フシ穴の眼 〜スポーツ疾風怒濤編〜

      Hope Lights Our Way / 希望の道を、つなごう。

カテゴリ: 世界に挑む日本人,THE SUPER FLY,世界の軽量級

順位付けは後回しにして、とりあえず思いつくままに「トーナメント」と「ラウンドロビン」をピックアップしていきます。

一発目は日本からも井上尚弥と井岡一翔がリングに上がった Super Fly 。

米国では歴史的に軽量級、特にジュニアフェザー級以下の〝超軽量級〟に興味が持たれることはまずありません。
 
Historically, American audiences have rarely been interested in fighters at lower weight classes.
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HBOのボクシング番組でのグレードはBとはいえ Boxing After Dark で全米生中継。

ジュニアバンタム級の試合を中心に組み立てた興行を打ったのは平時なら大冒険でした(スポンサー料と報酬が跳ね上がるグレードAは亀海喜寛らが出場経験のある HBO World Championship Boxing ) 。 

しかし、 第1回SuperFlyが開催された2017年はHBOボクシングにとって平時ではありませんでした。

米国ボクシング市場の衰退から、番組予算は年々縮小。ヘビー級やウェルター級の大興行を打つ余裕などありません。

さらに巨大興行になるとPPVという予算枠にとらわれない手法もありますが、これはスーパースターでないと成功が約束されない年数回が限度のレアでハレの興行。

断末魔のHBOにとって、総額わずか100万ドル!前後でイベントを運営出来る超低コストのSuperFly に活路を求めるしかなかったのです。

HBOの契約者数は約4000万人。World Championship Boxing なら100万人なら成功ライン。Boxing After Dark でも最低50万人は欲しいところでしたが…。

しかし、SuperFly の視聴者数は想像以上に伸びず、最終回となった2018年の第3回大会では30万人にも届かない大惨状で、HBOはこの年限りでボクシングから撤退してしまいます。

 

【期間】
2017年9月9日(第1回)〜2018年9月8日(第3回)。初回はカルフォルニア州カーソンのスタハブセンター。2、3回はやはりカリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラム。

軽量級の一般ファンがアクセスしやすい西海岸の会場を選択したのは間違いではありませんでしたが…。
 
 

【参加者と★勝者】
★シーサケット・ソールンビサイ、★ファン・フランシスコ・エストラーダ、ローマン・ゴンザレス、カルロス・クアドラス、★井上尚弥、井岡一翔ら。

この大会でキャリアハイの60万ドルの報酬を得たロマゴンでしたが、なにしろ「総額100万ドル」の天井から、それ以外の選手の報酬は抑えられ、第3回大会の井岡に至っては2万5000ドル。

ロマゴンのPFP1位の看板でコアなファンを引き寄せようと努力しましたが、第1回大会でロマゴンが失神KO負けの大誤算。

試合前1カ月から細かく取り決められた計量でシーサケットを削る契約も、全く機能しませんでした。

ロマゴンのために作られた大会でしたが、ニカラグアのグレートがSuperFly のリングに上がったのは第1回大会のみです。

番狂わせで敗者となったものの、ロマゴンはキャリア最高の60万ドルを稼ぎました。

〝勝者〟シーサケットはリング誌でも大きく特集され、待遇の良い ONE Chamoionship に活躍の場を移します。

従来から評価の高かったエストラーダもリング誌やESPNのPFPリストに定着するなど〝勝者〟と言えるでしょう。

最大の敗者はHBOでしょうが、総費用100万ドルの興行にすぎません。この興行が原因で撤退したわけではないので(もちろん大成功していたら雲行きは変わっていたかもしれませんが、軽量級で大成功はありえません) 、敗者とは言い切れません。

また、日本からのスポンサー料・放映権料がキックバックされる形で井上尚弥は、軽量級では破格の報酬で全米デビューを飾りました。

 

【2020年段階での歴史的評価】 
米国で需要の低い軽量級のため、HBOのボクシング撤退を象徴する失敗必至のヤケクソ低コスト企画として記憶に残されています。

スーパーフライの視聴者数は初回から低空飛行を強いられ、最後の興行となった第3回は30万人にも届かず、HBO史上最低をマーク。

しかし、PFPファイターがひしめくハイレベルな115ボンドを看板にしたイベントは、超少数派とはいえ軽量級の楽しみ方を識るマニアにとっては垂涎でした。

米国ボクシングを支えてきたHBOは、21世紀になるとボクシング市場の低迷は決定的となり、毎年のように予算削減を強いられます。

スーパーフライの視聴者数は初回から低空飛行を強いられ、最後の興行となった第3回は30万人にも届かず、HBO史上最低をマーク。

超低コストで運営出来る軽量級に生き残りを賭けましたが、HBOボクシングの瀕死状態を象徴する興行になってしまいました。

優勝者、Undisputed Champion を決めるトーナメントではなく、ロマゴン・ウォーズを想定したラウンドロビンと呼べるかもしれませんが、井上尚弥や井岡一翔も結果的にスポット参戦に終わるなど、誰がレギュラーの参加者なのかがわからない、悪い意味での主人公不明の大会でした。

軽量級史上初のPFPキングになったローマン・ゴンザレスをコスパの良いスターに育てるという〝台本付き〟は引き裂かれましたが、マニアにとってはPFPファイターが目白押しで非常に見ごたえのあるイベントだったことは、軽量級ファンは忘れません。

それにしても、米国で軽量級がいかに厳しい立場にあるかを何度も実感させられた大会でした。

メキシカンで試合も面白いエストラーダですら、10万ドルを超える報酬を得たのはキャリアで3度だけ。カネロ・アルバレスの0.3%以下ですから、もはや同じプロスポーツとは呼べません。サッカーの男女でもそこまで酷い格差はありません。

