フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: これがボクシングだ!

「アルゲリョやレナードに少しでも近づきたい!」。

「外国のジムに僕のポスターが貼ってある、そんなチャンピオンになりたい」。

そんなヘッドラインで、WBC世界ジュニアバンタム級チャンピオンになったばかりの渡辺二郎へのインタビュー記事が掲載されているのは「ワールドボクシング誌」昭和57年7月号。
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「世界チャンピオンになれたのは会長のおかげ」「フィリピンやタイには世界チャンピオンになれる実力者がいっぱいいる。ただ、彼らにはマネージャーの力がないから、チャンスが与えられない」。

「僕は1年に2回もチャンスをもらえた。これはもう…ラッキーというより会長のおかげですわ」。

「アルゲリョとかレナードなんか、僕らが知ってるでしょ。あんなふうになりたい。単に日本だけの世界チャンピオンでなくて、国際的にも有名なチャンピオンになりたいですわ」。

「去年、韓国で練習したジムに具志堅さんのポスターが貼ってあったんです。ああ、いいなあと思いました。外国のジムで僕のポスターが貼ってある、そんなボクサーになりたいです」。

今更ですが、真実を見抜く感性のなんと鋭いことでしょうか。

そして、当時はファンも2団体時代のぬるま湯につかっていたというのに「世界王者って一人しかおったらあかんでしょう?二人おったら王者ちゃうでしょ」と真っ当な正論を主張して、その舞台に上がるのです。

悪い意味でも〝聖域化〟してしまっていたファイティング原田に対して「減量が苦しいとか自慢するのはおかしいでしょ」と直言した渡辺。

それでも、暴力団に所属してる身で、ボクシング会場に現れることの是非は、やはり「非」です。 

しかし、40年近くも前に「承認団体分裂の矛盾」を指摘し「チャンピオンは一人でないとおかしい」と語り、アルゲリョやレナードを意識して「国際的にも有名なチャンピオンになりたい」と、渡辺は希求したのです。

グスタフ・バリャスとの初防衛戦を控えた〝新米〟の世界チャンピオンが、こんな傲慢なことを滔々と語っているのです。

驚きです。

彼の現在位置、それを肯定することなど出来るわけがありません。

しかし、昭和57年=1982年の渡辺二郎は、2020年のボクシングファンが 思い返しても感激にむせぶしかない、どこまでも澄み切った高潔を持っていました。

どこかで紹介したかもしれませんが、彼はトレーナーとしても優れた才能を持っていました。そして、団体分裂と王者量産の時代にどう立ち向かうべきかも、知り尽くしていました。

NHKが衛星放送を立ち上げた当時、渡辺の理路整然とした解説が大好きでした。

的を射た解説の後に「なんぼ理屈を並べても、ボクシングは理屈じゃないんですけどね、結局は」と薄ら笑う渡辺の深さといったら、もうたまりませんでした。

もう二度と、彼がボクシングを解剖する言葉は、聞けないのでしょうか…。
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「1980年代頃までプライバシーもなんもなかった」。

読者投稿で本名から住所、ときには電話番号までが記載されることが当たり前だった時代です。

そんなことを以前書いた気がしますが 、今夜は大橋秀行です。

ボクシングマガジン1986年3月号の「今月のボクサー」から。

昭和40年3月8日生まれの20歳(当時)、出身校、家族構成、日課、趣味など、プライベートに偏った内容です。

そして、実家や現在の住所が最後の番地まで載せられています…。

「小学生の頃、ずっと頭が良く数学が4か5ばかりでした」という大橋に、記者が「本当かね」と失礼に突っ込むくだりも。

▶︎小学生なら数学でなく算数じゃないのか…?


