2019年10月

ついにあと1週間を切りました。

井上尚弥vsノニト・ドネア!

軽量級の枠を超えて全17階級で最もスペクタクルなKOシーンをデリバリーするモンスターと、8年前はPFP3位だったとはいえ劣化著しいフィリピーノ・フラッシュの対決。

月曜日のWOWOWエキサイトマッチで放映された二人のWBSSでの戦いぶりを見ると、井上を応援している立場なのにドネアが心配になってくる有様です。

日本では一般メディアの盛り上がりはいま一つですが、専門誌は井上vsドネアで沸騰しています。ボクシングファンなら誰でも知ってるドネアが日本初見参、しかも井上との団体統一戦ですから当然です。
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しかし、当たり前ですが欧米では寂しい扱いです。

英国ボクシングニューズ誌の目にはこのビッグファイトが見えないようです。

今年に入って井上を3度も表紙カバー、うち二つは単独カバーしてくれたリング誌も12月号では「ほぼ」スルー。「カネロ・アルバレスvsセルゲイ・コバレフ」の特集でバンタムとかWBSSにはページが割けないということでしょう。

まだ、英国のケースはわかります。当然です。日本のマガジンやビートもヘビー級やスーパーミドル級、ライトヘビー級、クルーザー級で一色になる号はありません。

米国のリング誌も、カネロのメガファイトに大きく傾斜するのは納得です。しかし、表紙は「パックマンvsプリンス」……このタイミングでパッキャオとハメドの特集なんて、どうでもええっちゅうねん!

単独カバーなのに中身は浅くて薄いのは許すけど、少しくらいは特集してもいいんじゃないかッ!?

 「ほぼ」スルー、と書いたのは写真無し、半ページのベタ記事で宮田有理子が熱く書いてくれているからです。

ボクマガでいつだったか忘れてしまいましたが、宮田女史の「誰もがパックマンを愛してる」というヘッドラインに素晴らしいセンスだと感銘しました。

「チケットは発売数週間で完売」「井上は日本のゴールデンタイムのバラエティ番組に引っ張りだこ」「信じられないほど単純で基本的な練習を毎日継続しているのは、超一流のバレリーナのよう」「ボクシングの指導書用で撮影に臨んだ井上を見たが、ありえないことにテイク2(撮り直し)無しで一発採用だった」 …小さなスペースに熱く書き込んでくれています。


話もどって、月曜日のWOWOWは録画して今みたのですが、重ね重ねドネアが心配です。ステフォン・ヤングのパンチをあんなにもらうなんて、あの試合を見たときも大丈夫か?と思いましたが、井上の試合と比べるように見せられると、この試合を誰もミスマッチと呼ばないのが不思議でなりません。

ドネアは打たれ強いだけに、我慢して我慢して…の凄惨な展開は勘弁してほしいところです。。。。 
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ノニト・ドネアが最も輝いたのが、2011年であることに異論はありません。

個人的には、ビック・ダルチニアンを斬り倒した2007年だと確信していますが、多くのボクシングファンにとってはフェルナンド・モンティエルを予告通りに2ラウンドで葬った2011年になるのでしょう。

衝撃度や相手のレベル、リング内でのあらゆる側面では「2007年」ですが、HBOで初めてメインを張った「2011年」がフィリピーノ・フラッシュの光度が最高点に達したと見るのが正解で文句はありません。

今夜は、そのモンティエル戦(2011年2月19日)直後の米国Yahoo!スポーツから。
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TOP FIVE FIGHTS FOR NONITO DONAIRE 〜 これからドネアが戦うべき五人の強敵〜

「フィリピンの閃光」はモンティエル戦を驚くほどあっけなく、簡単に終わらせた。そして今、求められているのは新たなダンスパートナーだ。
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①ShowTimeのバンタム級トーナメント決勝(ジョゼフ・アグベコvsアブネル・マレス)の勝者。


対立王者と戦ってUndisputed Champion を目指すのは最も道理に適った路線だ。

アグベコはドネアに匹敵するプレッシャーファイター、マレスは完成度の高いボクサーパンチャー。モンティエルとはレベルの違う二人、どちらが相手でもこの階級最強決定戦の一つになる。

アグベコなら50:50の戦い。

マレスならドネア有利だろうが、オスカー・デラホーヤは秘蔵っ子を危険に晒す交渉にはつかないだろう。


②ファン・マヌエル・ロペス

「ロペス相手じゃドネアも分が悪い。ありえない」。

そう笑う前に、モンティエル戦後のドネア陣営の言葉を思い出せ。

「バンタムではあと1、2試合しか戦わない。122ポンド(ジュニアフェザー級)へ上げる。最終目標は135ポンド(ライト級)だ」。

ライトは笑うところだが、ジュニアフェザーは現実だ。

軽量級にはスターはいないが、極めて稀だが人気者が出現することがある。ファンマはそんな奇跡の一人だ。高い実力を評価されながら不人気に苦しむドネアにとって、ロペスはこれ以上ないご馳走。

しかも、二人ともトップランク傘下。マッチメイクには何の障害もないはずだが、ドネアを引き抜こうとしたGBPとトップランクは係争中。ドネア陣営もファンマとの対戦は回避しそうで、実現性は低い。

それでも、ファン目線では至高のスペクタクル。


③アンセルモ・モレノ

8年間無敗のバンタム級王者だが、ドネア以上に人気がないばかりか、過小評価されている。今のモレノに勝てるバンタムはおそらくいない。

ドネアがズルズルとポイントを失う展開も十分に考えられる。

まだ25歳のパナマ人は、今がまさに全盛期。

ドネアの火力がモレノの装甲を打ち破れるのか?それともモレノがドネアにボクシングのレッスンを施すのか?

