カテゴリ: 世界のミドル級,世界に挑む日本人

カネロ・アルバレスvsゲンナジー・ゴロフキンの第3戦。

8試合がプログラムされたイベントは、KO決着が2試合だけ、タイトルマッチでは1試合(WBC米国スーパーミドル級王者決定戦:ディエゴ・パチェーコvsエンリケ・コラーゾ)だけという、落ち着いた興行になりました。

年間KO賞も期待された、セミファイナルのジェシー〝バム〟ロドリゲスとカネロは共に不発。

特に、アルファベット団体が捏造った偽ランカーに苦戦したバムは大きく評価を落としました。

日曜日、白昼のT-Mobileアリーナで私たちが確認できた10の真実。

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カネロ・アルバレスはUltimate fighter(完全無欠のボクサー)ではない。

左拳を負傷していたとはいえ、ティモシー・ブラッドリーら多くの専門家が「40歳のミドル級王者を破壊する」と予想していましたが、そんな惨劇とはほど遠い内容でした。

「カネロは史上最高のボクサーか?」。そんな馬鹿げた議論はもう終わりです。

そしてこれから先も、その議論の俎上に上ることはありません。



ゲンナジー・ゴロフキンはまだ終わっていない。

「KOで決着をつける」。そんなカネロの言葉が現実になると多くの人が予想していたメガファイトでした。

しかし、全盛期のカネロにとって、40歳のゴロフキンが今でも簡単な相手ではないことが証明されました。

偉大なTriple Gのキャリアが終幕に近づいているのは間違いありませんが、そのタンクにはまだ燃料が十分に残されています。

何よりも、試合直後のインタビューのトーンの高さと饒舌さ。

まだまだ出来る。その手応えはこの試合で誰よりも本人が感じていたのでしょう。



ドミトリー・ビボルvsデビッド・ベナビデスの勝者、あるいはアルツール・ベテルビエフはカネロにとって危険きわまる脅威になる。

フロイド・メイウェザーとエリスランディ・ララに施されたレッスンで多くを学んだカネロは、高い防御技術を持つメキシカンスタイルを完成させました。

引いて戦う相手をジリジリとストークして、仕留める、スタイルです。

しかし、完成とは成長の終着駅を意味します。

卓越した防御技術と軽打でゲームをコントロールするメイウェザーやララには有効であろうスタイルは機動力と攻撃力のあるボクサーファイターには後手に回ってしまうことを晒け出してしまいました。

ビボル前は、ヘビー級まで噂されたカネロでしたが、もはやそんな夢は語れません。

これまで旬の強打者を徹底的に回避してきた軟弱マッチメイクのツケを支払う段階に来ています。

ビボルのワンツーで何度も後退したカネロの顔面に、ベテルビエフのパンチが当たったとき、一体何が起きるでしょうか?



ゴロフキンは今なおジャモール・チャーロらの脅威たりうる。

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調整試合なし、村田諒太とのミドル級から5ヶ月で8ポンド上のカネロに挑戦したゴロフキンは劣化を差し引いてもミドル級最強候補の最右翼。

ジャモールとの団体統一戦が実現しても、明白なアンダードッグにはならないでしょう。それどころかフェイバリットの目もあります。

ジャモールもまた〝バム〟ロドリゲスほどではないものの、本当に強い相手と戦ったことがない未知数のファイターです。

ゴロフキンがスーパーミドルで戦うなら、次戦はもっとアジャストして来るはずです。しかし、タイトルはカネロが独占。

カネロとの4戦目を実現するのは、商業的にも時間的にも難しいだけに、ミドル級に戻ってundisputed championを目指すのではないでしょうか。



カネロの魔法のガウンは剥がされた。

完敗のビボル戦に続いて、カネロは決定的な見せ場を作れない12ラウンドを費やしてしまいました。

足が重く、相手の正面から距離を詰めて来るカネロを攻略するのはメイウェザーやララのようなボクサーだと考えられていましたが、12ラウンドでしっかりリターンするビボルのようなボクサーファイター相手に対する無策ぶりも曝け出しました。

左右の拳はライトヘビー級でも通用する強打、ボディワークとブロッキングを駆使した最高レベルの防御、そして鉄の顎…隙が無いように見えたかネロは、足が遅い、フットワークが使えない、という大きな欠陥を抱えています。