「中学の頃からグレて成績は下降一方」だったそうで「高校では143人中142番 。ビリの高野君は今も大親友で大工の仕事を休んで試合の応援に駆けつけてくれる」そうです。

趣味は「夕やけニャンニャンを見ることで、世界王者になったら、新田恵利に会えると信じてます」。


尊敬する人には、ライバルの喜友名朝博の名前も挙げています。「ぼくが喜友名のことをあれこれ言えば、必ず返してくる憎らしいやつ。この間、後楽園ホールで見かけて顔をそらしましたが、あいつはすぐに近寄ってきてコンニチワって挨拶してきました」。

▶︎このとき、大橋は4戦全勝3KOで、日本ジュニアフライ級3位。喜友名は15勝7KO1敗の日本王者。この二人の試合は、互いの個性がぶつかり合う良い試合でした。


勤務先は千代田区の新聞社で10時から14時まで。

「150年に一度の天才」と売り出されていることについては「悪い気はしませんが営業用ですね」と冷静。

しかし「自分は努力型ですが、好きな言葉は天才です」と見事に切り返しています。
 

▶︎ボクシングだけじゃなく、言葉のセンスも抜群です。
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*********

スター選手の〝孵化〟前のインタビュー記事は、微笑ましいものです。特に、長い時間が経って読み返してみると、なおさらです。

純白の野望は、狡猾で熟練の王者に引き裂かれますが、破られたピースをかき集めた大橋は!そこから本当の自分を作りあげてゆきました。


…昔の雑誌を取り出してページをめくると、元ボクサーが逮捕されたという記事もよく見かけます。

この類の記事は、微笑ましいわけがありません。

今では専門誌だけでなくネットニュースなどでもこの種のニュースが簡単に目に飛び込んできて「え!?」という戸惑いに悲しくなります。

彼らが道を誤った原因が、ボクサーという職業とは関係はないとはわかっていますが、それでも居た堪れない気持ちになります。



思い入れのあるボクサーの「純白の野望」と、「汚れた忸怩」のシリーズです。 
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ハイジ:御爺(おんじ)がボクシングの階級、忘れてもうたゆうねん。どうしても思い出せない階級が一つだけあるゆうて。


クララ:なんや、ボクシングの階級ゆうたら17もあるからな、普通忘れるわ…ちゅうより元々覚えてないんちゃうの?


ハイジ:御爺がゆうには、特徴はわかるけど階級の名前だけが思い出されへんねんて。


クララ:特徴わかったら、階級の名前も絞れるがな。ほんで、御爺はなんてゆうとった?


ハイジ:御爺がゆうには日本では不良少年の主人公が最後に真っ白な灰になるボクシング漫画が、むかーし大ヒットしたらしいねんけど、その主人公が戦った階級らしいねんけどな…。


クララ:そら簡単や!もうーわかったがな。あしたのジョーの矢吹丈やがな。ジョーゆうたら矢吹も辰吉もバンタム級で決まりや。


ハイジ:私もそう思てんけどな、御爺がゆうにはな、その階級はアメリカでも人気がものすごうてラスベガスやニューヨークのおっきい興行でメイン張ることもあんねんて。


クララ:ラスベガスやニューヨークのおっきい会場でメイン?ほな、バンタムちゃうなあ。バンタム級はおっきいイベントに出ることがあっても100%前座やからなあ。そら、絶対にバンタム級とちゃうわ。


ハイジ:せやけどな、御爺がゆうにはその階級は黄金の階級って呼ばれてるらしいねん。


クララ:それ、黄金のバンタムやないか!やっぱりバンタム級や。ちなみに、それ階級やのうてエデル・ジョフレいうグレートの渾名やからな。黄金のバンタムが一人歩きして、バンタム級はレベルが高い、みたいな全く見当違いの誤解が日本の一部だけで広がっとるけど、あれは大間違いや。まーでも、御爺が忘れてたんはバンタム級で決まりや。


ハイジ:せやねんけどな。その階級は変態なフィリピン人やら下劣な銭ゲバやらがPPVで450万件も売ってフォーブスのアスリート長者番付でワンツー飾ったこともあるんやて。


クララ:PPV!そんな年に3回くらいしかないメガファイトにバンタム級は出たとしても前座やから全く関係ないわ。それやったら、絶対バンタムちゃうわー。

変態フィリピン人とか下劣銭ゲバはウェルター級やからな、バンタム級とはなんの関係もないわ。

そもそもバンタム級のボクサーがフォーブスの長者番付なんて、ワンツーどころか100位まで勘定してても、歴史上1人も入ったことないねんから、そら絶対バンタム級ちゃうわ、ありえへん。


