フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 没落するアメリカボクシング

1980年代に世界のボクシングに衝撃を受け、高校の図書館でリング誌に出会い、FOUR KINGS が繰り広げたラウンド・ロビン=総当たり戦に耽溺した私にとって、米国のリングは途方もなく遠くに見えました。

人生初めてのボクシングヒーロー、具志堅用高が日本中を魅了していた軽量級のボクシングが「間違いなく面白い!」という気持ちが、揺らぎそうにもなるほどでした。

正直、軽量級のボクシングを面白いと思い込んでるのは間違いではないか?そんな風にも思ってしまいました。

そんなときに、軽量級のボクシングは「見た目のスピード」で中量級や重量級を上回り、過酷な減量が背景にある可能性もあるものの壮絶なKOシーンも期待出来る「ブラウン管を通して見るなら最も面白いクラス」というリング誌の記事を読んで、心強く感じたのを覚えています。
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「軽量級史上初の100万ドルファイト」と謳われたマイケル・カルバハルvsウンベルト・ゴンザレスにしても、時代の貨幣価値を考えるとファイティング原田はもちろん、具志堅用高と比べても「1回こっきりの100万ドル」でしかないカル&ゴンに対して「報酬がすごいな」とは微塵も思いませんでした。

「カルバハルなんかより、日本の具志堅や二郎の方が金持ちやん」と。 

それでも、FOUR KINGSの中でもシュガー・レイ・レナードや、マイク・タイソンの報酬は別格でしたし し、その試合の演出は日本のリングでは見たこともない華やかさでした。

カル&ゴンでは届かなかったニューヨークやラスベガスでの「恒常的な」軽量級100万ドルファイト。

21世紀にアブネル・マレスやレオ・サンタクルス、カール・フランプトンが実現していますが、これらも対戦相手限定で、到底「恒常的」とはいえません。

プロモーター同士の確執から〝漁父の利〟的に100万ドルファイターになったノニト・ドネアは論外ですが、母国の圧倒的なサポートを受けてニューヨークやラスベガスで100万ドルファイターになったナジーム・ハメドや、西岡利晃の「彼らのやり方」について考えたいと思います。

米国では全く無名のハメドにHBOが200万ドルという破格の宣伝費を投じてプロモーション番組を制作したり、ニューヨーク中で交通広告を展開したのは、ハメドのルーツであるイエメンを筆頭にサウジアラビアやUAEなどのアラブ諸国が総額5000万ドルの放映権を支払ったからです。

規模は違いますが、西岡利晃の「MGMのボールルーム」でファイトマネー100万ドルを稼いだのも「ハメド方式」でした。

そして、HBOのボクシング番組で亀海喜寛ら人気階級を主に扱う「ワールドチャンピオンシップボクシング」に対してワンランク落ちる「ボクシングアフターダーク」の中でも超低予算で組まれたザ・スーパー・フライ興行。

ここで、HBOは前座ながら井上に18万2500ドルもの報酬を与えました。これは亀海がコット戦で受け取った報酬とほとんど変わりません。

ワールドチャンピオンシップボクシングの予算から報酬が当てられた人気階級の亀海は「ガチ」でしたが、不人気階級の井上はボクシングアフターダークの予算に加えて、日本からの放映権料も還元されていました。

さらに、井上は最終的に日本で防衛戦をこなした場合と同じ4000万円レベルまで〝報酬補填〟されました。

井上のケースもまた「ハメド方式」です。

HBOがボクシング撤退する断末魔で、世界タイトルを持っていない井岡一翔という「但し書き」はあるものの、同じボクシングアフターダークのザ・スーパーフライに出場したときの報酬は2万5000ドルに過ぎませんでした。

日本の〝井岡相場〟の10分の1です。

軽量級の日本人が丸腰で米国で戦うと、それほど悲惨なのです。もちろん、資本力のある企業がスポンサーにつく井岡も最終的には数千万円を手にしていますから、やはり「ハメド方式」です。

アラブのオイルマネーや、潤沢なジャパンマネーが全く期待できないマニー・パッキャオのケースは、まさに「逆ハメド方式」。実力だけで図々しく道場破りを繰り返したと言えます。

確かに、誰がどう見ても「ハメド方式」は〝裏口入学〟的でこっぱずかしい印象があります。

誰が見ても格好いいのは番狂わせを重ねてノシ上がっていく「逆ハメド方式」すなわち「パッキャオ方式」です。

もちろん、オイルやジャパンの後ろ盾があるハメドや井上が、圧倒的不利のオッズと少ない報酬のもとで上の階級の強豪王者に危険すぎる戦いに挑む必要性などありません。

そんなことしたら、ただの馬鹿です。

なんの後ろ盾もないド貧民パッキャオがノシ上がるには、あれしかなかったのです。

パッキャオがアラブの金持ち国にルーツがあったり、日本人だったのなら、手厚い庇護を受けながら危険な賭けなど絶対にしなかったでしょう。

実際、頂点を極めたパッキャオは安全な相手としか戦わないばかりか、ハメドや井上でもやらなかった卑劣なキャッチウェイトまで相手に飲み込ませています。

イエメンやアラブ諸国に戦うリングがなかったハメドが英国から米国へ、オイルマネーの風に乗って戦うことは自然ではありました。

一方で、日本のリングの方が明らかに稼げる、トップランクも契約に日本開催の試合を盛り込むという井上のケースはどうでしょうか?

