2019年04月

2005年10月29日。メキシコ・ハリスコ州トナラ。チョロ・ラリオスアリーナ。

全てはこの日から始まったのです。

印象的な赤い髪の毛とソバカスだらけの顔をしたまだ15歳の少年が、ジュニアウェルター級4回戦のリングに颯爽と上がりました。

対戦相手のアブラハム・ゴンザレスは18歳、戦績は0勝1敗。

リング誌がゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)に問い合わせたところ「カネロのデビュー戦の相手ということ以外は何もわからない」という答えが返ってきたように、場末の小さな会場で開催された若く未熟なプロボクサーを集めた些細なイベントの前座でした。

それでも狭くて粗末で窮屈なアリーナには、私たちがラスベガスの大会場や米国の巨大スタジアムで聞き慣れた「カ!ネ!ロ!、カ!ネ!ロ!」の大コールが、もう既に鳴り響いています。 

デビュー戦からあのコールがカネロの前進を後押ししていたことに、軽いショックを覚えてしまいます。

カネロ・アルバレスは最初から、カネロ・アルバレスだったのです。

純白のトランクスを履いた少年は、まっすぐ素直に伸びるジャブで距離を測りながらサークリング。好戦的なゴンザレスにロープに追い込まれても、頭を動かしダッキングでかわす姿からはデビュー戦の緊張感は伝わってきません。

そして4ラウンド、強烈なカウンターを叩き込み連打したところで、レフェリーストップを呼び込みました。

2戦目からはウェルター級にクラスを上げた少年は4戦目にスプリットドローを経験しながらも、2013年まで8年間無敗のまま42連勝の快進撃をマーク。

その間、WBA中米(vsガブリエル・マルティネス)、NSBF北米(vsルイス・アントニオ・フィッチ)、WBOラテン(vsエウリ・ゴンザレス)、WBCユース(vsマラット・クジーフ)、WBCシルバー(vsラシアル・レオネル・クエロ)を倒して地域タイトルをコレクションします。

この頃には、メキシコと米国西部でカネロ・アルバレスは最大のスポーツスターとなっていました。

少年の舞台はラスベガスの華やかな大アリーナに移り「カネロコール」は、1試合ごとにフォルティシモを奏でていきます。
 
そして、2011年カリフォルニア州アナハイムのホンダセンター。英国屈指の人気者リッキー・ハットンの弟マシューと空位のWBCジュニアミドル級王座を争い、12ラウンド大差判定勝ちで初の世界タイトルを手に入れます。

このとき、ハットンの名を持つとはいえ実力に疑問符がつくマシューを150ポンドのキャッチウェイトでリングに引き上げたことで、世界は20歳の若者の背後に嫌悪すべき大きな力が働いていることにあらためて気づきます。

このタイトルは巧妙なマッチメイクで6度防衛、無敗のWBA王者オースティン・トラウトも退けて二団体統一王座に就きます。

そして2013年9月14日。メキシコの独立記念日ウィークに合わせた超弩級のメガファイトを迎えます。

もし、この相手を倒せばカネロは世界中の妬みややっかみを黙らせることが出来る大勝負です。
IMG_1069
IMG_2706 (1)
13歳年上、36歳のWBAスーパー王者フロイド〝マネー〟メイウェザーとの史上最大のメガファイトです。

THE ONE(唯一無二=無敗で残るのは一人だけ)と銘打たれたイベントは、何もかもが、本当に何もかもが規格外でした。

宣伝ツアーはニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、アトランタ、マイアミ、メキシコシチー、サンアントニオ、ヒューストン、フェニックス、ロスアンゼルスなど全米の主要都市をサーキット。
IMG_2707 (1)

前日計量は会場のMGMグランドガーデンアリーナを全開放、1万2000人が集まりました。大観衆のほとんどはメキシコ系のファン、多数決ならカネロの圧勝です。

当日の試合会場だけでなく、周辺ホテルでライブ上映されるクローズドサーキットでも、約3万枚のチケットがあっという間にソールドアウト。

「カ!ネ!ロ!、カ!ネ!ロ!」

耳をつんざく、あのコールがあちこちで湧き上がっています。前日計量でこの音響だと、明日は鼓膜を破られないために耳栓が必要になるでしょう。

両者とも152ポンドのキャッチウェイトをクリア。

大声援の中、秤に乗ったカネロはリミット一杯の152ポンド、いつも以上のブーイングを浴びたマネーは150.5ポンド。

体格差は明らかに赤毛のメキシカンが上です。しかも、リバウンドが持ち味のカネロは翌日にはさらに肥大してリングインするはずで、事実上減量をしないメイウェザーは計量後に大量の水や食事を採る必要がないのでリバウンドはほとんどありません。