ハイジ:せやけどな、御爺がゆうには、その階級あたりのボクサーは小さいけど、スピードも手数もスタミナも抜群で、想像以上にパワーも楽しめて、アクションが多くて、テレビで見るには一番面白いねんて。


クララ:はな、やっぱりバンタム級やろ。ジョフレやオリバレス、サラテ、辰吉、ドネア、長谷川、山中、井上あたりのボクシングは、そら見ててメッチャおもろいがな!

あしたのジョーに、黄金のバンタム、見てておもろいとなったら、もうバンタム級以外、考えられへん。

もうバンタム級で決まりや。


ハイジ:そうなんやけど、私もそれバンタム級やって御爺にゆうてんねんけど、御爺が言うにはバンタム級ちゃうって。


クララ:えー?御爺がゆうてんねんやったら、そらバンタム級ちゃうやん!


ハイジ:せやけど、横からペーターが「それクルーザー級ちゃうか?」ゆうてきてんけど…。


クララ:あるか!絶対クルーザー級ちゃうわ!クルーザー級やったら矢吹も力石もあそこまで減量苦労せぇへんやろ!
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このブログは2017年にスポーツナビで始め、ここに引っ越したのが2018年。

かれこれ3年になりました。

スポナビでは「フシ穴の眼」でしたが、他のスポーツネタも多く書いてたので「スポーツ疾風怒濤編」と付け加えさせていただきましたが、一気にボクシングに偏っちゃってますね…。

まー、書き始めのきっかけが2015年のパックメイでボクシング界に愛想を尽かして大量のリング誌などを断捨離しちゃおうと思ったところ、バックナンバーを読み出すと、止まらなくなったことでした。

一度は読んでる記事なのに、面白くてワクワクして。

「ボクシングはやっぱり面白いわ」と思い直して、リング誌などで感銘した思いを自己満足で書き連ねようと始めたのです。

とはいえ、何かを伝えたいという思いも芽生えてきました。

それは、日本のメディアが徹底的に避けている事実や真実です。

わかりやすい例を挙げると「ドネアがモンティエルを2ラウンドKO予告して、その通りに実行した」という米国では大きく報道されたエピソードを紹介すると、コメント欄に「そんなことを報道したら長谷川が惨めになるだけで意味はない」というような意見が寄せられました。

「ウィラポンはチェリーピッカー」のチェリーピッカーを「雑魚狩り」と訳すと「選手はみんな一生懸命にやってる。雑魚挑戦者や穴王者なんて表現は失礼」とコメントをいただきました。

「黄金のバンタムはバンタム級がレベルが高いという意味ではない。事実として世界的に注目度の低い階級を〝黄金〟と呼ぶべきじゃない」と書くと「それで盛り上がってるんだからそんなことを広める必要はない」と反対される人もいました。

「議論する余地のない世界王者」というフレーズを乱発するリングアナを「意味がわからずに使っちゃいけない。議論する余地のない世界王者とは完全統一王者のことで他に王者を名乗る奴がいないこと」と書いたときも「それでみんなが納得してるのに欧米でどうとか関係ない」という人もいました。