本気で米国でスターにしようと考えているなら、井上の年齢とキャリアを考えたら日本での凱旋試合など時間の浪費、大切な初年度の契約に入れ込む道理がありません。

もちろん、「ハメド方式」の恩恵はイチローや松井秀樹も浴しました。メジャーでなんの実績もない彼らは、開幕から数十試合を先発出場できる契約でした。

その見返りは莫大な放映権料とセーフコフィールドやヤンキースタジアムに出現した日本企業の大看板の数々です。

このハメド方式を嫌って「実力でメジャーに上がって活躍してやる」と威勢が良かったのが中村紀洋でしたが、彼は「マイナーでどんなに打っても評価してくれなかった」と言い訳と泣き言をもらして出戻ってきました。実際には守備はボロボロ、打撃も穴だらけで全く使い物にならなかったのですが。

もちろん、イチローや松井の舞台はメジャー、ボクシングでいえばウェルターやヘビーで、不人気バンタム級で戦う井上とは事情が違いすぎます。

ジェイソン・マロニーやノルディーヌ・ウバーリ、ジョンリール・カシメロ相手にビッグファイト…どう考えてもありえません。

ただ、当初の計画「裕福な母国から手厚い仕送りを受けてラスベガスで2試合戦い、 その赤字を年末の日本開催でペイしてお釣りがくる」というのは、トップランクとしては悪い商売ではありません。

ただ、タイミングが悪いことにこのパンデミックです。

10月31日の試合をこなしたあと、井上は誰と戦うのでしょうか?というよりも「どこ」で戦うのでしょうか? 
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カネロ・アルバレスの顧問弁護士グレッグ・スミスは「DAZNとの交渉がまとまらなければ9月12日の試合は流れる」と明言しました。

ESPNがつかんだ複数の情報筋によると「DAZNは(カラム・スミスと大筋合意している)次戦に大幅な報酬カットをカネロに申し出ているが、色良い返事は得ていない」ということです。

スミスは「カネロは9月12日に向けて順調に練習を消化している。もし、彼だけの問題なら今すぐ対戦相手を発表できるが、我々だけではコントロールできない問題が発生している。カネロは自分がコントロールできることに集中して、試合に向けて完璧な準備を進めているが…」と、DAZNが受け入れがたい報酬カットを提示していると示唆しています。
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I am aware of no other sticking points.

「カネロ陣営はDAZNが約束した義務を履行することだけを待っている。顧問弁護士の私が把握している障害は、それ以外にない」。

ESPNはDAZNに質問をメールしたそうですが、7月25日現在で何の回答もないそうです。

「カネロとゴールデンボーイ・プロモーションズは9月12日のメキシコ独立記念日での試合に向けて着々と準備を整えている。DAZNは契約書に書いてある内容・義務をしっかり果たして、世界中のボクシングファンに世界一の人気選手の試合を配信することを名誉と思わなければならない」。

このパンデミックに直撃されて、DAZNの米国戦略は大きな変転を強いられています。

その一方で、独ブンデスリーガの放映権を40億ドルで買収するなど、黒字のコンテンツには莫大な投資を続けており、投資家も「サッカーに使うなら」と資金提供しているのは間違いありません。

しかし、スミスからしたら「コロナの影響で財政的余裕がないから報酬カット」というのは、簡単に飲み込めないでしょう。

DAZNのボクシングビジネスは、欧州目線での取り組みがことごとく裏目に出て、踏んだり蹴ったり。

2018年にカネロと11戦3億6500万ドルの当時のアスリート史上最高額で契約を締結したDAZNは「米国マーケットでの成功を約束してくれる」と発表しましたが…。

2月から米国でボクシングを配信していなかったDAZNは、7月24日にようやくカリフォルニア州インディオで再開(バージル・オルティスvsサミュエル・バルガス他)。8月28日にも同所でホルヘ・リナレスとハビエル・フォルトゥナの12回戦を配信する予定ですが、決まっているのはそこまで。

ネットストリームのライバル、ESPNの記事とはいえ「いまやDAZNに加入するボクシングファンはいない」というのも、あながち的外れではありません。

一方でDAZNは「ゲンナディ・ゴロフキンとのスクエアな条件での第3戦」をずっと計画していましたが、カネロ陣営とGBPは卑劣な下拵えで相手を弱らせるAサイドの手法に固執、セルゲイ・コバレフ戦を選ぶなど、両者の溝は深まっています。

