フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 複数階級制覇

複数階級制覇が日常的になり、マニアの間でPFP1位への注目度が高まっている現代。

複数階級制覇とPFPは階級を〝超える〟という点で共通点を持ちます。

そして、今日現在のリング誌ランキング10傑を見ても、複数階級で王者になっていないのはオレクサンダー,ウシクと、ゲンナディ・ゴロフキン、エロール・スペンス、アルトゥール・ベテルビエフの4人。

その中で、複数階級制覇への意欲を見せていないのはゴロフキンだけです。

残る6人の階級制覇数を合計すると23、マニー・パッキャオの「8」が大きなインパクトを与えているとはいえ、平均は3.8になります。
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本番とは関係ありません。

元々の発想からしてPFPはヘビー級に敷居が高く、複数階級制覇を重んじる傾向が強いのは当然です。

そして、それが妄想とはいえ強さの序列である以上、敗北や苦戦がランクダウンにつながるべきですが、ここに大きな矛盾が横たわっています。

例えば、フェザー級上がりのマイキー・ガルシアはウェルター級最強と目されるスペンスに敗れて、PFPからランクアウトされました。

勝てば、少なくともランキングが下がることなないのは理解出来ます。

しかし、PFPという概念上でもマイキーは敗れたのでしょうか?

あるいは、あのときの相手がスペンスではなく、タイソン・フューリーで同じ内容で判定負けしていたとしてもランクアウトしたのでしょうか?

明白なルールや哲学があるわけもないPFPですが、もっと厳密に「階級を超えて誰が強いのか」のPFPを追究してゆきます…。
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フォーブス誌のThe World’s Highest-Paid Athletes 2020ではヘビー級3人の後塵を拝したカネロ・アルバレスですが、7月18日で30歳になったばかりの赤毛のメキシカンが少なくとも北米ではこのスポーツの主役であることは間違いありません。

ただし、ゲンナディ・ゴロフキンとの第3戦を除外すると、魅力ある対戦相手はほとんどいない状況です。

DAZNは世界戦略の柱として「9月12日にWBAスーパーミドル級王者カラム・スミスと英国での対戦交渉中」と公表していますが、まだ決定していません。

DAZNがスミスに提示した報酬は500万ドルと言われ、これをMundo(世界を征服する男)が受け入れるとはメディアもファンも考えていません。

直近の試合でスミスを苦しめたジョン・レイダーと、村田諒太の対戦者候補にも挙がったことのあるジェイソン・クイグリーに落ち着くのでは?とみられています。

しかし、レイダーもクイグリーもDAZNが期待する加入者数を確保するには英国での人気はあまりにも低いのが実情で、最近の試合で二人とも黒星を喫していることからもファンの関心は高まりそうにありません。

さらに、スミスはマッチルーム(DAZNと業務提携)傘下ですが、試合放映権は英国スカイスポーツが握っており、調整は非常にタフなものになりそうです。

DAZNとライバル関係のESPNは「英国はDAZNが考えているような甘いマーケットじゃない」と、たとえスミス戦を手中に入れたとしても加入者数の大幅増には繋がらないと否定的です。

さらに「英国でスミスと戦うとなると米国での視聴者は低迷する」と英米共倒れを予想。

ボクシングファンとしては決定力に欠けるスミスと凡戦を見せられるよりも「ライトヘビーにちょっかい出したんだからアルトゥール・ベテルビエフやドミトリー・ビボルと落とし前つけろ」という気持ちですが「全盛期の超強豪」とは絶対にやらないのがカネロの揺るぎなき信条です。
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さすが人気者。まだ決定もしていないのに対戦候補3人とものオッズが出揃っています。こうしたオッズの先走りも欧米で人気がない軽量級ではありえません。残念ながら井上vsカシメロはどこを探しても見当たりません…というか試合組む気ないようですし、興味がないなら契約解除して開放して欲しいです。

そして、GGGの劣化とともに関心が薄れつつある「3」ですが、来年のシンコデマヨ週間、5月21日で内定しているともいわれています。

カネロが4500万ドル、GGGが3000万ドルと具体的な報酬の金額も複数のメディアが報じており「内定」しているのは確実です。

ただ、両者で7500万ドルという超高額報酬を支えるにはゲート収入が不可欠と考えられ、そこが不透明な状況では正式発表できないということでしょう。

2017年の初戦(ラスベガス:T-Mobileアリーナ)では2700万ドル、再戦でも2400のゲート収入を上げており、無観客だとこれがゼロ、観客制限でも大幅ダウンを強いられることになります。
MAIN EVENTDATEPAIDGROSS SALES
VENUE/PROMOTER/TVATTENDANCE
1FLOYD MAYWEATHER JR vs. EMMANUEL PACQUIAO2005/2/1516,219$72,198,500.00
MGM, Mayweather Promotions, Top Rank, PPV
2FLOYD MAYWEATHER JR vs. CONOR McGREGOR08/26/1713,094$55,414,865.79
T-Mobile, Mayweather Promotions, Zuffa, TGB, PPV
3SAUL 'CANELO' ALVAREZ vs. GENNADY 'GGG' GOLOVKIN     09/16/1717,318$27,059,850.00
T-Mobile, Golden Boy, TGB, Banner PPV
4SAUL 'CANELO' ALVAREZ vs. GENNADY 'GGG' GOLOVKIN09/15/1813,732$24,473,500.00
T-Mobile, Golden Boy, TGB, Banner PPV
5FLOYD MAYWEATHER JR vs. SAUL 'CANELO' ALVAREZ09/14/1316,146$20,003,150.00
MGM, Golden Boy, Warriors, PPV
DAZNが抱え込んでしまったカネロ・アルバレスという11戦3億6500万ドルの不良債権。カネロは報酬の減額を受け入れたと伝えられますが、焦げ付いているのは変わりません。

