カテゴリ: ボクシング界はいつだって魑魅魍魎

ケベックシティ入りしたエディー・ハーンが「アルツール・ベテルビエフとドミトリー・ビボルのライトヘビー級完全統一戦が4月か5月にサウジアラビア開催で対戦に合意している」と撒き散らしています。

まあ、いつものホラでしょう。

「ベテルビエフが明後日のカラム・スミス戦に勝つことが大前提。もし、スミスが勝てば、彼がビボルと完全統一王者の座を争うことになる。そして、ビボルvsベテルビエフよりも、vsスミスの方が大きな興行になるのはいうまでもない」。

腹立つこと言いますね、ハーン。

日本のボクシングファンが見たいのはカネロが敬遠したベテルビエフと、カネロが踏んだ地雷・ビボルの激突です。カネロに押し切られた傷物のスミスとビボルの完全統一戦なんて、興味半減以下です。



ベテルビエフが100%の状態なら、ブックメーカーの見立ての通りに、マッチルームの軟弱ボクサーに勝ち目はありません。

しかし、それにしても、ベテルビエフの不安要素がいくつも噴出しているのは気がかりです。

カネロがセルゲイ・コバレフにやったのと同じような卑劣なことが、舞台裏で整っているのでしょうか?
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現在、商業的に最も大きな成功を収めるであろうカードは「このまま両者が負けてキャリアにキズがつかない」ことを前提にして、Forbes Fighterのタイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュア でしょう。

一応、まだ無敗とはいえリングの中でも外でも不安定なジプシーキングは、ユニークなキャラクターもあってまだまだ商品価値はあるものの、MMAファイターのフランシス・ガヌーとボクシングルールで実質敗北の拙戦を演じて株を下げました。




また、AJもアンディ・ルイスJr.とオレクサンデル・ウシクに大番狂せで敗れ、保持していたLineal Titleと4つのベルト(WBA /IBF /WBO /IBO)を失いました。そして、ウシクにはダイレクトリマッチでも敗北。

フューリーとジョシュアは、最短で1試合を挟んで激突すると見られています。

WBC王者フューリーは、ジョシュアから5つのタイトルを奪ったウシクと2月17日に完全統一戦を、ジョシュアはフューリーを追い詰めたフランシス・ガヌーと3月7日に、共に非常に危険なリングに上がります。

オッズはフューリー8/11(1.73倍)、ウシク6/5(2.2倍)。ジョシュア1/4(1.25倍)、ガヌー11/4(3.75倍)。2人ともにトップドッグですが、フューリーがウシクに翻弄され、ジョシュアがガヌー凶拳に倒されても大きな驚きはないでしょう。

デオンティ・ワイルダーは、3連戦で完敗したフューリーが勝ち上がってこなければ、ジョシュアやガヌーと興味深いマッチメイクになるかもしれませんが、次戦はフューリーvsガヌーのアンダーカードで最強のダークホース、ヂャン・ヂレイと激突します。

フューリーと同じ270ポンドを超える北京2008の銀メダリスト相手に、実質ブリッジャー級のブロンズ・ボンバーはアンダードッグ、40歳の中国人がヘビー級ウォーズの最終勝者となると…ヂャンには失礼ですが、世界のヘビー級熱はクリチコ兄弟の治世よりも冷え込むことになりそうです。

このヘビー級大戦争の台風の目が、中国人の〝Big Bang〟ヂャンと、カメルーン人の〝The Predator〟ガヌーであることは間違いありません。

しかし、40歳の中国人と37歳のカメルーン人は招かれざる客。つまり、惨敗すると大きなチャンスから遠ざけられてしまいます。

ガヌーが互角以上に戦ったフューリーは、まともなコンディションではなかったと言われています。

もちろん、戦前は「絶好調のガヌーと、絶不調のフューリーが激突しても勝負にならない」と見られていたのですから、The Predatorが一定の実力を持っているのは明らかです。

もし、ジョシュアにも勝つようなことになると「WBCだけでなく他の3団体もランキングに入れることになる」(ESPN)。そうなるとプロ3戦目で世界タイトル、それもUndisputed Heavy weight championになる可能性も十分です。

