世界チャンピオンが強いとは限らない。世界ランカーが強いとは限らない。
そんな混沌の時代に突入して、出口も見えないまま、40年以上が経とうとしています。
モハメド・アリの時代もボクサーの評価基準として「誰に勝ったのか?」は重要な物差しでしたが、防衛記録もまた〝信憑性のある〟物差しの一つでした。
しかし、現在では「(いつの)誰に勝ったのか?」以外に信頼できる基準は見当たらなくなってしまいました。
この「誰に勝ったのか?」にも、大きく3つの順序付けがあります。
マニー・パッキャオの業績をサンプルにして、井岡一翔と井上尚弥の現時点のレガシーを測ってみましょう。
①Hall of Fame-caliber fighters:まずは「殿堂クラス」。最も評価基準が高い関門です。文字どおり殿堂入りしたファイターに勝っているか?ということ。
パッキャオを例にとると「アントニオ・マルコ・バレラ」「エリック・モラレス」「ファン・マヌエル・マルケス」「オスカー・デラホーヤ」「ミゲール・コット」「シェーン・モズリー」の6人。
※コットの殿堂資格は来年発生ですが一発殿堂が有力視されています。そうなると6人全員が一発殿堂という豪華絢爛なリストが完成します。
ここに2005年にFighter of the Year に輝いたリッキー・ハットンを加えても差し支えないでしょう。
ハットンを加えた7人の中で重箱の隅を突く粗探しをすると、デラホーヤは前年にフロイド・メイウェザーをSDに押し込んでいるとはいえ35歳。モズリーも前年にやはりフロイド・メイウェザーをダウン寸前に追い込んだとはいえ39歳のロートルでした。
ただ、メイウェザーとの再戦を希求していたデラホーヤとの一戦は圧倒的不利の予想が立てられており普通の試合ではなかったことは忘れてはなりません。
井岡、井上ともに「一発殿堂」のハードルを外しても殿堂クラスとの対戦は1人も見当たりません。
井上が未来の殿堂入りが期待されるノニト・ドネアとの対戦経験(12ラウンド判定勝ち)がありますが、当時のドネアは8年近くもまともな相手に勝利を収めていない37歳で、敗北のたびに多くのメディアから「引退すべき」「晩節を汚すな」と忠告されていたロートルでした。
続いて②Pound For Pound fighters です。
「パックマン例」ではHall of Fame-caliber fighters で挙げた7人全員がPFPファイターで、デラホーヤとモズリーは1位経験者。
現役のPFPファイターはバレラ、モラレス、マルケス、ハットン、コット。そして、ティモシー・ブラッドリーを加えた6人。
井岡はPFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドニー・ニエテスが井岡に勝利してPFPファイター入りしています。
井上も現役PFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドネアが井上戦から7年前の2012年までPFPにランクされた経験者。フィリピーノフラッシュの最高位は3位でした。
そして、ぐっとハードルが下がって ③Former, Current, and Future world champions 、元(前)・現役・未来の世界チャンピオンとの対戦です。
ここでは「パックマン例」は当然ながら省略。さすがに書いてられません。
井岡は「現役」がオーレイドン・シスサマーチャイ、八重樫東(団体統一戦)。「前・元」がカルロス・レベコ、ジャン・ピエロ・ロペス(暫定)。「未来」がファン・エルナンデス、フェリックス・アルバラード。
7勝を挙げている一方、キャリア2敗は現役王者だったアムナット・ルエンロン、ドニー・ニエテスと強豪王者に競り負けています。
井上は「現役」がアドリアン・エルナンデス、オマール・ナルバエス、ジェイミー・マクドネル(セカンドタイトル)、エマヌエル・ロドリゲス、ノニト・ドネア。
日本では不思議と評価の高いナルバエスですが、無敗のまま2階級制覇、それぞれの階級で二桁防衛しているにもかかわらずPFP10位に接近したこともない、絵に描いたような数字だけのボクサーで、世界評価は高くありません。
「前・元」が河野公平、ファン・カルロス・パヤノ。「未来」が田口良一。
「世界王者」との星勘定は8勝0敗。内容的にも苦戦したのはドネアのみで、それでも文句無しの完勝でした。
前置きが長くなりましたが、ここでようやく「最も価値のない4階級制覇」の座を〝絶対王者〟レオ・ガメスから強奪したエイドリアン・ブローナーさんの登場です。
Former, Current, and Future world champions との成績は、試合数こそ井岡、井上とほとんど変わらない10戦ながら、内容は5勝4敗1分。