では、エストラーダがプロとしてのパフォーマンスや技術において、カネロの300分の1以下か?と聞かれたら「全く五分」と即答・断言します。

エストラーダにカネロ並みの線路を敷いていたら、ロマゴンとの試合は判定勝ち、今頃はカネロと同じ4階級制覇していたでしょう。

「体が小さく生まれるってことはボクサーにとってこれ以上の不幸はないのさ」。エストラーダの言葉が悲しく響きます。



【報酬・興行規模】
興行規模はまさかの約100万ドルという超低コスト。

最も潤沢な予算が当てられた第1回大会の報酬でも以下の通り。

ローマン・ゴンザレスがキャリアハイの60万ドル(約6600万円)、対するシーサケット・ソールンビサイが17万ドル(1870万円)。ファン・エストラーダとカルロス・クアドラスは6万5000ドル(715万円)、6万2500ドル(687万円)を分け合います。

井上尚弥は18万2500ドル(2000万円)を受け取り、ニエベスは3万5000ドル(385万円)。

実際には、井上は日本からのスポンサー収入、TV放映権などからキックバックされ2倍以上の約40万ドルを手にしました。
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米国でカムバック。

昨年大晦日の引退宣言から、9ヶ月後にはリングに戻るって…最初からそのつもりでしたね。

父親と何があったのか、どうしてああいう引退会見を開いたのか、どうでもいいことです。
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JBCは「国内で引退した選手が、あらためて日本のライセンスを申請せずに、海外で試合をすることは認めない」なんて相変わらずどうでもいいことをバカの一つ覚えみたいに「規則ですから」とのたまってますが、ほっときましょうね。

「海外で試合をして、日本のライセンス交付を経ずに、その足で日本に戻って試合はさせない」ということでしょうが、本当につまらない話です。

カルフォルニア州体育協会は、井岡にライセンスを交付済みです。そして、HBOが全米生中継する「SUPER FLY3」に出場するのです。

対戦相手はマクウィリアムス・アローヨ、WBCシルバーの世界タイトル(本当にどうしようもないですねWBCも)が賭けられます。

普通に考えたら、簡単な試合にならないでしょう。

マックの戦績は17勝14KO3敗。

三つの黒星は、キャリア初期の岡田隆志(2010年)、王者アムナット・ルエンロンをSDに追い込んだIBFフライ級世界戦、ローマン・ゴンザレスに翻弄された WBCジュニアバンタム級世界戦(2016年)です。

最大の勝利は、今年2月に2−0の判定とはいえ、カルロス・クアドラスを明白に下した一戦です。このときのクアドラスはドラッグ中毒に病んでいたとはいえ、マックの軽快な動きは本物でした。

この相手にはっきり勝てるようなら、115ポンドでもトップ戦線で拳を振るえるでしょう。逆に、マックのスピードとパワーを持て余すようなら、この階級では厳しい見通ししか立ちません。
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【4分15秒過ぎから】リングTV.のレポーターから質問を受ける井岡。「最後に知ってる英語を聞かせて」と問われた井岡は「サンキュー」。二人で爆笑したところで終わりです。いい感じです。井岡の名前が「Zazuto Ioka」になってるのもご愛嬌、今に思い知らせてやりましょう。

まあ、非常にしたたかなボクサーですからね。ここをクリアしたらWBCシルバー獲得、つまり次はWBC王者との激突になる公算大です。

シーサケット・ソールンビサイ、PFPファイターとのビッグファイトになります。

来春のSUPER FLY4がその舞台になりそうです。

あまり先走るのは良くないですね、まずはマクウィリアムスを倒してサビ落としです。
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軽量級の祭典、SUPER FLY2 がいよいよ明日に迫って来ました。

昨年9月に立ち上がったこの〝特殊な興行〟は、ローマン・ゴンザレスが衝撃的なKO負けを喫していきなり主役を欠いてしまう予想外の展開となりましたが、なんとか「2」を迎えることができました。

そして、今回はスーパーフライとフライのダブルヘッダーです。

♠️IBF世界フライ級タイトルマッチ♠️

ドニー・ニエテスvsファン・カルロス・レベコ

レベコといえば、井岡一翔との2戦です。レベコは紛う事なき強豪です。

ただ、3階級制覇のニエテスもいい選手ですからね。蛇を首に巻いて入場するパフォーマンスもプロフェッショナルです。

大方のオッズは4−1でニエテス。「懐の深いフィリピン人がアルゼンチンのファイターを中差判定で下す」というのが大方の予想ですが、天邪鬼の期待を込めてレベコの終盤ストップ勝ちを推します。

この番狂わせに、井岡がインスパイアされると嬉しいのですが…。

しかし井岡の前に、比嘉大吾ですね。

イングルウッドのザ・フォーラム、そのリングサイドには沖縄の好漢がシートに腰を下ろし、ニエテスとレベコの品定めをしているはずです。試合が終わったら、即リングインして挑戦状を叩きつけて欲しいですね。

具志堅用高会長と比嘉の乱入は、軽量級を識っている観客にはたまらないでしょう。現地、土曜日の夜にイングルウッドで観戦できるファンが羨ましい…席料も安いでしょうし、最高です。


♠️WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ♠️

シーサケット・ソールンビサイvsファン・フランシスコ・エストラーダ


この勝者が手に入れるのは、世の中に溢れているWBCベルトだけではありません。腐敗承認団体のベルトよりも価値のあるリング誌ベルトもステイクされます。

さらに、二人は、既にいくつかのメディアでPFPのランキングに入っていますが、その勝者はさらにその地位を上げ、世界の軽量級シーンの中心に躍り出る事になります。
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リング誌の月間MVPは井上尚弥も村田諒太も獲っていません。アジア人がこの栄誉に輝くのは、何度獲ったかわかりませんが、マニー・パッキャオ以来です。シーサケットはミズノを履いてるんですね。ますます応援します


