藤川球児が今季限りの引退を発表しました。

印象的だったのは「粉骨砕身」という言葉を絞り出したあと、下を向いて涙を堪えた場面ではなく、「叱咤激励が本当に多かった」と清々しい笑顔を見せたときでした。

阪神タイガースですからね。

毀誉褒貶は12球団で頭抜けています。それが、ファンだけでなくメディアまでそうなのが特殊です。

「誉」や「褒」も含めて、過剰な叱咤激励がこのチームの若手選手をプレーに集中させずに、成長を蝕んできました。

「それを覆すのが楽しくて」と語ったように、彼が「本当に多かった」と振り返ったのは叱咤激励ではなく「叱咤」でしたが、藤川は多くの選手が飲み込まれた毀誉褒貶の荒波を見事に乗り越えて見せました。

「それを覆すのが楽しくて」。藤川の火の玉ストレートの発火点は、反骨心でした。

毀誉褒貶が激しかったことでは世代の旗振り役、松坂大輔も際立っています。

「若手のチャンスを奪っている給料泥棒」。そんな非難を見返して下さいと向けられたマイクに松坂は「野球は誰かを見返すためにやるもんじゃないです」と笑いました。
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東京メトロ銀座線のクラシック車輌。※本番とは関係ありません。

彼らもドラ1の中でも特別な存在でした。

藤川は自分で引退を決めることが出来る、大投手になりました。

松坂大輔も松坂大輔でなければ、とっくに行き場を失っていたでしょう。

木佐貫洋や古木克明もこの旗のもとで活躍した選手だと思い出すと、藤川がいかに長い航海を終えるのかを実感してしまいます。

黄金色に輝いていた世代がどんどん、舞台から去っていくのを見送るのは、寂しさしかありません。