ネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)は「NFLやMLB、NBA、プロテニスで導入されている微妙な判定でのビデオ再生を活用する」と発表しました。

NSACの文書からはボクシング以外の格闘技にも適用されるかどうかは不明ですが「ニュートラルコーナーに座ったビデオ再生専門のオフィシャルが主審の支持を受ける形で反則行為や、ダウンかスリップか、カットの原因がパンチかヘッドバットかをビデオ再生で最終判断を下す」というものです。
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これまでもテスト的に取り入れてきましたが、その検証期間が終わり、本格導入に向けて動き出したということです。

NSACの責任者ボブ・バーネットは「試合の流れを止めない」としていますが、どのスポーツにもない「ラウンド&インタバル制」の縛りの中で、ビデオ判定の時間が「流れを止めない」のは不可能に思えます。

インタバルの間にビデオ検証し、判定が覆った場合だけ随時アナウンスする、というのが考えうる最もスムースなスタイルですが、難しい問題を孕んでいます。

アンドレ・ウォードvsセルゲイ・コバレフ第2戦のフィニッシュはローブローでしたが、あれはレフェリーがストップしたあとにビデオ検証で判定が覆り「反則負け」になるのでしょうか?

それとも「減点」で、終わったはずの試合がコバレフに休息時間が与えられて再開になるのでしょうか?

コンビネーションの流れの中で当たってしまった、試合の帰趨に影響が無いように見えるラビットパンチも反則打になるのでしょうか?

世知辛い話です。

VARによって、サッカーの世界では「マラドーナの神の手」を目撃する僥倖は永遠に奪われました。もちろん、それで多くのつまらない誤審が正されるのは良いことなのですが…。

バーネットは「NFLが1976年に導入したときも喧々諤々だった。我々も試行錯誤しながら、ボクシングに適応したビデオ再生判定を進化させ、ファンが納得出来る判定を生み出す一助にしたい」と語っています。

その通り、その通りなんですが、ボクシングの場合はまず明らかに判断能力が欠落したレフェリーやジャッジのリストラと、より正確な判断を下せる人材の養成の方が急務です。

ボクシングにおける不可解な判定の最大の原因は、ビデオ判定導入以前の段階に存在しているのです。