大方のオッズはシーサケット勝利が2.25倍、エストラーダ勝利1.80倍。挑戦者のエストラーダ有利ですが、英国ウィリアムヒルはシーサケット勝利は1倍、エストラーダ1.80倍と、シーサケットのアバウト2−1を弾いています。

専門家予想も割れてます。50−50の勝負ですね。楽しみ過ぎます。その通りの素晴らしい試合を期待したいです。

私の予想は、日本のファンに馴染みの深いシーサケットのKO勝ちです。


そして…。

この SUPER FLY 興行の盛り上がりを忸怩たる思いで見ているのは、「井上尚弥がこの階級にとどまっていれば」と歯嚙みする日本のファンだけではありません。

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英国のスーパースター、WBA王者のカリド・ヤファイです。

RING.tvでカリド・ヤファイがビッグファイトへの熱望を語っています。

前回、HBOが用意した井上の報酬が1ドル100円換算で、1825万円、カルロス・クアドラスが625万円、ヤファイに提示されたのは井上とクアドラスの間くらいの金額、1000万円前後だったのでしょう。

HBOのボクシング予算は激減傾向にあり、SUPER FLYは、この低予算に耐えられる興行として企画されました。

初回のローマン・ゴンザレスは6000万円を手にしました。これは井上とソールンビサイの3倍以上という破格の金額でしたが、英国で同レベルの報酬が約束されているヤファイにとってタイ人や日本人よりも更に低い条件は到底飲めるものではありません。

“First, I was offered the (Naoya) Inoue fight, but my team felt the money wasn’t good enough,” said Yafai. “It wasn’t much more than what I made against Ishida. I had a talk with (promoter) Eddie (Hearn) and my team and, although I would have been happy to fight Inoue, I was advised not to take it. My team felt as a defending champion, I should be compensated for taking a very tough fight in America.

〜この興行には「井上とやらないか」とオファーがあったんだけど、報酬がとにかく話にならなかった。英国でやった石田匠との試合よりもはるかに低い金額だったんだ。私は「井上と戦いたい」と、エディ・ハーンやチームにかけあったけど「アメリカで井上とタフな戦いをするにはあまりにも酷い条件だ」と見送ることになってしまったんだ。〜



ヤファイは、SHOW TIMEのバンタム4からのオファーを断った長谷川穂積と同様、「ケタを間違ってないか?」と失望したのでしょう。

「強い相手とでっかい試合がしたい。それを心の底から望んでる。もし、それが叶わないのなら、引退する、それくらいの思いだ。シーサケットとエストラーダの勝者と戦いたい」、そう語るヤファイには既に〝SUPER FLY「3」〟への条件提示がされているといいます。

ヤファイが望む報酬が支払われる舞台は英国ですね。スーパーフライは、大西洋を渡るかもしれません。

日本のファン、井上尚弥からしたら身勝手な希望ですが、スーパーフライの統一王者がバンタムに上がって来てくれたなら…。

しかし、トップランクのジェルウィン・アンカハスも〝スーパーフライ・ウォーズ〟への参戦をほのめかしており、井上を見る世界の目は「主戦場から退散した臆病者」かもしれません。

とはいえ、井上もまた、ヤファイ同様に「経済大国の軽量級ボクサー」という巨大なジレンマに苦しんでいるのです。

経済大国の軽量級ボクサーは、報酬以外では不遇です…。
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BOXING NEWS 24が「もしローマン・ゴンザレスという名前がなければミスマッチだったといえる内容だった」と報じたように、ロマゴンにとって115ポンドは重すぎました。

シーサケット・ソールンビサイは確かに強かった、認めざるをえません。八重樫東にノックアウトされたデビュー戦はもちろん、カルロス・クアドラスに負傷判定で敗れた、あのときとは別人です。HBOの解説席で「マニー・パッキャオの再来かもしれない」と騒いでいたのは、階級の壁にぶち当たったロマゴンを圧倒したに過ぎない30歳のタイ人には、明らかな過大評価ですが。

リング誌も、He should be considered one of the best pound-for-pound boxers on the planet.(シーサケットは、PFPトップ10ボクサーとして考えるべき存在かもしれない)と評価していますが、ジュニアバンタムのロマゴンがフライ級までと同じボクサーでないことは誰の目にも明らかです。

それにしても、今回のトリプルヘッダーは非常に面白い内容でした。

ファン・エストラーダvsクアドラスは、ロマゴンを追い込んだ強豪同士が、そのロマゴンへの再戦の権利を争うエリミネーション・バウト。互いの持ち味を存分に発揮しあった36分間でした。

残念だったのは、マイケル・バッファーが採点を読み間違えたことです。糠喜びさせられたクアドラスが可哀想でした。114−113、3者ともに1点差の、ユナニマスと呼ぶにはあまりにも僅差のスコアカード、10ラウンドのダウンが勝敗を決した形となりました。

今回、パンチ統計では、的中率で偶然の一致がありました。ロマゴンvsシーサケットは共に27%、エストラーダvsクアドラスはやはり共に29%。

シーサケットはロマゴンの212発に対して291発を放っての27%ですから、的中率は同じでも着弾は80発(ロマゴン58発)で、パワーショットでも上回りました。4ラウンドKOが納得出来る統計数字です。

一方で、エストラーダは773発中221発を着弾させての29%、クアドラスは886発中260発を命中させての29%、こちらはクアドラスが手数で上回りました。結果は、この数字を反映しませんでしたが、(見た目の)クリーンヒット、ダメージパンチで上回ったエストラーダ勝利もまた、納得出来るものでした。


【トリプルヘッダー2試合は、パンチスタッツで両者が全く同じ着弾率をマークしました。井上vsニエベスのスタッツは言わずもがな、わざわざ取り上げる意味はありません。】

1週間後にゲンナディ・ゴロフキンvsカネロ・アルバレスのビッグファイトを控え、HBOも「PPVを買って」と、選手コールのたびに宣伝文句を挟むのは耳障りでしたが、仕方がないところですね、ビジネスです。