オッズはマネーが3−1〜4−1でマネー有利と見ていましたが「両者の体格差が試合の帰趨を決定する大きな要素になるかもしれない」と23歳の大きな若者が、36歳の小さなベテランを押し込むと見る予想もありました。

当日計量で両者の体重はさらに大きく広がっていました。13ポンドもリバウンド、165ポンドのスーパーミドル級にバルクアップしたカネロに対して、マネーは逆に0.5ポンド落として150ポンドちょうどと154のジュニアミドル級よりも147のウェルター級の方が近いという軽さでロープをくぐります。

それにしても…マネーやパックマンの減量なしの体重管理には驚くしかありません。減量を大前提とするスポーツで彼ら二人は他の選手とは全く異次元で戦っていたのですから。この恐るべき事実には、誰もが戦慄するしかありません。

試合は大方の予想通り、マネーの〝ボクシング教室〟に終始しました。ガードの外側をコンパクトなフックで叩いておいて、死角から最短距離で放たれるアッパーでガードを易々と割って見せます。

メイのメソッドには15ポンドの体格差で付け入る隙はなく、テクニックのカードを見せ合う36分間のポーカーゲームに引きずり込まれたカネロは完全に手詰まり。

この試合がドローに見えたCJ・ロスは、パッキャオvsブラッドリー戦に続く明らかな誤審を犯してしまい、後日ネバダ州体育協会に辞表(無期限休職願い)を提出しますが、その前に関係者から「あなたがジャッジペーパーを書くことは永遠にない」と事実上のクビを宣告されていました。当然です。

SHOWTIMEが生中継したPPVは史上2位の220万件(1位は2007年:メイウェザーvsデラホーヤの240万件)を売り上げ、金額ベースでは1億5000万ドルの史上最高記録をマーク。

マネーには最低保証されていた4150万ドルにPPV歩合3850万ドルが上積みされ、最終的には8000万ドルが口座に振り込まれました。

1200万ドルを手にしたカネロは「パンチが全く当たらなかった。(終盤追い上げたが?と励まされて)最後の2ラウンドは完全に流された。すごいボクサーだ」と潔く初黒星を受け入れます。

試合後の会見でデラホーヤは「これでカネロを温室育ちと呼ぶ者は誰もいなくなるだろう」と、アンダードッグの試合を勇敢に戦った秘蔵っ子をかばいましたが、メキシコ系以外のファンは「メイウェザーは負けて当然の相手。あのタッチボクシングに敗れても肉体的には何一つ傷つかない。今回もローリスクだった」と冷たい視線を変えませんでした。

翌日のCNNは権利の関係からいつものように静止画像で「マネーは優れた技術を見せたが試合はつまらなかった。カネロにも勇気が足りなかった」と伝え「マネーの試合は面白くないから見たくはないが、あの男と戦うなら話は別になる」とパッキャオ戦を煽りましたが…それはまた別の話です。

確かにマネー戦は敗北でも商品価値が落ちない、肉体的ダメージもない「ズルい試合」でした。

このあと、GBPは誰もが非難する摩訶不思議なロジックをかざして〝ミドル級〟にカネロを進出させ、世界中のファンからさらなる軽蔑の視線を集めることになってしまうのです…。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

5月4日土曜日、ネバダ州ラスベガス。T-Mobileアリーナ。

リネラル/リング誌/ WBA/WBCミドル級王者カネロ・アルバレスvsIBF王者ダニエル・ジェイコブス



今日のオッズはアルバレス勝利1/4(1.25倍)、ジェイコブス3倍。

2年前ならジェイコブス圧倒的有利で、それ以前にこのマッチメイクに世界中のファンが驚いたでしょう。 

この2年で「カネロウェイト(155ポンド)でミドル級(160ポンド)を戦う卑劣なアイドル」は 「ミドルはおろかスーパーミドル級にまたがって最強」と推される本物に昇華しました。
IMG_2701 (1)
IMG_2704
IMG_2699 (1)
プライベートジェットの中では歌をうたってドンチャン騒ぎのカネロですが、フェラーリののハンドルを握るときは静かにボクシングについて考えます。

メキシコの貧しい田舎町から世界で最も裕福なアスリートに駆け上がった成功物語を辿っていきます。

1990年7月18日にハリスコ州グアダラハラで8人兄弟の末っ子として生まれたサウル・アルバレスは、ボクシングに熱中する兄たちを追うようにして、13歳のときにグローブをはめました。

アマチュア戦績は「20戦(勝敗不明)」「44勝2敗」など諸説ありますが、確かなことは国際大会でタイトルを獲るなど目立った成果はあげていないということです(ジュニアの国内タイトルは獲得)。