実現したら、コアなファンにとってはヨダレが止まらないカード。


④亀田興毅

軽量級にスターはいない、というのは米国の話。日本の事情は全く異なる。

信じられないかもしれないが、亀田は1試合100万ドル以上を普通に稼ぐ Mega-Star。米国のウェルター、ミドルは、日本ではフライ、バンタムなのだ。

米国ではコアなファンでないと亀田を知らないだろうが、彼は人口1億人の経済大国で誰もが知ってるプロスポーツ選手。彼の試合の視聴者数はHBOのどの試合よりも遥かに多い。

もし、亀田戦が実現したら軽量級のメッカ後楽園ホールでは器は小さすぎるだろう。マイク・タイソンが2度戦ったすぐ隣の巨大なタマゴ(東京ドーム)も夢の舞台ではない。

興行的な面(リターン)から見るとドネアにとって亀田はファンマをも大きく上回り、安全面(リスク)はファンマやモレノよりもずっと小さい。

ドネアはもちろん、世界中の軽量級ボクサーにとって、これ以上のダンスパートナーは存在しない。


⑤ギレルモ・リゴンドー

まだ7試合しか戦っていない〝キューバのジャッカル〟が122ポンド最強であることは、好き嫌いは別にして認めるしかないだろう。

とにかく恐るべき手練だ。熟練工の仕事が見ていて地味で退屈なのは、ボクシングに限ったことではない。

しかし、リゴンドーがプロボクシングのリングを熟練工の作業場と勘違いしているのだとしたら、それはやっぱり大間違いだ。

そして、亀田とは対極にリゴンドーは完璧なまでに強いが人気は全くない、まさに亀田の裏返し。

そのことは、ドネアにとってハイリスク・ローリターンの見本であることを意味する。ファンだけでなく、選手にも敬遠されるのがジャッカルだ。

ただ、リゴンドーは大きな試合に飢えている。そして、ドネアも。

マッチメイク上は問題はないが、ボブ・アラムがやらせるとしたらリゴンドーが劣化してからか、GBPに寝返ろうとした裏切り者ドネアへのペナルティとしてだろう。 
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南アフリカ、きっと必ず優勝してくれるぜーーー!




昨年、札幌勤務から東京に戻されたときは、いやでした。今でもそうです。

今更、気づくことじゃないですが、住むのに気持ちのいい街ってあります。それは東京や大阪の近郊ではありません。

「札幌時代」の東京出張で定宿にしてたのは四ツ谷〜赤坂見附のホテルでした。山手線のど真ん中、交通至便というのがその理由でしたが、私のとっては酒飲んで寝る街としては物足りなくて…。

それでも真田堀(江戸城の外堀)の桜並木は、春になるとちょっとした絶景で、堀下の歩道にピンクの絨毯が敷き詰められるのは、ハッとする美しさでした。
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真田堀に沿うように上智大学の敷地があるのですが、実はこの「1号館」も美しい赤煉瓦。

出張のたびに目にしてたのに、そこまで赤煉瓦に関心がなかったせいで、真田堀を降りてまじまじ見るのは初めてでした。よく見たら、明らかにスクラッチ煉瓦ですが、見た目が素晴らしい!

いつ、誰に建てられたのか、これから加筆していきます。

そんなことより、ここにはワンタン麺の聖地もあるのです。
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大声援を送った南アフリカがウェールズから逃げ切ったことで、けっこう消耗したので、、、もう寝ます。続きはまた書きます。
 
赤煉瓦もワンタン麺も、大好きだー! 
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いよいよあと10日に迫りました。

現時点で、リング誌とESPNで、勝敗予想などのこの試合に関する記事は見当たりませんが、今がプライムタイムの井上尚弥が圧倒的に有利であることは間違いありません。

そして、36歳のノニト・ドネアがキャリア最後のページをめくろうとしているのも間違いありません。

直近10試合を振り返っても、26歳の井上は全勝9KOで内容的にも全く不安要素を露呈していません。

一方のドネアは7勝5KO3敗。前戦のステフォン・ヤングは左フック一閃で全てを清算しましたが、それまでの展開は被弾も目立ち、もたついた印象は拭えませんでした。

欧米で関心の低いバンタム級だけにオッズは井上1/10(1.1倍)、ドネア11/2(6.5倍)のスタートから微動だにしないままですが、井上勝利は鉄板です。
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今夜のテーマはズバリ、井上に死角はあるのか?

どんなに完璧に見えても、欠点のないボクサーなど存在しません。井上にも魔法のガウンで隠された欠点がいくつもあるはずです。

もちろん、現時点のドネアに「そこ」を突ける能力があるのかどうかは、また別問題ですが。


①クロスレンジの戦いに不安はないか?

