに敗れるまで90連勝無敗。数字に意味はありません、弱い相手と戦っていればいくらでも勝てますから。しかし、チャベスの場合は数え切れないほどの強豪とも戦ってるのに90連勝無敗です!ところが、驚異的なレコードの初期に実は1敗しているのです。1981年のミゲル・ルイス戦。1ラウンド終了のゴング後に放ったチャベスのパンチでルイスが昏倒、反則負けを宣告されます。翌日、この記録は訂正、覆されますが、それまでの半日間、チャベスのキャリアには黒星が確かに付いていたのです。


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2017年のランキングは「パックマル4」の直前のリング誌特集でした。

当然、あの試合結果のインパクトは巨大です。

モラレス、バレラというヒマワリに対して月見草だったマルケスですが、メキセキューショナーのパッキャオを完璧に撃ち落とした功績は計り知れません。

私の独断ランキングでは、同胞のライバルを抜いて5位にジャンプアップです。

10位のマルケスが5位に割り込んだあおりを食って、最下位10位はビセンテ・サルディバル。

サルディバルが10位って、どんなハイレベルなランキングなのでしょうか!!ため息つくしかありません。

そして…カネロです。 

日本のボクシングファンにとって、サルディバルは絶対にランクアウトしたくありません。

しかし、もはや、大嫌いなカネロを入れないという選択肢はありません…。

カネロ本人がナイスガイなのは、なんとなく伝わります…しかし、言ってみれば大金持ちのお坊ちゃんがコネとカネを使いまくってスターになったようなもので、なにか釈然としません。

これからもAサイドを押し付けたリング外のパワハラで、旬の強豪とスクエアで勝負することは回避しながら、衰えたビッグネームに難癖つけていくのでしょうか?

カネロがバトンを受け継いだ〝先人〟二人もAサイドの特権をこれでもかと行使した嫌な奴でしたが、パックメイはスターダムに辿り着くまでに高く険しいハードルをいくつもクリアした苦労人です。

「軽量級でアジア人」という絶体絶命の超B級から、大冒険な試合を何度もくぐり抜けてスーパースターの座に登り詰めたパッキャオ。

米国ボクシングの没落という逆風の中で「プリティボーイ」から「マネー」への絶妙のセルフプロデュースで「嫌われ者が一番の人気者」という真理を発見して魅せたフロイド・メイウェザー。 

「奇跡は2回起きたら奇跡じゃない」はずですが、パッキャオの試合には何度「奇跡だ」と呟いてしまったことでしょうか。

「ブーイングの大きさとボクサーの報酬は正比例する」 ことを明白に証明したメイウェザーは、ノーベル経済学賞の候補に挙げられるべきです(メイもノーベルもどっちもくだらないという意味でも)。

ああ、メイウェザーは「イグノーベル賞」はすでに打診されてますね、きっと。

もちろん、表彰式会場までの渡航費から宿泊費まで全て自腹のイグノーベルから賞を受けるかどうか聞かれてもマネーが承諾するわけもありませんが。



さて…気分が重くなりますが、カネロを何位にランクしましょうか? 
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カネロ・アルバレスの次戦としてセットされている、シンコデマヨ週間の5月2日。

あと9週間に迫っているというのに、まだ対戦相手が決まっていません。


* オスカー・デラホーヤは「カネロと闘いたいなら、まず自分の足元を見るべき」と大上段に構えます。

「現在のボクシングシーンでカネロと戦えることは最高の名誉。そして、対戦によってキャリア最高、これまでのファイトマネーを全部積み上げてもそれ以上の可能性もある大金も手に入る。その条件に注文をつける感覚がどれだけ非常識か理解しているのか?」

「世界チャンピオンは腐るほどいる。ビッグネームもいる。その中からカネロが選ぶ。そのチャンスを前にグズグズ言う奴らには2度とチャンスはない。そんな奴らはこれまで通りに陽の当たらない日陰で、ジメジメした報酬に甘んじてしょぼいキャリアを閉じればいいのさ」。

「カネロは3つの階級の中から相手を選ぶ。戦うのも3つの階級からカネロが選ぶ。選ぶのはお前らじゃないことをまず理解することだ」。

日本時間の今週火曜日にデッドラインを引いていた、エディ・ハーン傘下の二人の英国人チャンピオンへも毒づいています。

「あと9週間?十分じゃないか。いくらでも相手はいる。カラム・スミスとビリー・ジョー・サンダースは身の程をわきまえないで下手な条件交渉を仕掛けてきた。奴らにはもう2度とチャンスは与えられないだろう。奴らはひっそりと今まで通りに地味にキャリアを閉じればいいさ」。

嫌な感じですね。カネロ自身に罪はないとはいえ、誰かにぶっ倒してもらいたいですね。

先日の試合で評価を上げているIBFスーパーミドル級王者ケイレブ・プラントについても「順番を待つなんて言って、すぐに対戦しないのであれば、もうチャンスは与えない」と、対戦オファーを出していることを匂わせています。

「リングの中では何でも起きるのがボクシング。しかし、リングの外では大きなチャンスは一生一度きりかもしれない。そのことを理解できない奴らが多すぎる」。
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「PFP1位になったけど人気は残念」。ロマゴンほどではありませんが、GGGも実力と人気の激しい乖離に悩みながら、いつのまにか劣化の坂道を下っています。

全盛期にもっと冒険的なファイトに挑戦していれば…もしかしたらリング誌などが期待した「第二のパッキャオ」になれたかもしれませんが、今となっては後の祭りです。DAZNとの巨額契約を結べたことで、GGGにとって人気なんてどうでも良いのかもしれませんが…。


