ボクシング界での複数試合契約最高額は、2018年にカネロ・アルバレス がDAZNと交わした11試合3億6500万ドル。

このときは、ボクシング界だけでなく、あらゆるスポーツで史上最高の金額でした。

1試合あたり3320万ドル、井上尚弥を例外にして40万ドルファイターすら存在しないバンタム級をはじめ世界王者でも10万ドル稼げれば御の字の軽量級の惨状から見上げると羨望を通り越して奇怪にすら映る数字です。

それまでのボクシング最高記録は、2013年にフロイド・メイウェザーがショウタイムと結んだ6試合2億ドル。

こちらの1試合あたりは3330万ドル。〝わずか〟110万ドルとはいえ、1試合換算ではカネロの〝史上最高額〟を上回っていました。

もちろん「1試合」を持ち出すとメイウェザーvsパッキャオ、メイvsコナー・マクレガーのような特異なサンプルもあります。
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しかし、現在のカネロと2013年時点のパッキャオ戦が渇望されていたメイウェザーを比較すると、後者の方が商品価値が高いのは明らかです。

海千山千のDAZNと、CBS傘下で半世紀近い歴史・信用があるプレミアムケーブル・ショウタイムという、契約相手の〝お里〟からも、カネロはババをつかまされたと言えるかもしれません。

そのカネロがプロモーターとブロードキャスターを相手取り、損害賠償2億8000万ドルなどを求めて訴訟を起こしました。

裁判の行方は不透明ですが、大々的な記者会見を見るまでもなく「11試合3億6500万ドル」が米国的な極細部にわたって取り決められたフルスペック契約ではなかったと想像出来ます。

だから、裁判沙汰になったとも言えます。

さて、今後、カネロがGBPとDAZNから離脱しても引く手数多です。

独立の目もありますが、十分な根回し無しでは他の大手プロモーターは有力選手を出してくれないでしょう。

今年7月に30歳になったばかりの赤毛のメキシカンは、59戦のキャリアで大金まみれのメガファイトをいくつもこなしてきました。

しかし、ファンやメディアがゾクゾクするような相手と強烈な印象を残す試合、となると悲しいかな、たったの1試合も見当たりません。

このまま、永遠のアイドルはオーダーメイドの相手にキャッチウェイトを負わせながら欺瞞のリングに上がり続け、引退していくのでしょうか?