しかも勝ったのは、ダニエル・ポンセ・デレオン(ジョニゴンよりはちょっとだけ強いというレベルの穴王者)、アントニオ・デマルコ(多くのメディアから「ヘタレ」の称号が贈られたクイッター王)、ギャビン・リーズ(この人も一応アルファベット王者でしたか)、ポール・マリナッジ(穴王者だったウェルター級バージョン)、カビブ・アーラフベルディエフ(リーズ同様ジュニアウェルター級の低迷期に王者になりました)というトホホな5勝。
この5人は綺麗に揃いも揃ってPFP経験はありません。もちろん殿堂入りとかは全く無縁の「典型的な量産型世界王者」でした。
引き分けたのはジェシー・バルガス。この人も並か穴か微妙な王者です。
負けたのがマルコス・マイダナ、ショーン・ポーター、マイキー・ガルシア、パッキャオと確かに名前はすごいのですが、いずれも明白に負けただけでなく、KO負けから逃れるために勝負に出れないハートの弱さまで曝け出しました。
これほど過大評価されたボクサーはちょっと珍しいレベルです。ポンセ・デレオンに勝って「大番狂わせ」と米国メディアが騒いでいた時点で、偽物臭が漂っていましたが(HBOの採点はドロー)。
というわけで、井岡、井上とブローナーさんでは次元が違います。
ブローナーファン(日本では少数派でしょうが)の言い分がもしあるとしたら「レベルの高い中量級で戦ってる」というくらいでしょう。そのレベルの高い中量級の強豪にはきっちり負けてるのですから、それも泣き言に過ぎません。
亀田興毅はまさに〝ブローナー型〟で、この2人は、ブローナーがビッグネームと拳を交えたという違いはあるにせよ、非常によく似たキャリアを積み重ねました。
井岡、井上はメイパックと違い〝リバウンドのアドバンテージ〟を存分に発揮したとはいえ〝ブローナー型〟で階級の壁をクリアしてきたわけじゃありません。
では、殿堂クラスはもちろん、現役PFPファイターのレベルも見当たらない、彼らのキャリア、業績の現時点での評価はどうなるのでしょうか?
そんな混沌の時代に突入して、出口も見えないまま、40年以上が経とうとしています。
モハメド・アリの時代もボクサーの評価基準として「誰に勝ったのか?」は重要な物差しでしたが、防衛記録もまた〝信憑性のある〟物差しの一つでした。
しかし、現在では「(いつの)誰に勝ったのか?」以外に信頼できる基準は見当たらなくなってしまいました。
この「誰に勝ったのか?」にも、大きく3つの順序付けがあります。
マニー・パッキャオの業績をサンプルにして、井岡一翔と井上尚弥の現時点のレガシーを測ってみましょう。
①Hall of Fame-caliber fighters:まずは「殿堂クラス」。最も評価基準が高い関門です。文字どおり殿堂入りしたファイターに勝っているか?ということ。
パッキャオを例にとると「アントニオ・マルコ・バレラ」「エリック・モラレス」「ファン・マヌエル・マルケス」「オスカー・デラホーヤ」「ミゲール・コット」「シェーン・モズリー」の6人。
※コットの殿堂資格は来年発生ですが一発殿堂が有力視されています。そうなると6人全員が一発殿堂という豪華絢爛なリストが完成します。
ここに2005年にFighter of the Year に輝いたリッキー・ハットンを加えても差し支えないでしょう。
ハットンを加えた7人の中で重箱の隅を突く粗探しをすると、デラホーヤは前年にフロイド・メイウェザーをSDに押し込んでいるとはいえ35歳。モズリーも前年にやはりフロイド・メイウェザーをダウン寸前に追い込んだとはいえ39歳のロートルでした。
ただ、メイウェザーとの再戦を希求していたデラホーヤとの一戦は圧倒的不利の予想が立てられており普通の試合ではなかったことは忘れてはなりません。
井岡、井上ともに「一発殿堂」のハードルを外しても殿堂クラスとの対戦は1人も見当たりません。
井上が未来の殿堂入りが期待されるノニト・ドネアとの対戦経験(12ラウンド判定勝ち)がありますが、当時のドネアは8年近くもまともな相手に勝利を収めていない37歳で、敗北のたびに多くのメディアから「引退すべき」「晩節を汚すな」と忠告されていたロートルでした。
続いて②Pound For Pound fighters です。
「パックマン例」ではHall of Fame-caliber fighters で挙げた7人全員がPFPファイターで、デラホーヤとモズリーは1位経験者。
現役のPFPファイターはバレラ、モラレス、マルケス、ハットン、コット。そして、ティモシー・ブラッドリーを加えた6人。