その一方で、身体能力の高いジョシュアの攻撃に序盤でノックアウトされてしまうと、商品価値は暴落。WBCのランクからも追放されるのは間違いありません。

ビッグバンにしてもワイルダーの一撃に轟沈すると世界戦線から大きく後退、次のチャンスはさらに年齢を重ねて大きく衰えたタイミングまでズラされるでしょう。

ただ、この2人、しぶとそうです…。
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このブログのテーマは「スポーツに貴賎はない」(言ってしまった…)ということ、「スポーツの素晴らしさ」です。

素晴らしさの中には神秘、解明されていない技術、未知の領域も含まれます。

未知の領域については、科学によってどんどん解明されています。

手元でホップするように見えるボールの秘密は回転数と回転軸によると答えが出てしまいました。

江川卓は魔法使いではなかったのです。

大谷翔平ら現代の投手はどれだけ曲げるか、曲げを犠牲にして浮力を上げるか、変化球を自在にデザインする技能を当たり前に習得しています。

それでも、最後の〝空飛ぶ円盤〟はまだ撃ち落とされていません。

ナックルボールです。


そして、ボクシングの世界にも最後の〝空飛ぶ円盤〟がいまだに飛んでいます。

ショルダーロールです。

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マーロン・タパレスが、ムロジョン・アフマダリエフと井上尚弥との試合でL字ガードとショルダーロールを使ったと陣営が語っていましたが、驚くほど拙いL字とロールしない硬直したショルダーロールは言われなければそれとはわかりませんでした。

エイドリアン・ブローナーが「メイウェザーのショルダーロールをマスターした」と口にして、バーナード・ホプキンスに一笑された、高等技術。

あのシュガーレイ・レナードですらキャリア最高の防御の使い手にフロイド・メイウェザー父を挙げ、その技術を習得しようとしたものの「あれは素質や才能ではどうしようもない」と諦めた、あらゆるスポーツの中で最も神秘的なテクニックの一つ。

〝メイウェザー族〟が完成させたといわれるL字とショルダーロールを使いこなした〝非メイウェザー族〟の代表、というか唯一のボクサーがアンドレ・ウォードでした。

なぜブローナーは笑われ、タパレスは甘噛みすら許されなかったのか?

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井上尚弥は「ワンツーだけで世界は獲れる」と豪語しましたが、もちろんそれはあまりにも深すぎる話で、基本を追求し尽くした彼のロジック。

井上のワンツーの世界ではバヤノを背中から墜落させた「ジャブクロス」、ドネア2で見せた奇妙なタイミングの「ワンを打たないワンツー」も彼の中では全部ワンツー。

基本をおろそかにせず、想像力を絶やさず、練習に打ち込めばもしかしたら井上尚弥に近づけるかもしれません。もちろん、それは一筋縄でできることではありませんが。

L字とショルダーロールは、基本から外れ、想像力というよりも感性と第六感に頼るという点では、ワンツーとは真逆の技術です。

メイウェザーの一族から辿るしかないのかもしれません…。



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井上尚弥の業績に文句をつけるとしたら…。

①マイナースポーツの不人気階級で無双してるに過ぎない:例えば大谷翔平を扱うメディアとは次元が何段階も違うーー大谷はニューヨークライムズやCNNなどの一般メディアまで巻き込むセンセーションなのに対して、井上は一般メディアはもちろん、総合スポーツメディアで取り上げられることすら稀れで、ボクシング専門のネットニュースが精一杯、両者は比較対象ですらありません。

敬虔な井上信者ですら、教祖様がTIME誌の表紙を飾るなんて想像だにできないでしょう。まず、スポーツ・イラストレイテッド誌あたりに取り上げてもらいましょう、というレベルです。

②ジュニアフライ級からジュニアバンタム級、バンタム級、ジュニアフェザー級で戦った相手の質が低すぎる。これは、超軽量級が欧米でほとんど無視された不人気階級であるということを差し引いたとしても、です。

という2点に集約されるでしょう。

①についてを真剣に語るなら、マイナースポーツには存在意義がないと言っているのと同じです。世の中、メジャーだけで成り立っているわけではありません。

大谷が移籍したLAドジャースのクレイトン・カーショーやフレディ・フリーマン、ムーキー・ベッツらは〝大谷抜き〟でも多くのファンが知っていたでしょうが、マーロン・タパレスやムロジョン・アフマダリエフらは〝井上絡み〟で知った人がほとんど、そもそも野球とボクシングではファンの土台が違い過ぎます。

ボクシングファンを自称する人ですら、PFPを知ってるのにFighter Of The Yearの存在を知らないという海外ボクシングに関してはほぼ何も知らない集団というのが現実です。

「好き」というのは直感や本能的な感じであって「メジャーだから好き」なんていうのは本当の「好き」ではありません。それは「メジャーなものが好きな自分が好き」ということです。

ここでも書いてきましたが、大谷翔平が投手と打者のタイトルを総ナメにするよりも、日本人がテレンス・クロフォードやタイソン・フューリーをノックアウトする光景の方が100倍興奮します。

「マイナースポーツの不人気階級だから語る価値がない」というのは大間違いです。


では、②についてはどうでしょうか?

