フォーブス誌のThe World’s Highest-Paid Athletes 2020ではヘビー級3人の後塵を拝したカネロ・アルバレスですが、7月18日で30歳になったばかりの赤毛のメキシカンが少なくとも北米ではこのスポーツの主役であることは間違いありません。

ただし、ゲンナディ・ゴロフキンとの第3戦を除外すると、魅力ある対戦相手はほとんどいない状況です。

DAZNは世界戦略の柱として「9月12日にWBAスーパーミドル級王者カラム・スミスと英国での対戦交渉中」と公表していますが、まだ決定していません。

DAZNがスミスに提示した報酬は500万ドルと言われ、これをMundo(世界を征服する男)が受け入れるとはメディアもファンも考えていません。

直近の試合でスミスを苦しめたジョン・レイダーと、村田諒太の対戦者候補にも挙がったことのあるジェイソン・クイグリーに落ち着くのでは?とみられています。

しかし、レイダーもクイグリーもDAZNが期待する加入者数を確保するには英国での人気はあまりにも低いのが実情で、最近の試合で二人とも黒星を喫していることからもファンの関心は高まりそうにありません。

さらに、スミスはマッチルーム(DAZNと業務提携)傘下ですが、試合放映権は英国スカイスポーツが握っており、調整は非常にタフなものになりそうです。

DAZNとライバル関係のESPNは「英国はDAZNが考えているような甘いマーケットじゃない」と、たとえスミス戦を手中に入れたとしても加入者数の大幅増には繋がらないと否定的です。

さらに「英国でスミスと戦うとなると米国での視聴者は低迷する」と英米共倒れを予想。

ボクシングファンとしては決定力に欠けるスミスと凡戦を見せられるよりも「ライトヘビーにちょっかい出したんだからアルトゥール・ベテルビエフやドミトリー・ビボルと落とし前つけろ」という気持ちですが「全盛期の超強豪」とは絶対にやらないのがカネロの揺るぎなき信条です。
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さすが人気者。まだ決定もしていないのに対戦候補3人とものオッズが出揃っています。こうしたオッズの先走りも欧米で人気がない軽量級ではありえません。残念ながら井上vsカシメロはどこを探しても見当たりません…というか試合組む気ないようですし、興味がないなら契約解除して開放して欲しいです。

そして、GGGの劣化とともに関心が薄れつつある「3」ですが、来年のシンコデマヨ週間、5月21日で内定しているともいわれています。

カネロが4500万ドル、GGGが3000万ドルと具体的な報酬の金額も複数のメディアが報じており「内定」しているのは確実です。

ただ、両者で7500万ドルという超高額報酬を支えるにはゲート収入が不可欠と考えられ、そこが不透明な状況では正式発表できないということでしょう。

2017年の初戦(ラスベガス:T-Mobileアリーナ)では2700万ドル、再戦でも2400のゲート収入を上げており、無観客だとこれがゼロ、観客制限でも大幅ダウンを強いられることになります。
MAIN EVENTDATEPAIDGROSS SALES
VENUE/PROMOTER/TVATTENDANCE
1FLOYD MAYWEATHER JR vs. EMMANUEL PACQUIAO2005/2/1516,219$72,198,500.00
MGM, Mayweather Promotions, Top Rank, PPV
2FLOYD MAYWEATHER JR vs. CONOR McGREGOR08/26/1713,094$55,414,865.79
T-Mobile, Mayweather Promotions, Zuffa, TGB, PPV
3SAUL 'CANELO' ALVAREZ vs. GENNADY 'GGG' GOLOVKIN     09/16/1717,318$27,059,850.00
T-Mobile, Golden Boy, TGB, Banner PPV
4SAUL 'CANELO' ALVAREZ vs. GENNADY 'GGG' GOLOVKIN09/15/1813,732$24,473,500.00
T-Mobile, Golden Boy, TGB, Banner PPV
5FLOYD MAYWEATHER JR vs. SAUL 'CANELO' ALVAREZ09/14/1316,146$20,003,150.00
MGM, Golden Boy, Warriors, PPV
DAZNが抱え込んでしまったカネロ・アルバレスという11戦3億6500万ドルの不良債権。カネロは報酬の減額を受け入れたと伝えられますが、焦げ付いているのは変わりません。

カネロとDAZN、ともに前向きだった村田諒太との東京メガファイトもゲート収入が期待できない限りありえません。

カネロvsGGG「3」も来年5月に完全に近い形でのゲート収入が期待できないなら、9月の独立記念日週間への後ろ倒しになると言われています。

いずれにせよ「完全な形で観客を迎えることが出来るのは完全なワクチンが完成して半年後」(ESPN)。来年9月でも難しい状況に思えます。

GGGは来年4月8日に39歳、まだもう一花咲かせる選手もいますが、多くの場合は坂道を転がり落ちる年齢です。キャリア終盤になってようやく強豪との対戦が増え、激闘・苦戦を繰り返すカザフスタンの英雄は「もう一花」が期待出来ないタイプかもしれません。

黄昏時を迎えたIBF王者は9月か10月にカミル・シェルメタを迎えて初防衛戦のリングに上がる予定です。

オッズはGGG1/25(1.04倍)、シェルメタ11/1(12倍)とミスマッチレベルが、試合が近づくとデレビャンチェンコ戦のときのように「スパーリングで不調、反射の劣化が明らか」の噂が飛び交い接近するかもしれません。

10月で31歳になるシェルメタは21戦全勝無敗ながらもKOはわずか5という、羽毛の拳を持つポーランド人。

エマヌエーレ・ブランダムラが返上した欧州タイトルに収まったシェルメタは、アマチュア実績も乏しく、プロでも世界レベルとの対戦経験はゼロ。

カネロ戦に向けての試し斬りには格好の獲物、安全保証書付きですが、今のGGGはいつ決壊しても不思議ではないヒビだらけのダムにも見えます。 

それにしても、カネロ。

強豪ライトヘビーとは戦う気はなし、GGGを除くとめぼしい相手は見当たらない、でもファンが注目する試合がしたい…贅沢な悩みに身悶えする「温室の貴公子」はこれから何をすればいいのか、極東の島国から考えてあげます。