カネロとDAZN、ともに前向きだった村田諒太との東京メガファイトもゲート収入が期待できない限りありえません。

カネロvsGGG「3」も来年5月に完全に近い形でのゲート収入が期待できないなら、9月の独立記念日週間への後ろ倒しになると言われています。

いずれにせよ「完全な形で観客を迎えることが出来るのは完全なワクチンが完成して半年後」(ESPN)。来年9月でも難しい状況に思えます。

GGGは来年4月8日に39歳、まだもう一花咲かせる選手もいますが、多くの場合は坂道を転がり落ちる年齢です。キャリア終盤になってようやく強豪との対戦が増え、激闘・苦戦を繰り返すカザフスタンの英雄は「もう一花」が期待出来ないタイプかもしれません。

黄昏時を迎えたIBF王者は9月か10月にカミル・シェルメタを迎えて初防衛戦のリングに上がる予定です。

オッズはGGG1/25(1.04倍)、シェルメタ11/1(12倍)とミスマッチレベルが、試合が近づくとデレビャンチェンコ戦のときのように「スパーリングで不調、反射の劣化が明らか」の噂が飛び交い接近するかもしれません。

10月で31歳になるシェルメタは21戦全勝無敗ながらもKOはわずか5という、羽毛の拳を持つポーランド人。

エマヌエーレ・ブランダムラが返上した欧州タイトルに収まったシェルメタは、アマチュア実績も乏しく、プロでも世界レベルとの対戦経験はゼロ。

カネロ戦に向けての試し斬りには格好の獲物、安全保証書付きですが、今のGGGはいつ決壊しても不思議ではないヒビだらけのダムにも見えます。 

それにしても、カネロ。

強豪ライトヘビーとは戦う気はなし、GGGを除くとめぼしい相手は見当たらない、でもファンが注目する試合がしたい…贅沢な悩みに身悶えする「温室の貴公子」はこれから何をすればいいのか、極東の島国から考えてあげます。
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井上尚弥を取り巻く環境と未来の対戦相手を独断と偏見で格付けしてゆきます。

S:殿堂クラス
A:PFPファイター
B:強豪王者
C:並王者
D:穴王者 


まず、井上が戻ることはないものの、階級アップで対戦相手に浮上しそうなジュニアバンタム級シーンから。

【115ポンド=ジュニアバンタム級】

S:殿堂クラスのボクサーはローマン・ゴンザレス。

軽量級史上初のPFPキングに輝いたチョコラティトは、その座を2年も守りました。井上のPFPラインキングの快進撃を伝える THE ANSWER に代表される〝大本営発表〟では、この事実が報じられることはありません。

「井上のPFP1位も見えてきた。もし、そうなると軽量級ではロマゴンに続く史上二人目」という記事を加えれば、幻覚にうなされる井上信者の〝熱冷まし〟になるかもしれません。


A:PFPファイターはファン・フランシスコ・エストラーダがリング誌とESPNで共に8位。

試合間隔が空いてPFPかランクアウトしたものの、シーサケット・ソールンビサイとドニー・ニエテスは準PFPファイターに数えて差し支えないでしょう。

WBAバージョンで王座に返り咲いたローマン・ゴンザレスや、PFP入りが何度も取り沙汰されているWBO王者の井岡一翔と、4階級制覇を狙う田中恒成も、このクラスに肉薄したボクサーと見なせます。
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IBFのジェルウィン・アンカハスも間違いなくB:強豪王者です。

この4年、軽量級のホットゾーンであった115ポンドは今なお、最もレベルが高いかもしれませんが、ロマゴン陥落に代表されるように液状化も進んでいます。

互いに1試合の調整試合を挟んで対戦が内定といわれるロマゴンとエストラーダの勝者がバンタムに上げてくるーーそうなると面白いのですが。




*****そして、軽量級の中でもレベルが最も低いと見られるバンタム級。

評価の高かったエマヌエル・ロドリゲスと、ゾラニ・テテが馬脚を現してしまったことも一因ですが、井上を除くとA:PFPファイターB:強豪王者も見当たりません。



 【118ポンド=バンタム級】

B:強豪王者
に数えるか迷うのはジョンリール・カシメロと、ギレルモ・リゴンドーですが、カシメロは「誰に勝っても不思議ではないが、誰に負けても不思議ではない」という〝ギャンブラー〟。

リゴンドーの技術レベルは全階級通じても屈指ですが、9月に40歳を迎えるジャッカルの戦いぶりは1戦ごとに衰えと綻びが目立っています。 

ただ、バンタムにはS:殿堂クラスがいます。 ノニト・ドネアです。

一発殿堂は微妙ながらも殿堂入りの実績は十分に積み上げたドネアですが、今年で38歳。井上戦で大健闘したものの、幸運なライアン・バーネット戦を除くと、8年近くもまともな相手から勝利は収めていません。 

世界基準には到底ないステフォン・ヤング にスピードで押された鈍重なドネアに、かつての「閃光」の面影はありません。

カシメロ地雷を踏まない限り、118ポンドにモンスターが勝って評価を上げられる相手は見当たりません。

その意味では、カシメロ戦は楽しみです。 
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軽量級世界王者が move up in weight、上の階級を目指す。