「井上はインファイトが苦手」。

そう囁かれた時期もあり、本人も意識していたことはリカルド・ロドリゲス戦で「クロスレンジでも上手く戦えた」と手応えを語ったように明らかです。

とはいえ、それは世界水準の実力が怪しいリカルドだったからです。

しかし、もう一人のロドリゲス、世界レベルのマニー・ロドリゲスに対しても最後はクロスレンジのパンチの交換で綺麗に倒して見せました。

ただ、2ラウンドのあのシーン。マニーの方が力みかえって大振りになっていました。あれだけモーションが大きいと誰に取ってもオーダーメイドです。

それでも、1ラウンドはコンパクトな攻めで井上をロープに追い詰めたマニーが、あそこまで雑になってしまった最大の原因は2ラウンドから井上がプレッシャーを強めたからに他なりません。

モンスターの 圧 に予想以上に気の弱さを露呈したマニーと同じように、ドネアもパニックに陥るのでしょうか?

クロスレンジで巧みにスイッチするドネアの左はリードであるとは限らない、変幻自在の妖剣です。

そんなこと、井上は百も承知でしょう。

ヤング戦でも、あれほど不細工な展開にはまっていたのに最後の左だけは絶妙の居合いで斬り捨てて見せました。

しかし、井上とヤングではステージが何段階も違います。

ドネアの左は要注意、それは当たり前です。しかし、自慢の妖剣が錆び付いているのもまた事実です。あの左が炸裂する前に、もっと劇的に試合が終わる可能性の方が何倍も高いでしょう。

マニーとの第1ラウンド、井上はどれだけ余裕を持ってロープまで下がったのか?

ドネアのプレッシャーが、過大評価のプエルトリコ人よりも分厚いことは間違いありません。

井上が「最初は固かった」と振り返ったマニー戦と同じように、立ち上がりの動きが悪いようならドネアが主導権を握る可能性もあります。

それでも、今のドネアの左は序盤ではヒットしないでしょう。


②ドネアのタフネスは井上を追い詰めるか?

井上のキャリアの中で今のドネアが最強かどうかは極めて怪しいですが、最強打者であることは疑いようがありません。

そして、やはり間違いなく打たれ強さも過去最高の相手でしょう。2階級上のフェザー級トップ戦線で戦ったドネアにとって井上のパワーは単純な脅威にはなりません。

「ニコラス・ウォータースのパワーとフィジカルを想定していれば大きく裏切られることはない」というドネアの考えに大きなズレはないでしょう。

ただ、井上の際立つところはタイミングです。ファン・カルロス・パヤノを失神させた「戦慄のジャブクロス」(英国ボクシングニューズ誌)も、マニーを砕いた「出所を隠したパンチ」(リング誌)もパワーに依存したフィニッシュブローではありませんでした。

しかし、やはり、ドネアは彼らとは違います。

井上にとってドネアが大きな重戦車に感じるようなら好き放題のパフォーマンスは出来ないでしょう。

…でも。その展開になったとしても、フェザー級で戦った装甲を井上に一枚一枚削り落とされたドネアが終盤ストップされるシーンが目に浮かびます。


③井上の顎は何で出来ているのか?

そのキャリアを一度も深刻なトラブルに見舞われずに終えるボクサーもいます。エドウィン・バレロのように。

しかし、バレロが打たれ弱い、防御に大きな欠陥があったことは、顎を突き出して口を開けたまま攻撃する癖を見れば明らかです。

爆発的に見えたパンチ力も、世界的には凡庸なアントニオ・デマルコが「決定的なダメージはなかったけど、8ラウンド終了の採点を聞いて(逆転は難しいと)棄権した。今思えば、最後まで戦えたのは明らかだったから連続KOは止めておくべきだったかも」というように。

井上は今なお、絞った段階から約10kgも減量。そして、あの顎の細さ。「フェザー級の世界ランカー相手にスパーリングでも打たれ強さを証明」なんて話は眉唾以下です。

井上の顎の素材は、マービン・ハグラーやフリオ・セサール・チャベス、エリック・モラレスのような鋼鉄ではないでしょう。

井上がその顎を撃ち抜かれたとき。

トーマス・ハーンズやドナルド・カリーのように、クリーンヒット1発だけで雪崩を打って楼閣が崩れることは十分に想像できます。

実際に、今の井上は「打たれ強い」と言われていたハーンズやカリーよりも説得力は脆弱です。

井上が「打たれ強い」とする根拠がもしあるとしたら、それは「一度も叩かれてない」から、それだけです。


 
④井上にBプランはあるか? 

井上はデビッド・カルモナ戦などで、試合中に拳を負傷したことで戦略を転換、Bプランで戦いました。

しかし、それは追い詰められての作戦変更ではありません。「狩り方」を変更しただけです。

互角の勝負。井上にギリギリの土俵際で、別の土俵に相手を引きずり込むモハメド・アリやシュガー・レイ・レナードのような芸当が出来るとは思えません。

それでもフロイド・メイウェザーがシェーン・モズリーに一撃を喰らってから一気に盛り返したように、マニー・パッキャオがアントニオ・マルガリートのボディにくの字になりながら完璧なアウトボクシングでそのラウンドを支配したような、引き出しがあるかどうか?

これまでの対戦相手の質があまりにも低いだけに、その不安は常につきまといます。しかも、今回のドネアは7年以上前に西岡利晃と対戦したときに「明らかに劣化している」(リング誌) 「いつものドネアではなかった」( ESPN)と下り坂だったボクサーです。

今回も、本当の引き出しを見せないまま終わる可能性が高いかもしれません。 



⑤ Styls makes Fight  井上にとってドネアはナンバー(相性の悪いジョーカー)か?