赤毛の少年は15歳でプロデビュー。

あれから14年、28歳になった青年はカネや家、車に飛行機、およそ形あるものは全て手に入れていました。

頂点を極めた者が全てを手に入れるのは、ボクシングの神様が絶対に守ってくれる約束です。

モハメド・アリにシュガー・レイ・レナード、マイク・タイソン、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオ…カネロはついに彼らの系譜に並んだのです。

しかし、神様は大きな忘れ物をしてしまいます。

形あるもの全てはカネロのもとにプレゼントしてくれましたが、本来ならそれと必ずセットになっているはずの評価と名誉はいつまでたっても届けられなかったのです。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

メインテーマからはそれてしまうかもしれませんが、カネロ・アルバレスがリングに上がるたびに話題にされる〝カネロ判定〟についてです。

1960年代までのマフィアの時代ならまだしも、現在のリングで組織的な八百長が恒常的に行われているとは考えられません。

また、現行採点システムで互角の展開の12ラウンドを集計した場合、120−108の完封スコアと実態からかけ離れた判定になる可能性もあります。

さらに、MLBやNFLのジャッジと異なり、プロボクシングには審判の定期的な研修や試験の制度がありません。能力のないジャッジが野放しにされている状態です。

さまざまな観点から、ネバダ州のジャッジが意図的にカネロ・アルバレスに過剰なアドバンテージを与えているとは思えないのですが…。

当たり前ですがプロボクシングはスポーツです。世界的にも賭けの対象にされています。

もし、意図的に採点が操作されているとしたら、明らかな犯罪行為です。

ニューヨーク体育協会の元会長ランディ・ゴードンは「誰が見ても明白なラウンドは素人でも正しく10−9をスコアできるが、微妙なラウンドは訓練されたジャッジでも見方が分かれる、10−9なのか9−10なのかその差は2ポイントもある。これが積み重なると同じ試合の判定ではないようなスコアが生まれてしまうのだ」と〝カネロ判定〟など存在しないと否定します。

スクリーンショット 2019-04-30 13.27.31
 CJ・ロスはパッキャオvsブラッドリー第1戦でもありえないスコアを付けた常習犯で、2013年にメイウェザーvsカネロをドローと採点してからボクシング界で出禁となっています。
スクリーンショット 2019-04-30 13.41.01
ジェイコブ陣営が「彼女がリングサイドに座るなら試合を棄権する」とまで言い放ったアンダレイド・バードの目には、GGGvsカネロ第1戦が118-110でカネロ圧勝に移りました。「微妙なラウンドが重なると実態からかけ離れた判定が生まれてしまう」という言い訳も通用しない犯罪(的)採点でした。

ジェイコブスのマネージャー、キース・コノリーは「ラスベガスが厳密な意味でカネロのホームでないことは理解してるが、カネロが試合をすることでネバダ州に莫大な税金が収められていること、協会とジャッジを含めた関係者がその莫大な恩恵を受けていることも事実だ。明らかにおかしな判定が下されたとき『現行の採点制度ではそういうことも起こりうる』と問題から目をそらすのではなく、もっと厳格な調査が必要だ。他殺か自殺かわからない死体が発見されたときのように。金持ちが人を殺しても他殺にならないというんじゃ話にならない」と主張しています。

ネバダ州体育協会のボブ・バーネットは「私は24年半に渡るFBI時代に八百長ボクシングの捜査で全米を回り、個々の選手レベルでカネ目当てで八百長に手を染めるケースをいくつか摘発したが、協会ぐるみのものはなかった」と語ります。

バーネットが摘発した事件の一つは、2000年8月12日ネバダ州ラスベガス・パリスで行われたイベンダー・ホリフィールドvsジョン・ルイスの前座に組まれたリッチー・メリトvsトーマス・ウィリアムスのヘビー級10回戦。

バーネットはメリトのマネージャーがウィリアムスを買収、1ラウンドKO負けを演じたことを突き止めたのです。

ウィリアムスは懲役15ヶ月の実刑判決を受けました。意外なことですが八百長によるボクサーの実刑執行はこれが初でした。

「〝カネロ判決〟はコソコソ騒ぐ卑怯者の流言飛語だ。それが事実だと確信しているなら、場末のネットサイトじゃなく、もっと正式な場所で糾弾したらいいのに。万一、ネバダ州のジャッジがスコアを操作している事実があるなら、私は必ず証拠を突き止めてFBIに報告する」。

確かに組織的な判定操作はないかもしれませんが明白な証拠、カネの動きがない限り不当判定が意図されたものかどうかは永遠に闇の中です。

ロスやバードはラスベガスに利益を誘導するためにスコアを捏造したのか、それとも常識では考えられないほど採点能力が欠落した無能極まるジャッジだったのか?