その動機には2種類あると前回、書きました。 

一つ目は「減量の限界」

かつては、長谷川穂積やノニト・ドネアのように「敗北を契機」に上を目指す(下に戻る)のがデフォルトでしたが、現在では井上尚弥のように負けたわけではないのに上を目指す「王座返上」型も増えてきました。

これは、世界王者の権威の失墜、レベル低下が進んでおることと、合わせ鏡です。

オリジナル8の時代でも世界王者になれたかもしれない井上レベルになると、現在の水増しされたクラスで世界王者になるだけではファンは満足できません…そして、それはおそらく本人も。

オリジナル8なら、バンタムにジュニアバンタムとジュニアフェザーの3階級を合わせるまではいかないまでも、相当に歯ごたえのあるクラスになります。

井上はIBFとWBAのピースをピックアップしましたが、その相手は試合ごとに評価が下がるエマヌエル・ロドリゲスに、誰が見てもとっくの昔にピークが過ぎたノニト・ドネアです。

そして、地雷を踏まなきゃ凡庸なジョンリール・カシメロ、どこからわいてきたかわからないノルディーヌ・ウバーリに勝てば The Undisputed Champion というのでは、バンタムは〝黄金〟どころか、全階級を通じて最もレベルの低いクラスといっても良いかもしれません。

ここまで3階級制覇している井上ですが「誰に勝ったのか」という、現代ボクシングの評価の根本質問に対しても、言葉に詰まるしかありません。

このブログでも何度も書いていますが、井上のわずか19戦の相手はリング誌やESPNで10傑が8人、デビュ−4戦目であたった田口良一はのちにフライ級の団体統一、リング誌王者にもなった文句無しの強豪です。

井上のキャリアで最も世界評価の高かったのは田口です。そして、次が〝数字だけ王者〟の典型オマール・ナルバエス?36歳のバンタム級出戻りバージョンのドネア?

19戦のボクサーの内申書としては十分すぎます。

しかし…現時点では「パッキャオの風景が見たい」ってどの口でほざいてんねん?ってレベルです。

井上は、少なくとも現時点では「減量の限界」とにらめっこしながら、恵まれない貧困バンタム級の可哀想なボクサーを屠っているだけです。
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井上のmove up in weight には「より陽の当たる場所への脱出」という動機は、今のところ見つけることができません。

井上のmove up in weight の動機は、常に「自分中心」です。

減量がきついから上げる、以上。

もちろん、常識的には、それが当たり前です。

しかし「より陽の当たる場所への脱出」それしか考えていなかったパッキャオとは対照的です。

もちろん、井上とパッキャオでは立場が全く違います。

世界屈指の富裕国のスポンサードを受けて、日本でやるのがビジネスとしてベストなのに、注目度が極端に低い米国を志向するリッチ井上と、母国での大きな注目と報酬はありえないため、世界で勝負するしか道のなかった極貧パッキャオ。

「ラスベガスで戦いたい」といえば、その舞台が用意される井上。咬ませ犬としてラスベガスやテキサス、カリフォルニアに呼ばれたら二つ返事で馳せ参じるパッキャオ。

二人の境遇はあまりにも違いすぎます。

それでも、共通点を無理やり見つけるとしたら?

おそらく、井上がアンダードッグのリングに上がることはないでしょう。そして、今のパッキャオも(キース・サーマン戦は不利予想と思いましたがオッズは微妙ながら有利、ファン予想は圧倒的有利で拍子抜けしてしまいましたが)。

そこが共通点です。


そして、それでも。

その陳腐な予想を二人が覆してくれることを願ってやみません。

井上がフェザーやジュニアライトのビッグネームを相手に、不利予想のリングに上がる。

パッキャオがGGGやカネロと、自身の持つレコード「8階級制覇」を更新する 、9つ目のタイトルを狙う。
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10ポンド以上のリバウンド・アドバンテージ に依拠する井上が、減量ストレスがほとんどないフェザーやジュニアライトで戦うとなると、強引なパワーは100%通用しません。「ドネアのフェザー挫折」以上の悲惨な結果しか待ち受けていないでしょう。

ただ、身体能力に大きく頼った「軽量級のロイ・ジョーンズ」といわれるドネアと、井上は少しスタイルが違います。

今のリバウンド・アドバンテージ に乗った勢いのある攻撃は、減量プロセスで世界最高峰の知見を持ち、様々な化学物質を駆使するビクター・コンテの処方を受けるドネアには通用しませんでした。

井上がフィジカルで圧倒できなかったのは、コンテと組んだドネアだけですが、上の階級ではそれ以上のフィジカル不利の前提で戦わなければなりません。

それでも、井上にはスタイルチェンジ、新しい引き出しを作る能力が、少なくともドネアよりはありそうです。


そして、パッキャオです。カネロやGGGなんてとんでもない、と思いますか?

カネロはアミール・カーンに5ラウンドまで苦戦(スコアは2−1)していました。

セルゲイ・コバレフを追いかけ回したカネロ、あれは巧みなウェイト条件で相手を弱らせた欺瞞です。その半年前にダニエル・ジェイコブスを持て余してダルゲームしか出来なかったのがカネロの正体です。

GGGはケル・ブルックに4ラウンドまでリードを許してしまいました。カネロとの2試合を見ても、鈍重なカザフ人がスピードに戸惑うことは明らかです。

カーンやブルックとはスピードの種類が全く違う、経験豊かで、トリッキーなフェイントを自在に操るパッキャオを、カネロやGGGは何ラウンドで捕まえることができますか?

あるいは、リードされるラウンドが深まり、焦ったミドル級が大きなミスを犯してカンバスに転がることなんてありえないでしょうか?