DAZNからしたら「卑怯な手を使わずに、ボクシングファンが目を向けるちゃんとした試合をしましょう」ということなんでしょうが、それだとことごとく苦戦・凡戦、商品価値が落ちるリスクがあります。

いずれにしてもDAZNは、ボクシングという「素人が手を出したら痛い目にあうだけ」(ボブ・アラム)という禁断の果実を口にしてしまいました。

私の場合は単純に時代に追いついていないだけですが、  DAZNってもう一つ好きになれないというか…なんて言いつつも他のスポーツも充実しているので、ずっと加入してますが、割高な気はしています。

HBOのときの衝撃と悼みとは比較になりませんが、DAZNも撤退してしまうとボクシングファンとしてはやはり悲しい。

DAZNもがんばれ、カネロは早く惨敗しろ、デラホーヤは復帰を考え直せ。この3本柱で話はまだまだ続きます。 
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2年前。

DAZNは「ボクシング界のビジネスモデルを変える」と宣言、米国ボクシングに〝参戦〟しました。

高額のPPVを購入して一部のマニアがメガファイトを観る時代は終わった。これからは月額わずか9.99ドルでこのスポーツを楽しむことができる時代になる。

しかし、DAZNが投資したボクシングの米国での立ち位置は正真正銘のニッチスポーツ。

カネロ・アルバレスとの11戦3億6500万ドル契約も馬鹿げて見えましたが、ゲンナディ・ゴロフキンと3年6試合を推定1億ドルで契約したことは「全試合カネロならまだしも、GGGの価値はカネロ以外の相手だと100万ドルがせいぜい。それほど人気がない」(HBO)というのが常識的な見方でした。

DAZNがこのビジネスに乗り出したのは2016年。「フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ」のビジネス面での余熱は十分すぎるほど残っていた時期です。「人気だけならメイパック以上」というカネロとの契約を急いだのは無理もなかったかもしれませんが…。
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さらに、実質経営破綻していたWBSSに投資したのもビジネスとしては大失敗でした。米国のテレビ局が揃って無視した、不人気階級で行われた超不人気トーナメントWBSSは発足当初から〝詐欺的手法〟で出資者を募り、選手を欺いてきました。

もちろん、ご存知の通りWBSSの「バンタム級」は「日本だけ」とはいえ例外的・局地的な大成功を収めましたが、それはDAZNの経営手腕が優れていたからではありません。DAZNはほとんど恩恵を受けることが出来ませんでした。
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そして、新型コロナのパンデミックで、DAZNが手がけるスポーツ界の試合は中止・延期に追い込まれてしまい、世界9カ国で視聴料の支払いは一時停止となります。

しかし、皮肉なことにこの状況がDAZNの短期的ながら収支決算を好転させます。

シンコデマヨに予定されていたカネロの試合、赤毛のメキシカンだけで4000万ドルの報酬を支払う契約を、とりあえずは履行する義務がなくなったのです。「カネロ戦は全てが赤字」と見られている中で、4000万ドル以上の支出を抑えることができたのです。

一方で 、2020年の年初で米国で約80万人とされた視聴者のほとんどがこの数ヶ月で契約解除したと見られています。DAZNは今年上半期の視聴者数の発表を見送っているので実数は不明ですが、公にできないレベルの数字ということでしょう。

DAZNが米国ビジネスをゼロから立て直さなければならない苦境に陥っているのは、100%間違いありません。 

ましてや、コロナ前ですら赤字コンテンツだったボクシング部門をどうするのかも注目です。

昨年、機関投資家のゴールドマン・サックス証券が5億ドルを出資するなど、DAZNがすぐに倒産する状況ではないとはいえ、ここまで失敗を重ねているボクシングビジネスへの取り組みに大きな決断を下す可能性はあります。

5億ドル。大金ですが、カネロと3億6500万ドル契約を結んだことが、いかに馬鹿げていたかもよく分かる数字です。

DAZN再生には、米国で思い通りに伸びなかった視聴者数を同じやり方で再獲得すののでは、また失敗を繰り返すだけです。

従来のリースナブルな月額と年額視聴料でなく、特別なイベントはPPVでの配信に集約する方針とも囁かれています。

2019年の「英語圏」でのDAZNの配信時間はサッカー、野球、モータースポーツ、アメフトでボクシングはサッカーの1割にも満たない5番手。

ボクシングにおいては、WBSSで唯一無二の成功である「11月7日のさいたまスーパーアリーナ」が世界中の視聴者のほぼ全てが集中した日本市場で独占放映権を獲得できず、日本以外では極端に関心が低かったため、全くその恩恵にあずかれませんでした。

また、人口13億4000万人を抱えるインドでは、デオンティ・ワイルダーvsタイソン・フューリーが、まさかの2000件の販売数にとどまりました。

カネロについては最低保障で4000万ドルをゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)に、GBPがそのうちの3500万ドルをカネロに支払う流れになっていました。