前者なら犯罪で後者なら犯罪的ですが 、その真相は二人の女性にしかわかりません…。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

れまで三階級制覇を果たした日本人は亀田興毅井岡一翔八重樫東長谷川穂積井上尚弥田中恒成の6人です。

井上は現在WBAバンタム級王者ですが、上位王者(スーパー)が存在する場合は「scondary champion」(下位王者/二番手王者)とみなされリング誌やESPNなど世界の大手メディアでは王者と認められていません

世界的には井上は二階級制覇のままなのです。

それでもモンスターが他の5人と比較して異彩を放っていることは、誰の目にも明らかでしょう。

ボクシングの世界では、防衛回数や複数階級制覇など数字よりも優先して評価の対象となるのは「誰に勝ったのか」です。

この点で日本が誇る三冠王たちが「誰に勝ったのか?」を振り返ってみます。

※この世界基準では井上だけでなく亀田、井岡も二階級制覇にとどまります。




田興毅はファン・ランダエタと決定戦を争い、大いに議論を呼ぶ判定勝ちで最初のタイトル(WBAライトフライ級)を手に入れました。

日本でもお馴染みのベネズエラのサウスポーを世界基準で査定すると、新井田豊らと激戦を繰り広げたストロー級では強豪の一人に数えることが出来ます。

しかし、興毅と戦った2006年バージョンのランダエタはジュニアフライ級で世界基準の実力がないことはリング誌やESPNの階級10傑から漏れていることを見るまでもありませんでした。

2009年11月29日、21世紀の世界軽量級で最大興行となったWBCフライ級チャンピオン内藤大助とのメガファイトは完全ヒールでリングに上がりながらも判定勝ち。

内藤は、キャリア晩年とはいえ当時PFPファイターのポンサクレック・ウォンジョンカムの18連続防衛を阻止した強豪でした。KO宣言で内藤の力みを誘いながらも、試合開始から徹底したアウトボクシングを貫いた作戦勝ちでした。

しかし、初防衛戦では経年劣化が著しいはずのポンサクレックに0−2のマジョリティながら内容的には完敗。ボクサーとしての底を見せてしまいます。

ジュニアバンタムをfrog jumpして王座決定戦で勝利したアレクサンデル・ムニョスはジュニアバンタム級時代は強豪の一人に数えられていましたが、興毅に競り落とされた2010年は31歳のバンタム級バージョン。

ムニョスは2004年に強盗に膝を撃たれるなど不運はあったものの、強豪と呼ぶには微妙すぎるマーティン・カスティーリョにジュニアバンタムの王座を明け渡すなど、ジュニアバンタムでも〝a champion〟(The championとは呼べないアルファベット王者)の域を出ることはありませんでしたから、そのムニュスとの決定戦に勝利して入手したバンタム級タイトルに大きな意味はありません。

そもそもが、このタイトルはアンセルモ・モレノのスーパー王者昇格にともなってWBAがこしらえた世界的には認められていないセカンド王座でした。

亀田兄弟がリングの内外で晒した恥ずべき行為の数々は、糾弾されてしかるべきです。興毅もその対戦相手のリストに内藤を例外とすると、世界王者レベルはもちろん世界基準にあるボクサーも見当たりません。まさに21世紀型の複数階級制覇の見本のようなボクサーでした。

ただし、興毅自身は世界基準の実力をギリギリ備えていました。日本でバッシングされているほどの、救いようがないほど低レベルなボクサーではありません。

厳しい言い方かもしれませんが、挑戦者としては雑魚ではありません。しかし、王者としては穴でした。

そして何よりも、世間が忌み嫌う亀田一家を生み出した最大の元凶は、彼ら自身ではありません。



IMG_2705
リング誌2013年7月号「STATE OF THE GAME」より。ベストパンチャーはロマゴン、ベストボクサーは井岡、夢の対決は井岡vsロマゴンでしたが…。
岡一翔が、制覇した三階級に渡って世界基準の実力を擁する才能であることに、多くの人は異論がないでしょう。

これぞ軽量級というアクション豊かなスタイルで勝ち取った三つのベルトと防衛戦の相手は、この国の世界王者としては間違いなくハイレベルなものでした。

最初の一歩は2011年。オーレドン・シスマーチャイ からWBCストロー級王座の強奪した5ラウンドTKO勝利でした。

当時25歳のオーレドンはリング誌、ESPNともに階級1位に推すストロー級最強候補の一人で36戦35勝13KO1分の無敗王者でした。ちなみに33歳になった今もジュニアフェザー級で現役、戦績は72戦69勝(29KO)2敗1分まで伸ばしています。

昨年は清瀬天太に敗れましたが、これがキャリア二つ目の黒星。日本人が鬼門となっています。

当時、ストロー級は主要四団体の王者が全員無敗。リング誌ではWBCオーレドン、ニコシナシ・ジョイ(南アフリカ)、WBOドニー・ニエテス(フィリピン)、クワンタイ・チョーノーパッタラン(タイ) の順にランクしていましたが、21歳の井岡はプロ7戦目の日本記録でトップを斬り落として見せたのです。

