ウェルター級の大駒をテレンス・クロフォードしか持たないトップランクにとって、ワシル・ロマチェンコvsテオフィモ・ロペスは〝内製〟できる最高のカードです。

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一旦は10月3日に内定していたリング誌/WBA/WBO王者ロマチェンコと、IBFのロペスが激突する3団体統一戦。

32歳のウクライナ人はWBCのピースも保持、本来ならリング誌と4団体のベルトを賭けた完全統一戦になるはずでした。

しかし、WBCがロマチェンコを「防衛戦を免除される」フランチャイズ・チャンピオンに〝昇格〟させたことによって、王者とは認められなくなってしまいました。

それでも、アフター・コロナでは飛び抜けたビッグファイト。

ところが、ロペス陣営が「125万ドルは安すぎる。最低でも200万ドル」と最終合意を拒否。試合は暗礁に乗り上げていました。

ボブ・アラムは「報酬で揉めるのはよくあること。54年もこの業界の最前線で仕事をしてきた私にとっては大騒ぎしたり、悲嘆したりすることじゃない。試合は予定通りに行われる」と楽観的な姿勢を貫いてきました。

昨日、88歳の殿堂入りプロモーターは「ロペスの取り分を引き上げるためにロマチェンコの報酬を一部カットする」と発表しました。

ロマチェンコが手にする報酬は350万ドルとされ、ロペスの要求額を補填するには75万ドルが引かれる計算です。しかし、報酬の20%以上にのぼる減額をロマチェンコが合意するかどうかは疑問で、実際の数字は30〜40万ドルではないかと見られています。

しかし、アラムはロマチェンコの350万ドルをそもそも否定しています。

“That figure that you’ve seen posted, ‘Loma getting $3.5 million,’ that isn’t very far from the truth,” said Arum.
メディアはロマチェンコの報酬を350万ドルと書きててているが、それは事実から大きくかけ離れた数字だ。


アラムの言葉は真に受けることはできませんが、いずれにせよ、重度の虚言癖のある88歳が投げたこのボールをロペス陣営がどう返すかで、試合実現が決まります。

そして、この試合を何としてもやりたいのはロマチェンコの方です。

「史上最高のアマチュア」の触れ込みで2013年にプロデビューしてから7年、ウクライナのハイテクは多くの強豪を翻弄してきました。

しかし、フェザー級からライト級にわたる米国では「軽量級」にあたるゾーンは、痩せた土壌に貧弱なタレントしか存在しないのがデフォルトです。

ゲイリー・ラッセル、ローマン・マルチネス、ニコラス・ウォータース、ギレルモ・リゴンドー、ホルヘ・リナレス、ホセ・ペドラサ、アンソニー・クローラ、ルーク・キャンベル…実力者ではあっても、米国でロペス並みの人気を要するボクサーは一人もいません。

本人が「あと2年程度」とフィニッシュラインを決めているキャリアは劣化の症状も見られ、キャリア最高のビッグファイト、ロペス戦を先延ばしすることは得策ではありません。

トップランクの持ち駒でロペスに次ぐ人気を持つのは、フェリックス・ベルデホですが、堕ちたホープ相手では興味も半減です。

さて、ロマチェンコがやや有利と見られている展開ですが、ハイテクを最も苦しめたリナレスは「非常に危険な戦いになる」とロペスにチャンスがあると見ています。

LOMACHENKO ISN’T THE SAME FIGHTER HE ONCE WAS

「私と戦った頃のロマチェンコはもういない。被弾が目立ち、動きも滑らかさを欠くようになった。ロペスはスピードのない、一発屋でコンビネーションが使えない不器用なボクサーだが、その偏向したスタイルもまた劣化したロマチェンコにとって深刻な問題を引き起こすかもしれない」。

また、23歳のロペスが井上尚弥レベルの12%前後という大きなリバウンドを経て当日のリングに上がることも、ライト級で対戦相手を持て余すケースが目立つようになったロマチェンコにとって不安要素です。

「ウェルター級?そこが最も人気があるのはわかる。しかし、ジュニアウェルターはおろか、ライト級でも170㎝の私は小さい。あと10㎝大きければ考えるけど、適正階級はジュニアライトだ」というウクライナ人の前に、ジュニアミドル級間で膨れ上がったロペスはどう映るのでしょうか?

ロマチェンコの身長があと10㎝高ければ…クレオパトラな話はひたすら虚しいだけです。


なんだか、劇的な世代交代を期待してしまいます。

「あと10㎝」。パックメイはそんな泣き言は発しません。