いずれにしても、move up in weight の二つの動機付け=アクセル。「減量の限界」と「栄光への脱出」。

どちらのアクセルを踏むボクサーを見てみたいですか?

という愚問で、タイトルにあがったバルデスらには一度も触れないままに、②はおしまい。

書いているうちに、全く違う話に逸れまくった、このお話はまままだ続きます
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ESPNの Is this the right time for Valdez, Stevenson and Navarrete to move up in weight? から 、move up in weightについて考えます。
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軽量級のボクサーが上の階級を目指す第一の理由は「減量の限界」です。 

特殊なケースですが、井上尚弥のような、無理やり減量でスタート階級を獲らせようとする◯階級制覇を意識した キャリアプランは「減量の限界」を織り込み済みですが、このタイプです。

日本で大きな期待をかけられる軽量級ボクサーを中心に、このトレンドはしばらく続くでしょう。

オスカル・バルデスとエマヌエル・ナバレッテのクラスアップは、徐々に体重を作るのが厳しくなった結果で、井上のケースとは微妙に違いますが大筋は変わりません。



そして、第二の理由は「より陽の当たる場所への脱出」です。

現在、PFPファイターを複数抱えるジュニアバンタム級は非常にレベルの高いクラスですが、報酬は非常に低く、ファン・フランシスコ・エストラーダは「中量級との格差は狂ってる。小さな体で生まれることはボクサーにとって最大の不幸」と不満をあらわにし、カリド・ヤファイは「ミドル級で同じことをやっていたら住む家も乗る車も全く違っていた」と嘆きます。

井上尚弥や井岡一翔に代表される日本の世界王者は、世界的には特別に恵まれた軽量級です。

野球選手やサッカー選手がMLBや欧州トップリーグを目指すのは「カッコいいから」もありますが、そこによりレベルが高くて報酬も破格の世界が待っているからです。

しかし、井上やかつての西岡利晃らの日本の軽量級が米国を目指すのは「カッコいいから」だけです。

一方で、少ないファイトマネーを日本のスポンサーから補填してもらうことを「カッコ悪い」という発想は、なぜかそこにはありません。

兎にも角にも、10万ドル以上の報酬を手にした経験がキャリアで2度しかないエストラーダと、日本のエースでは、そもそもの住む世界が違うのです。

軽量級が米国で全く人気がなく、一方で日本では〝伝統のフライ〟〝黄金のバンタム〟と支持されているのは歴史、文化の違いで、最初から決まっていたことです。

それだけに、エストラーダやヤファイの不平不満は、見苦しく映ってしまいます。

中量級との格差は狂ってる?じゃあ、中量級で戦え。

ミドル級なら家も車も変わってた?どうそ、ミドル級で戦いなさい。

それって、今さっき気付いたわけじゃないでしょうが。


ボクシングの人気はヘビー級を例外に、ウェルター級を頂点としたピラミッド型が基本です。ミドル級にスーパースターが出現したり、ウェルター級の人気選手が主戦場をミドルに移した場合はその限りではありませんが、基本的にウェルター頂点です。

その稜線は、重量級への方向は緩やかで、ミドルが頂点になることも珍しくありません。

しかし、軽量級の谷に向かう稜線は鋭く深く暗く、沈み込んでいます。

つまり、軽量級から見上げると、ウェルター級の山頂まで、クラスを上げれば上げるほど、人気も報酬も付いてくることになるのです。

井岡や井上のクラスは世界的には谷底ですが、日本ではメジャー…というより軽量級でしか世界に通用しないから日本でメジャーになったと言った方が正確でしょう。

日本は、軽量級がメジャーといいつつも、心の底ではウェルター級やミドル級、ヘビー級の「本当に世界で認められるボクサーの出現」を待ち焦がれているという、少し歪んだダブルスタンダードを持っています。

現実に、村田諒太は「日本の4番打者」(ボクシングマガジン7月号)で、その報酬はPFPファイター井上の比ではありません。

村田のような突然変異の登場でしか、日本のボクシングファンは心の底に秘めた期待を賭けることができないのでしょうか?

しかし、もしかしたら…実際は違う現実もあったかもしれません。

井上が最初からバンタムスタートなら?

もしかしたら今頃、ライト級は夢にしても、日本のボクシングファンは全く違う景色を見ることができていたかもしれません。



また、前置きが長くなりました。

続いちゃいます。
 
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現在の4−X王者(4階級制覇)で最強は誰だ? 

いよいよ残すはベスト3。

4−X 達成順で、ノニト・ドネアローマン・ゴンザレス、そしてカネロ・アルバレス



3位はドネアで決まりです。

「対戦相手の質」はビック・ダルチニアンとフェルナンド・モンティエル、二人のPFPファイターを倒していることから十分ですが、まともなPFPはダルチニアンだけ。

モルティ・ムザラネに勝利したのも大きな意味がありますが、内容が五分だっただけに微妙です。

ムザラネとの再戦、熱望されたダルチニアンとの115ポンドでの決着が実現しなかったのは残念でした。
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ジュニアフライを飛ばしたフライ、バンタム、ジュニアフェザー、フェザーの「階級レンジ」は14ポンド、6.35kg。

リング誌PFP最高位は3位でしたが、過大評価と大きな物議を醸してしまい、すぐに降格してしまいます。

世界戦では、ジュニアフェザー級で8戦6勝2敗。KOしたのは完全劣化122ポンド版のホルヘ・アルセ、西岡利晃、ゾルド・ベダクだけ。フェザー級になると3戦1勝2敗、KOはゼロで、唯一の勝利も議論を呼ぶ展開でした。