劣化にもほどがあるセルゲイ・コバレフのジャブに苦戦し、ポイントでリードされるカネロは痛風のティラノサウルス、32歳なのに動けないスカベンジャーでした。

これからの対戦相手はビリー・ジョー・サンダースが悩んだような幻影に、もう惑わされることがないでしょう。



ジェシー・ロドリゲスは過大評価。 

カルロス・クアドラス、シーサケット・ソールンビサイというジュニアバンタム級トップ戦線から落伍したロートルに勝利しただけで、他の誰に勝ったわけでも無いバム・ロドリゲスにとって、イスラエル・ゴンザレスは初めて直面するまともな115パウンダーでした。

〝まとも〟といっても、リング誌やESPNなどの世界ランキングでは圏外、アルファベット団体がでっち上げた偽世界ランカーです。

オッズの通りに簡単に仕留めると思われましたが、このレベルで限界を露呈するとは…。

バムはPFPはもちろん、Fighter Of The Yearまで取り沙汰された超新星でしたが、それはエディ・ハーンが勝手にほざいていただけです。

劣化老雄や、咬ませ犬相手に好き放題だったあの美しいポジショニングは、偽ランカー相手ですら機能しませんでした。

現時点では弱い相手や完全劣化老雄に勝つのが精一杯。これまでの対戦相手の質がいかに低かったか、イスラエル戦で一気に噴き出しました。

108ポンドに逃げ帰るのが得策ですが、強豪との手合わせ豊富な京口紘人と寺地拳四朗の勝者とどこまで渡り合えるか?

見映えするスタイルに、弱い相手に対する派手な勝ち方…マービン・ソンソナやフェリックス・ベルデホのような、過大評価名簿にリストアップされる匂いが漂い始めました。

もちろん、素材は一級品です。

彼が力強く再浮上してくれるのは軽量級にタレントを抱える日本のボクシングファンにとって、ありがたいことなのですが…。



ジュニアフライ〜ジュニアバンタムでブレークダウン

ジュニアフライ、フライ、ジュニアバンタムの3階級を遊撃する構えだったバムの失速は、これら3階級の未来地図を不透明にしました。

ハーンはジュニアフライで「京口vs寺地」の勝者にバムを当てるでしょうか?少なくとも日本開催は絶対にさせないでしょう。

中谷以外のフライ級王者の方がバムにはフィットするかもしれません。

ジュニアバンタムは難しいでしょう。

井上が返上するであろう4つのバンタム級王座を近い将来、那須川天心や武居由樹と争うのも面白いと思いましたが…頑強でスピードのある元キックボクサーは、バムにとってとんでもないジョーカーになるかもしれません。



115ポンド最強戦線は混沌。

ジュニアバンタム級戦線で事実上の主役に躍り出ていたバムの〝失態〟は、このクラスの行方を不透明にしています。

激しい激闘を繰り返したファン・フランシスコ・エストラーダとローマン・ゴンサレスはどこまで劣化が進んでいるのか?

12月3日の「エストラーダvsロマゴン」のあとの115ポンド級の見通しは全く不透明になりました。この試合の勝者が階級最強ではありません。

そして、超新星のバムにはこの老雄決戦の勝者を狩る能力が、少なくとも現時点ではないことが明らかになりました。

やはりキャリア晩年の老雄にカテゴライズされるかもしれない井岡一翔ですが、ダメージ・消耗度など劣化は殆ど見られず、むしろ充実期にあるようにも見えます。

フライ級最強候補筆頭でジュニアバンタム進出を睨む中谷潤人に至っては、3ポンド上げたジュニアバンタムで通用しない姿が想像できません。

もしかしたら、現在の最強は井岡か中谷かもしれません。



今年のFighter Of The Year の候補者リストから、カネロとバムの名前が完全に消えた。

5年間も世界のボクシングシーンを牽引してきたカネロは、ビボルとゴロフキン相手に24ラウンドを戦い、一度のダウンも決定的な場面も演出出来ませんでした。

そして、バムはもはや論外。

今年のFighter Of The Yearはビボル、ジャーメル・チャーロ、デビン・ヘイニー、オレクサンダー・ウシク、井上尚弥と、11月に激突するテレンス・クロフォードvsエロール・スペンスの勝者らが争うことになります。

最右翼はPFPトップ5同士の激突となるクロフォードvsスペンスの勝者ですが、井上尚弥が普段通りにポール・バルターを破壊すると、日本人初、バンタム級初の偉業を達成しても驚くことではありません。