さて、井上尚弥です。

「すっきりしない勝ち方だった。勝つ気がない相手だと、試合が枯れてしまう。白熱した試合がしたかった」。

まあ、その通りです。ガードを固めて、逃げるだけの相手を綺麗に倒すのは至難の技です。

それでも、米国初見参、披露宴としては合格です。今日の3試合で、シーサケットと井上がその強さを、見せつけました。この結果を受けて「SUPERFLY2は、シーサケットvs井上で」というマニアのリクエストも多いようですが、ロマゴン陥落はSUPERFLY2に暗雲を垂れ込めさせてもいます。

メキシコの人気者、エストラーダと、軽量級に一時代を築いたロマゴンの激突が期待されていただけに、けして人気者と言えないシーサケットと、マニアの星、井上の興行にHBOがどこまで予算を割くか、未知数です。今回の視聴者数が伸び悩んでいると、さらに心配な事態になりそうです。

井上サイドも、今回並みの20万ドルレベルの報酬でも、次のオファーを受けるのか、難しい決断です。

井上の描くアメリカンドリームの着地点が、どこにあるのかにもよります。バンタムやジュニアフェザーまでしか視野に入れていないとしたら、よほどのビッグネームに恵まれない限り、100万ドルファイターもおぼつかないでしょう。

現実には、ジュニアフェザーまで見渡しても、そんなビッグネームは見当たりません。フェザーまで見上げて、レオ・サンタクルス、カール・フランプトン、アブナル・マレスと、ようやく100万ドルファイト経験者が現れます。

リング上で、アメリカンドリームを具現化したアジア人は、歴史上たった一人しかいません。

熱狂的な井上信者でも「そこまでは期待してない」と言うでしょうし、ここでその足跡と井上を重ね合わせることは、冗談が過ぎると失笑を買われるのが関の山ですが、あえてその偉大過ぎる名前と並べます。

マニー・パッキャオ。

井上よりも1歳若い23歳で米国初上陸。オスカー・デラホーヤがハビエル・カスティリェホに史上3人目の5階級制覇を賭けて挑んだメガファイトのセミファイナルで、当時ジュニアフェザー最強と目され、フェザー級の覇者マルコ・アントニオ・バレラに勝てる可能性があるとまで評価されていたレーノホロノ・レドワバを圧倒、6回KOで屠ります。

この時、MGMグランドのスポーツ&カジノでは「あまりのミスマッチ」とオッズが立たない異常事態。パッキャオが手にした報酬はわずか4万ドルでした。

そのパッキャオ、彼は何が何でもアメリカを目指していたわけではありません。

10万ドルのファイトマネーも夢ではない、アジア人ボクサーの誰もが憧れる日本で「非常に危険な選手」と認知されていたパッキャオは我が国への門戸が閉ざされていましたから、もはや生きる場所は米国しかなかったのです。

もし、日本で受け入れられて、ジョー小泉に嫌われなければ「マニー小泉」として日本のリングに上がっていたでしょう。しかし、日本には拒絶されてしまうのです。

その時は不運としか思えなかった日本に拒絶されたことが、アジアのスポーツ史上を揺るがし、世界中のボクシングファンにとんでもない幸運と、愉悦の時間をもたらすことになるとは、パッキャオ本人はもちろん、誰にも想像すら出来ませんでした。

そして、日本が拒んだフィリピン人を、ボクシングの神様は、とことん寵愛するのです。

パッキャオが鮮烈にジュニアフェザー最強をぶっ倒した後のメインイベントで、デラホーヤは退屈な試合でブーイングを浴び、実況席では「何という名前だっけ?あのアジア人の試合こそが今夜のメインディッシュだった」とコメント、軽量級のキープレーヤーとなりました。


【早朝からいくつもの建設現場で重労働をしたあとジムでボクシングの練習に励む…マニー・パッキャオのような環境は日本にはありえません。しかし、栄光への渇望でもフィリピン人に負けてはなりません。】

現在、井上は当時のパッキャオとほぼ同じ年齢ですが、米国に与えた衝撃には大きな差があります。井上が勝っているのは、リング誌のPFPで10位(4位ロマゴン惨敗で、繰上げ9位になる見込み)、パッキャオは圏外だったことくらいです。

そして、これが一番大切な要素ですが、パッキャオの時代にはジュニアフェザー、フェザーに、サンタクルスやマレスとは次元の違うメキシコが輩出した歴史的なグレートが3人も揃っていたのです。これほどの僥倖、運としか言いようがありません。

2003年、パッキャオ25歳。「金に目が眩んだフィリピン人が公開処刑される」と冷ややかな目で見られながら、PFP3位のバレラが持つリング誌フェザー級タイトルに挑みます。

このアラモドームの決闘で、HBOのメインを張り、100万ドルファイターの仲間入り。そして、メキシコの3強が核をなして繰り広げていたはずのフェザー級ウォーズの主役に、一気に躍り出たのです。

本気でアメリカンドリームを掴むなら、急がなくてはなりません。パッキャオ同様、メキシコ人でもプエルトリカンでもない井上は、急がなければなりません。

サンタクルスらが井上に興味を示しても、屈辱的な報酬の分配を要求してくるでしょう。井上は初めてBサイド、本物のアウエーを経験することになります。しかし、そこで勝たなければ米国は認めてくれません。

今日の井上は素晴らしかった。そのことに、間違いありません。

しかし、今日の井上はご馳走を用意してくれた米国に招かれた、ゲストに過ぎません。

これからやらねばならないことは、招待状を受け取ることではありません。

道場破りです。

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115ポンドに上げた2試合では平凡なファイターになってしまったローマン・ゴンザレス。