その当時のトップ選手を撃破してきた井上やマイク・タイソンを「強い相手に勝っていない」と批判するのは、間違いで「強い相手がいなかった」というのが正解です。

先日紹介したジム・グレイの記事【QUALITY OF OPPOSITION〜対戦相手の質】で、井上は「オマール・ナルバエスをKOしているが、最大の勝利はドネアとの2戦と、スティーブン・フルトン戦。彼が最大の試練に直面するのは、これからだろう」と、Grade: Bと査定されました。

ドネアは全盛期をとっくに過ぎたグレート。フルトンはこれから上の階級で覚醒するようなら井上の評価も上がるでしょうが、ジュニアフェザー級でも地味な存在だったスクーターがよりレベルの高い階級でハーレーに変貌することは期待薄です。

とはいえ、井上が〝取りこぼした〟対戦可能性のあった相手は、ほとんどいません。

モンスターの対戦相手はBクラスなのか?それともAなのか?あるいはC以下なのか?

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その前に、今朝アップされたESPNの小さな記事(マイク・コッピンガー)を端折ってご紹介。

cement himself as the best 122-pounder -- if not overall boxer -- in the world.〜タパレスに圧勝して全階級を通じてではないが、122ポンドでは最強であることを完全に証明した。

その通りです。

笑うほど不恰好なL字と後ろ足重心で遠い距離をキープすることに専心した31歳のフィリピン人は、井上でなくても攻めにくい相手でした。

臨機応変に崩したり整えたりするL字ガード、ショルダーロールを少しでも体得していたら非常に厄介な相手だったでしょうが、失礼な物言いになりますが、所詮はタパレスです。世界基準ではほぼアンダードッグにされる、つまり世界基準にないボクサーです。

昨夜の放送では「何度も大番狂せを起こしてきた」と解説されていましたが、何度も起こしていません。大番狂せと呼べるのはアフマダリエフに勝った〝議論を呼ぶSD〟だけです。



Inoue isn't just beating solid opponents. He's dismantling the best fighters in his division even as his weight grows each year.〜井上はトップ選手にただ勝ってきただけではない。階級を上げながら、それぞれの階級の最高のファイターを相手に圧勝を続けているのだ。

これもその通りです。

しかし、ジュニアフライ級と、現実にはスキップしたフライ級では実現に障害は少なかったはずのベストとは戦っていません。

ジュニアフライ級では、階級最弱と見られていたWBC王者アドリアン・エルナンデスより遥かに評価が高かった、のちのPFPファイターWBO王者ドニー・ニエテスがいました。

ジュニアバンタム級のオマール・ナルバエス挑戦時ではフライ級での挑戦も模索していましたが、対戦を呼びかけるPFPファイターのローマン・ゴンサレスは選択肢にありませんでした。

もちろん、最初の世界戦で全盛期ニエテスなんて、チャンスが少ない地方ジムじゃないんですからあり得ません。

また、PFP1位に君臨するフライ級時代のチョコラティトもあり得ません。

今となっては「やっときゃよかった」ですが、これは結果論。

ナルバエスを破壊してからは、その階級のトップ選手をことごとく撃破してきました。
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では、コッピンガーが井上の対戦相手を査定すると、「B」評価ではなく「A」や「S」なのでしょうか?

井上の対戦相手に旬の強豪で殿堂クラスのファイターは皆無です。また、現役PFPファイターも一人もいません。もし、井上がこのままの水準の相手との試合に終始してキャリアを終えると、まさにミニ・タイソンです…。
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Golden Disillusionment〜黄金の幻滅。

なぜ、五輪金メダリストがプロのリングで輝きを失うのか?

