日本にとって最も眩しいスポーツ市場は、米国です。

競技レベルと選手報酬の両面で文句無しのトップリーグが存在する野球やバスケはもちろん、地球儀的なスポーツであるはずのボクシングでもそれは変わりません。

NPBで大きな成功を収めた選手は、MLBを目指します。アスリートが希求するのはやりがいのある舞台と名誉と報酬、その全てが用意されているのですから当然です。

ボクシングにおいては近年、長谷川穂積や西岡利晃、内山高志、山中慎介、井上尚弥ら「大きな成功を収めたボクサー」が〝ラスベガス〟でビッグファイトを戦う夢に焦がれましたが、階級制のスポーツであるボクシングは事情が異なってきます。

悲しいかな、米国で注目度が低い軽量級、特にジュニアフェザー以下のクラスではPPVのメガファイトでメインを張ることは論外、大会場でメインもありえません。

The lighter weight divisions don't get the attention of the bigger weight classes, so there are a few worthy candidates to get this tag of 〝most underrated current champion 〟.Many fight fans have never heard of Inoue.〜軽量級はそもそも注目されていないのだから「最も過小評価されている王者」というタグはそもそも意味をなさない。米国のボクシングファンの多くは井上の名前すらも聞いたことがないのだ。

米国では軽量級扱いのジュニアライトは、オスカー・デラホーヤやフロイド・メイウェザーがキャリアをスタートし、マニー・パッキャオが通過したクラスとはいえ、彼らですらジュニアライトではメガファイトのリングを創造することが出来ませんでした。

ワシル・ロマチェンコが「ジュニアウェルターやウェルターはもちろん、現在のライトでも私には重い」と吐露したとき、メディアやファンから「それじゃメガファイトは無理」と冷められたように「ライト級でも軽すぎる」というのが米国の現実です。

体格的にも、減量の文化・歴史的にも日本をはじめアジアのボクシングは米国で関心が低い軽量級が主流で、ラスベガスのメガファイトの大前提であるウェルターかヘビー級という枠から遠く離れてしまっているのです。

村田諒太があれほどの好待遇でプロに迎えられたのは五輪で金メダリストになったからですが、正確に言うと「ミドル級で五輪金メダルを獲得したから」です。あれがフライ、バンタムならあそこまで注目されません。

しかし、少なくともオリジナル8の時代は現代ほどの「階級格差」は存在しなかったはずです。

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1954年2月18日時点の世界王者。ヘビー級からロッキー・マルシアノ、アーチー・ムーア、カール〝ボボ〟オルソン、キッド・ギャビラン、ジミー・カーター、サンディ・サドラー、ジミー・カラザース、そして白井義男。もちろん全員がUndisputed ChampionでLineal Champion、文句無しのThe Championです。


今よりもボクシングの地位が高く、世界王者は8人しかいないわけですから、ボクシングファンならその8人全員の名前を知っていたはずです。

そんなオリジナル8の時代から、現代の〝少なくとも〟4団体*17階級=68王者時代にかけて、アジアから米国と世界に向けて吹いた風を振り返ります。