ドネアは122ポンドで階級の壁に直面し、フェザーでは全く通用しなかったことから、バンタムへの出戻りを選択。全盛期に「ライト級まで制覇してPPVスターになる」と掲げた目標はいずれもかなり手前で潰えました。

その意味では「5階級制覇への可能性」は自身の手で閉ざしてしまっています。



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2位はカネロ。 

「階級レンジ」は、ジュニアミドルからライトヘビーまでの21ポンド、9.53kg。 

層の厚いクラスでの4階級制覇は一見素晴らしく映りますが、階級最強と認められたのはジュニアミドル級だけ。

ミドル級とスーパーミドル級、ライトヘビー級で快勝した相手には、いずれも〝事情〟がありました。

完全劣化ミドル級版のミゲール・コット、〝ガラスの顎〟のアミール・カーン、どのメディアも穴王者と烙印するロッキー・フィールディング、リバウンド制限と劣化、私生活でボロボロの劣化版セルゲイ・コバレフ。

快勝といっても、いずれの試合もコットの経験、カーンのスピード、コバレフのジャブに苦戦する場面がありました。

そして、卑怯な手段を使わなかったゲンナディ・ゴロフキンやダニエル・ジェイコブス戦はいずれも快勝とは程遠いグダグダの内容でした。

それでも「対戦相手の質」は非常に高いと認めざるをえません。

「5階級制覇への可能性」は、クルーザーやヘビーのフィールディングスが用意されたら周到なミッションが発動されそうです。

個人的には史上初のキャッチウェイトでの世界ヘビー級戦が見たいですね。 

がんばれ、カネロ。君ならできる!



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というわけで1位はロマゴン。 

殿堂クラスとの対戦経験はありません。

現役PFPファイターと拳を交えたのもシーサケット・ソールンビサイとの再戦だけで、結果は「ロマゴンの名前がなければ完全なミスマッチ」という4ラウンドKO負けの惨敗。 

そうはいっても、ストローからジュニアフライ、フライの3階級ではリング誌ランカーをことごとく退けてきました。「対戦相手の質」は平均値が非常に高いと見て差し支えありません。

再戦で1ヶ月前の体重制限を設けてシーサケットを弱らせながらも惨敗してしまったことは、大きく評価を落としました。

ストロー(105)からジュニアフライ(115)の「階級レンジ」は10ポンドと、カネロの21ポンドと比べると半分以下ですが、軽量級の1ポンドと重量級の1ポンドは違います。

115ポンドでの世界戦はカルロス・クアドラスに辛勝、シーサケット戦の連敗、そして今年2月のカリド・ヤファイ戦でようやく〝らしい〟勝ち方を収めて2勝2敗と星を戻しました。

ヤファイ戦を「115ポンドに順応した完全復活の狼煙」と評価したい一方で、31歳の英国人が試合前のインタビューなどで「軽量級の報酬は低すぎる。ミドル級で同じことをやってたら住む家も乗る車も違っていた」と泣き言を繰り返していたのを聞くと、試合に向けたモチベーション、キャンプでの集中力に問題があったような気もしてきます。

アンソニー・ジョシュアのメガファイトの前座で50万ドル前後の報酬を受け取ったこともあるヤファイですら、同国の中重量級選手の財布の中身を知ってしまい、やる気が失せてしまったのかもしれません。

その意味では、115ポンドの壁を本当に破ったことを証明するには、追試の必要がありそうです。

「5階級制覇への可能性」は、相当に厳しいものが待ち構えている予感がします。

それでも、軽量級史上初のPFP1位を獲得、その座を2年も守ったことは偉業でしかありません。 
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10位ブローナー、9位サンタクルス、8位田中、7位井上ときて、残る6人はノニト・ドネア、ローマン・ゴンザレス、マイキー・ガルシア、ドニー・ニエテス、井岡一翔、カネロ・アルバレス。
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井岡以外の5人は全員がPFP10傑経験者で、殿堂入りの可能性も秘めているガチガチの強豪。

残念ながら井岡を6位に差し出すしかありません。 

ストロー級、ジュニアフライ級、フライ級、ジュニアバンタム級の制覇した4階級全てでリング誌10位以内の強豪を倒しています。

「対戦相手の質」に文句はありません。

二つの敗北はアムナット・ルエンロンとドニー・ニエテスという、誰にとってもややこしい相手。どちらも勝者がPFP入りの大勝負でしたが、あと一歩で競り負けてしまいました。

井岡に勝ったことでアムナットはboxing scene.com の Fighter Of The Year(年間最高選手)に選ばれ、ニエテスはPFP入りしたことからも、井岡の世界評価の高さが窺えます。

「階級レンジ」は105から115までのちょうど10ポンド。

31歳と軽量級としては決して若くはありませんが「5階級制覇への可能性」は十分残されています。

軽量級で飛び抜けてタレント豊富なジュニアバンタムの最前線に張っているのですから、キャリア最大の勝利となる強豪との戦いに挑んで欲しいものです。



5位も迷いましたが、井岡を6位にした時点でドニー・ニエテスです。

2018年12月の井岡戦からリングに上がっていない38歳。PFPランキングからも名前が消えてしまってからも、しばらく経ってしまいました。

48戦のキャリアで敗北はSDの一つだけ、完敗したことがないフィリピンのAhas(蛇)。

世界戦は18戦7KO無敗2分。元・現・未来の世界王者との手合わせも9勝無敗3KO。

「階級レンジ」は、ストローからジュニアバンタムのステップで4−Xを達成した井岡と同じ10ポンド。

「5階級制覇への可能性」は非常に低いものの、「対戦相手の質」は高い、負けないスタイルを習得したリングマスターです。

ラウンドごとにポイントを客観的な目線で正確に見ることができる計算能力は、史上屈指のレベルです。


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4位マイキー・ガルシア

「階級レンジ」は、フェザー級からジュニアウェルター級の14ポンド。

歴史上、マニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケスの二人しかいない「フェザー〜ジュニアウェルター倶楽部」の会員です。