スポーツはレベルが上がれば上がるほど、勝敗の分かれ目は微妙な要素が支配します。中でも相性はシュガー・レイ・ロビンソンやアリ、パッキャオですらナンバーを持っていました。

もはや、誰も信じないでしょうがレナードにとってハーンズも100%明らかにナンバーでした。

しかし、そのカードはめくられるまで誰もわかりません。パッキャオに対するファン・マヌエル・マルケスがナンバーであることに気づくのに、メディアもファンもどれだけの時間がかかったことか。

海外ではまだ大きく取り上げられていない(おそらくこのままチラッと特集される程度でしょう)まま、試合当日を迎えてしまいますが、ボクシングマニアの多くは「井上にとって好戦的なドネアはオーダーメイド」と考えられています。

もし、ドネアがスタイルが井上のジョーカー札を持っているとしたら…考えたくありませんが、試合は誰も予想できない展開で進むでしょう。



▶︎▶︎▶︎もし①〜⑤の不安要素が全て現実となって11月7日のリングに噴き出してしまうと、井上は早いラウンドで崩れ落ちるでしょう。

しかし「常識的」にはその可能性よりも劣化が進行するドネアの危険信号が当日のリングで赤ランプを点滅させてレフェリーが止めるーーそれが最も可能性の高いエンディングです。

ただ、私たちボクシングファンは「常識的」という言葉は使い慣れていません。「常識的」という言葉があまりにもあっけなく粉砕される光景を、今まで何度目撃してきたでしょうか。

何もかも仕組まれたリングでも、ゴングが鳴るとリングの外では何も出来ません。

リングの中で起きない出来事など何もありません。

それは奇しくもドネアの偉大な先輩が、世界中のメディアとボクシングファンに実践をもって思い知らせた残酷なルールです。

In the Ring…Anything Happen

リングの中で起きないことなどなど、何一つない。

日本のボクシングファンが心配すべきは井上の実力ではありません。「常識的に」考えると敗北はありえません。 

In the Ring…Anything Happen…それだけ、です。

井上の対戦相手で「1発だけは気をつけろ!」なんて危険な相手は、これまで一人もいませんでした。

それを起こすことが出来る拳を持っている歴戦の強者が、井上尚弥という堅牢なダムに蟻の一穴を開ける武器を自分が持っていることを識っているドネアが「たまアリ」のリングに上がるのです。

会場に行けない私が言うのもなんですが、当日は不思議な雰囲気に包まれるはずです。

井上の「敵」であるはずのドネアの入場に2万人は歓声と拍手で迎えるでしょう。当たり前です。この国ではボクシングとは軽量級です。

その軽量級で、シュガー・レイ・ロビンソン賞=年間最高選手を(パッキャオ例外で)アジアに初めてもたらし、PFPで3位まで極めたドネアは、日本のボクシングファンの希望でした。

サッカーファンがブラジル代表を、ラグビーファンがオールブラックスを迎えるような、純粋なリスペクトの声をドネアに届けるでしょう。

それが異様な空気を醸成するのは、間違いありません。

そして、アンダーカードでは拓真も大勝負を打ちます。

彼らの職業はボクサーです、ピュギリストです。

本来なら、兄弟でも叩きのめす世界です。

クリチコ兄弟の「兄弟だからごめんね」なんて言い訳は、実は優しい日本人にしか通用しません。ただ、個人的にはその理屈は通用します。

リング誌やESPNは「彼らは世界一を決めるためにそのスポーツを選んだアスリート。家族の愛情をリングに持ち込むなら、どうしてこのスポーツを選んだんだ?」という苛立ちを理解するには、私がこのスポーツに耽溺した30年なんて時間は短すぎます。

それに嫌悪感を覚えるとしたら、もしかしたらそれはあなたがこのスポーツを、本当に愛していないのかもしれません。

私も、そうです、このスポーツがどうしようもなく嫌いになることが、今まで何度もありました。

なんだろう、私は大学で公式戦は1試合しか戦ってません。どう表現していいかわかりませんが、野球と陸上しかできない私が、やっぱり最も感動したのはボクシングで…。

これ書いてるのは、横浜国際から自転車で河川敷、ラグビーって純粋な感動でいいですよね、あの熱狂は野球やサッカーでは作れない。 

こんなの不謹慎ですが、ラグビーW杯で導入された脳震盪の選手へのサポート体制、素晴らしいです。

それでも、ボクシングと同根です。ラグビーも「脳震盪」前提のスポーツです。今大会では深刻な事故はなかったのでしょうか?

このブログでも何度も問いかけさせていただいています。

脳震盪が当たり前に起きるスポーツは禁止にするか、ルールの大幅変更をすべきでしょうか?