GBPは残りの500万ドルとゲート収入から、対戦相手とアンダーカードの選手報酬、プロモーション費用を捻出するのですから、手元にはほとんど残らないでしょう。

カラム・スミスに提示した「500万ドル」は、この状況下でもDAZNが4000万ドルを支払うことを前提とした「これ以上譲歩できない」ギリギリの金額だったのです。 

しかし話しは逸れますが「アリ法」は素晴らしいですね。こういう金額も公表しなければならなくなりました。

さらに、ゲート収入がほとんど期待できないコロナ下で、GBPのエリック・ゴメスは「DAZNが支払いの大幅な減額を要求してきているのは一見、理解できる。しかし、現実にはコロナとは関係なしに非常に厳しい経営環境にあるのだろう。自分たちの経営失敗をコロナのせいにして大幅減額するなら話し合いの場は法廷になる」と冷めきっています。

GBPは、DAZNが米国で人気どころか認知もされていないWBSSに投資する際にも「米国の事情が全くわかっていない。WBSSの階級は米国で人気がないのが理解できていない。必ず失敗する」と警告していましたが…。

9月12日と日程だけが発表されているカネロの次戦ですが、7月26日現在でも対戦相手のアナウンスはありません。

景気の悪い話ですが、続きます。 
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ライアン・ガルシアがゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)への不満を爆発させています。

オスカー・デラホーヤは「7月4日に予定していたバージル・オルティスJr.との試合をキング・ライアンGは受け入れなかった」と公表。

ウェルター級の新星オルティスJr.は15戦全勝15KOの〝パーフェクト・レコード〟の持ち主です。

一方の17戦全勝15KOのガルシアは、メキシコの血を引く「カネロ・アルバレスの弟分」でボクシング界きっての人気者。

GBPが抱える「22歳同士」のホープ対決は、北米で大きな期待を集めていましたが、破談になった模様です。

日本のボクシングファンからしても「とりあえずどっちが偽物かはっきりする」という面白いマッチアップだったので残念です。
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ガルシアとGBPは昨年から契約問題で揉め続けています。

この試合のファイトマネーにGBPは20万ドル(約2000万円)を提示しましたが、ガルシアは自分にはその10倍か20倍の商業的価値があると考えていたようで、両者の溝は歩み寄るにはあまりに深すぎました。

WBCシルバーのライト級ストラップを持っているとはいえ、まだ無冠のガルシアに100万ドルを優に超える価値があるとは思えません。

GBPの不倶戴天のライバル、トップランクのボブ・アラムも「20倍だと400万ドル(4億円)。ガルシアにそんな価値があるわけない。コロナ下の現状も考えたら20万ドルは破格だ」と、22歳の傲慢だと切り捨てています。

しかし、明日のスターが見当たらない米国ボクシング界で「メキシコの血」を持ち「近未来はウェルター級進出」の可能性が高いライト級のガルシアの存在は宝石です。

米国Yahoo!スポーツも「GBPが折れるだろう」と予想しています。


それにしても…。井上尚弥との対戦が予定されている3階級制覇のカシメロは、入札の恩恵を受けたゾラニ・テテ戦がキャリアハイの7万5000ドル。

それまでは2万ドル前後の超薄給でしたが「どこへでも行く、誰とでも戦う」と蕎麦屋の出前みたいなキャリア(これは褒め言葉)を突き進んでいます。

エマニュエル・ロドリゲスやファン・カルロス・パヤノはさらに悲惨なキャリアを奮闘してきました。

ライト級のメキシコ系スター候補と、実力派とはいえバンタム級を比較するのは無理がありますが…それにしてもです。

ガルシアが惨敗するの、早く見たいです…。

それが一度は「内定」が伝えられたホルヘ・リナレスの拳によってなら最高です。
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米国ボクシングの黄金時代はいつか?

「最も巨大なカネを生み出すメガファイト」という点では、フロイド・メイウェザーがマニー・パッキャオとコナー・マクレガーを相手に1億ドルファイトを繰り広げた現代でしょう。

しかし、そう考える人は皆無です。

「他のスポーツに対するボクシングのステイタス(人気・報酬)」というなら1950年代(まで)です。ロッキー・マルシアノやシュガー・レイ・ロビンソンが躍動、ボクシングは野球と並ぶ娯楽の王様で、世界ヘビー級チャンピオンがどのアスリートよりも遥かに莫大な報酬を手にしていた時代です。

この、1950年代が米国ボクシングの黄金期というのが、米国内の一般的な認識です。

しかし、米国ボクシングが「世界を巻き込んだ」という視点では、衛星放送にも乗ったモハメド・アリの1960〜1970年代でしょう。

市場もステイタスも低下していたとはいえ、世界スポーツ史上最高のヒーロー、アリの時代を黄金期と考えるのは不自然なことではありません。

とはいえ、50年代にせよアリの時代にせよ、私が世界のボクシングに触発された80年代には米国ボクシングはニッチスポーツへの底なし沼にはまり込んでいたということは間違いありません。