まー、今となって思い返すと大蛇を体に巻きつけて入場して来るフィリピン人が文句無しの最強でしたが、結果論です。 

このクラスの対立王者、WBAの八重樫東との統一戦に完勝したことで日本史上初の統一王者になり、世界評価も跳ね上がりました。

続くジュニアフライ級は2011年、WBA暫定王者ホセ・アルフレド・ロドリゲスとの決定戦で6ラウンドTKO勝利を収めます。

無敗のまま日本人最短の二階級制覇に成功しますが、この王座はセカンドタイトル、つまりローマン・ゴンザレスのスーパー王者昇格にともなって設けられた世界的には認められない下位タイトルでした。 

当時から世界評価が頭抜けていたロマゴンとの対決は「勝ったほうがPFP入り」(リング誌)と世界的にも期待されましたが、井岡陣営が対戦を回避。日本のエースはファンを幻滅させてしまいます。

この下位タイトルは、現在IBFジュニアフライ級王者のフェリックス・アルバラードらを退けて3度の防衛を果たしますが「ロマゴンから逃げた」という烙印は消すことは出来ません。

そして2014年。三階級制覇をかけてアムナット・ルエンロンのフライ級IBFのピースに挑戦します。

黒人のような外見と捨て子だった経歴を持つアムナットは、不思議なボクサーでした。

日本のエース井岡ばかりか、中国の巨星ゾウ・シミンまでを完全アウェーで下し、判定を手繰り寄せるのですから。

初黒星を喫した井岡は2015年、強豪ファン・カルロス・レベコからWBA王座を奪い、世界最速15戦目で三階級を制覇しますが、日本のエースの座は井上尚弥に完全移行、ファンの視線は「ロマゴンから逃げたヤツ」のままでした。

このタイトルはニカラグアの強豪キービン・ララらを相手に5度防衛。

その実績はリング誌でも「PFPにチェックメイト寸前」と高い評価をキープする一方で、多くの日本のファンから「ロマゴンから逃亡したヘタレ」の印象を拭うには17ヶ月間の引退から復帰した昨年9月のマクウィリアムス・アローヨ戦まで待たねばなりませんでした。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

現在、カネロ・アルバレスのPFP評価はリング誌とESPNでともに3位と、いずれもトップではありません。

この3位が過去最高ランクですから、もちろんPFPキングの経験もありません。

実力評価は低いものの、報酬(人気)は不条理なまでに圧倒的という、ここまでアンバランスなヒーローは、歪なことが当たり前にまかり通るボクシングの歴史でも非常に珍奇な存在です。

もちろん、このプロスポーツでは「最も優れたアスリートが最も多くの報酬を手にいれる」という誰もが納得する常識など通用しません。

軽量級でニカラグア人のローマン・ゴンザレスはPFPキングになっても、その報酬は60万ドル(それもたった1試合)が精一杯。

しかし、メキシカンで中量級のカネロは実力評価で劣ってもドーピングしても、ロマゴンがキャリアハイで稼いだ何十倍〜何百倍もの金額を毎試合、当たり前に手に入れ続けているのです。



非メキシカン・非アメリカンで軽量級のあなたが、この理不尽に怒りを覚え、この不公平なシステムを打ち砕きたいのならマニー・パッキャオのようにメキシコのヒーローをことごとく打ち破って、スターの巣窟・中量級の牙城をセンセーショナルに切り崩すしか方法はありません。

もちろん、あなたの眼の前にメキシコのヒーローが何人もいる幸運と、彼らを粉砕する卓越した実力と、怪物がひしめく中量級に乗り込む勇気。この三つが同時に備わっていればの話ですが。



1990年7月18日、メキシコで生まれたサウル・アルバレスは現在28歳。

ボクシング界最大のスターであるとともに、スポーツ史上最も高額報酬の契約を結んだアスリートです。

小さい頃からカネロの面倒を見てきたチェポ・レイノソ(息子エディが現在のトレーナー)は、ステレオタイプに決めつけてくるメディアへの怒りを隠しません。
IMG_2703
IMG_2700 (1)
メキシコ・ハリスコ州グアダラハラ。「私を温室育ちという人たちは、私がどこから来てどうやってここまで辿り着いたのかを知らない人たちだ」。カネロの言葉もまた真実です。

「何も知らない奴らが勝手な嘘を書いて、いい加減な噂を撒き散らすが、カネロはアイドルじゃない。あいつが全身全霊でボクシングに打ち込み、どれだけ努力をしてきたか、俺はこの眼でずっと見てきた。お前たちが言うような温室育ちがゲンナディ・ゴロフキン相手に真っ向から打ち合えるか?雑魚相手のマッチメイクという奴らは、カネロの戦績に刻まれているフロイド・メイウェザーの文字が読めないのか?エリスランディ・ララが雑魚なら誰が雑魚じゃないんだ?」。