それには、以下の3つの可能性が考えられます。

①採点基準…アマチュアでは「クリーンヒット>>>ダメージングブロー」ですが、プロでは真逆になります。また、3ラウンドと(世界戦なら)12ラウンドの差は、たとえ採点基準が同じだったとしても、アマとプロは別競技の様相を呈していたでしょう。

②年齢…世界大会や五輪での実績を追求する時間の中で、加齢は避けられません。年齢を重ねれば重ねるほど、身体能力や技術に劣化が進むリスクが大きくなります。また、長い時間で習得したアマスタイルを修正するのに、加齢は大きな問題を引き起こします。

③モチベーション…これが最も大きいかもしれません。特に途上国において、五輪金メダリストは国民的英雄。貧困からの脱出を渇望して母国に金メダルをもたらしたファイターにとって、プロへのモチベーションは下がるはず。同じ金メダルでも、世界選手権と五輪では重みが全く違います。

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金メダルを獲得するまでにアマチュアスタイルに適応したファイターが、①の悩みを抱えていないわけがありません。

メルドリック・テイラーや金光善が、あと一歩に迫りながらフリオ・セサール・チャベスとウンベルト・ゴンサレスのプロ仕込みの強打に屈したのは、まさにその象徴的な光景でした。

ラウンドが深まるにつれて集中力が落ちるラミレスらの症状は、もしかしたらプロの長丁場への戸惑いなのかもしれません。

アマチュアスタイルを微調整してプロでも素晴らしい戦果を挙げたパーネル・ウイテカやアンドレ・ウォードのような例もありますが、人気階級で最強を証明した彼らがプロとして「成功」したのかとなると多くのファンは否定するしかありません。


②については、プロ転向は最近だとロベイシ・ラミレスとワシル・ロマチェンコが25歳、ギレルモ・リゴンドーが28歳。

彼らは2大会連続金メダリストだから年齢を重ねた、というわけではありません。誰にとっても、金メダリストの道は長く険しいものですが、彼らは〝近道〟で進めるほど稀有な才能だったのです。


③では、オスカー・デラホーヤがプロアマを通じて最高の瞬間を聞かれて「五輪で金メダルを獲ったとき」と答えているように、国家の代表として4年に一度の五輪で、世界に一つしかない金メダルを獲得するのは、特にボクシングにおいて特別です。

日本の村田諒太もプロ転向に逡巡したのも、デラホーヤと同じ「一番上のものを獲った」という感慨があったからでしょう。

そして、全競技を通じて史上初の金メダルを母国にもたらしたタイのソムラック・カムシンのように、貧困からの脱出を渇望した若者が、莫大な富と眩い栄光を手にしたとき、国家は「神」として歓迎し、プロでカネや栄光を稼ぐ必要が全く無いというケースもあります。


ロベイシ・ラミレスがデビュー戦で躓き、そこから十分学習したとは思えない内容で2度目の失態を演じたのは、①②③全ての要素が絡んでいるでしょう。


話は脇道に逸れますが、現在8階級(フライ/フェザー/ライト/ウェルター/ミドル/ライトヘビー/ヘビー/スーパーヘビー)のアマチュアボクシングは東京大会からライトフライとバンタム、ライトウェエルターを廃止。ライトミドル級はアテネ2004から廃止されています。

桜井孝雄と清水聡(清水は銅)が活躍、ラミレスやリゴンドーも金色に輝いたバンタム級、シュガー・レイ・レナードのライトウェルター級、ロイ・ジョーンズが涙を飲んだライトミドル級。思い出のクラスがなくなることに、一抹の寂しさは拭えません。

廃止の理由はたった一つ。チャンピオンの権威を考えると、多すぎる階級はボクシングにとって害悪以外の何物でもないからです。

それが正解です。
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「エリートアマ」に定義はありません。

五輪出場、一回戦負けでもそう表現されることがあります。

と、なると五輪2大会連続金メダリストのロベイシ・ラミレスは間違いなくエリートアマで、むしろもっと最上級の言葉を用意しても良い存在です。

もちろん、アマとプロは別競技です。

クリーンヒットが評価されるアマと、相手に与えたダメージに重きを置くプロという採点基準からも、そのスタイルは自ずと別のものになります。

また、3ラウンド制のアマと、世界戦で12ラウンドのプロでは、陸上長距離の1万メートルとフルマラソンよりも異質な競技と言って差し支えないでしょう。

エリートアマがプロのリングで呆気なく敗れる…特段珍しい話ではありません。

たとえそれが、金メダリストだったとしても。

なぜ彼らはゴールドの輝きを失ったのか?…その背景を考えてみます。

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ともちんラーメン750円。
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岡本和真が今日、契約更改交渉に臨み、今季から1億5千万円増の4億2千万円でサインしました。