他でもいろいろありますが、このブログを読んでくれてる人はなんとなく伝わってると思いますが、あらゆるコメントを歓迎します。

コメント欄には何の制限も設けていません。誰でも自由に書き込めるはずです。

上に挙げたコメントを寄せてくれた方は、日本ではマジョリティだと思います。

そして、その主張も非常にわかりやすいです。

階級についても「日本ではスーパー表記なんだからジュニア表記っておかしい」という指摘も、日本の多数意見の中では当然です。

私が圧倒的にマイノリティです。

「コメント大歓迎」に嘘はありませんし、なるべく返事を書きたいと思いますが、さすがに全てには無理ですのでご了承ください。

さらにいうとコメントしやすかったり、詳しくお答えしたりする方が偏るかもしれませんが、これは感性の問題なのでご容赦ください。

「コメント大歓迎」の意図は「異論反論も大歓迎」ということです。

もちろん、異論反論ですから対立するに決まっています。

なので、異論反論の場合はぼやっとしたのじゃなくて「ここが違う!」「この表現は納得できない」としっかり指摘してください。

異論反論大歓迎ですが、私以外に乱暴な言葉を使うとか、議論が成立しないノイローゼな発狂は禁止です。

かなり緩い暴言コードですが、それでも限度があります。それ超えたら削除しします。

あとは、難しいかもしれませんがHNは変えないでほしいですね。こちらではIPアドレスが全く同じで同じようなこと書いてると、同じ人だとわかっちゃうので…。

恥ずかしくてやりにくいのはわかりますが…。

乱暴な言葉を振り回したり、発狂しちゃうと改名したくなる気持ちもわかります。

でも、言いたいことがあるのに、コロコロ名前を変えて同じことを言う人はものすごく可哀想に思えてしまって、いたたまれません。

あと、コリアンファイターについて書くと明らかに低脳なコメントを載せるバカもいますが、そういうのも見つけたら速攻削除しています。

中学で野球してた頃に朝鮮中学と何度か試合しましたが、野球下手なくせにとんでもない奴らでしたが、奴らには奴らなりの生き方、言い分があるんです。
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そんなこと書きながらも、コリアンファイターの千里馬哲虎、又の名を康哲虎の短歌を載せて、おやすみなさい。

スポナビで結構書き込んだテーマでしたが、ここではさらっと。

哲虎は、朝日新聞の朝日歌壇にときどき投稿されています。




もう少し 背が高ければ ボクシング やらなかったよ 絵を描いてたよ

飛行機に 乗るまで サインを求めらる 昨夜(よべ)パッキャオに打ち崩されしが  

ボクサーの 明日を預かるセコンドの 心が投げた 黄色いタオル  


 
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「トランプ大統領が正しい政治的判断を行わず、十分な検査キットも確保できなかったため、14日と17日に予定していた興行を中止する」。

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シャクール・スティブンソンvsミゲル・マリアガをメインにセットした日本時間15日の興行も延期(中止)

トップランクのボブ・アラムは、試合会場のマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)があるニューヨーク州アスレティック・コミッションの担当責任者と開催に向けて調整していましたが「すべての出場選手を検査するキットが調達できなかった」と、興行実施を断念しました。

「この試合に向けて長くて厳しい練習を積み重ねてきた選手たち、会場を作り上げてくれたMSGの関係者の気持ちを思うといたたまれない」。

そして、5月30日にセットされたビッグファイト「ワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペス」を含めた、井上尚弥の出場も予定されている4月以降の興行については「状況が好転するならばもちろん開催する」とし、現在の厳戒ムードが続くとしても「選手と関係者への検査キットが調達できれば、無観客で開催する」と、中止にはしないで何らかの実施策を模索することを強調。

さらに、従来よりも10倍早く検査結果を出せる新しい検査キットをアメリカ食品医薬品局(FDA)が認可したことで、この新キットを導入することも明らかにしています。
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「情報やノウハウは全てオープンにする、ライバル関係にあるDAZNとのコラボや協力も考える。この危機はボクシング界全体で乗り切らなければならない。UFCも同じ船に乗っている。我々と提携しているESPNもNBAの試合中止でコンテンツに穴が空いている。出来ることはなんでもやる」。

88歳のアラムは今後、井上戦を統括するネバダ州アスレティック・コミッションのボブ・バーネットとも興行実施に向けての会談を行う予定です。

がんばれ、アラム。人生で初めて心の底からあなたを応援させて頂きます。
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権威のあるフォーブス誌のアスリート長者番付を見れば一目瞭然、ボクシングは世界で最もカネが稼げるプロスポーツです。

そのボクシングの本場が、米国ネバダ州ラスベガス。
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そこではフロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオが、たった1試合36分間で3億ドルのファイトマネーを分け合うなど、MLBや欧州サッカーのトップ選手も羨むピッグマネーが当たり前に飛び交っているのです。