エロール・スペンスJr.には成す術もなく敗れてしまい、PFPランキングから追放されましたが、ジェシー・バルガスに完勝するなど「5階級制覇への可能性」では〝王手〟をかけています。

「対戦相手の質」はもちろん低くはありませんが、マイキー・ガルシアの名前が錯覚させるのか、そこまで高くはありません。

殿堂クラスはもちろん、PFPファイターと戦ったのもスペンスだけ。

デジャン・ズラティカニン、セルゲイ・リピネッツ、ロバート・イースターJr.と世界基準の無敗ボクサーに初黒星を付けていますが「誰に勝ったのか?」となると、ジェシー・バルガスになるかもしれません。

パッキャオがWBOウェルターのベルトを持つバルガスと戦うとき「どうしてそこまで格下を選ぶのか?」(リング誌)と批判の声が上がったことを思い出すと、パックマンの偉大さをあらためて思い知らされます。

このベスト10選考から外したのは正解でした。

それにつけても、トップランクとの契約問題の軋轢から2014年1月から2016年7月までの2年半もリングに上がることが出来なかった26歳からのロスタイムが、非常に残念です。
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8階級制覇のマニー・パッキャオを例外とすると、現役選手の最高複数階級制覇数は「4」で8人のボクサーが大集団を形成しています。

ここに3階級制覇ながら将来性の高い井上尚弥と田中恒成を加えた10人を独断と偏見で格付けして参ります。

メンバーは、ノニト・ドネア、エイドリアン・ブローナー、ローマン・ゴンザレス、マイキー・ガルシア、ドニー・ニエテス、井岡一翔、カネロ・アルバレス、レオ・サンタクルスの8人が現役4−X。

3階級制覇、3−Xの井上尚弥と田中恒成がワイルドカード。

評価は「過去=対戦相手の質」「現在=制覇した体重レンジ」「未来=5階級制覇への可能性」の3つの物差しで測定します。



まずは最初に脱落する10位
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これは、エイドリアン・ブローナーで誰も文句はないでしょう。21世紀最大の過大評価、狼の皮を被った羊です。

パッキャオとも拳を交えているとはいえ、勝った「対戦相手の質」は 目を覆うばかりに酷いものです。

2012年に「on the cusp(スター候補)」と、何の実績もないのにリング誌11月号を単独カバー。最初から過大評価の腐臭を漂わせていましたが、WOWOWではなぜか今なお高評価です。

ジュニアライト級は決定戦(vsヴィセンテ・マーティン・ロドリゲス)、ライト級はアントニオ・デマルコ、ウェルター級が劣化版ポール・マリナッジ、ジュニアウェルター級も決定戦(vsカビブ・アーラフベルディエフ)と、どっからどう見ても強豪は全く見当たりません。 

ダニエル・ポンセ・デレオンに番狂わせの10ラウンド判定勝ちしたのが出世試合。ベストバウトはマリナッジ戦でしょうが、ジュニアウェルターがベストのマジックマンはウェルターでは穴王者でした。

そのマリナッジ戦もSDでやっとこさの勝利、超ラッキーなウェルター級制覇でした。

弱い相手への圧倒的な勝ちっぷり、いわゆる〝タイソン・スタイル〟が倒錯した過大評価の原因です。

「体重レンジ」は130ポンドから147ポンドまでの17ポンド(7.71kg)。ブローナーのファンの「最もレベルの高いクラスで4階級制覇した」というのは一理ありますが、勝った相手の質が低すぎます。

「5階級制覇への可能性」は、ゼロです。小手先のテクニックしか持たない非力で根性のないブローナーは、154ポンド=ジュニアミドルはお呼びじゃありません。




9位も簡単です。

レオ・サンタクルスで文句無し。山中慎介が対戦を熱望していた人気者のメキシカンですが、この4階級制覇も酷い。

バンタム級はヴィシ・マリンガとのIBF王者決定戦。長谷川穂積に破壊された南アフリカ人は、2年近くもブランクがありました。

ジュニアフェザー級はフライ上がりのフェルナンド・モンティエルを圧倒したビクトル・テラサス。

フェザー級はアブネル・マレスとの、またもや決定戦。

マレスやカール・フランプトンとの100万ドルファイトを繰り広げましたが、軽量級を識る日本のファンであのビッグファイトを楽しみにしていた人が何人いるでしょうか?

マレス、フランプトンにクリスチャン・ミハレス、キコ・マルチネスら世界基準のボクサーに勝ってはいますが…。

さらに、ジュニアライト級も決定戦、なのになぜかWBAはスーパー王座をステイクします。

カネロと並ぶ「惨敗が見たい過大評価のメキシカン」です。勇気はあるかもしれませんが、試合は面白くありません。

「体重レンジ」は12ポンド、5.44kg。

「5階級制覇への可能性」は、極めて厳しい見通しです。このジュニアライトで決定的な敗北を喫しそうです。



8位からは…悩ましい。

8位は田中恒成にします。

「5階級制覇への可能性」はあるものの、まだ壁を二枚抜かなければなりません。

ストロー級とジュニアライト級は決定戦。それでもビック・サルダールやアンヘル・アコスタといった世界基準の相手にきっちり勝っています。

フライ級でも木村翔に田口良一、軽量級屈指の強豪に明白な勝利を収めました。「対戦相手の質」はわずか15戦のキャリアを考えるとありえないレベルです。

〝まだ〟3階級制覇ですが、先月25歳になったばかりの中京の星には「5階級制覇への可能性」も十分です。

「階級レンジ」は7ポンド(3.18kg)というのは、軽量級ゆえに仕方なし、ですが…。

相手の良さを引き出すプロレス型のスタイルは賛否両論でしょうが、嫌いじゃありません。


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7位は、井上尚弥で異論はあるでしょうか?