シーサケット・ソールンビサイとの初戦は、勝利を盗まれたと言っても良い内容でしたが、タイ人の体格を持て余し、階級の壁にもがいているのは明らかでした。

今回は、ロマゴン復権のために、異例の7日前計量で121ポンドのリミットを課すなど、階級の壁への対策、小細工もリング外では仕込まれていたのですが…。

試合開始からバッティングを気にして慎重に距離を取るロマゴン、しかし前回苦戦したのはバッティングが最大の原因ではありません。階級の壁です。

「121ポンド」の縛りも虚しく、リングに上がったシーサケットはこの日もロマゴンよりひと回り大きく見えました。

ジリジリと距離を詰めて、クロスレンジでのパンチ交換で優位に立って、詰将棋に持ち込むのがニカラグアが生んだ最高傑作の勝利の方程式でした。フライ級までは、後ろに下がる時間は非常に短かったロマゴンでしたが、今日はバックペダルを踏み続け、バッティングを警戒したとはいえ、自分の距離、クロスレンジからは程遠い戦いになってしまいました。

そして、その距離は、体格で上回り、射程距離でも優位に立つタイ人にとっては、まさにオーダーメイドの空間でした。


【完全にノックアウトされてキャンバスに堕ちたロマゴン。階級の壁に苦しんでいたとはいえ、かつてのPFP1位が痛烈に倒されたシーンは、衝撃的でした。まさかの結末に、恋人のソフィアさんが友人と手を握って、観客席から走り去ったシーンは、一見コミカルにも映りましたが、勝利を信じきっていたロマゴンが崩れ落ちる姿にパニックになり、行くあてもなく席を離れてしまったのでしょう。リング上で横たわるロマゴン以上に、悲痛さが伝わりました。ボクシングは、本当に残酷なスポーツです。】

ソールンビサイは「今回は4ヶ月も準備期間があった。2ヶ月しかなかった前回でも、体力では勝っているという手ごたえがあった。今日は間違いなくKO出来ると確信していた」と、衝撃的なKOにも落ち着いてコメントしていました。

もしかしたら、ロマゴン側は「前回苦戦したのはバッティングだけが原因」とでも思ってたかのような、無策な戦いぶりに見えました。もちろん、結果論です。私もロマゴンの僅差判定勝ちを予想していましたし。

ロマゴンは「全力でパンチを交換して、彼の方が少しだけ強かった。チャンピオンを祝福したい」。ロマゴンは、階級の壁を越えるためのモデルチェンジが出来きませんでしたが、裏を返すと、スタイルを変えずに、強豪相手に3階級も制覇したのです。彼のスタイルがあまりにも完成していたが故に、モデルチェンジ出来なかったのかもしれません。

K2プロモーションのトム・ラフラーは「相性が最悪の相手だった。それでもチョコラティテは、今なお115ポンドでソールンビサイを除けば最強だ」と意地を張りましたが、その言葉は虚しく響くだけです。

もちろん、シーサケットは強い、強いです。体格とパワーでロマゴンを圧倒し、スピードでも互角以上に渡り合いました。

SUPERFLY2は、シーサケットとファン・エストラーダの激突になる見通しですが、タイ人有利は揺るぎません。カルロス・クアドラスに負けたときから、相当な戦力アップを果たしているシーサケットは今や、井上と並ぶ階級最強候補です。

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カリフォルニア州体育協会から、スーパーフライに出場する選手の報酬が発表されました。

ローマン・ゴンザレスがキャリアハイの60万ドル(約6600万円)、対するシーサケット・ソールンビサイが17万ドル(1870万円)。ファン・エストラーダとカルロス・クアドラスは6万5000ドル(715万円)、6万2500ドル(687万円)を分け合います。

そして、井上尚弥は18万2500ドル(2000万円)を受け取り、ニエベスは3万5000ドル(385万円)。

実際には、井上は日本からのスポンサー収入、TV放映権なども上乗せされて2倍以上の約40万ドルを手にすることになります。

軽量級は日本の方がはるかに集金力が高いことが、図らずも明るみに出ましたね。

とはいえ、特異なサンプルですがマニー・パッキャオのように、米国が本場の中量級の舞台まで侵略するようなことになると、井上にもその物語が紡がれていくことになりますが…。

現在のジュニアバンタムは、上記の4人に加えて英国の人気者、カリド・ヤファイが10月28日、地元カーディフ、7万5000人収容の開閉式ドーム、ミレニアムスタジアムで石田匠の挑戦を受けます。

この日のメインイベントはアンソニー・ジョシュアが、クブラット・プレフを迎え撃つ世界ヘビー級戦ですが、ヤファイも堂々のセミファイナル、明日のスタハブセンターの何倍もの大観衆の前で、日本の俊英と戦います。

ヤファイが勝てば、来年はスーパーフライ完全統一に乗り出すとも言われていますが、井上を呼ぶ勇気はないでしょう。まぁ、その前に石田には、完全アウエーの舞台で大番狂わせを起こして欲しいですね。

前置きが長くなりましたが、スーパーフライ級最強は誰か?です。


【クアドラスのボクシングに封じ込められたように見えたロマゴンでしたが、結果は2〜6ポイントの差をつけて判定勝ち。

ロマゴンがこの階級では傑出した存在でないことは、クアドラス、シーサケットの2試合で誰の目にも明らかになりました。

フライ級までの3階級なら、歴代PFPにもその名前が挙がるでしょうが、「バンタムまでの5階級を制覇」という夢は、よほど相手に恵まれないと難しいでしょう。

スーパーフライで階級にぶつかったロマゴンは、かつてスーパーフライで無双だったビック・ダルチニアンが1階級上のバンタムで、その神通力を完全に喪失してしまった姿にオーバーラップします。

ジュニアフライで歴代最強を語るとき、必ず名前が挙がるのがカオサイ・ギャラクシーです。

ジュニアバンタム級で殿堂入りしたグレートは、ジョニータピアとカオサイの二人だけですが、一発殿堂(引退から5年の資格発生で即殿堂入り)はこのタイ史上最大のスポーツヒーローただ一人です。