先週もデオンティ・ワイルダー とタイソン・フューリーの2人がメガファイトを繰り広げたばかり。

ワイルダー とフューリーは最低保証で2500万ドルずつを手にしましたが、PPVの歩合収入がこれに加算され、さらに巨額の報酬を手にする見込みです。

この華やかなボクシングの世界で1人の日本人ボクサーが恐ろしく高い評価を得ています。

ボクシングの聖書と呼ばれる米国リング誌のPFPランキングで、日本史上最高位の3位にランキングされている井上尚弥です。

井上は、無敗のまま2階級にわたって二桁防衛を果たした伝説の名王者オマール・ナルバエスを2ラウンドで粉砕。

10年無敗王者ジェイミー・マクドネル、元スーパー王者ファン・カルロス・パヤノを1ラウンドでKO、無敗のIBF王者エマヌエル・ロドリゲスも2ラウンドで倒しました。

「体重同一時と仮定して誰が一番強いのか」をランクするPFPでは、ワイルダー やフューリーは下位にも名前が見当たりません。

ところが、井上はトップを捉えるポジションにつけているのです。

井上は昨年、「黄金」と形容されるバンタム級で展開されていた全世界注目の高額賞金トーナメントWBSSで優勝、日本人としては史上初の聖書リング誌の単独カバーまで飾りました。

この実績に飛びついた世界最高のプロモーター、トップランクと複数試合契約を締結、ついに本格的な米国進出が決定したのです。

しかも、その舞台はマンダレイベイ。メイウェザーやパッキャオらも戦ったラスベガスの聖地です。

その才能は日本の小さなボクシング市場が受け止めることなど出来るわけもなく、ラスベガスに招かれた井上は1試合て何十億円も稼ぐスーパースターになるでしょう。

その勇姿は、もう日本で見ることは出来ないと諦めていましたが、トップランクは日本のファンを慮って年末に日本での試合も予定してくれました。

ラスベガスに莫大な富をもたらす井上を、小さなマーケットの日本にわざわざ凱旋させてくれるのです。ボブ・アラムの粋な計らいに感謝です!

気になるのは、井上のラスベガス上陸という大快挙に日本国内の盛り上がりが今ひとつな点です。

日本では、THE ANSWER など一部の良識あるメディアやボクシング情報に詳しい博識なファンを除くと、世界がどれほど井上を評価しているのかを全く理解出来ていないのが現状です。

もしかしたら、規格外のスーパースターに慣れていない日本のスポーツファンやメディアは、単純に戸惑っているだけなのかもしれません。

「どれだけ凄いことなのか、世間がイマイチ分かってないのがねぇ…」と松本人志が嘆くのも当然です。
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の中の蛙。

その言葉は、どの世界でも最大級の屈辱です。ましてやスポーツの世界では。

21世紀に入ってから日本ボクシング界は世界王者をかつてないペースで量産し〝黄金時代〟を迎えています。

長谷川穂積から内山高志、山中慎介…日本のエースと目された〝絶対王者〟たちは「世界的な強豪・ビッグネームと戦いたい」と「本物の栄光」を渇望しました。

しかし、意外な相手に足下をすくわれ、その夢は潰えてしまいます。

そして、PFP10傑の前後にランクされていた彼らが番狂わせに沈むと、世界評価も手の平を返します。

「ジャパニーズパッキャオ」は「階級最弱王者にグラスジョーだけでなく過大評価も打ち砕かれた」。

「130ポンドで最も重いパンチ」は「ノロノロと大砲に弾を込めている間に台座ごと破壊された」。

「全階級を通じて最強の左」は「防衛戦の相手に旬の強豪はたったの1人もいなかった」。

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階級制スポーツはその時点で「本物の栄光」が見えにくい宿命を背負っています。シュガー・レイ・ロビンソンは「本物の栄光とは何か?」という命題に満点回答を示したグレートでした。


っ面だけの黄金時代。エースは世界に出る前に井戸の底で腐ってしまった蛙。

もしかしたら小さな階級と井戸を飛び越える才能があったのかもしれませんが、その機会が与えられないまま、彼らの刀は錆び付いてしまいました。

「過去最多の世界王者」。

そんな表現で語られる今の〝黄金時代〟は同一団体でも複数の王者を量産する蒙昧な四団体を受け入れた時点で誰にでも予想出来た掛け算、当然の帰結です。

今は虚飾の黄金時代です。

「本物の栄光」って何でしょうか?