スポーツ観戦に女性や子供たちも関心を持ち、20世紀初めから歌は存在していたものの、MLBの球場でTake Me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)が合唱されるようになったのも70年代後半からのことです。

さらに、高校・大学のバスケやアメフトの人気とステイタスもアマチュアながら、プロボクシングをやすやすと追い抜き、メジャースポーツとの差は広がる一方でした。

しかし、ボクシングが没落したのは、女性や子供も含めたファミリーユースに乗り切れない「野蛮性」「暴力性」だけが原因ではありません。

アリの時代ですでに定着していたクローズド・サーキットという目先の利益だけしか考えない短絡的な思考がボクシングのマニア化、すなわちマイナー化を加速させ、同時進行した団体分裂・階級増殖・王座乱造という内部からの腐敗が、このスポーツの凋落を決定的にしました。

米国スポーツの年間MVPともいえるSports Illustrated誌の年間最高スポーツマンに輝いた最後のボクサーは1981年のシュガー・レイ・レナード。もう40年以上も前の出来事です。

ちなみにスポイラ誌の最多カバーはマイケル・ジョーダンの50回ですが、2位はアリの37回。

日本人ではイチローの4回を筆頭に王貞治、渡辺久信、野茂英雄、松坂大輔、福留孝介、大谷翔平と野球選手のみですが、ファイティング原田を大特集し〝Frantic Windmill〟 (狂った風車)と命名したのがスポイラでした。
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日本ではボクサーの報酬が公表されることは多くありませんが、スポイラは「原田は軽量級にもかかわらず1試合5万ドルを稼ぐ」と驚いています。50年以上も前、1ドル360円時代の5万ドルですから、1800万円。60年代の1800万円を2020年に〝換算〟したら、一体いくらになるのでしょうか?


話が横道にそれる前に軌道修正して、80年代の米国ボクシングです。

私の目に「80年代」が輝いて見えたのは「アリを知らない」から、だけではないでしょう。

マービン・ハグラー、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、ロベルト・デュラン。

Four Kings が繰り広げた恐るべきラウンドロビンの壮絶と深淵にメロメロに酔い痴れたからです。

メガファイトの報酬は「アリの史上最高額を上回る」と喧伝されたことも、黄金時代と錯覚した一因かもしれません。

ここからが本題です。

リング誌が久しぶりに特別号を発行しました。ご存知の方も多いでしょうが、80年代のミドル級ラウンドロビンを特集した「FOUR KINGS」です。
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私にとってはツボもツボ。

一気に読み終えて「少し物足りないな」とも感じましたが、そもそもが経営難のリング誌が手がけた〝焼き直し〟企画。読んだことある記事や見たことのある写真ばかりなのはご愛嬌です。

それでも、あらためて1冊に凝縮していただけると嬉しいものです。6ドル95セント、約760円も安い!迷わず買いました。



「焼き直し」ではない、THE ONES THAT GOT AWAY (メガファイトを逃した男たち)のページも楽しく読めました。

 ここでは、FOUR KINGS とメガファイトを渇望しながら、〝FIVE 〟になれなかった実力者を紹介しています。

ウィルフレド・ベニテス、マイケル・ナン、マイク・マッカラム、アイラン・バークレー、 アーロン・プライアーの5人。

FOUR KINGSの誰にも絡めなかったナンとマッカラム、プライアーは無念だったでしょう。

中でも、当時から「FOUR KINGSよりも強い」という意見が少数派ながらもあったのがマッカラム。 

◉ジャマイカのボクシング教授は、当時最も対戦を避けられたファイターだった。 もちろん、彼ほどの実力者だからドナルド・カリー戦などビッグファイトもいくつか経験した。

しかし、世界中が注視するような正真正銘のメガファイト、つまりFOUR KINGSとの試合は1試合も実現しなかった。

「レナード、ハーンズ、ハグラー、デュラン…4人とも私の姿が見えないかのように振る舞っていた。何度も対戦要求したが、誰1人として返事がなかった」。

「実は、ハーンズのスパーリングパートナーをつとめたことがあって、何度か彼を圧倒してしまった。だから、彼が私を避けるのは仕方がないかもしれない」。

「誰か1人だけ戦えるとしたら?もちろん、レナードだ。人気、報酬、実力、全ての面で彼がNo.1だったから」。◉




「ハグラーの馘」を狙ったミドル級ウォーズは〝ワイルドカード〟のレナードが全部獲りという結果に終わってしまいました。

ハグラーとだけ拳を交えることが出来なかったベニテスは軽すぎました。

ハーンズのジョーカーだったバークレーはハグラー戦を熱望していましたが、ハグラーは引退。

プライアーは軽くて、ナンと同様にタイミングもズレてしまいました。

マッカラムはタイミングはジャストミートに見えましたが、強さと人気の乖離が半端ないボクサーでした。

ただ、カリーとの試合は衝撃的な結果でしたが、実は展開は五分(スコアは37−39*2/36−40と大きくリードを許していました)逆転勝ちと言っても良い内容でした。ミドル級に上げてからは、スンブ・カランベイにも競り負けなど、意外なほど図抜けた結果は残せていません。