カオサイがタイを出ることがほとんどなかったのは、その絶大な人気からです。試合報酬は少なくとも10万ドル、当時の軽量級としては破格の数字でした。

数少ない海外遠征では、オランダ領キュラソー島で後の世界バンタム級王者、当時無敗のイスラエル・コントレラスを5回KOで圧倒するなど、強豪相手にも印象的な勝利を収めています。


【カオサイは世界王者になってからも、ジム2階の粗末な合宿所で寝起きしていました。「豪邸を建てる」「高額な外車を乗り回す」という単純なサクセスストーリーを追いかけないのは、栄光への純粋な渇望しか持ち合わせていないからなのか。それとも、マネージャーの搾取、ピンハネが尋常ではないタイで生まれた悲劇なのか。それでも、タイの歴代最高スポーツ選手と認められるカオサイは今はTVや映画で活躍する国民的なタレントです。】

カオサイに対抗するのは、ビック・ダルチニアンでしょうか。レイジング・ブルの異名の通り、対戦相手をことごとくなぎ倒してフライ級を席巻、その勢いはジュニアバンタムでも衰えずWBA、WBC、IBFの3団体統一王者としてキャリアハイを迎えます。

クリスチャン・ミハレス、ホルヘ・アルセら対立王者とも積極的に戦い、圧倒的な勝利を収め、不人気から閉鎖的だったこの階級には珍しくダイナミックな実績を積み重ねました。

たった1階級上のバンタムでは全くその強さが発揮されなかったことは、階級の壁の分厚さを改めて教えてくれました。

ジュニアバンタムの歴代PFPを並べるとなると、やはり筆頭はカオサイでしょう。2位にはダルチニアンを推します。3位はこの階級にとどまっていた時間が短すぎる、暫定王者でしかなかった、という反対意見もあるでしょうが、ノニト・ドネアを当て込みます。

4位は殿堂入りした、今は亡きジョニー・タピア。5位にはナチョ・ベリスタインの世界デビュー作、ヒルベルト・ローマン。6位は勝負所でことごとく星を落としたものの WBA、WBCを統一したミハレス。7位はこの階級では地味に強かったフェルナンド・モンティエルを挙げます。

8位からは10度以上防衛した長期安定王者が続きます。8位は渡辺二郎、9位オマール・ナルバエス。10位は期待も込めて、井上尚弥を滑り込ませました。

この10人が総当たりで戦えば、井上が全勝優勝する、という意見もあるでしょうが、あくまで実績を重視、過去と現在の時間の差で生じる技術差は補正して考えました。

思い出すままに書き連ねたので、誰か貴重なプレイヤーを忘れているかもしれませんが、あしからず。

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「112ポンド(フライ級)と118ポンド(バンタム級)の間には、6ポンド(2.72kg)もの大きな開きがある」。

1979年、115ポンドのジュニアバンタム級を新階級に追加したWBCの屁理屈を鵜呑みにしたファンは、当然ながら少数派でした。

世界的な統括団体が存在せず、アルファベット団体と揶揄されることが多いWBA、WBCなどの承認団体が跋扈するボクシングの世界は、まさに魑魅魍魎です。

新階級増設は、承認料を稼ぐ機会が増える承認団体にとって好都合なだけでなく、「世界戦」を打ち、「世界王者」を抱えるチャンスが膨らむ興行側にも短期的なメリットがありました。

階級と王者の増殖が、長期的にはこのスポーツを蝕み、崩壊に導くのは誰の目にも明らかだったにもかかわらず、世界王者乱造には今なお、歯止めがかかっていません。

しかし、歓迎されざる水増し階級に、極めて稀とはいえ、美しい花が咲くことがあります。

その創設時に、最も風当たりの強かったのはストロー級ですが「108ポンド(ジュニアフライ)が最軽量というのは重すぎる」というWBCの妄言に怒りを覚えたファンでも「リカルド・ロペスとローマン・ゴンザレスを産んだだけでも、この階級には意味があった」と言われると、少しは納得するのではないでしょうか。

ジュニアバンタムもまた、ファンとメディアの冷めた目に晒されながらも、ときとして宝石のようなボクサーが生まれてきた38年間を歩んで来ました。

黎明期には渡辺二郎が活躍、その後も鬼塚勝也、川島郭志、徳山昌守と日本からも安定王者が輩出され続けました。


【1992年4月10日に行われたWBA世界ジュニアバンタム級王者決定戦。鬼塚の判定勝利は国内でも「不当判定」と集中砲火を浴びました。鬼塚には何の責任もないことでしたが、この騒動は若く禁欲的な青年の心に大きなトゲを残しました。最強挑戦者、アルマンド・カストロを退けた王者が、涙声で「タノムサクに勝てて…」と思わず口にしてしまった時、その傷がいかに深かったか、世間の無責任な誹謗中傷が彼の心をいかに傷つけていたか、ファンは複雑な気持ちになりました。】

さて、リング誌が1980年から37年間、発表し続けている年間PFP(BEST FIGHTER POLL)で、ジュニアバンタム級でトップ10入りしたことがあるボクサーは、カオサイ・ギャラクシー(8位:1991年)、ジョニー・タピア(10位:1997年)、ノニト・ドネア(6位:2010年)、ローマン・ゴンザレス(1位:2016年)の4人だけです。

カオサイとタピアはすでに殿堂入り。ドネアとロマゴンも、一発殿堂はわかりませんが、殿堂入り確実でしょう。

ちなみに、日本人はこの年間PFPにはまだ誰一人、その名を刻むことが出来ていません。もちろん、ファイティング原田の時代にあれば5位以内も十分ありえたでしょうが…。

この4人に加えて、ジュニアバンタム最強リストにその名前を記さなければならないのは、唯一の3団体統一王者のビック・ダルチニアンが、その筆頭です。

さらに、事実上の統一王者、議論する余地のない王者となった渡辺、その渡辺を破って2期に及ぶ安定政権を築いたヒルベルト・ローマン、フライ級から無敗のまま2階級制覇したオマール・ナルバエスも、最強候補レースの参加資格はあるでしょう。