一方、宿命のライバル、ゲンナディ・ゴロフキンは右足ふくらはぎを負傷したことや、興行的な問題が難航して2月29日に予定されていた防衛戦(vsカミル・シェルメタ)を再三延期。

さらに〝ドーピングの教祖〟ビクター・コンテのSNACのプログラムから離脱したと報じられました。

コンテは「ゴロフキンは私たちの要求するプログラムに対応できなかった。キャンプ前に合意していたことを反故にされたんだから、ここから出て行ってくれということ。かれの未来に幸あれ」。

金銭的なもつれでしょうね。

アベル・サンチェスとの訣別もそうでしたが「金の切れ目が縁の切れ目」というのが続いています。

シェルメタ戦は5月か6月の開催に向けて調整していますが、商業的な価値がゼロのシェルメタだけにGGGに数十億円のファイトマネーを保証しているDAZNは苦悶しています。

大手スポンサーが付く、ラスベガスのカジノ&リゾートが巨額の招致フィーを提示してくれるーーそんなのを待っているとしたら無駄です。

そもそも、GGGはカネロと村田を絡ませなければ、ファイトマネー2〜3億円が妥当なボクサー。

DAZNはカネロ戦を当て込んで巨額の契約を結びました。シェルメタ戦なんて〝負の二乗〟ファイト、誰が買いますか?
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1980年代の絢爛豪華なミドル級の覇権争い。

世界のボクシングってこんなに凄いのか!!! 

個性豊かなスーパースターたちが繰り広げるラウンドロビン、総当たりの戦いは、日本のプロ野球が世界一面白いと信じていた10代半ばの私にとって衝撃そのものでした。

シュガー・レイ・レナードの華麗、ヒットマン・ハーンズの凶悪、マービン・ハグラーの圧倒、ロベルト・デュランの颯爽、ウィルフレド・ベニテスの天性…彼らは、仮面ライダーやウルトラマンに登場する怪人や怪獣と同列に現実離れした存在でした。

小学校の野球クラブで先輩から「怪獣ゼットンはやばい」みたいなことを聞かされてゾクゾクしたのと、中学生のときに覗いたボクシングジムで「レナードvsハーンズなんてどんな試合になるんだ?」と、当時は遥かに年配に見えた高校生や大学生のボクサーの方々の話にワクワクしたのは、冗談抜きで全く同じ感覚でした。

日本でプロ野球を見て「江川、スゲー!」とか騒いでいる現実とは全く別の世界に、太平洋の向こう側に、とんでもないヤツらがいる。

そのことに気付いてしまったのです。
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日本人が、世界で大暴れしている怪獣と戦う。

ありえないと思っていたことが、現実になろうとしています。

このメガファイトが実現すると、日本人による日本ボクシング史上最大の興行となります。

もちろん、興行の大きさとボクサーとしての価値は必ずしも比例しません。

ボクサーとしての価値を考えるとき、リング誌から60年代最強と破格の評価を得たエデル・ジョフレを2度撃破したファイティング原田が歴代最高で誰も文句はないでしょう。

原田は60年代でも5位にランクされていますが、現在のような定期的に更新されるPFPがあれば、ジョフレに連勝した時点で1位か2位だったと推測できます。

井上尚弥は将来、PFP1位に登る可能性が十分にあり得ます。しかし、2020〜2029年のデケイドでも原田並みのトップ5に数えられるか?となると厳しいのではないでしょうか。

そして、怪獣との対決の舞台に上がる村田諒太になると、最も評価が高いはずの現役時代、今ですらPFPにはカスリもしていません。

リング誌のダグ・フィッシャーは、読者から 「 Who do you want next for Canelo? カネロの次の対戦相手として誰と戦って欲しいか?」と訊かれて「Charlo or Smith. I would be OK with Murata.  チャーロかスミス。村田もいいと思う」と答えてくれています。

しかし「村田」の理由については「カネロは昨年、ミドルとライトヘビー級でトップ選手と戦った。今年最初の試合にトップ10では下のレベルの“breather” (息抜き)を選んでもいいじゃないか」としているのです。

はぁ!?金メダリストをつかまえて“breather” だとッ!!

舐められたもんですが、プロでの実績だけをカネロと比べると、悔しいけど文句は言えません。

村田は日本ボクシング史上、最も商業的価値の高いボクサーですが、ボクサーとしての本質的な価値となると、ミドル級という特別すぎるクラスを考慮しなければ、歴代10傑にも入らないかもしれません。

しかし、欧米に体格で劣るアジアでミドル級という正真正銘の黄金階級のトップ戦線で戦っているからこそ、この大きなチャンスが訪れたのです。

フィッシャーは「村田の右は階級最強」とも評価してくれていましたが、彼の評価はそこまでということです。「右の一発しかない」と見ているのです。

村田が“breather” などではなく、“shocker”(衝撃を与える人)であることを見せてやりましょう。


さらにしても!年内にも実現しそうなメガファイトです。

来年以降は 「東京ショッカー」が何を指すか、世界中のボクシングファンを大いに混迷させてしまうでしょう。

それって「ダグラスvsタイソン」のことなのか?それとも「村田vsカネロ」のことなのか?

ショッカー。いいですね。イー!です。

「東京ショッカー2」。いいですね。イー!です!

怪獣退治にはこれ以上ない、絶妙のタイトルです。
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