「ミドル級でもそこそこ強いが、全く人気がない選手」。それが、マッカラムの実像です。人気がある、すなわち対戦することでビッグマネーが手に入るなら、誰もマッカラムを敬遠しません。

マッカラムが FOUR KINGS への対戦を大きな声でアピールしたのはカリーに勝ったとき、1987年からでした。

つまり、レナードvsハグラーの最終決戦が終了、FOUR KINGS は互いの再戦や第3戦で高い注目度と報酬を満喫できる〝年金生活〟に入っていました。


そして、マッカラムにまつわる「ミドル級でも半端ない実力」「タイミングはジャストミート」という誤解。それらは、事実を拡大膨張した虚像でした。

マッカラムは、歴史のいたずらが縫製した魔法のガウンを羽織っているだけなのかもしれません。
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現在のボクシングシーンがカネロ・アルバレスを中心に回る星系であることに、異論を唱える人はいないでしょう。

しかし、この歪な星系に住んでいないボクシングファンにとって、旬の強豪との対戦を徹底的に回避するカネロに胸躍らせる人はいません。
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「アリ、フレイジャー、フォアマン、ノートン」や「レナード、ハグラー、デュラン、ハーンズ」「パッキャオ、バレラ、モラレス、マルケス」のようなギリギリの戦いを繰り広げるライバル関係を懐かしむオールドファンも多いのも頷けます。

その、ギリギリの戦いを見せてくれそうとリング誌が期待を寄せるのが、ライト級戦線でトップを争う若き4人。

WBA王者ガーボンタ・デービス(25歳)、IBF王者テオフィモ・ロペス(22歳)、WBC王者デビン・ハニー(22歳)、WBCシルバー王者ライアン・ガルシア(21歳)のホープです。
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米国市場では軽量級扱いのライト級は注目度は今ひとつとはいえ、4人とも無敗でヒスパニック2人に米国黒人2人という絶妙のマッチング。全員の戦績を合算すると82勝66KO無敗。

この階級で最強と目されるのはPFPファイターのワシル・ロマチェンコ。4人の牙城が人気のないウクライナのハイテクに崩される可能性も大ですが、もしそうならなければ新時代到来です。

そして、4人とも人気面で限界のあるライト級にとどまるつもりはないでしょうから、彼らが大きな傷を負わずに階級を上げることが出来たなら、興行的にも大きな可能性が膨らみます。

もちろん、個人的には過大評価4人衆をハイテクが切り刻んで棄権に追い込むシーンを見てみたいのですが…さて、未来はどうなりますやら。
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2019年、リング誌は5年ぶりに年12回発行の月刊体制に返り咲きます!

そして、この年は井上がリング誌カバーしたことを、日本の一般紙やニュース番組でも取り上げました。

1月号でいきなり井上尚弥がカネロ・アルバレスやアンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダー、エロール・スペンスJr.、テレンス・クロフォード、オレクサンダー・ウシク、ワシル・ロマチェンコとともに登場。

さらに2月には単独カバー。バンタム級の選手が単独カバーするのはエデル・ジョフレ以来、史上2人目。この〝快挙〟は日本経済新聞でも大きく取り上げられます。

リング誌は「日本で最も権威のある日本経済新聞が社会面で取り上げた」と大喜び。「将来、中国のシュー・ツァンと対戦することになれば、日本語版と中国語版も発行する」と先走ります。

井上信者らは「権威あるリング誌に取り上げられるのを喜びたい」のであって、日本語版を出して欲しいとは思ってもいませんし、シューと一緒にされるのも眉をしかめたことでしょう…。

とここまで書いて、井上信者の多くがリング誌なんて見たことも読んだこともなく、リング誌の方が浮き足立ってることもシューと一緒に商売のネタにされてることも知らないから眉をしかめることもないと気づきました。
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井上はさらに9月号でも単独カバー。リング誌の表紙に9ヶ月で3回登場、内2回は単独で飾る〝快挙〟を収めます。

この年のカバー登場はカネロが4回でトップですが、単独は1回だけ。単独カバーは2回の井上が最多でした。 

表紙はウェルター級が4月号(スペンスとマイキー)、5月号(クロフォード)、10月号(パーネル・ウイテカ)、12月号(パッキャオとハメド:フェザー級) の4回、ミドル級が6月号(カネロとジェイコブス)、8月号(カネロ)、11月号(カネロとゴロフキン)と人気階級に偏りました。

連載化したENTER THE OCTAGON(UFCを中心とした総合格闘技のコーナー)を巻頭近くに配置、井上や日本のボクシングと女子ボクシングにもページを解放、6月号からは削減一方だったページ数を80ページに〝反転攻勢〟。価格も据え置き。