この数字はあくまで推定で、ほとんどのプロ野球選手は正確な金額を明らかにしていません。

報酬を正確に発表しない大きな理由は、同じような実績の選手と比較して契約交渉が揉めることを避けるため。

読売でタイトルを獲るのと、広島でタイトルを獲るのでは金額が違うのは誰もが理解していますが、それでも推定が〝ワンクッション〟になると考えられているのです。

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プロボクシングの世界では、重岡優大がファイトマネーの遅配があったことでワタナベジムと3150ファイトへの不信感をSNSで爆発させました。

重岡兄弟のファイトマネーの支払いが大幅に遅れたことは悪意があったわけではなく、事務手続きにルーズだっただけなのでしょうが、それにしても、です。

ファイトマネーは優大の投稿からすぐに支払われたということです。

しかし、まず渡辺均会長に直接「どうなってるんですか?」と問い糺さなかったことは少し残念な気もします。といっても、それはファンの勝手な期待であって、ビジネスの世界、優大にはなんの罪もありません。

プロ野球の場合は岡本が「両手(6億円以上)じゃないですよ、片手のどれか」とヒントを与えたように、記者との掛け合いの中で大体正確な金額が推定されていると言われています。

一方で、プロボクサーのファイトマネーは推定以上に推定です。さらに、カネの出所がプロモーターも兼ねる所属ジムであることがほとんどで、重岡兄弟のように専業プロモーターから支払われるケースは稀です。

このカネの出所が不透明な理由は、プロ野球と同じように「あっちのジムの方が高い」という揉め事が起きないようにということや、世界王者や何かしらの王者になるとジムからの支払いにスポンサー収入も加算した金額をそのまま明らかにしてしまうと、ファイトマネーの約3%とされる認定団体に支払う承認料が増えてしまうこともあるでしょう。

さらに、世界戦でも無名の挑戦者となるとファイトマネーが非常に低いことも公表しにくい一因でしょう。

プロボクサーも報酬を明らかにすべきか、それとも公表しない方が業界の発展につながるのか?

これから、野球やサッカーに追いつけ、追い越せでメジャースポーツを目指すなら公表した方がいいに決まっています。将来「日本王者になれば何不自由なく生活できる」という日が来るなら。

もし、そうでないなら、ファイトマネーは明らかにする必要はないのかもしれません…。
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3日放送の「まつもtoなかい」が「ビートたけしが出てて面白かったよ」と教えられて、さっき見たところです。

関西出身で、漫才ブームやNSC(吉本総合芸能学院)創設の真っ只中に中高時代を過ごした身としては、お笑いの話には敏感です。

ビートたけしが笑いについて「落差だから。自分はそういう意味では偉くなりたいの。だから、松本は、若手の時にしくじった話がベテランの時にやると違うはずなんだよ。あの松本、あのたけし…ってなるべきなんだよ」と、語っていました。

いろんな解釈ができる言葉ですが「偉いとこからの一言は効く」ということでしょう。

ボクシングでも井上尚弥や井岡一翔、中谷潤人、重岡銀次朗らがどんなに素晴らしいパフォーマンスを見せても、欧米世界の中では不人気階級での出来事です。

「日本人ボクサーなんて結局小さなところで小さいボクサーがやってるだけ」と言われて、「ヘビー級の鈍重なボクシングよりも軽量級の方が面白い」「パッキャオ、メイウェザーも軽量級のボクシングをウェルター級に持ち込んで体格差を跳ね返して活躍した」と反駁しても、やはり負け犬の遠吠え感は否めません。

ただ、日本人がウェルター級やヘビー級も席捲して、それでなお軽量級のボクシングが高く評価され、大きな人気を集めているのだとしたら、少し話が変わってくるかもしれません。自信を持って反駁できるというか…。

ウェルター級やヘビー級が偉いとは思いませんが、そこを獲って語るのと、そうでないのではちょっと差がある気がします。

という、とりとめのない話でした。
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井上尚弥と井岡一翔。

二人の世界戦の成績(セカンドタイトルを含む)は、井上が20戦全勝18 KO。井岡が23戦20勝(10KO)2敗1分。※タクシーの中でBoxRec見ながら〝暗算〟。…怪しい数字です。