「5階級制覇への可能性」は、本人も覚悟している「(米国で注目されるには)最低でもフェザー」まで制覇しなければなりません。穴王者狙いや、不可解な決定戦でなければ、正直、難しいと思います。

フライ級飛ばしの3−Xは丁度10ポンドの「階級レンジ」を描いてきました。

「対戦相手の質」はジュニアフライ、ジュニアバンタム、バンタムともにリング誌トップ10に評価される 現役王者を撃破。これは近年の日本人世界王者では異色です。

とはいえ「誰に勝ったのか?」を考えると、リング誌の3位、ESPNの4位のPFPは明らかな過大評価です。

バンタム級完全統一王者、そして実力でリング誌単独カバーを熱く激しく期待します!
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1940年に世界ミドル級王者セフェリノ・ガルシアに挑戦したヘンリー・アームストロングが跳ね返された4階級制覇の壁。 

この試合は今見直してもHomicide Hank が優勢に見えますが、結果は引き分け。もし、勝利していたらフェザー、ライト、ウェルター、ミドルの Undisputed Title 4階級制覇という前人未到の偉業でした。

1980年代にはアレクシス・アルゲリョがアーロン・プライアーに2度挑んで4階級制覇を狙いましたが、シンシナティの鷹を撃ち落とすことは出来ませんでした。 

アームストロングもアルゲリョもフェザー級から王座を獲得していきましたが、 阻まれたのはアームストロングがミドルでアルゲリョはジュニアウェルターと3階級も離れていました。

40年の歳月はオリジナル8を細かく裁断し、承認団体も増殖させましたが、それでもなお4階級制覇の壁は高く険しく見えました。
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「4−X」4階級制覇の記念キャップを作ったカネロは誇らしげですが、年一人を上回るペースで誕生する量産型4−Xにどれほどの価値があるのでしょうか?

しかし、1987年にトーマス・ハーンズがウェルターからライトヘビーまでの4階級制覇に成功すると、次の5階級制覇はわずか1年後の1988年にやはりハーンズが達成、2004年にはオスカー・デラホーヤが記録の数字を「6」にまで更新しました。

現在の記録はマニー・パッキャオが保持する「8」階級制覇まで数字は伸びています。

かつて難攻不落に思えた4階級制覇はあっさりと2倍の8にまで更新されたのです。

直近のディケイド、2010年代を振り返ると、13人が4階級制覇を達成。年間一人以上のハイペースで量産されている計算です。

歴史上5階級制覇以上のボクサーは8階級(マニー・パッキャオ)、7階級(パッキャオ)、6階級(オスカー・デラホーヤ/パッキャオ)、5階級(トーマス・ハーンズ/シュガー・レイ・レナード/デラホーヤ/フロイド・メイウェザー/パッキャオ)の5人だけ。

ホルヘ・アルセとノニト・ドネアも暫定王者をカウントすると5階級ですが、暫定は世界的には王座と見なされていません。

5階級制覇以上の5人の中でパッキャオは現役ですが、偉大なキャリアの着陸態勢に入っているフィリピンのレジェンドは、今回は除外して「現役の4−X チャンプ(4階級制覇王者)の格付け」を進めてゆきます。

まずは、現役4−Xを見渡すとノニト・ドネア(偉大なキャリアの着陸態勢に入っていますが)、エイドリアン・ブローナー、ローマン・ゴンザレス、マイキー・ガルシア、ドニー・ニエテス、井岡一翔、カネロ・アルバレス、レオ・サンタクルスの8人。

ベスト10を競いたいので、ここにワイルドカードとして3階級制覇、3−Xの井上尚弥と田中恒成の軽量級を代表する俊英を加えます。

「過去=対戦相手の質」「現在=制覇した体重レンジ」「未来=5階級制覇への可能性」の3項目を軸に10人を格付けしてゆきます。

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世界チャンピオンが強いとは限らない。世界ランカーが強いとは限らない。

そんな混沌の時代に突入して、出口も見えないまま、40年以上が経とうとしています。

モハメド・アリの時代もボクサーの評価基準として「誰に勝ったのか?」は重要な物差しでしたが、防衛記録もまた〝信憑性のある〟物差しの一つでした。

しかし、現在では「(いつの)誰に勝ったのか?」以外に信頼できる基準は見当たらなくなってしまいました。

この「誰に勝ったのか?」にも、大きく3つの順序付けがあります。

マニー・パッキャオの業績をサンプルにして、井岡一翔と井上尚弥の現時点のレガシーを測ってみましょう。


①Hall of Fame-caliber fighters:まずは「殿堂クラス」。最も評価基準が高い関門です。文字どおり殿堂入りしたファイターに勝っているか?ということ。

パッキャオを例にとると「アントニオ・マルコ・バレラ」「エリック・モラレス」「ファン・マヌエル・マルケス」「オスカー・デラホーヤ」「ミゲール・コット」「シェーン・モズリー」の6人。