また、手痛い敗戦が多いとはいえWBA、WBC、IBFの3団体で王者になったクリスチャン・ミハレスもこの階級の顔です。

そして、そして井上も実績という観点ではあまりにも参考資料が少ないとはいえ、これまでのキャリアで見せた瞬間最大風速は、上記9人に加えて差し支えないでしょう。

さて、最も世界的評価が高いロマゴンから見てみましょう。フェザー級以下の軽量級で1位になったのは史上初、それどころか2年連続の1位です。

ただし、ストロー、ジュニアフライ、フライ、ジュニアバンタムと4階級制覇の4つ目、この階級での2試合はカルロス・クアドラス、シーサケット・ソールンビサイと、いずれも苦戦、2試合1勝1敗の星勘定です。

ロマゴンのPFP1位は、明らかに3階級までの圧倒的なパフォーマンスで溜め込んだ貯金です。

クアドラス戦は見方によったら負けもありえましたから、ジュニアバンタムでは2戦2敗でもおかしくない内容なんです。歴代最強はおろか、現役最強でも疑問符を付けざるをえません。

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井上尚弥の米国デビュー、「スーパーフライ」のゴングまで、あと二日を切りました。

トリプルヘッダー3試合、ウィリアムヒルのオッズはローマン・ゴンザレスvsシーサケット・ソールンビサイが3−1で、「不当判定」に泣いたロマゴンの雪辱が濃厚。ファン・エストラーダvsカルロス・クアドラスは、2−1でエストラーダ有利。

そして、井上vsアントニオ・ニエベスは10−1、井上勝利は1.03倍という鉄板も鉄板、筋金入りのオッズです。

ハードコアなボクシングヲタクの間では有名だった井上の米国上陸は、今日のリング誌電子版でも取り上げられていたので、ざっと拙訳します。


【米国のボクシングヲタクは数年前から井上が何者かを気づいていました。彼らが「井上が日本で戦っていた頃から知ってるんだぜ」と自慢出来る日が訪れるのかどうか、その第一歩が明後日踏み出されるのです。】

□□□井上は、米国で最も大きな業績を残す日本人ボクサーになれるか?「モンスター」の異名を持つ傑出した日本人ボクサーは、その父親、井上真吾によって育てられた。

リング誌のジュニアバンタム級1位、パウンドフォーパウンド10位にランクされる24歳が、明後日のニエベス戦に圧倒的な勝利を収めるとパウンドフォーパウンド1位の座も射程圏に捉えるだろう。

大橋秀行会長は「ニエベスはまとまったいい選手」と評価するが「どれも平均的なボクサー。平均をはるかに超えている尚弥とはレベルが違う。23年間この世界で生きてきたが、尚弥ほどの才能は見たことがない」と絶対的な自信を見せる。

それほどの才能を育てた父、真吾は尚弥がまだ赤ん坊の頃、23、4歳の時にボクシングにのめり込んだが、家族経営の塗装会社の仕事をフルタイムで働きながら、ボクシングを続けるのは難しかった。

そして、愛するボクシングを諦めた真吾は、5歳になった尚弥がこのスポーツに興味を持っていることに気づく。

「ボクシングは空間の支配を争うスポーツだ」。真吾の哲学は尚弥に受け継がれ、米国の観衆はその証人になる。

下馬評通りにモンスターがニエベスを粉砕したら、米国のファンは真吾をフランケンシュタイン博士と呼ぶだろう。

井上が叶えるのは、父の夢だけではない。

これまで、数多くの日本人ボクサーが米国のリングに賭けた夢も、彼は叶えようとしているのだ。

大橋会長もまた、その夢を抱えていた一人だ。「もしリカルド・ロペスに勝っていたら、米国でマイケル・カルバハルと戦うというオファーがあった。米国でビッグネームと戦うのは、私の夢だったが、残念ながら実現できなかった。しかし、尚弥が必ず、この夢を叶えてくれるはずだ」。□□□


大橋vsカルバハル。大橋は一発があったから、番狂わせも期待出来た、垂涎のカードですね。

井上vsロマゴンは、カジノやブックメーカーの「可能性のある好カード」の一つとして、すでにオッズも挙げられています。

ロマゴン勝利が1.53倍、井上2.50倍と、明白に不利の予想が立てられていますが、多くの専門家は「今、二人が戦わば、勝つのは井上」と予想しています。

待ちきれない、スーパーフライ興行。この階級で、史上最強は誰なのか、独断と偏見で…続きます。

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9月9日、井上尚弥が米国初上陸を果たす、HBO BOXING AFTER DARK、SUPERFLY まであと1ヶ月。

リング誌電子版で対戦相手のアントニオ・ニエベスが紹介されていたので、そのまま拙訳しちゃいます。

★★★ニエベスは、プロキャリアを通じて一貫したルーティンを守ってきた。起床したら早朝ロードワークに出かけ、帰宅したらすぐにPNC銀行に向かい住宅担保融資の銀行マンとしてフルタイムで働き、業務を終えたらストロングスタイル・ジムでプロボクサーとしての練習に励む。

プロボクサーと銀行マン。二つの顔を持つクリーブランド生まれの30歳は「みんなから大変なのによく出来るなと感心されるけど、ずっと続けていることだから苦にならないよ」と笑う。

しかし、キャリア最大の試合を控えてニエベスは銀行の仕事を休み、無敗の日本人に黒星をつけるべくボクシングに集中している。

HBOが全国生中継するBOXING AFTER DARKの興行、世界タイトルマッチの舞台に自分が選ばれたことに、ニエベスは驚きを隠せない。

「直近の試合(NABOバンタム級タイトルマッチ:ニコライ・ポタポフ戦)で負けているし、何よりジュニアバンタム級で戦った経験が一度もないしね。スーパーフライじゃないんだけど、スーパーフライって興行に出るんだから、驚きだよ」。

