世界のプロボクサー人口は2万2952人(6月22日現在:BoxRecより=以下の数字も)。

ボクシング大国とされる国は米国(人口約3億2000万人)、メキシコ(約1億2700万人)、日本(約1億2600万人)、英国(約6750万人)の4カ国。

それぞれの国が抱えるプロボクサーはメキシコが4028人 、米国が3351人で予想通りにワンツー。日本は1222人で3位、英国が1047人で4位。5位は1000人の大台には届かないものの、737人でアルゼンチン。

アジアではタイが460人と、人口(約7000万人)と国際式の予備軍(ムエタイ)が控えていることを考えると、日本と同じかそれ以上のボクシング熱を持っています。

また、メキシコのライバルでスポーツ万能のプエルトリコは人口(約360万人)を考えると、優秀なボクサーを次々に産出してきた〝資源大国〟です。
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対戦相手の着弾率から、カネロ・アルバレスと先輩グレートとの比較。カネロがディフェンスで傑出したスタイルの持ち主だとよくわかります。

さて、バンタム級とウェルター級の比較に移ります。

世界ではバンタムが1019人。「大国」ではメキシコの242人がトップ、日本125人、米国67人、英国18人。

ウェルターは2170人。このクラスでは米国がトップで432人、メキシコ349人、英国143人。日本は4位の62人。

メキシコはヘビー級137人、クルーザー87人、ライトヘビー80人、スーパーミドル級151人とストロー級の31人を大きく上回る競技人口を抱えており、ジュニアフライ105人と比べても遜色ないボリュームを重量級でも抱えています。

さすがNo.1大国です。重量級の充実傾向は明らかで、ルーベン・オリバレスからフリオ・セサール・チャベス、そしてカネロ・アルバレスと看板スターの大型化からも容易にそれが見て取れます。

その逆が、米国でヘビー級からウェルター級へと人気階級は小型化、ボクシング市場の凋落にも歯止めがかかっていません。

そして英国はヘビー級48人、クルーザーとライトヘビーが各59人で同数、スーパーミドル78人と重量級が分厚くなっています。

日本はヘビー級5人、クルーザーとライトヘビーは0人、スーパーミドル8人と重量級は極端に層が薄く、最大ボリュームはフェザー級の164人。ストローでも57人とタイの15人を大きく上回る世界一の競技人口を抱えていますが、成人男子の体格向上を考えると歪な印象は拭えません。

60年前のファイティング原田の時代には、ストロー級やジュニアフライ級、ジュニアバンタム級、ジュニアフェザー級は存在しませんでした。

現在、フェザー以下の軽量級は7階級もありますが、原田の時代はフライ級、バンタム級の次はフェザー。軽量級は、3階級しかなかったのです。

おそらく階級別の競技人口分布図は、60年前よりも現在の方が軽量級に偏っているでしょう。米国と同じ小型化ですが、日本人の体格が飛躍的に向上していることを踏まえると、さらに異常な風景に見えてしまします。

この異常な風景を形作っているのは「ボクシングのマイナー化」と「より世界に手が届く階級を狙う」という二つの潮流の同時進行です。

「ボクシングのマイナー化」は身体能力に優れた少年をこのスポーツから遠ざけます。

体格面から他のスポーツで能力を発揮できない才能の受け皿になっている面は否定しませんが、小さな才能がボクシングに向かっているというのは、真実のほんの微細な一面しかとらえていません。

才能の獲得競争でボクシングは他のスポーツに惨敗しているということこそが、大きな真実なのです。

そして「より世界に手が届く階級を狙う」という意識が、日本を世界最大のストロー級大国たらしめているのも間違いありません。

ボクシング大国の中で、メキシコと英国が健康的な階級分布図を描いているのに対して、日米は平均的な国民の体格よりも軽く小さなボクサーがメインストリームを形成する歪な構造に迷い込んでいるのです。

そして日米には、才能の獲得競争で他のスポーツに惨敗する傾向が時代とともに深まっている共通点が横たわっています。

米国ボクシング市場の凋落傾向は、まだまだ続くでしょう。

しかし、日本は違います。間歇的とはいえ21世紀を迎えてからも国民的な関心を呼ぶボクサーが登場しています。

マーケットは重症ですが、まだまだ死んではいません。

そして、このブログでも何度も書いているように「テレビで観る」なら、軽量級は最も面白い階級だと断言できます。

中量級や重量級のラスベガスのように「日本が軽量級のハブになれないか?」というコメントを寄せてくれた方がいましたが、日本のボクシングが復興する最も効果的なアプローチは、まさにそこにあります。

この話も続くのです。