クロvsスペがドローなら、12月13日という〝締め切りギリギリ〟の印象点も手伝ってモンスターが年間最高選手賞を勝ち獲る可能性が一気に膨らむのではないでしょうか。



米国ボクシングの地盤沈下が止まらない。

40年以上も凋落傾向が止まらない米国ボクシングをなんとか、かんとか支えているのはメキシカンパワー。

その象徴であるカネロの限界が露呈され、人気階級ではその後継者も見当たりません。

もし、カネロがビボルに2連敗、ベナビデスやベテルベエフにノックアウトされるようなことがあると…。

米国ボクシングは冬から厳冬どころか、氷河期にはまり込むかもしれません。

カネロの惨敗は見たいと思いますが、米国ボクシングがこれ以上衰退する姿は見たくありません。
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カナト〝QazaQ〟イスラムは、世界王者が彼から逃げ回っていると固く信じています。

しかし、中国で生まれた無敗のカザフスタン人に残された時間は、多くは残されていません。 

9月には38歳になるイスラムは、北京2008で銅メダルを獲得したエリートアマ。2012年にプロ転向。ジュニアミドルからミドル級を主戦場に、 22戦全勝22KOのレコードを積み重ねます。

それでも、この10年間でついに世界戦の舞台は用意されませんでした。 

「世界王者から逃げられている、そう感じている。ボクシングを始めて30年、五輪に2度出場し、プロで10年間戦ってきた。2018年と2020年は一度も試合が組んでもらえなかったが、トレーニングはずっと続けてきた。ボクシングは私の人生なんだ」。

「チャンスを掴もうと米国に来たが、マネージャーやプロモーターに恵まれなかった」。

「米国はチャンスの国」というのは、ある意味で本当で、ある意味で嘘です。

優れた実力を持つボクサーにとって、米国は日本など他の国よりも多くのチャンスが与えられます。しかし、それはあくまで〝他の国と比べたら〟という注釈付きです。

つまらない試合を繰り返すと、米国のプロモーターはそのボクサーを見捨てます。「勝ち方」が求められるのです。そして、ゲンナディ・ゴロフキンやワシル・ロマチェンコのように見映えのするボクシングをしても米国に強固なファンベースのあるヒスパニックでなければ不遇から脱出することができません。

井上尚弥のように米国で馴染みのない軽量級になると、有力なプロモーターが推すメキシカンでもない限り、見向きもされないのが現実です。

大きな市場を抱える母国がある井上はまだ幸せです。しかし、GGGやハイテクは母国を離れて戦うしか選択肢はありません。

イスラムがメキシコ人や日本人なら、世界戦のチャンスが複数回あたえられていたのは間違いありませんが、悲しいかな、彼は中国系カザフスタン人なのです。

現在はギャリー・ジョナスのプロボックス・プロモーションズと契約、世界挑戦の日を待っています。

2月25日にはフロリダ州プラントシティのホワイトサンズ・イベンツセンターで、英国のジミー〝キルレイン〟ケリーと空位のWBOグローバルのミドル級のストラップを争います。

「ケリーは強いボクサーだが、彼を倒してジャモール・チャーロやハイメ・ムンギアと戦いたい。ミドル級でもジュニアミドル級でも、どちらでも問題ない。一歩一歩、前に進んでいく」。

アラフォーのQazaQ(カザフ人)にビッグネームの世界王者から声がかかる、その日はやって来るでしょうか?
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現在のボクシングシーン、メガファイトは「アンソニー・ジョシュアがらみのヘビー級」と「カネロ・アルバレス」の二極です。

「誰と戦うか」に左右され「すでにキズもの」のジョシュアと比べて、ファイター個人の商業的価値となるとカネロが抜きん出ています。
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フリーエージェントのカネロの目の前には、破格の金額が約束された契約書が選り取りみどりに積み上げられています。

特に、5月のシンコ・デ・マヨと、9月のメキシコ独立記念日では、ゴールデンボーイ・プロモーションズ、トップランクの衰退で世界2強プロモーターとなったプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)とマッチルームからは最低保障5000万ドルを超えるオファーが寄せられている模様です。

 アル・ヘイモンのPBCとは、5月7日にWBCミドル級王者ジャモール・チャーロをスーパーミドル級で迎え撃つ試合の交渉が進行中。

ジュニアミドル、ミドルと2階級にわたって対戦が期待されながらも実現しなかったジャモール戦でしたが、スーパーミドルで実現するのか、注目です。

さらに、エディ・ハーンのマッチルーム・ボクシングからは同じ5月7日にWBCライトヘビー級王者ドミトリー・ビボルへの挑戦、9月にはゲンナディ・ゴロフキンとの第3戦の二試合がオファーされています。