※コットの殿堂資格は来年発生ですが一発殿堂が有力視されています。そうなると6人全員が一発殿堂という豪華絢爛なリストが完成します。

ここに2005年にFighter of the Year に輝いたリッキー・ハットンを加えても差し支えないでしょう。

ハットンを加えた7人の中で重箱の隅を突く粗探しをすると、デラホーヤは前年にフロイド・メイウェザーをSDに押し込んでいるとはいえ35歳。モズリーも前年にやはりフロイド・メイウェザーをダウン寸前に追い込んだとはいえ39歳のロートルでした。

ただ、メイウェザーとの再戦を希求していたデラホーヤとの一戦は圧倒的不利の予想が立てられており普通の試合ではなかったことは忘れてはなりません。

井岡、井上ともに「一発殿堂」のハードルを外しても殿堂クラスとの対戦は1人も見当たりません。

井上が未来の殿堂入りが期待されるノニト・ドネアとの対戦経験(12ラウンド判定勝ち)がありますが、当時のドネアは8年近くもまともな相手に勝利を収めていない37歳で、敗北のたびに多くのメディアから「引退すべき」「晩節を汚すな」と忠告されていたロートルでした。


続いてPound For Pound fighters です。

「パックマン例」ではHall of Fame-caliber fighters で挙げた7人全員がPFPファイターで、デラホーヤとモズリーは1位経験者。

現役のPFPファイターはバレラ、モラレス、マルケス、ハットン、コット。そして、ティモシー・ブラッドリーを加えた6人。

井岡はPFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドニー・ニエテスが井岡に勝利してPFPファイター入りしています。

井上も現役PFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドネアが井上戦から7年前の2012年までPFPにランクされた経験者。フィリピーノフラッシュの最高位は3位でした。


そして、ぐっとハードルが下がって Former, Current, and Future world champions 、元(前)・現役・未来の世界チャンピオンとの対戦です。

ここでは「パックマン例」は当然ながら省略。さすがに書いてられません。
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井岡は「現役」がオーレイドン・シスサマーチャイ、八重樫東(団体統一戦)。「前・元」がカルロス・レベコ、ジャン・ピエロ・ロペス(暫定)。「未来」がファン・エルナンデス、フェリックス・アルバラード。

7勝を挙げている一方、キャリア2敗は現役王者だったアムナット・ルエンロン、ドニー・ニエテスと強豪王者に競り負けています。


井上は「現役」がアドリアン・エルナンデス、オマール・ナルバエス、ジェイミー・マクドネル(セカンドタイトル)、エマヌエル・ロドリゲス、ノニト・ドネア。

日本では不思議と評価の高いナルバエスですが、無敗のまま2階級制覇、それぞれの階級で二桁防衛しているにもかかわらずPFP10位に接近したこともない、絵に描いたような数字だけのボクサーで、世界評価は高くありません。

「前・元」が河野公平、ファン・カルロス・パヤノ。「未来」が田口良一。

「世界王者」との星勘定は8勝0敗。内容的にも苦戦したのはドネアのみで、それでも文句無しの完勝でした。
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前置きが長くなりましたが、ここでようやく「最も価値のない4階級制覇」の座を〝絶対王者〟レオ・ガメスから強奪したエイドリアン・ブローナーさんの登場です。
ブローナーさんはもちろん殿堂クラスには1人も勝っていません。PFPファイターも見当たりません。

Former, Current, and Future world champions との成績は、試合数こそ井岡、井上とほとんど変わらない10戦ながら、内容は5勝4敗1分。

しかも勝ったのは、ダニエル・ポンセ・デレオン(ジョニゴンよりはちょっとだけ強いというレベルの穴王者)、アントニオ・デマルコ(多くのメディアから「ヘタレ」の称号が贈られたクイッター王)、ギャビン・リーズ(この人も一応アルファベット王者でしたか)、ポール・マリナッジ(穴王者だったウェルター級バージョン)、カビブ・アーラフベルディエフ(リーズ同様ジュニアウェルター級の低迷期に王者になりました)というトホホな5勝。

この5人は綺麗に揃いも揃ってPFP経験はありません。もちろん殿堂入りとかは全く無縁の「典型的な量産型世界王者」でした。

引き分けたのはジェシー・バルガス。この人も並か穴か微妙な王者です。

負けたのがマルコス・マイダナ、ショーン・ポーター、マイキー・ガルシア、パッキャオと確かに名前はすごいのですが、いずれも明白に負けただけでなく、KO負けから逃れるために勝負に出れないハートの弱さまで曝け出しました。

これほど過大評価されたボクサーはちょっと珍しいレベルです。ポンセ・デレオンに勝って「大番狂わせ」と米国メディアが騒いでいた時点で、偽物臭が漂っていましたが(HBOの採点はドロー)。

というわけで、井岡、井上とブローナーさんでは次元が違います。

ブローナーファン(日本では少数派でしょうが)の言い分がもしあるとしたら「レベルの高い中量級で戦ってる」というくらいでしょう。そのレベルの高い中量級の強豪にはきっちり負けてるのですから、それも泣き言に過ぎません。

亀田興毅はまさに〝ブローナー型〟で、この2人は、ブローナーがビッグネームと拳を交えたという違いはあるにせよ、非常によく似たキャリアを積み重ねました。

井岡、井上はメイパックと違い〝リバウンドのアドバンテージ〟を存分に発揮したとはいえ〝ブローナー型〟で階級の壁をクリアしてきたわけじゃありません。

では、殿堂クラスはもちろん、現役PFPファイターのレベルも見当たらない、彼らのキャリア、業績の現時点での評価はどうなるのでしょうか?
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