井岡はPFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドニー・ニエテスが井岡に勝利してPFPファイター入りしています。
井上も現役PFPファイターとの対戦経験はありませんが、ドネアが井上戦から7年前の2012年までPFPにランクされた経験者。フィリピーノフラッシュの最高位は3位でした。
そして、ぐっとハードルが下がって ③Former, Current, and Future world champions 、元(前)・現役・未来の世界チャンピオンとの対戦です。
ここでは「パックマン例」は当然ながら省略。さすがに書いてられません。
井岡は「現役」がオーレイドン・シスサマーチャイ、八重樫東(団体統一戦)。「前・元」がカルロス・レベコ、ジャン・ピエロ・ロペス(暫定)。「未来」がファン・エルナンデス、フェリックス・アルバラード。
7勝を挙げている一方、キャリア2敗は現役王者だったアムナット・ルエンロン、ドニー・ニエテスと強豪王者に競り負けています。
井上は「現役」がアドリアン・エルナンデス、オマール・ナルバエス、ジェイミー・マクドネル(セカンドタイトル)、エマヌエル・ロドリゲス、ノニト・ドネア。
日本では不思議と評価の高いナルバエスですが、無敗のまま2階級制覇、それぞれの階級で二桁防衛しているにもかかわらずPFP10位に接近したこともない、絵に描いたような数字だけのボクサーで、世界評価は高くありません。
「前・元」が河野公平、ファン・カルロス・パヤノ。「未来」が田口良一。
「世界王者」との星勘定は8勝0敗。内容的にも苦戦したのはドネアのみで、それでも文句無しの完勝でした。
前置きが長くなりましたが、ここでようやく「最も価値のない4階級制覇」の座を〝絶対王者〟レオ・ガメスから強奪したエイドリアン・ブローナーさんの登場です。
ブローナーさんはもちろん殿堂クラスには1人も勝っていません。PFPファイターも見当たりません。
Former, Current, and Future world champions との成績は、試合数こそ井岡、井上とほとんど変わらない10戦ながら、内容は5勝4敗1分。
しかも勝ったのは、ダニエル・ポンセ・デレオン(ジョニゴンよりはちょっとだけ強いというレベルの穴王者)、アントニオ・デマルコ(多くのメディアから「ヘタレ」の称号が贈られたクイッター王)、ギャビン・リーズ(この人も一応アルファベット王者でしたか)、ポール・マリナッジ(穴王者だったウェルター級バージョン)、カビブ・アーラフベルディエフ(リーズ同様ジュニアウェルター級の低迷期に王者になりました)というトホホな5勝。
この5人は綺麗に揃いも揃ってPFP経験はありません。もちろん殿堂入りとかは全く無縁の「典型的な量産型世界王者」でした。
引き分けたのはジェシー・バルガス。この人も並か穴か微妙な王者です。
負けたのがマルコス・マイダナ、ショーン・ポーター、マイキー・ガルシア、パッキャオと確かに名前はすごいのですが、いずれも明白に負けただけでなく、KO負けから逃れるために勝負に出れないハートの弱さまで曝け出しました。
これほど過大評価されたボクサーはちょっと珍しいレベルです。ポンセ・デレオンに勝って「大番狂わせ」と米国メディアが騒いでいた時点で、偽物臭が漂っていましたが(HBOの採点はドロー)。
というわけで、井岡、井上とブローナーさんでは次元が違います。
ブローナーファン(日本では少数派でしょうが)の言い分がもしあるとしたら「レベルの高い中量級で戦ってる」というくらいでしょう。そのレベルの高い中量級の強豪にはきっちり負けてるのですから、それも泣き言に過ぎません。
亀田興毅はまさに〝ブローナー型〟で、この2人は、ブローナーがビッグネームと拳を交えたという違いはあるにせよ、非常によく似たキャリアを積み重ねました。
井岡、井上はメイパックと違い〝リバウンドのアドバンテージ〟を存分に発揮したとはいえ〝ブローナー型〟で階級の壁をクリアしてきたわけじゃありません。
では、殿堂クラスはもちろん、現役PFPファイターのレベルも見当たらない、彼らのキャリア、業績の現時点での評価はどうなるのでしょうか?
コメント
コメント一覧 (5)
2階級の世界チャンピオンをそれぞれ2ケタ防衛なんて、数字だけ見ると人間技とは思えないです。
考えれば考えるほど、ボクシングという競技は1団体が統括して公平なランク付システムを作って、ランクをもとにシステマティックに試合を組まないと、正確な選手の評価なんか出来ないと思います。
もしくは、野球のセイバーメトリクスのような、選手の力量を評価できる「擬似統括団体システム」とかですかね。
フシ穴の眼
がしました
フシ穴の眼
がしました