その前に、3月にはクルーザー級のWBCピースを保持するイルンガ・マカブと、5階級制覇を賭けた〝調整試合〟も予定。

複数階級制覇の記録はマニー・パッキャオの「8」が最高ですが、ジュニアミドル(154ポンド)王者だったカネロがクルーザー(200ポンド)を制覇すると体重振幅は46ポンド、パッキャオの42ポンド(フライ=112からジュイアミドル=154)を上回る〝世界記録〟となります。

今年、予定通りにメガファイトを消化すると、大坂なおみらに引き離されていたアスリート長者番付でも首位に躍り出るでしょう。
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さて、その前に。4月に延期開催とされる「ゴロフキンvs村田諒太」で、日本のボクシングファンが期待する結果が出たなら、ハーンの9月に「ラスベガス・T−Mobile アリーナでカネロvsゴロフキン」は「東京ドームでカネロvs村田」に差し替えられる可能性も十分にあります。

村田の勝ち方によっては、カネロが東京行きを渋って、ラスベガスに行かなければならないかもしれません。

GGGに勝てば、米国市場でも村田の商品価値は急騰するでしょうから、それもありです。日本人が「本物のラスベガス」に登場するなら、日本のファンも大歓迎です。

なんて、先の話の夢物語よりも、まずはGGG戦、早くコロナが収束して正式決定の報を聞きたいです。
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11月20日〜ラスベガス マンダレイ・ベイ ミケロブ・ウルトラ・アリーナ。


■北米フェザー級タイトルマッチ■

王者アイザック・ドグボエvs挑戦者クリストファー・ディアス

かつて、ジュニアフェザー級最強と見られていたドグボエは、エマヌエル・ナバレッテに連敗してからかつての輝きを失ってしまったまま。

元プエルトリコのホープ、ディアスも伊藤雅雪に番狂わせで敗れてからは、3勝3敗。ど根性以外に何一つ世界基準の武器を持たないことを曝け出してしまいました。

〝ナバレッテに完敗〟した〝27歳対決〟は、二人にまだ世界トップに陳列する商品価値があるかどうかの品定めマッチでした。特にドグボエにとっては。

試合としては、どちらにもチャンスがあった面白い展開でした。そして、どちらも一気にその流れを自分のものにする決定力を持っていませんでした。

96-94 /95-95/97-93。MDで勝ち名乗りを受けたのはドグボエでした。

Punch Stats

PUNCHESDOGBOEDIAZ
Total landed142139
Total thrown431469
Percent33%30%
Jabs landed4926
Jabs thrown221218
Percent22%12%
Power landed93113
Power thrown210251
Percent44%45%
-- Courtesy of CompuBox


■WBOグローバル/WBC米大陸 ミドル級タイトルマッチ■

王者ジャニベク・アリムハヌリvs挑戦者アッサン・エンダム。

開始ゴングから、サウスポーのアリムハヌリがジリジリと重圧をかける展開。

エンダムもリングを大きく丸く使って動きは悪くありません。

3ラウンド、アリムハヌリがクロスレンジの揉み合いから左のショートでダウンを奪います。

4〜7ラウンドは28歳のカザフスタン人の一方的な展開ですが、その両拳には村田諒太ほどの火力はありません。見た目はキレも威力もあるんですが、もともと打たれ強いとはいえ劣化激しいエンダムを詰め切れません。

第8ラウンド、残り20秒。エンダムをコーナーに詰めて連打、ここでケニー・ベイレスがストップ。エンダムは「まだ出来ると」両手を広げてアピール。

戦績を11戦全勝7KOに伸ばしたアリムハヌリですが、ミドル級のトップ戦線では非力だということを露呈しました。

Punch Stats

PUNCHESALIMKHANULYN'DAM
Total landed15272
Total thrown353319
Percent43%23%
Jabs landed417
Jabs thrown151135
Percent27%5%
Power landed11165
Power thrown202184
Percent55%35%