BEST FIGHTER POLL(年間PFP)や、その予備選的なBEST FIGHTERS IN THE WORLD100 というページを要する人気企画は廃止されましたが、ようやく危篤状態は抜けました。
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2015年から崩壊した月刊体制でしたが、実業家ステファン・フリードマン氏の出資で2月は欠号したものの、6月号と10月号は発行、2018年は11回発行となりました。

2018年はカネロ・アルバレスとゲンナディ・ゴロフキンの再戦が5月5日に一旦はセットされたものの、カネロの検体からグテンブレロールが陽性反応を示し、試合は破談。

リング誌6月号は「ROUND13」と世紀の再戦を特集する予定で表紙まで決定していましたが、もちろんこのカバーも取り下げ↓。
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急遽の〝代打〟カバーはロマチェンコvsホルヘ・リナレスのライト級のリング誌+2団体統一戦に。

この試合は「人気階級と言えるかどうか微妙なラインのライト級」「北米から見て外国人対決」でしたが、5月12日にマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)のスポーツアリーナで開催されました。

トップランクとゴールデンボーイ・プロモーションズの「挑戦的な実験」でしたが、2万人収容のアリーナ上階席は白いカーテンが下ろされて封鎖、1万429人の動員にとどまり、ESPNの生中継も伸び悩みました。

世界評価が高いロマチェンコですが、人気面では落第点しか挙げられず、次戦からは5000人キャパのMSGのシアターなど、中有規模会場に〝格下げ〟。

ESPNの解説は「ロマチェンコは人気の高いウェルター級はおろかジュニアウェルター級への進出も逡巡している。ボクサーの生き方は十人十色、本人の自由だが、ロマとマニー・パッキャオを重ねていた私は間違っていた」とレベルの高い激戦区への進出を避けるウクライナ人の発言に失望をあらわにしました。

歴史的にはリカルド・ロペス、現在ならロマに井上尚弥もそうですがボクサーとしてどこに価値観を見い出すかは自由です。

ただ、不人気階級に留まるという選択は理解を得られにくいのは仕方がありません。
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1月号:ついにこれが読み納めとなった「BEST FIGHTERS IN THE WORLD100」からカネロ、ゴロフキン、テレンス・クロフォード、ロマ、ギレルモ・リゴンドーの上位選手が集合。

2月は欠号。3月号:PFPトップに就いたゴロフキンを中心に、過去の代表的なPFPキングが集合。

4月号:前年のFighter of The Year ワシル・ロマチェンコ。

5月号:ヘビー級特集。アンソニー・ジョシュア、デオンティ・ワイルダー、ジョセフ・パーカーのアルファベット王者にLineal Championのタイソン・フューリーの四天王。

この5月号から98ページから64ページへ、さらにページ数が削られてしまいます。単価は8ドル95セントから6ドル95セントに。月刊崩壊の年と同様に、定期購読の差額分が返金されました。

また「廃刊」の不安に苛まれそうになりましたが、ページ減とはいえ、月刊復活を宣言してくれていたので最悪の事態(廃刊)はないと思うようにつとめました。

ただ、64ページとなると手に取っても明らかに薄くて頼りなく、もはや約50ページの週刊ボクシングニューズ(BN)誌と変わりません。

ここまで薄くなると背表紙の無理やり感がみっともなく、BN誌のように潔く中綴じにした方がいいと感じていました。

3年ぶりに復活の6月号:〝代打〟カバーのリナレスvsロマ。7月号:ワイルダーとジョシュアのイラスト。8月号:マニー・パッキャオ。9月号:シュガー・レイ・レナードvsフロイド・メイウェザーの仮想対決。

3年ぶりに復活の10月号:カネロ・アルバレスとゴロフキン。小窓にバーナード・ホプキンス。11月号:エディ・ハーン。12月号:カネロvsゴロフキン特集。

2018年は11回発行。幻の6月号表紙も数えると、表紙は12揃いました。

この年のカバーから、カネロがボクシング界の中心になったことが鮮やかに読み取ることができます。

そして、いよいよ2019年。リング誌はさらに冒険的な表紙を作ります。
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経営難から2015年から月刊体制が崩壊、年9回の変則季刊でページ数も大幅減となって3年目の2017年。

この2017年のFighter of The  Year はワシル・ロマチェンコ。プロデビューからわずか12戦での最高選手賞は「永遠に破られることがない史上最短」です。

この年はジェイソン・ソーサ、ミゲル・マリアガ、ギレルモ・リゴンドーを「NO MAS〟」と心をへし折って棄権させる〝ロマチェンコ勝ち〟。

Fight of The Year はアンソニー・ジョシュアvsウラジミール・クリチコの世代交代劇。

Upset of THE Year(年間最大番狂わせ賞)はサダム・アリvsミゲール・コット。

軽量級ではPFPキングのローマン・ゴンザレスに2連勝したシーサケット・ソールンビサイがMost Inspirational(年間最高感動賞)に輝いたほか、Fighter of The  YearとRound of The Year (ロマゴンを失神させた再戦の第4ラウンド)、Upset of THE Yearでもノミネートされました。