ラグビーと違い、ボクシングをはじめとした打撃系格闘技は、故意に脳震盪を狙うから禁止すべきなのでしょうか?
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ネバダ州 リノ・スパークス コンベンションセンター

WBC米大陸/WBO北米バンタム級タイトルマッチ:王者ジョシュ・グリーアvs挑戦者アントニオ・ニエベス

2016年から16連勝で世界戦線を伺うグリーアに、井上尚弥の前に試合を投げ出した銀行家が挑戦。

ニエベスは井上戦後は雑魚相手に2連勝と復調していますが、オッズは8倍(グリーア1.67倍)で咬ませ犬扱い。それでも意地を見せてくれました。

4ラウンドにはグリーアをロープに詰めるシーンも作りますが、決定打は打てず。それでも10ラウンドにダウン(ビデオでは明らかなラビットパンチ)も奪いました。

しかし、判定は0−3。96−93/95−94*2。
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625発のパンチを放ち126発を着弾(20%)したニエベスでしたが、グリーアの精度(460中154着弾=33%)が試合をコントロールしました。

「トップランクが用意した相手を倒すのが仕事。次は誰でも良い。もちろん世界戦なら大歓迎」(グリーア)。

「チャンスはあったが攻めきれなかった。後半はボディが効いて力が入らなかった」(ニエベス)。

グリーアの報酬は4万ドル、アントニオ・ニエベス3万ドル。ともにキャリアハイ。





メインイベント(WBOフェザー級王者決定戦)に出場するシャクール・スティーブンソンのファイトマネーは35万ドル、ジョエット・ゴンザレス20万ドル。こちらも共にキャリアハイ。

こちらは予想以上のワンサイドゲーム。ゴンザレスが何もできないまま前半6ラウンドが経過。誰が採点しても60−54。

スティーブンソンは上手い、速い。でも…。まだ、22歳。Fearless(怖いもの知らず)の異名を納得させるには、今日の相手は難しい、です。

試合前は威勢の良かったゴンザレスが取ったあのは7ラウンドだけ。119−109。それ以外のスコアはありえません。 
Punch Stats
PUNCHESSTEVENSONGONZALEZ
Total landed12153
Total thrown510494
Percent24%11%
Jabs landed334
Jabs thrown304128
Percent11%3%
Power landed8849
Power thrown206366
Percent43%13%
-- Courtesy of CompuBox
パンチの着弾数も的中率もスティーブンソンが大きく上回りました。

フェザー級にはWBA王者レオ・サンタクルス、WBCゲイリー・ラッセルJr.、 IBFジョシュ・ウォリントン、WBAセカンド王者シュー・ツァンが乱立しています。シュー・ツァンが一枚落ちますが、残る3人との対戦は面白そうです。

ボブ・アラムは「 フランク・ウォーレンと交渉に入る。ロンドン開催で問題ない」とウォリントン戦にやる気満々です。
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日本時間10月27日未明。英国ロンドン:O2アリーナ。

WBSSジュニアウェルター級トーナメント決勝は、またもや Undisputed Champion 誕生には至りませんが、無敗のアルファベット王者2人が激突します。

試合開始ゴングまであと約2時間。

WBAスーパー/WBCダイアモンド王者レジス・プログレイスvsIBF王者ジョシュ・テイラー

BOXING-SUPERLIGHTWEIGHT-PROGRAIS-TAYLOR

オッズは、Rougarou(ルーガルー=カナダ系フランス人の間に伝わる伝説上の怪物)の異名をとるプログレイスが1.67倍、The Tartan Tornado(タータンチェックの竜巻)テイラーが2.25倍と、アウエーの米国人がやや有利。

前日計量ではルーガルーがリミット一杯の140ポンド。タータン・トルネードは139.5ポンド。

英国で試合を生中継するスカイスポーツのインタビューに、30歳のプログレイスは「減量苦だと言われたがそれはデマだ。調整は完璧。テイラーのコーナーはタオルを投げる用意をしておけ」と豪語。

迎え撃つ地元(生まれはスコットランド)の28歳のテイラーは「減量は簡単だった。力がみなぎっている。プログレイスは血色が悪かったね。彼は(狼が怯えたときにするように)両足に尻尾を挟んで米国に逃げ帰ることになる」と応酬しました。

2人とも今がプライムタイム。テレンス・クロフォードが去って液状化した140ポンドですが、この勝者がWBC/WBO王者ホセ・ラミレスとの4団体完全統一戦に駒をすすめるのか?

狼の化身は身長173㎝/リーチ170㎝に対して、タータンの竜巻は178㎝/177㎝。フレームはスコッチが明らかに上回っていますが、プログレイスは長身選手と戦うことには慣れています。

2人とも無敗で、サウスポーのボクサーファイター。相性が大きく試合展開を左右しそうな要素がふんだんに盛り込まれています。



試合開始ゴングまであと2時間を切りました。注目の一戦です!



テイラー MD(114−114/115-113/117-112)プログレイス

初回のにテイラーが決めた左フック。プログレイスはあれで戸惑ったんじゃないでしょうか。

「もっと競ったスコアのはず」。判定に不満を漏らすルーガルーは、最後までリズムを掴めませんでした。

完全アウエーです。「競った」内容では、ホームの選手に判定がなびくのは当然です。とはいえ、良い試合でした。

テイラーの右リードは、ジャブもフックも洗練されていました。これも初回の左で、プログレイスの警戒レベルを引き上げた結果です。
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An electrifying atmosphere, elite-level skills, incredible ebb and flow – it was boxing at its best.

