当たり前の話、ファイティング原田の麗しき1960年代に「アルファベット団体」なんて言葉は存在しませんでした。当時のメディアからは、 Undisputed Champion という表現もほとんど見当たりません。

しかし、70年代になるとUndisputed Champion、alphabet body という〝新語〟が芽吹き、80年代には前者は「正真正銘の王者」を指し、後者は「欺瞞団体」を意味することで定着します。

さらに、第三勢力IBFの登場によって「ボクシングの世界王者は意味がない」(ニューヨークタイムズ)とまで切り捨てられてしまいます。

「3団体の王者がベスト3ならまだしも、そうとは限らないからタチが悪い」「怪しい王者が怪しい挑戦者と防衛戦を繰り返す怪しいプロボクシングはスポーツとは呼べない」とまで断言されてしまいます。

ボクシングが「スポーツと呼べるかどうか怪しい地位」に転落してしまった80年代でしたが、偶然とはいえ反動的な現象も起きました。

マイナーに堕ちたボクシングでも、真の意味で「黄金」と呼べるウェルター級とミドル級、ヘビー級の三階級で途轍もないUndisputed Championのスーパースターが相次いで誕生したのです。

ウェルター級のシュガー・レイ・レナードは、現代に続く「ウェルター級が主人公」「Aサイドは何をやっても良い」「アルファベット団体はスーパースターの奴隷」というガイドラインを策定しました。

ミドル級のマービン・ハグラーはレナードの人気には遠く及ばなかったものの、実力は図抜けていると評価され、防衛し続けるUndisputed Championの威厳で世界を睥睨しました。

ヘビー級のマイク・タイソンは「ポスト・アリ」という絶体絶命のヘビー級シーンで救世主となり、WBSSとは真逆の世界が注目する最強トーナメントで優勝しました。

「最も層が厚い」ウェルター級はレナード以前からレベルは高かったとはいえ、欧米では「小さな男」の戦いでした。レナードが全てを変えたのです。

「問答無用のヘビー級」の80年代の地盤沈下は目も当てられない状況で「アルファベット団体のストラップをタライ回しする穴王者」を駆逐したのがタイソンでした。
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日本では「fabulous four(ファブ4=素晴らしい4人)」と呼ぶのを好む人が多いのですが、これは世界的にはビートルズの渾名です。Four Kings がしっくりする気がします。

英語は直訳が絶対基本です。しかし、根本的に文化が違うと、それでは難しい言葉が多すぎるのが歯がゆいのですが Four Kings は「四天王」とすんなり直訳出来ます。


「特別な才能を傲慢に誇示したレナード、特別な環境の恩恵を受けたタイソン」という「特別な事情」で Undisputed Champion が生まれたウェルターとヘビーに対して、ミドル級もまた特別な階級でした。

シュガー・レイ・ロビンソンがミドルを目指したように、レナードやデラホーヤがミドルに特別な感情をぶつけたように、ミドル級は人気階級ウェルターの中でも選ばれしスターが挑戦することでも輝いてきました。

そして「どんなに優れたライトヘビー級王者でも、凡庸なヘビー級王者に駆逐される」という有名な格言を聞いても、ボクヲタは「途轍もなく優れたミドルはヘビーを駆逐する」という事例も知っていました。

160ポンド/72.6kg。

個体差があるとはいえ、現生人類の体格で、最もパワフルにスピーディにスタミナ溢れるパフォーマンスが出来るのは、160ポンド/72.6kgかもしれません。

余談が長くなりました。

今なお統一引力が最も強烈で、人気階級のミドルの40年をバック・トゥ・ザ・フューチャーしてゆきます!