■IBF世界ミドル級 挑戦者決定戦■

エスキバ・ファルカオvsパトリス・ボルニー。

ブラジル人の悲哀を味わいし続けるファルカオと、WBO北米王者の無敗対決。

ボルニー、いつものパイナップルヘアで登場。ファルカオもいつも通り精悍な表情。

開始早々から重圧をかけるファルカオ、強い。体格差関係なし。

強打か、速いリードがないとファルカオは難しい。ボルニーはロープを背負う時間が長すぎ。

第5ラウンド、ボルニーのカウンターでファルカオの動きが止まる。明白にボルニー。 最初から分かって他こととはいえ、両者とも一発のパンチがない。

第6ラウンド残り40秒、痛烈なバッティングでファルカオが左眉上から出血。ドクターチェックが入ります。 あれーー、、、負傷判定に。 

スプリットでファルカオ。妥当な判定です。

Punch Stats

PUNCHESFALCAOVOLNY
Total landed11472
Total thrown389278
Percent29%26%
Jabs landed414
Jabs thrown197128
Percent21%3%
Power landed7368
Power thrown192150
Percent38%45%
-- Courtesy of CompuBox
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1950年代に黄金時代を謳歌した米国ボクシング。

60年代から明らかに凋落の傾向が見て取れたにもかかわらず、モハメド・アリという巨人の存在によって斜陽を実感できないまま80年代を迎えます。

80年代から90年代にかけては、ウェルター級とミドル級、そしてヒスパニックという新しいコンテンツでボクシングファンをつなぎとめたものの、メジャースポーツから完全に脱落。

五指に満たないスーパースターは、一般のスポーツファンには敷居と観戦料が高すぎるPPVというブラックボックスの中でメガファイトを繰り広げて来ましたが、そのビジネススタイルはただでさえ瀕死のボクシングというスポーツを窒息させる行為でした。
IMG_3969

マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズ、ロジャー・フェデラーが1年間試合に出場して、スポンサー収入に支えられて、やっと手に届く1億ドル(約100億円)という報酬を、フロイド・メイウェザーとマニー・パッキャオは、たった一晩どころか、たった36分間で稼いでしまうのです。

そこには、現代アスリート長者にとって必須のスポンサー収入は全く計上されていません。基本的に、単価100ドルのPPVを460万世帯が購入してくれた、その恩恵です。

スポンサーに依存しないで、コアなマニアの〝投げ銭〟で莫大な報酬を得る。ある意味、最も格好良いアスリート像にも見えますが、一般のスポーツファンを置き去りにしているという点で、それは間違いです。
20210225

パンデミックという人類にとって100年周期の試練に直面している2020年代も、ボクシングのマイナー化とニッチ化は歯止めがかかるどころか、ずるずると底なし沼にはまっています。

現代最高の稼ぎ頭、カネロ・アルバレスもまた、その報酬の巨大さからは考えられないほど〝無名〟のプロボクサーです。

スーパーミドル級でUndisputed Championの座を賭けて明日、ラスベガスのリングに上がるカネロは4000万ドルが最低保障されています。

今年3試合目となるカネロの、年間収入は1億ドルに迫ると見られ、大坂なおみをダブルスコアで凌駕します。しかし、日本はもちろん、米国での知名度ですら2分の1どころか10分の1にも満たないでしょう。

そんな屈折した〝ボクシングヒーロー〟のメガファイトまで、あと36時間あまりとなりました。
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いよいよあと3日に迫ったカネロ・アルバレスの今年3試合目。

ジュニアウェルター級とジュニアミドル級に続く、今年3度目の完全統一戦。
スクリーンショット 2021-05-10 0.06.51
本当ならリング誌もこの試合を表紙に特集して欲しかったのですが…。懐古特集まっしぐらです。

勝者がFighter Of The Yearの有力候補になる…などなどボクシング界では注目度の高いメガファイトですが、同じ日にUFC268のイベントが重なっていることからボクシングvs総合格闘技という側面から顧客を奪い合う不毛な事態が懸念されています。
 

ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナでは、PFPキングのカネロ・アルバレスが、スーパーミドル級の完全統一戦でケイレブ・プラントと対決。

西のラスベガスとは真反対の東のニューヨークでは、UFC 268がマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で開催されます。

どちらもPPV。格闘技ファンはどちらを見るのか、二者択一が迫られています。

いつか見た、デジャブです。

ちょうど2年前、カネロはやはりMGMグランドでセルゲイ・コバレフとライトヘビー級タイトルマッチを戦い、UFC244がMSGで開催されました。 


常識的に考えると「カネロvsプラント」が圧倒的に優勢です。

しかし、SHOWTIMEのイベントは、あまりにもしょぼすぎるアンダーカードを並べています。

最低保障でカネロが4000万ドル、プラントが1000万ドルというメガファイト。

ボクシングの試合は大きければ大きいほど、アンダーカードは人気階級でもせいぜいルーキーの試合や、軽量級の世界戦を並べるなど、みすぼらしくなります。

今回は、元ジュニアフェザー級王者レイ・バルガスが登場しますが、軽量級の世界戦すらありません。

これは仕方がないところです。

「ゲンナディ・ゴロフキンvs村田諒太」をセミに持ってきたら、ファンは大喜びでもビジネスとしてはPPV単価(今回は79.99ドル)を倍に設定しないと割が合いません。 