異様な盛り上がりの中で、高等技術が寄せては引く波のように交換された。これぞボクシング。


後半はテイラーの右目がシャッターを下ろし始め、11ラウンドには出血も。30歳の米国人は挽回に全力を尽くしましたが、あと一歩及びませんでした。

〝小さな番狂わせ〟を起こしたテイラーはスコットランド出身のボクサーとして、WBCライト級王者ケン・ブキャナン(1971年:WBA王者ルーベン・ナバーロに判定勝ち)以来、史上6人目の団体統一王者に。

 WBC/WBO王者ホセ・ラミレスとの完全統一戦が待たれます。


▼以下、テイラーの勝利者インタビュー。

「最高の勝利だ。エジンバラに帰ってケンに報告したい。ケンは昔から応援してくれていた。チャンプ!私もあなたと同じことをやりましたよ!ありがとう!」。

「正真正銘の王者の証、リング誌ベルトは夢だった。アリ杯にAとC(ダイアモンド)のベルトと一緒に、恋人と一緒に住む予定の新居で最初に持ち込む新しい家財になるよ」。
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タイトル承認料を稼ぐこと、ベルトを販売すること。

それが生業の承認団体に対して「これ以上珍妙なタイトルを作るな!」と怒っても仕方がありません。タイトルとベルトをせっせと作るのが彼らの仕事なのですから、ハイエナに「死肉を食うな」というのと同じです。

WBCは、カネロ・アルバレスに続いてワシル・ロマチェンコも「フランチャイズ チャンピオン」に〝格上げ〟すると発表しました。

世界中のメディアがこの愚行を一斉に非難しています。当然です。

現在、WBCが「世界王者」 と認定しているタイトルは、承認料の安い順に「ユース」「シルバー」「interim(暫定)」「フル(通常の王位)」「Recess(休養)」「Emeritus (名誉)」「ダイアモンド」が存在します。

マニー・パッキャオvsミゲール・コットを起源とするダイアモンドは「ビッグネームが覇を競うメガファイト」にステイクされていますが、このベクトルで「ダイアモンドを超越する」のが「シンコ・デ・マヨ ベルト」と「マヤ ベルト」です。
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「制作費が最も高額なのはシンコ・デ・マヤ ベルト」だそうですが、そんなもんどーでもええわッ!!!

彼らは「もう何を言ってるのかわからない」状態です。特にWBAとWBCは、ファンやメディアとまともなコミュニケーションが出来ない段階に入っています。

「フランチャイズ」については「エリートレベルを極めたファイターに贈られる」としています。具体的には「複数階級制覇と団体統一を成し遂げ、PFPでも5位以内」が目安だそうです。

嫌な予感がしてきますね。

井上尚弥はすべての要件を満たしています。11月7日に勝利するとWBC作成のWBSSチャンピオンベルトも買わされることになります。まさか、もう1本売りつける気かもしれません。

そうなると、西岡利晃が「タイソンやメイウェザーに並んだ」と名誉王者に認定されたときのように、日本のメディアは「カネロとロマチェンコと井上しか持っていない最高評価のベルト」とどこまでもポジティブに報道するんでしょう。

リング誌は「フランチャイズの意味がわからない。我々も三種類のベルトを用意しているが、それは世界王者とPFP、Fighter of the Year (年間最高選手)で世界王者以外の二つはリングの中で獲得したり防衛するものではない、記念品。そして3本とも無償であることが腐敗した承認団体と全く異なる」と批判しています。

リング誌のPFPとFighter of the Year のベルトは、王者ベルト以上に価値があると思いますが、フランチャイズやらシンコ・デ・マヨはいただけません。
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モハメド・アリがロンドンのハイベリーに戻ってきました。

もちろん、天国からではありません。
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WBSSジュニアウェルター級の決勝戦(ジョシュ・テイラーvsレジス・プログレイス)が、この地のO2アリーナで行われるのです。

アリはその絢爛のキャリアで、ロンドンで3度も戦っています。

そのうちの2試合は、英国の英雄ヘンリー・クーパーと拳を交えたものです。

最初の対決は1963年6月18日。ウェンブリースタジアムに詰めかけた3万5000人の大観衆は、5ラウンドTKOに散った英雄に涙を流しました。

2度目は3年後。アーセナル・フットボールクラブの元本拠地。

WBA&WBCヘビー級タイトルマッチ、前回を大きく上回る4万6000人の観客は当時の英国ボクシングの記録でした。

英国民は不安な気持ちで試合開始ゴングを待っていましたが、クーパーは大番狂わせを確信していました。

初回、クーパーがThe Greatest からダウンを奪うとロンドンが英国が沸騰します。しかし、目尻を切ったクーパーは6ラウンドで試合を止められてしまいました。


明日のWBSS決勝で争われるのは、モハメド・アリ杯。

カレ・ザウアラントは「アリの名を冠したトロフィーを争う試合に関われることに大変な名誉を感じている。このトロフィーこそが階級最強の証明だ。シーズン1のオレクサンダー・ウシクとカラム・スミスはその名前を永遠の歴史に刻んだ」と風呂敷を広げています。