確かにニエベスはフェザー級でプロデビュー、最近はジュニア・フェザーかバンタムで戦っているが、ジュニアバンタムでリングに上がったことは一度もない。

井上の咬ませ犬扱いされていることについては「それだけ評価の高い相手と戦えるのはモチベーションが上がる。井上はほとんど見たことなかったけど、今回の試合が決まって調べてみると好きなように戦っているね。彼の思い通りにさせないこと、嫌がることをやることが作戦になる。こっちはジュニアフェザーやバンタム級で戦ってきたから、体格的には有利、体力で押し込んでラフな展開に持ち込みたい」。

長年、ニエベスのトレーナーをつとめてきたジョー・デルガイドは「速いし、パンチがあるのは認めるけど、対戦相手はやる気がないように見える。デビッド・カルモナなんかは勝つ気が無いじゃないか。今回はそうはいかない。井上は東京から出て戦ったことがない。彼が、東京以外の場所で同じように戦える保証はどこにもない」と、日本最高のボクサーにも付け入る隙があると考えている。

ニエベスが初めて格闘技に触れたのは、両親にマーシャルアーツの教室に連れられていった7歳のとき。次にキックボクシングを始めて、それからボクシングの道へ進んだ。両親のルーツ、プエルトリコの英雄、フェリックス・トリニダードに夢中になったニエベスは、次第にこのスポーツにのめり込んでいく。

ニエベスによるとアマチュアでは約90戦をこなし、クリーブランドのゴールデングローブ大会で5度優勝、2011年には全米ゴールデングローブで2位になりロンドン五輪出場にあと一歩まで迫った、とのこと。

デルガイドは「中学時代から野球部のスター選手で運動神経は抜群、勉強も出来る優等生だった。チャンセラー大学に進学したニエベスから『プロボクサーにななりたい』と相談を受けた時は、卒業が先だと止めたんだ。卒業式に参列した私を見つけたニエベスは『さあ、約束を守ってくれよ。今日から私はプロボクサーだ』と駆け寄ってきたんだよ」と呆れ顔で、ボクシングへの情熱の炎を絶やさなかったニエベスを回想している。

いきなり飛び込んできた世界タイトルマッチ。ここで勝てば、ニエベスが描く大きな目標を叶えることが出来る。

ニエベスが目指すのは、ストロングスタイル・ジムで「二人目の現役世界チャンピオンになる」ことだ。

一人は、スティーペ・ミオシッチ。UFCのヘビー級王者。ボクシングで五輪を目指していた二人は長年の大親友で、ニエベスもアマチュアながらMMAの試合経験があるという。「キックボクシングと聞いてたのにMMAの試合だったんだ。びっくりしたけど、もう出るしかないし、なんとか引き分けに持ち込めたよ」。

銀行マンとボクサー。二つの顔を持つ男に生涯最大のチャンスが、突然舞い込んできた。

ニエベスの仕事は顧客の資産を有効活用することだが、井上から番狂わせを起こせば彼自身の口座もまた、しっかり潤うことになるはずだ。★★★

…これまで一度も115ポンドの体重を作ったことがないニエベスにとって、減量をクリアするのも大きな課題ですね。減量で衰弱してしまうようなら、勝ち目はありません。

また、順調に115ポンドまで落とせても陣営が期待している「体格差で押す」ことは難しいでしょう。井上自体がリバウンド効果を最大限に発揮してパワーを解放するタイプなだけに、身長(井上164㎝/ニエベス163㎝)とリーチ(171㎝/174㎝)でも大差なく、体格での優位性はありません。

それどころか、ニエベスは前日計量から大きくリバウンドするタイプでないだけに、当日のリングでは井上の方が重い体重で上がることになりそうです。

初めての海外、というのも精神的には問題ないでしょう。ただ、リバウンドという点では、じっくり体重管理できた日本とは違うスケジュールで体重を落とすでしょうから、同じように増量して元気な肉体でリングに上がれるかどうか。

また、いつもと違う減量スケジュールだけに、ピーキングにも影響が出るかもしれません。

日本のリングに上がる井上尚弥のままで、9月9日のスタハブセンターに登場するのなら、何の問題もないでしょう。

しかし、思うようなリバウンド効果を上げられず、ピークも外してしまうようだと、もたついた試合になることも予想されます。

ストロングスタイル・ジムで技を磨き、あのミオシッチが同門で大親友というのも何だか不気味です。ミオシッチは、スケジュールさえ合えば大親友の応援にスタハブのリングサイドに駆けつけて、194㎝120㎏の巨体を揺さぶり大声援を送るでしょう(これも楽しみですね〜)。

しかし、最近はボクシングだけでなくMMAも含めた格闘技全般を練習するジムが増え、そこを拠点とするボクサーも増えました。フレディ・ローチやワシル・ロマチェンコらがボクシング技術をMMAに提供、スポーツの世界でボーダレス化、交流が進むのは悪いことじゃありません。

自国で戦うとはいえ、コンディション面で不安を抱えるのは、初めての115ポンド戦となるニエベスの方でしょうが、井上にはベストに仕上げてもらいたいですね。

井上勝利は間違いないでしょうが、全米デビュー戦です。メインイベントを喰うような圧倒的な戦いぶりを見せて欲しいですね。

米国では人気の低いジュニアバンタム級を中心に興行を打つ冒険的な試みだけに、視聴者数が心配ですが、BOXING AFTER DARKは100万人以上が視聴することもあります(古い話ですが2013年のマイキー・ガルシアvsファンマ・ロペスはピーク時130万人が視聴しました)。

ここは、一発!多くの米国のボクシングファンに、井上尚弥の頭抜けた強さを見せつけてやりましょう!

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