4つの承認団体が量産するアルファベットのチャンピオンベルトが世界一の称号でないことは、誰の目にも明らかです。

怪しい同族経営の承認団体が承認料だけでなく、50万円前後で売りつけてくるチャンピオンベルトにどれほどの価値があるのでしょうか?



且つ、五輪の金メダルにサッカーワールドカップの優勝トロフィー…栄光の象徴は王者に無償で贈られるもので、IOCやFIFAから購入するものではありません。

それなのに、奴らは厚かましくもそれを売りつけてくるのです。

では、承認料やベルト代を支払わなくても認定され、贈られるリング誌王者とベルトには価値があるのでしょうか?

我田引水のアルファベット団体では実力の怪しいボクサーの間で穴王者決定戦が行われたり、どう考えても世界基準にない雑魚挑戦者を相手に防衛戦を重ねるなんてことが、日常的に行われています。

それに対してリング誌は独自のランキング(といってもアルファベット団体とは比較にならない納得できるものです)の1位と2位が争って王者を決定します(特別に認められた場合は1位と3位でも)。

しかし、プロモーターやテレビ局など複雑な利権が絡む強豪同士の激突を実現させるには、いくつもの大きな障害物と高いハードルを跳躍しなければなりません。

ゆえに現在のリング誌タイトルは、17階級中10階級が空位のままです。それでも7人も王者がいるのはむしろ多い方なのです。

裏を返すと階級最強決定戦は、滅多に行われないということです。

しかも、そのリング誌王者7人ですらUndisuputed Champion、他に王者を名乗ることを許さない完全統一王者、議論する余地のない王者は1人もいないのが現実です。 ※クルーザー級の完全統一王者オレクサンダー・ウシクはヘビー級転向を決定、WBA王座を返上するなどタイトルは再び液状化しています。 



 
勒菩薩とは「次のブッダが約束された修行者」のことだそうです。

解脱した人間〝ブッダ〟などが存在するわけがないように、完璧なボクサーなんてのも幻想です。 

それでもゴータマ・シッダルタという修行者は実在しました。

旬の強豪・ビッグネームに一度も勝っていない彼もまた、道半ばの修行者に過ぎません。そして彼もまた、意外な相手にその足下をすくわれてしまうかもしれません。

「道半ば」という表現は正しくないですね。そんな道など、このスポーツにはそもそも存在しないのですから。

かつてこのスポーツにも目にみえる栄光への一本道がありました。今や野球やサッカーは、その頂点へのロードマップが詳らかにされています。

しかし、彼には地図も道標もありません。それなのに、いやそれだから外野は勝手なことをさもわかった風に語ります。

バンタムに目ぼしい相手はいないから、ジュニアフェザーを統一しろ。

バンタムは穴階級だから、米国でも認められるフェザーへ上げろ。

ラスベガスかマジソンスクエアガーデンで戦え。

「本当の栄光」が何なのか、どうすればそれを手に入れることができるのか、それがわかっていないのは、思いつきで勝手なことを口走るメディアもファンも同じです。

道なき道を往く若き修行僧。
 
格好いいじゃないですか。

「MLBでホームラン王になる」「男子サッカーでバロンドールを獲る」。それが偉業であることは馬や鹿でもわかります。

「本物の栄光」とは何なのか。どうしたら偉業なのか。それがわからない真っ暗闇のボクシングで、彼が一本の松明を持ったことは間違いありません。

これから彼が何を照らしてくれるのか、私たちをどこに連れて行ってくれるのか。彼のことですから、もしかしたら、もう一本、別の松明を隠してるかもしれませんね。

ボクシングファンの皆様と、純粋に楽しみたいと思います。
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悲しいかな、24日に名古屋で行われたWBO世界フライ級タイトルマッチ、遅ればせながら録画観戦です。