そして、日本関連では年間PFP投票、BEST FIGHTER POLL で井上尚弥が日本人初のトップ10入り(6位)を果たします。しかし、この人気企画もこの年を最後にリストラされてしまいます。
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表紙は1月号:ロマゴン、アンドレ・ウォード、ゲンナディ・ゴロフキン、セルゲイ・コバレフのPFPファイターの集合カバー、2月は欠号、3月号:バーナード・ホプキンス、4月号:前年のFight of The Year、カール・フランプトン、5月号:歴代最強のヘビー級は?の特集にあわせてヘビー級19人の集合写真、6月は欠号、7月号:カネロ・アルバレスとフリオ・セサール・チャベスJr.、8月号:ロマチェンコが初の単独カバー、9月号:ジョシュア、10月は欠号、11月号:カネロ・アルバレスとゴロフキン、12月号:マイキー・ガルシア。

過去3年間、ジュニアウェルター級以下は1人もカバーされませんでしたが、この年はフランプトン(フェザー)、ロマチェンコ(ジュニアライト)、マイキー(ジュニアウェルター)と3人が単独カバー。

これまで、圧倒的にカバーを飾ってきたウェルター級がゼロと「変革を実行した年」(リング誌)になりました。
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経営難から月刊を維持できなくなったリング誌は、2016年も年9回発行の不定期季刊雑誌となります。

リング誌は、ボクシングだけでなくプロレスも取り上げていた時期があるそうですが、私の知る限りでは「ボクシング一筋」雑誌でした。

そんなリング誌が大鉈を振るいます。

2016年1月号の表紙はUFCファイターでしかも女性のリンダ・ラウジーが単独カバー。ボクシング部外者が表紙を飾るのは史上初。ボクシングと格闘技界ではちょっとした話題になりました。

もちろん、ラウジーは「ボクシング転向を前向きに考えている」とのことで、史上最高の注目度を集める彼女が「没落する一方の米国ボクシング史上の救世主になる」という期待が込められていました。

当時、破綻寸前のHBOが企画していた軽量級だけの超低予算イベント「SUPER FLY」(翌2017年からスタート)なら、余裕で5〜6回は開催できるほどのファイトマネーを手にしていたラウジーのボクシング参戦は確かに低迷する市場の起爆剤に持って来いでした。

しかし、「安かろう、悪かろう、軽かろう」と揶揄され、HBOがボクシング中継で史上最低の視聴者数をマークすることになるスーパーフライ興行。

米国ではコアなマニアでも関心が低い軽量級に手を伸ばさざるをえないほどに、このスポーツは瀕死の状態に陥っていたのです。

それでも、パックメイが評判倒れの塩試合に終わり、もはや本当にボクシングをやるかどうかわからないラウジーにすがるしかありません。溺れる者は藁をも掴む、です。

実際にラウジーは〝藁〟でした。リング誌がカバーした直後の試合でまさかの惨敗。さらに復帰戦でもこっぴどいKO負け。以前から指摘されていた打撃センスの無さを露呈し、その商品価値は暴落。

争奪に名乗りを上げていたゴールデンボーイ・プロモーションズも「ラウジーにボクシングは無理」(オスカー・デラホーヤ)と匙を投げます。
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1月号:リンダ・ラウジー、2月は欠号、3月号:ゲンナディ・ゴロフキン&カネロ・アルバレス、4月号:タイソン・フューリー、 5月号:マニー・パッキャオ、6月は欠号、7月号:カネロ・アルバレス&小窓でアミール・カーン、8月号:ヘビー級戦線のトップ選手集合、9月号:この年逝去したモハメド・アリ、10月は欠号、11月号はシュガー・レイ・レナード、12月号はリオデジャネイロ2016の女子ボクシング金メダリスト、クラレッサ・シールズ。

2016年は9冊発行、女性が2度も単独カバーを飾りました。 カバーされた最軽量ボクサーはパッキャオのウェルター級。この年もジュニアウェルター級以下のボクサーは集合写真ですら表紙に登場することはありませんでした。

ボクシング史上、というよりも世界のスポーツ史上で最高のスター、アリの綴じ込みピンナップを毎号挿入するとリング誌の販売状況は上向きます。

この年のFighterof The Yearはカール・フランプトン、Fight of The Yearはフランシスコ・バルガスvsオルランド・サリドとライト級以下の軽量級から選ばれました。

投票制の年間PFPともいえるBest Fighter Pollではローマン・ゴンザレスが2年連続の1位。リング誌電子版のPFPで8〜9位にランクされていた山中慎介は惜しくも11位(10位のフランプトンとは3点差)、井上尚弥は13位。

電子版PFPでは山中だけでなく内山高志もランキングされていましたが、Best Fighter Poll での日本人10位以内はこの年も届きませんでした。
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