倍になると売上件数が減りますから、大物をアンダーカードにすることは商業的にありえないのです。

かつて、メイウェザーやパッキャオのメガイベントではアンダーカードに対して非難轟々でした。

「パッキャオやメイウェザーのイベントなら無条件で買うと思うなよ!」と怒るボクヲタたちでしたが、結局買っちゃうんです。


今回もUFC268は充実したラインナップです。事実上のMMAのトップリーグであるUFCは8階級制で、そのランキングもボクシングのアルファベット団体とは比較にならないほど納得できるものです。

40年近くもボクシングに洗脳された私にとって、ボクシングのメガファイトを捨ててUFCを見るという選択肢はありません。

しかし、目の肥えた格闘技ファンは、まずUFC268、それから可能であればカネロvsプラントに切り替えるはずです。


2年前。カネロとコバレフがうUFCのメインイベントが終わるのをロッカールームで待っていたのは、ボクシングファンの記憶に新しいでしょう。

「なんでこんなに間が空いてるんだ?」。

DAZNが両方のペイパービューを見るための時間稼ぎをしたためですが、あの長い待ち時間はボクシング史の汚点となりました。

オールドファンの多くが深いため息をつきました。

「ボクシングはここまで堕ちたのか」「そのうち相撲やキックボクシングにまで負けるんじゃないか」。 

しかし、あの〝カノッサの屈辱〟(より権威があるはずのボクシングがUFCに屈してしまう)は再現されないはずです。

カネロvsプラントの79.99ドルに対して、UFCのPPV単価は69.99ドル。

いいとこ突いてますが、SHOWTIMEのステファン・エスピノサは「 (UFCは)全くノープロブレム。米国でしか興味を持たれていない他のイベントに合わせて、カネロの世界中のファンを待たせるなんてことは馬鹿げている」と、DAZNへの皮肉も吐いています。


そもそも、プラントをプロモートするPBCとShowtimeが、UFCとの衝突を避けたいと考えていたなら「11月6日」を外せば済む話でした。

それをぶつけてきたのは、最初から〝その気〟だったのです。

UFCを吹っ飛ばす、回避するのはお前らの方だ、と。

もっと本音まで勘ぐれば「DAZNよ見ろ!これがカネロの売り方だ!」ってとこでしょう。


2017年以降コロナ下を除いて、UFCは11月の第1土曜日にMSGで大型のPPVイベントを開催してきました。

UFCが11月6日にイベントを開催することは、ボクシング業界でもよく知られていたことです。

UFCライブイベント担当責任者ピート・ドロピックは「MSGは約2年前に予約していた。それを知っていたPBCとSHOWTIMEがこの日を避けなかったのは、そういうこと(対決姿勢)だろう」と憮然として語っています。

SHOWTIMEは開催の後ろ倒しも考えていましたが、なぜPBCは11月13日や11月27日ではなく、11月6日に開催することにしたのでしょうか?

カネロが11月6日を熱望していたとはいえ、最低4000万ドルのファイトマネーを用意するのはプロモーターです。

しかし、この試合のチケットはほぼ即日完売。転売市場では最安席でも最低700(約7万7000円)ドル、リングサイド席は2万5000ドル(275万円)もの高値で取引されています。

それでも、UFCカードと競合していなければ、この興行はもっと大きなものになっていたはずです。

それにしても、カネロですらUFCとやっと互角。

もちろん、UFCは1団体8階級で年間興行数も凝縮された団体ですが、ESPNなど総合スポーツメディアの取り上げられ方、報道量を見ると米国で場ボクシングとUFCが2大格闘技です。

今回のイベントでゴロフキンやジョシュア、フューリーの試合がセミで組まれたら、UFCがMSGをキャンセルして興行を後ろ倒すでしょうが…。

米国ではUFCに押されっぱなし、というかすでに抜かれた感もあるボクシング。

太平洋の反対側、日本ではボクシングのカウンターパートのプロ格闘技はキックボクシングでした。
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もし実現したら「那須川天心vs武尊」の価値は、ボクシングのほぼ全ての世界戦を凌駕するでしょう。

井上尚弥の試合よりも、ずっと大きな興行になるかもしれません。

これ、やらない理由がどこにあるんでしょうか?