結果も内容も知ってしまった試合だけに、色んなバイアスがかかってましたが、個人的には115-113で田中勝利でした。

どっちに振るか迷うラウンドが初回からありましたし、ドローも納得です。

間違いなくクロスゲームでしたが、いわゆる〝ラスベガス・スコア〟なら田中の117-111もありかもしれません。

まー、とにかくいい試合でした。

このブログでもよく取り上げてますが、軽量級の魅力を説き続けているESPNの編集委員で元リング誌編集長のナイジェル・コリンズっておじいちゃんがいます。

彼もこの試合を見たでしょうが、きっと「これがボクシングだ」と狂喜乱舞したはずです。

2ラウンドの田中のカウンター、お見事でした。あのダメージから反撃したチャンピオン木村の逞しさは、同じくお見事でした。 
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田中恒成の入場曲はフレディ・マーキュリーのI was born to love you。木村翔は竹原ピストルのFoever Young。いやいや二人とも、素晴らしい選曲です。 

田中は、もっと上手に戦える技術を持っているのに、その戦いの中で相手の良さも引き出そうとすることが、ままあります。それは、あたかもプロレスラーのように。

いわゆる〝メキシカン・スタイル〟なのですが、エリートには有るまじき性癖です。

対する、チャンピオンの木村は生粋の〝メキシカン〟。

この舞台が西海岸で、二人がメキシコ人か、メキシコ系アメリカ人なら、間違いなく年間最高試合の筆頭候補に挙げられたでしょう。そして、二人の人気が沸騰していたのは間違いありません。

今から12年も前、2006年に二人のメキシコ人、ジョニー・ゴンザレスとフェルナンド・モンティエルが WBOバンタムのタイトルを争った時、リング誌をはじめ多くのメディアが「マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレスの後継者候補。素晴らしい試合になる」と煽りましたが、内容はどちらも危険を恐れて冒険をしない塩分過多の凡戦、期待は幻滅に変わります。

ファンもメディアも「これからスターダムの坂道を登ろうとするボクサーにはあるまじき小さな心。二人とも大成はしない」と一刀両断しました。

現実にはその後、ゴンザレスは二階級制覇。モンティエルも三階級制覇を成し遂げましたが、彼らと「バレラとモラレス」が比較される日は二度と訪れることはなく、二軍のままキャリアを終わろうとしています。

ジョニゴンもモンティエルも「絶対に負けられないという思いが先行してしまった」と、あの試合を回想するように、同国人対決にはプライドや意地や見栄が複雑に絡み合います。

そうした、見えない呪縛を振り解いて「負けたくない」なんてマイナス思考ではなく、「あいつに絶対に勝つんだ」と真っ向勝負を展開したバレラvsモラレス、木村vs田中は素晴らしいスピリットの持ち主です。

一発殿堂の「バレラとモラレス」と、「ジョニゴンとモンティエル」や、まだまだこれから実績を積み上げる段階の「田中と木村」を並列に語るべきではないかもしれません。

それでも、バレラとモラレスにあって、ジョニゴンとモンティエルに欠落していたものを、田中と木村が見せてくれたことは事実です。
 
読売新聞の「内山高志の目」で自身も二度の日本人対決を経験している内山が「歴史に残る日本人対決」と評価し たのも頷けます。

 内山は116−112と試合を採点、「田中が引かずに(フッカーの木村に対して)すぐにストレートを打ち返した。木村はもう少し(速く着弾できる)ジャブやストレートを当てることができれば展開は変わっていた」と勝負のポイントに挙げています。