プログレイスは米国から遠路、ロンドンにやって来ました。そう、半世紀以上前のアリのように。

この試合にはアリ杯に加えて、リング誌タイトル、WBAとIBFのベルトもかかります。
 
アリ杯は、生前のモハメド・アリから正式の許可を取った優勝杯。確かに素晴らしいデザインです。

「FIFAワールドカップもデザインしたシルビオ・ガザニガが製作した最強の証明」(WBSS)。

完全統一王者はオレクサンダー・ウシクしかいない現状では「最強の証明」というのは誇大広告です。

それでも、11月7日が楽しみです。 

さすがに、これだけゴタゴタが続くと、シーズン3は発表されていません。空中分解の気配ですが、井上尚弥vsノニト・ドネアを実現してくれたことには感謝しかありません。

ありがとうWBSS。そして、さようならWBSS。 
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フロッグ・ジャンプ。階級またぎの離れ業は、自己顕示欲をジャンピングボードにしてより高く飛びます。

この偉人もそうでした。歴代PFPの豪奢な宴会場で、シュガー・レイ・ロビンソンのすぐ隣に席を用意されるヘンリー・アームストロングです。
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【二匹目の偉大なカエル】ヘンリー・アームストロング(米国)

この画像はリング誌が特集した「アルファベット26文字」それぞれを頭文字に持つボクサーを一人選ぶというお遊び企画から、です。

複数階級制覇に焦点を絞ったものではありませんが、選考基準はただ一つ「ボクサーとしてどれほど偉大だったか」です。

頭文字Aは誰でもモハメド・アリを思い浮かべるでしょうが、リング誌が選んだのはアームストロング。

リングを超越した社会的な影響力まで考慮するとアリ以外にはありえません。しかし「ボクサーとしてどちらが偉大か?」、つまりリングの中だけに絞り込んで考えると逆に「アームストロング以外にありえない」のです。

身長166㎝/リーチ170㎝。これはマニー・パッキャオのサイズと全く同じです。

1930年代、8階級しかなかった時代にフェザー級→ウェルター級→ライト級の順にわずか10ヶ月で三階級制覇、それも同時保持の離れ業をやってのけた Homicide Hank 。

2000年代末にやはりジュニアライト級→ライト級→ウェルター級でやはりわずか10ヶ月でビッグネームをことごとく打ち倒したPacman。

二人は、ともに抑えようのない自己顕示欲の塊でしたが、そのステイタスには大きな差がありました。

当時でパッキャオはすでにPFP1位として世界最高評価を獲得、その人気も第一集団でした。

しかし、PFPのような生っちょろい脳内妄想など影も姿もない30年代はヘビー級の時代、アームストロングには折悪くジョー・ルイスが君臨していたのです。

10ヶ月で三階級制覇はルイスに叩きつけた〝挑戦状〟でした。

90年後の現在、PFP評価でアームストロングの上にルイスをランキングする専門家は極めて少数派です。

Homicide Hankの挑戦は間違いなく大成功を収めました。

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アームストロングはミシシッピー州コロンバスの貧しい小作農の家庭に生まれました。15人兄弟の11番目で、本名はヘンリー・メロディ・ジャクソンJr.。

家族は、メロディが幼いときにミズーリ州セントルイスに引っ越します。「引っ越し」というと、真実が伝わりにくいかもしれません。それは、極貧の南部の黒人たちが、北部の工業地帯に職を求める〝生きるための〟民族大移動でした。

黒人専門の小学校・中学校に通い、学業でも優秀な成績を収めますが、当時は人種差別が認められていた時代で、やはり折悪くメロディが17歳のときに大恐慌が起きてしまいます。

工事現場で働きづめのメロディは、疲弊して家路につく道端に捨てられた新聞を見つけます。

1929年8月29日、ニューヨーク・ポログラウンズで行われた122ポンド12回戦。キッド・チョコレートがアル・シンガー チョコレートをスプリットデジションで下した試合が報じられていました。

メロディが目を瞠ったのはチョコレートの報酬です。自分たちが何年かけても手にできない報酬を、同じ黒人のチョコレートがたった1試合で手にしていたのです。

パインストリートに黒人でもボクシングが習えるジムがあると聞き、すぐに飛び込みました。そこで彼の才能を見抜いた年長のボクサーと運命的な出会いが待っていました。

何も教えないでサンドバッグを打たせると、その破壊力にまず驚きました。基本を教えてスパーリングをさせると、飲み込みの早さと怖がらないハートに「普通じゃない」と確信しました。

そして激しいラウンドで息が上がっても、60秒間のインタバルで心拍数は元通りになるのです。メロディの心拍数が平時まで下がるのを計った年長のボクサーは計り間違いだと何度も確認しました。

激しく3分間のスパーリングを終えたボクサーが60秒でどこまで回復するかを計っているです。誰だってそうしたでしょう。60秒で平時まで戻るのも驚きですが、メロディはさらに普通ではありませんでした。

60秒休んで、次のラウンドに立ち上がったときの心拍数は29だったのです。

アマチュアで3試合をこなして1931年に、メロディ・ジャクソンとしてプロデビュー。ファイトマネーは35ドルでした。世界大恐慌の最中、デビュー戦で受け取る報酬が35ドルというのはとんでもなく高額に思えます。

メロディがインスパイアされた試合でチョコレートが得た報酬も7万5000ドル!という記述もBoxRecなどで散見されますが、俄かに信じられません。

1920年代は大恐慌までバブルを謳歌していたとはいえ、現在の軽量級ボクサーでも一部の世界王者でないと手に出来ない金額です。何より、貨幣価値が現代とは全く違うはずなのに。

プロボクサーが職業として成立していた時代は確かにあったのです。

そのデビュー戦でメロディは、まさかの3ラウンドKO負け。トレーナーについた年長ボクサーは「良いところが何一つ出せなかった」と頭を抱えました。

プロ2戦目を判定で拾うと、二人はより大きな試合を求めてロスアンゼルスに向かいます。ロスを選んだのは、もう一つ理由がありました。

1932年に開催されるロスアンゼルス五輪に出場するためです。

もちろん、すでにプロで公式戦を戦っているメロディは五輪出場資格に抵触する可能性大です。

予選会のエントリー会場でメロディはトレーナーを指差しながら「私はハリー・アームストロングの弟、ヘンリー・アームストロングだ」と語り、その名で書類にサインをしました。

それにしても、なんというおおらかな時代でしょう。

五輪にエントリーするのに本人証明の書類等は必要なかったのでしょうか?