「メキシコのアイドルだから優遇されている?もし、カネロがアメリカ系アフリカンやアジア人ならもっと評価が高かっただろう。最初から色眼鏡でしか見てない奴らばかりだ。ゴロフキンとの再戦でKOされるとバカにしてた記者連中はカネロが勝つと『GGGは衰えた』と言い訳して、PFP1位を倒したカネロを評価しなかった。スーパーミドル級でカラム・スミスを倒しても奴らは『スミスは雑魚だから』と言うだろう。ライトヘビーでセルゲイ・コバレフに勝ったら『コバレフはピークの過ぎた老人』と書くのだろう」。

「カネロは生まれたときから豪邸に住んでフェラーリを何台も乗り回して、プライベートジェットで移動していたわけじゃない。何一つとして与えられたものなんかない。あいつはそれらを全て、自分の二つの拳で手に入れたんだ」。



世の中には複数の事実があって、真実はさらにいくつもあります。

カネロが温室で育てられ、細心のマッチメイクと〝カネロ級〟に代表される腐敗した承認団体の忖度、不可解な判定などに守られたボクサーであることは疑うべきもない事実です。

しかし、温室の中で順を追って与えられるテストに満点回答を出し続け、勝利し続けていることも、また事実です。

またスポーツ史上最も裕福な地位を手に入れても、ボクシングへの飽くなき情熱を微塵も失わないでいるのも事実です。

こうした事実を総合して「カネロは温室育ちのお坊ちゃん」という一つの真実を導き出すのは大間違いでしょう。


百歩譲っても、温室も過保護なマッチメイクもカネロ級も不可解な判定も、カネロ自身が根回ししたものは一つもありません。

不可解な判定が下されたとき、歓迎されざる勝者は「卑怯者」と唾棄されるのが常ですが、勝者がスコアカードを書いたわけではありません。

メイウェザー戦をドローと判定したのは暗愚なジャッジであって、カネロではありません。

ララ戦を大差判定勝ちと数字を並べたのも、カネロではありません。

GGGから勝利を奪ったのは蒙昧なジャッジであってカネロではありません。

カネロ・サウル・アルバレス。

経済的にはこれ以上ない成功を収めた青年は、いまだハングリーなままです。

「私は貧しく、何も持っていなかった。こんな高いところまで這い上がれるなんて、正直思ってもみなかった。でも、今はまだ旅の途中だ。ゴールはもっと先にあるし、まだ何も成し遂げたり、終わってはいない。いや…まだ何も始まってないのかもしれない」。

すでに人気とカネは頂点レベルで手に入れた28歳の若者は、アンチも黙らせる評価まで勝ち取ることができるのでしょうか?

カネロの挑戦を振り返り、ジェイコブス戦を展望します。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2019年5月4日土曜日、ネバダ州ラスベガス。T-Mobileアリーナ。

リネラル/リング誌/ WBA/WBCミドル級王者カネロ・アルバレスvsIBF王者ダニエル・ジェイコブス

先週、ネバダ州体育協会が発表した3人のジャッジにアドレイド・バードの名前がなかったことを確認すると、ジョイコブス陣営は安堵のため息をつきました。

ボクシング界で誰もが答えを知っている有名なナゾナゾです。「世界で最も難しい仕事は何か?」 。

答えはもちろん「ラスベガスでカネロにユナニマスデジションで勝つこと」。 
IMG_0326 (1)

完璧な仕事を遂行したように見えたフロイド・メイウェザーでさえ、この難題をクリアすることは出来ず、ゲンナディ・ゴロフキンは明白な勝利を盗まれました。

GGG戦を、カネロの大差判定勝ち(118−110)とスコアしたのがバード女史です。この驚天動地の採点には、記者から「判定は妥当だったか?」と聞かれた(カネロをプロモートする)オスカー・デラホーヤでさえ「彼女には同意できない」と顔をしかめるしかありませんでした。

バードがリングサイドにいないことだけで、ジェイコブスに公平な採点がなされるかどうかは疑問です。

今週末も、僅差の判定に見える12ラウンドが公式スコアでカネロの大差判定勝ちと発表されて、誰が驚くでしょうか?