現時点では二人の世界戦勝利数は「20」でイーブンですが、井上は全勝でKOを逃したのは2試合だけ、井岡は3試合で勝てず、ジャッジの手に委ねなかった試合は10しかありません。

もちろん、これはスタイルの差や、それこそ対戦相手によります。

対戦相手の質では、①一発殿堂クラス、②殿堂クラス、③PFPファイターの上位3項目の全盛期、現役という点では、二人とも対戦はなし。

このことから窺えるのは、二人とも旬の超弩級の強豪とは手合わせしていない、ということです。

さて、④リング誌ランキングと⑤世界王者で見ると…。

その前に、井上の場合は世界戦20試合のどれよりも価値があるかもしれない試合を、プロ4戦目で経験していることを挙げなければなりません。

このブログでも取り上げてきた、日本ジュニアフライ級王者・田口良一への挑戦試合です。

田口はのちのWBA/IBFジュニアフライ級王者で、PFP10傑には届きませんでしたが、そのウェイティングサークルに完全に入っていました。

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井上が戴冠時の108ポンドシーン。選べる立場の日本人ボクサーたちが誰を回避していたのか、わかりやすいランキングです。井上が選んだのは4位のアドリアン・エルナンデス(このランキングでは5位)、田口が選んだのは8位のアルベルト・ロッセルでした。


ジュニアフライ級における田口(2014年12月31日〜2018年5月20日)と、井上(2014年4月6日〜9月5日)は、強豪王者でしたが階級最強とは見られていませんでした。また、彼らはリング誌王者でもありませんでした。

二人がジュニアフライ級のストラップを掴んだ2014年、階級最強はのちにリング誌王者にもなるドニー・ニエテス。

当時、すでに30歳を超えていたとはいえ誰もが認める階級最強のニエテスは「日本で戦いたい」と熱望していましたが、井上も田口も別のアルファベット団体を選んだのでした…。
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プロボクシングは、他のスポーツとは全く違います。

アマチュアボクシングも含めた他のスポーツは、自分が強くなればなるほど、レベルの高い相手が現れて、強力な相手が立ち塞がります。

しかし、プロボクシングはそうではありません。

これが世界一を決める戦いなのか?と首を傾げるしかない〝世界タイトルマッチ〟が当たり前に行われています。

主要と言われる4つの認定団体の王者は常識的には世界トップ4のはずですが、メディアの後世なランキングで5位以下の低評価に甘んじている王者も珍しくありません。

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TK

2023/11/28 22:16

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フシ穴の眼
井岡の対戦相手の質は現時点では井上以上かと思っていますが、少数派ですかね。まぁ、フルトンみたいに目立つ相手がいないのは確かですが。
私はリング上での井岡は大好きなので、完全燃焼して欲しいです。

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「フルトンが目立つ相手」かどうかは別にして、井岡一翔と井上尚弥の対戦相手の質を見直してみましょう。

「対戦相手の質」をどう測るかは非常に難しいところですが、以下の5つの基準で見てみます。

①一発殿堂クラス
②殿堂クラス
③PFPファイター
④リング誌ランキング
⑤世界王者

この5つのいずれか、あるいは複数で当てはまる「全盛期」のファイターが、理想的なQuality Opponentです。

まず「全盛期」というフィルターを通すと、井岡も井上も①②③に該当する対戦相手はいません。さらに現役のPFPファイターも見当たりません。

井岡も井上も「全盛期」「現役」となると④リング誌ランキング、⑤世界王者の二項目で測定することになります。

もちろん、二人が戦ってきた相手はまだ現役選手も多く、例えばスティーブン・フルトンがフェザー級で覚醒、ロベイシ・ラミレスをKOしてPFP入り、さらに大活躍して一発殿堂なんてことも絶対にないとは言えません。

あるいは田中恒成が中谷潤人やローマン・ゴンサレス、井上尚弥、シャクール・スティーブンソンを倒して9階級制覇、一発殿堂なんてことも。

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そんな未来は、今回は無視して、過去に戦ってきた相手、実績だけから二人の「対戦者の質」を測ります。

そして、21世紀の日本で、この二人を上回るQuality Opponentに勝ったファイターはいるのでしょうか?

※ここでは「ミドル級はレベルが高いから、村田諒太がこの二人を上回るQuality Opponentと戦っていた」という階級差別はナシ。あらゆる階級を平等に考えます。
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