I don't know how many people know  that  Armsyrong had one of the most-amazing streaks in history in 1937 and 1938 ー 37straight victories, with 35 knockouts. And that wasn't to start his career. He fought some of the best fighters of the era during that period.


バート・シュガーは「アームストロングの偉大さは10ヶ月で三階級制覇をやってのけたことでも、ウェルター級で19度の防衛記録を持っていることでもない」と切り捨てます。

「全盛期の1937〜38年に37連勝(35KO)をマークしたことだ。しかも、バーニー・ロスやルー・アンバースらその時代を代表する強豪をことごとく倒したのだ」。
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お読みいただいた方のコメントから触発された企画です。

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「散歩のついでに富士山を登ったヤツはいない」。

大好きなマンガ「浮浪雲」の主人公、夢屋の頭が口にした名言です。

もしかしたら別の正しい出典があるのかもしれませんが、私の中では浮浪雲の放った格言です。

お気に入りの言葉なので、このブログの中でも「3階級制覇なんて今や散歩のついで」みたいに、きっとあちこち使っちゃっていると思います。



とはいっても、団体と階級が癌細胞のように増殖している現代でも、世界王者になるのは大変な努力と運が必要です。

自分の子供や知り合いが世界王者になったら、歓喜に踊り上がり乱舞します。

ただ、1人のファンとして見る場合、やはり冷徹な眼で見ざるをえません。

ただアルファベット団体の軽量級世界王者になるだけではもちろん、半年に1人も誕生する3階級制覇王者を、手放しで評価することはどうしても出来ません。

いまのボクシングは、誰に勝ったのか?それが全てです。

複数階級制覇…数字が持つ意味は軽くなる一方ですが、〝散歩にのついで〟では飽き足らず、確かな意思を持って複数階級制覇の富士山を登ったグレートたちがいくつもの歴史を刻んできました。

本来、Frog Jump=フロッグジャンプは〝階級飛ばし〟を指す言葉ですが、ここではそれにこだわらず、ボクシングファンの度肝を抜いた複数階級制覇を紹介します。




複数階級制覇の歴史書を紐解けば、四大文明を紹介するがごとく、最初にボブ・フィッツモンズの偉業が記されています。

オリジナル8(最初の8階級)ですら形成されていなかった19世紀末にミドル級王者からヘビー級を制したルビー(そばかす)は、プライドの塊のようなファイターでした。

「どうせヘビー級に勝てないからミドル級でやってるんでしょ」。

減量ボクサーが聞こえなかったフリをする揶揄を完全に黙らせる方法がたった一つしかないことを、誇り高いルビーは知っていたのです。

1897年3月17日、ジェームス・J・コーベットを14ラウンドKOで下して「最高難易度の二階級制覇」に成功。

フィッツモンズが操った必殺の「ソーラー・プレキサス・ブロー」は、相手が息を吐いた瞬間にみぞおちを狙う凶器の拳でした。

「ガードを固められるとみぞおちは打てない。息を吸って固めた腹筋に打っても効かせることは出来ない。だから、相手の動きと呼吸に耳をすますのだ。相手が息を吸う、息を吐く…その動きと呼吸の間隙を突き刺すのだ」。

こんな感覚を持ったフィッツモンズが現代のボクサーに劣っている点があるとしたら、それは些末な小手先のテクニックだけでしょう。

ライトヘビー級がまだ定着していなかった時代、ミドル級はヘビー級直下のクラスでしたが、フィッツモンズの二階級制覇は、生半可ななフロッグジャンプとは比較にならない偉業でした。


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【二匹目の偉大なカエル】
ヘンリー・アームストロング
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【三匹目の偉大なカエル】
ファイティング原田(日本)

【四匹目の偉大なカエル】
アレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)

【五匹目の偉大なカエル】
ディンガン・トベラ(南アフリカ)

【六匹目の偉大なカエル】
ビニー ・パチエンザ(米国)

【七匹目の偉大なカエル】
ジェームス・トニー(米国)

【八匹目の偉大なカエル】
マニー・パッキャオ(フィリピン)
 
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せめてベスト10と、泥酔しながら思いつくまま並べてみましたが、8匹目で思考停止…我ながらちっちゃい脳味噌です。

私が探している、あと二人。どなたか誰だか知りませんか〜?

探し物はボクサーです〜、見つけにくいボクサーです〜、カバンの中も机の中も探したけれど見つからないので〜〜♬

深夜タクシーがもうすぐ拙宅に着くので 、これから泥のように眠りまする。。。。。zzzzzzzzzzzz
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