ファンの間でもJacobs' only chance is to KTFO Canelo or the Reynosos will throw the towel.と「ジェイコブスが勝つにはノックアウトするか(トレーナーの)レイノソがタオルを投げる一方的な展開に持ち込むしかない」と、カネロに判定勝ちするのは極めて難しいと見ています。

ジェイコブス陣営のみならず多くのファンまでがジャッジへの不信感を露わにしていることについて、ゴールデンボーイは「ラスベガスが人気者に忖度するなんて迷信だ」と笑い飛ばしています。

「私を見なさい。私はいつだって人気者だったが、ここ(ラスベガス)で微妙な判定を何度も落としている。ジェイコブスはリングの中だけに集中すべきだ。リングの外をコントロールできるボクサーなどこの世にいないのだから」。

デビュー以来、マッチメイクと判定で忖度を享受し続けていると見られるカネロ本人が「GGGとの2試合よりも難しい戦いになる」と覚悟していることに、デラホーヤも「彼はよくわかっている」と賛同。

「足を使いながら強いコンビネーションをまとめてくるジェイコブスは捕まえにくくて、危険な相手。カネロが初めて直面するスタイルだ。ジェイコブスは仕組まれた雑魚なんかじゃない。この試合はミドル級最強決定戦であることに誰も異論はないだろう」と語っています。

そして「ジェイコブスは十分に研究してくるだろうが、難しい試合になるのは彼も同じ。カネロは欠点のない完璧なボクサー。メイウェザーとテクニック合戦をして、GGGと力比べも出来る、こんなボクサーがいるか?」と勝利に自信を見せています。

このメガファイトは、スポーツ史上最高額の5年11試合で3億6500万ドルでカネロと契約したDAZNがネット配信する2試合目です(1試合目は〝仕組まれた雑魚〟ロッキー・フィールディング戦)。

一方、やはりDAZNと契約した宿敵GGGは、6月に無名のスティーブン・ロールズと調整試合を行い、9月にカネロとの第3戦を熱望しています。

しかし、カネロは「GGGⅢは彼がベルトを巻いていない限り実現しない」と冷めた反応。

カネロがジェイコブスに勝つと、残るベルトはWBO(デメトリアス・アンドラーデ)とWBAセカンド(ロブ・ブラント)の二本ですが、ブラントが保持するのはセカンドタイトルなので王座にカウントされません。

If Canelo wins on May 4, he will hold all the titles except for one” ジェイコブスに勝てば、完全統一まであと一つ)」(デラホーヤ)なのです。

「丸腰でカネロと戦おうなんて図々しいにもほどがある。選ぶのはこっちだ。ヘイ!ゴロフキン!勘違いするな。まずタイトルを獲ってから口を開け」。今回ばかりはデラホーヤの言い分に一理あります。

カネロがジェイコブスをクリアした次のステージは、168ポンド(スーパーミドル)か175(ライトヘビー)に上げることが優先されると見られています。

「カネロのゴールはこのスポーツで歴史的なレガシーを残すこと。様々なオプションがある中で、すでに完勝したGGGとの第3戦の優先順位は低い」という言葉は、いまや逃げ口上には聞こえません。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ライアン・バーネットが試合中に負傷、ゾラニ・テテは練習中に右肩を痛めて欠場…WBSSバンタム級トーナメントはノニト・ドネアに追い風が吹いています。

テテが欠場を発表する前までの優勝オッズは、井上尚弥が1.28倍で頭抜けています。

続いてテテの6.5倍、マニー・ロドリゲス7倍、ドネアは13倍。

〝Bブロック〟は大穴のドネアが決勝進出をほとんど無傷で果たしました。

スクリーンショット 2019-04-28 13.46.11
さあ、井上尚弥です!準決勝の相手はロドリゲス。

無敗のIBF王者は侮れない相手ですが、ポール・バルターを2度倒しながらも仕留めきれず、ジェイソン・マロニーには敗北でもおかしくない内容のスプリットデジションで命拾い。

世界基準では決定力と体力面で大きな不安を露呈してしまいました。 

河野公平を持て余したマロニーの攻撃にフラフラになったロドリゲスが井上の前に12ラウンド立っていられるとは考え難いのですが、リングは何が起きても不思議ではない場所です。



ロドリゲス戦はリング誌やESPNなど多くのメディアで The matchup between World titleholder Emmanuel Rodriguez and highly regarded contender Naoya Inoue と「世界王者ロドリゲスに評価の高い挑戦者・井上が挑戦する」 という図式で語られています。

これは、井上のタイトルWBAレギュラーがスーパー王者(今回ではバーネット→ドネア)が存在するケースではセカンド王座、下位タイトルと世界王者とは認められていないからです。
スクリーンショット 2019-04-28 14.04.13
リング誌でも「WBA王者はドネア」で、井上は無冠の扱いです。

同様に暫定王者も認めませんから、井上拓真は無冠でWBC王者はノルディン・オーバアリ。

バンタム級のトップ戦線を見渡すと、ドネアという花が咲いて、強豪テテの名前も目に入りますが、そこまでですね。

無敗グループでは、ロドリゲスとルイス・ネリはいつ惨敗しても驚きではない、まだ評価できない未知の強豪。オーバアリもラウシー・ウォーレン戦で逞しさは見せたものの、陥落しても驚く王者ではありません。