団体のメンツ?選手の契約問題?

いやいや、これはいつも日陰でバッタもん扱いされてきた「非ボクシングの格闘技」が、ボクシングに放てる最強のハイキックでしょう。

これ、打たない理由がありますか?

村田のゴロフキン戦はDAZNの持つ放映権を、電通+フジレビ+WOWOW連合がいくらで買うか?という話でした。

セミに「天心vs武尊」でもいいでしょう。バカ高いチケットも売れます、電通もスポンサー集められます、ボッタクリDAZNにとっても嬉しい話です。

こんなWin−Win、ないでしょう。JBCだって莫大な承認料が入るわけですから超法規の決断を下すときです。

兎にも角にも!

ファンをおいてけぼりにして面白い試合が組めない、そんな馬鹿げた理由なんて絶対にありえない!

こっちはとっくの昔に注文出してる。さっさと注文した料理、出してこんかいッ!!! 
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あと4日に迫ったスーパーミドル級完全統一戦。米国でのボクシングビジネスに苦戦のDAZNではなく、SHOWTIMEのPPVがオンエアするメガファイトです。

リング誌/WBA/WBC/IBF王者カネロ・アルバレスが最後のワンピース、WBOのストラップをケイレブ・プラントから強奪すると見られ、リング誌の20人予想は20−0でカネロ。

現在のオッズはカネロ1/12(1.08倍)、プラント6倍と、依然として31歳のメキシカンに大きく傾いています。

勝敗への興味は低いはずですが、そこはSHOWTIME、さすがです。

プロモーションビデオもHBOの「7/24」かと思うくらいに、なかなか秀逸で、この試合がメガファイトであることをビシビシ伝えてくれています。

https://www.sho.com/sports/fights/4781/Canelo-vs-Plant
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まあ、これがスポーツである限り、プラントがノーチャンスなんてありえません。「ノー」はない。

ただ、このいけ好かない赤毛のメキシカンは、ここまでのステイタスを築きながら全く浮ついてないのが、悔しいけど素晴らしいです。

「プラントは好きになれないが、私にとってはキャリア最高のテクニシャンで、もしかしたら最強のパワーも持っているかもしれない。そして、完全統一戦のリングで私が無意識のうちに緊張してしまうかもしれない。いずれにしても最強の相手と戦えるのは喜びだ」。

ボクシングを軽んじたり、ナメた発言が一切聞かれません。
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プラントもまた曲者です。タイトルを奪取したホセ・ウスカテギ戦はアンダードッグでしたが、あの試合を見れば、過小評価されていただけです。

スピード、パワー、テクニックは大きな差が無いと思います。

ただ、大舞台での経験は桁違い。

最も重要な対戦相手の質の点で、カネロはより上質な授業を受けてきたことはもちろん、旬のパワーパンチャーを回避しながら、あらゆるタイプのボクサーと拳を交えてきました。

プラントは今が旬ですが、残念ながらパンチャーではありません。

しかし、何かが起こるとしたら、 ナッシュビル生れのSweethandsが一夜限りのパンチャーになることでしょうが…。
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マイク・タイソンがポッドキャスト Hotboxin with Mike Tysonの中で、カネロ・アルバレスvsケイレブ・プラントのスーパーミドル級完全統一戦の展開を予想しました。

勝者が、4−Belt Eraでは初のUndisputed Championとなります。
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タイソンは、プラントがカネロに勝つチャンスは全くない=absolutely no chance=と断言、試合は大虐殺になると予測しました。

The fight will be a massacre. 