確かに、その通りですが、ジャブやストレートを起点に攻撃を組み立てていては、木村の〝暴風雨スタイル〟は成り立ちません。それじゃ、暴風雨じゃないのです。

木村に〝タラレバ〟があるとしたら、海外での前戦から二ヶ月も経たない短いスパンで、キャリア最強の相手をアウエーで迎えなければならなかったことでしょう。

この試合間隔の短さが、木村にとってプラスだったのかマイナスだったのかと考えると、マイナス要素の方が大きかったのは間違いありません。

もっとフレッシュな状態で、中京の俊才と戦わせたかった…。

もちろん、こんなタラレバはファンがのたまう戯言に過ぎません。

木村翔は、負けたのです。

ボクシングにおける敗北は、他のスポーツのそれとは全く意味合いが、重大さが異なります。

他のスポーツでは敗北は簡単に忘れられ、乗り越えることも出来ます。

たったの1敗ですら 、ジョージ・フォアマンやトーマス・ハーンズはその軛に苦しみ続けました。

しかし、木村翔のこの敗北は、少なくともファンにとっては「また、あなたの面白い試合が見たい」というリクエストの熱量を引き上げるのに十分過ぎる、大きな〝勝利〟を収めた試合でした。

この夜の木村は、田中の引き立て役では、決してありませんでした。

月並みな言い方、ベタベタで申しわけありませんが、この試合のBiggest Winnerは、田中ではありません。もちろん、木村でもありません。

ボクシングファンです。 

ファンを勝者にしてくれる試合なんて、滅多にありません。

そんな、貴重な試合を見せてくれた二人に感謝、感謝、感謝です。  
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承認団体が4つも乱立する時代ですが、バーナード・ホプキンス(2004年ミドル級)に続いて、テレンスクロフォード(2017年ジュニアウェルター級)が自力での統一、史上二人目のUndisputed Champion となりました。(※ジャーメイン・テイラーも、ホプキンスに薄氷の判定勝ちで Undisputed Champion になりましたが、自力ではありません)。

四団体時代は、複数階級制覇を安易にしてしまいました。今や、三階級が毎年何人も生まれるバーゲンセール状態です。

一方で、Undisputed Champion になることは、団体増殖でプロセス上は非常に難しくなっています。1988年設立のWBOが軌道に乗った1995年頃を起点としても、25年近くもの時間でたった二人しかその座に就くことが出来ていないのが現実です。

しかし、史上三人目の「議論する余地のない王者」が誕生しそうです。しかもヘビー級で。

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リング誌7月号は「ROAD TO UNDISPUTED!」(完全統一への道!)と題してヘビー級を大特集しています。

WBC王者デオンティ・ワイルダーをアル・ヘイモンらと共同でマネジメントしている、シェリー・フィンケルは日本時間6月12日「ワイルダーがエディ・ハーンからのオファーを承諾した。9月15日に WBA/WBO/IBF王者アンソニー・ジョシュアと英国ウェンブリースタジアムで戦う」とリング誌に話しました。

すでにジョシュアに5000万ドルの報酬を提示しているワイルダー陣営を代表してフィンケルは「これでジョシュアが受け入れなければファンも黙っていないだろう」とAJを挑発することも忘れません。

当のハーンのコメントがまだ届いていないのが心配ですが、フィンケルは「2試合契約で初戦を英国、次戦を米国と〝ホーム・アンド・アウェイ方式〟で行う」という内容が英国の敏腕プロモーターから提示されたと言います。

ただし、現時点では交渉成立という報道ではありません。油断は出来ません。

さらに、9月15日といえば…そうですゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスのメガファイトが実施される可能性がまだ残されているのです。

マイク・タイソンのマンージャーもつとめたフィンケルは「ワイルダーvsジョシュアは米国西海岸時間で昼間に行われるから、二つの試合はバッティングしない」と言いつつも「9月15日を避けて試合をセットする可能性もある」と含みを持たせています。

普通に考えると、GGGvsカネロはもちろん、ワイルダーvsジョシュアも高額のPPVになるはずですから、「時間帯が違うから」どころか「同じ月」でも互いの売上に悪影響を与えることは確実です。

時期的に考えても、GGGvsカネロの決裂で一気に進んだ交渉とみられます。より大きな興行であるGGGとカネロの再戦が、急転直下で成立するとご破算になりそうな雲行きです。

GGGとカネロの再交渉の期限が日本時間の木曜日とされてますから、そこでやっぱり決裂となると実現の可能性も膨らみますが…さて、どうなりますやら?
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