「カネロがプラントを八つ裂きにする、そんな試合になるだろう。君がプラントの友人なら…君は彼の〝葬式〟に行くことになる。プラントはフロイド・メイウェザーのような情けない顔をして、カネロの残酷なボディブローに悶絶することしかできないだろう」。

タイソンのコメントはプラントの耳にも入ります。

プラントは「試合の勝敗と、戦前の予想や戦力評価は全く関係ない」と反論しました。

「マイク・タイソンは、バスター・ダグラスに楽勝すると言われたが、勝てなかった。ダグラスとタイソンの差は勝利への根性だ。タイソンはレノックス・ルイスやイベンダー・ホリフィールドにも勝てると言われたが、結局どうなったか?みんな知ってるだろう」。

「勝敗を決する鍵や要因はいくつもある。戦前予想や戦力分析と試合結果は関係がないんだ。タイソンを見ればわかるように、ね」と、痛烈な皮肉でお返し。

タイソンにとってはヤブヘビなコメントだったようです。

さて、プラントはダグラスになれるでしょうか? 
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現在のボクシングシーンは、英国と米国の二軸で回っています。

英国軸はもちろん、ヘビー級。

英国はヘビー級のタレントを数多く抱えていますが、中でもアンソニー・ジョシュアとタイソン・フューリーの激突は、ボクシング史上最大の興行になると考えられています。

ジョシュアがオレクサンダー・ウシクに雪辱することが大前提になりますが、果たして来年実現の運びとなるでしょうか?
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もう一つ、米国軸はカネロ・アルバレスの一人舞台。

そのカネロの試合が今週末に。MGMグランドガーデンアリーナで行われます。

リング誌/WBA/WBC/WBO王者のカネロは、Undisputed Championまで残すピースはWBOのみ。

そのWBOのストラップを持つケイレブ・プラントとの大勝負です。

今日のウィリアム・ヒルはカネロ勝利が1/12(1.08倍)、プラント13/2(7.5倍)。大勝負というものの、今が旬のカネロが圧倒的有利と見られています。

先月、ロスアンゼルスで開催されたブレスカンファレンスでは両者が互いを罵り合い、拳を交錯させる場面もありました。

よくあるシーンで、珍しいことなはありません。、しかし、カネロのパンチでプラントが右目脇をカット、二人が本気でいがみ合っていることを印象付けました。

プラントは、チームカネロの〝総帥〟エディ・レイノソを「選手にドーピングを薦める卑怯者」と口撃を繰り返し、両陣営の怨嗟はピークに達したまま試合開始ゴングを聞くことになりそうです。

At this juncture, it's not enough for Canelo to win: He must do so in convincing fashion.

現在、カネロは多くのメディアでPFP No.1と評価されており、Undisputed Championを賭けた大一番とはいえ、泥臭くても勝てば良い、という立場ではありません。

今回のオッズや勝敗予想も圧倒的に31歳のメキシカンを支持、鮮烈な形で勝利を収めることが求められています。

アンチ・カネロの私ですが、いよいよ村田諒太の頂上アタックが始まるこのタイミング、ここでカネロが負けるとかグダグダの試合を晒してしまうのはご勘弁です。
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日本ボクシング史上最大の戦いは、その価値と勝利を収めたという二点で、1団体10階級時代の議論する余地の無い世界バンタム級王者エデル・ジョフレと、ファイティング原田の初戦で、誰も異論はないでしょう。
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ジョフレとの二戦は貨幣価値を勘案すると、興行規模でもトップクラスかもしれません。

しかし、村田諒太vsゲンナディ・ゴロフキンが決定した今日という喜ばしい日。

興行規模での日本史上最大の戦いを振り返り、村田vsGGGがトップになるのかどうか勝手に考えてゆきます。

今回の会場がさいたまスーパーアリーナとなったことで、ここで大興行を打った井上尚弥と亀田興毅の軽量級のスターとの比較です。

さらに遡ると、キャパはたまアリに劣っても、ゲート収入やスポンサー収入が破格だったと思われる長谷川穂積vsフェルナンド・モンティエルの日本武道館。
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20世紀まで遡ると、浪速のジョー辰吉丈一郎、とんでもない視聴率を安定して稼いでいた具志堅用高も大きな興行の主役を務めてきました。

貨幣価値換算をせずに選手報酬のみ、というなら辰吉丈一郎vs薬師寺保栄のWBC世界バンタム級タイトルマッチですが、大阪vs名古屋が火花を散らした競争入札という特殊案件でした。

もちろん、村田vs GGGも特殊案件ですが「村田は日本で最も稼いだボクサー」(本田明彦)、「年収は500万ドル超」(リング誌)ということや、通常のタイトルマッチでも事前に対戦相手を日本に呼んで記者会見を行うなど、従来の日本人世界王者とは別格。

村田はこれまでの試合で、すでに辰吉vや薬師寺を上回る報酬を得ていた可能性大です。

とりあえずは、たまアリでメガファイトを繰り広げた亀田興毅vs内藤大助と、井上尚弥vsノニト・ドネアとの比較です。
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