現状のバンタム級は、井上にとってハイリターンは望めないクラスです。

ジュニアバンタムにはもう少しとどまって欲しかったですが、バンタムはWBSS優勝で上げてもいいと思いますね。

一つ上のジュニアフェザーはダニエル・ローマンが昨日、WBA/IBFを統一。ローマンは穴王者ではないものの、井上から見たらべルトを二つ背負ったカモでしょう。

もし対戦するとなれば、相当に有利なオッズと予想が叩かれるはずです。

今なお、仕上げの1ヶ月で10㎏の減量を強いられていることを考えると、フェザー級もありだと思いますが…。

賢明な井上はバンタムにとどまることを示唆しています。

しかし、無責任なファンの一人である私は、井上がハイリターンの海に漕ぎ出すことを期待せずにはいられません。

日本人にとってジュニアライト級よりも高嶺であり続けているフェザー級、ここに爪痕を残して欲しいと願って、 新シリーズです。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

PFPランキングはMythcal Rankingと呼ばれる通り、脳内で順位をつける妄想の域を出ません。

リングの外で記者や専門家が決める評価に大きな意味はありません。

ロイ・ジョーンズJr.やマニー・パッキャオの全盛期には彼らを歴代PFPキングと過大評価する専門家もいましたが、時間とともにその声は小さくなり、いつの間にか誰の耳にも聞こえなくなりました。

日本の歴代PFPでも10年前は長谷川穂積をトップ3はおろか1位に推すファンや専門家までいましたが、今の彼らは「俺、そんなこと言った覚えないけんね」とシレッと息をしています。

世界の歴代PFPも、多くの専門家やメディアの間で「ロベルト・デュランはシュガー・レイ・レナードよりも上」と長らく考えられてきました。

しかし、モハメド・アリが旅立った2016年にリング誌が「LIVING LEGENDS(アリを喪った今、存命のPFPキングは誰か?)」を企画したとき、多くの専門家がレナードを支持しました。

デュランは2位。3位以下はパーネル・ウィテカ、イベンダー・ホリフィールド、マービン・ハグラー、フリオ・セサール・チャベス、フロイド・メイウェザーJr.、ジェイク・ラモッタ、マニー・パッキャオ、ラリー・ホームズ。

ロイは10傑入りを逸しました。確かに「ボブ・フィッツモンズ以来、106年ぶりにヘビー級を制したミドル級王者」というのはスゲーと一瞬思ってしまいますが、相手は歴史的な階級最弱王者ジョン・ルイスでした。

オッズも予想も大きくロイに傾く中での大差判定勝ち。あの試合には数字や階級制覇を超えた意味はありませんでした。

当時、ロイをあれほど絶賛した評論家達は「雑魚のヘビー級王者ならレナードやバーンズでも簡単に倒す」と二枚目の舌で語っています。

そんなわけでPFPは妄想というだけでなく、同じ人のランキングでも時間の経過で変節するものです。

大手メディアのランキングですら時間とともに変節しますが、オンタイムではそれなりに説得力があるものです。

しかし、何事にも例外はあります。

YAHOO!Sportsをボクシングメディアの「大手」と見るかどうかは微妙ですが、このランキングがいつも物議を醸し出しています。

今回も読者から「Pure garbage is what this list is. (ほんと、ゴミ以下のリストだな)」とボロカスです。

〝戦犯〟はケビン・アイオラという看板記者。独特のPFP基準でランキングしているのですが、下記がその4月25日版です。
5cc285ce240000680038b68b
Terence “Bud” CrawfordWBO 
welterweight champion, 35-0, 26 KOs.
Errol Spence Jr.
IBF welterweight champion, 25-0, 21 KOs.
Vasiliy Lomachenko
 WBA-WBO lightweight champion, 13-1, 10 KOs.
井上 尚弥
WBA bantamweight champion, 17-0, 15 KOs.
Oleksandr Usyk
undisputed cruiserweight champion, 16-0, 12 KOs.
Canelo Alvarez
WBA-WBC middleweight champion
WBA super middleweight champion, 51-1-2, 35 KOs.
Gennady Golovkin
middleweight contender, 38-1-1, 34 KOs.
Mikey Garcia
WBC lightweight champion, 39-1, 30 KOs.
Leo Santa Cruz
WBA featherweight champion, 36-1-1, 19 KOs.
Regis Prograis
interim WBC super lightweight champion, 23-0, 19 KOs.
下位になるほど見方が分かれるとはいえ、9位:レオ・サンタクルスと10位:レイジス・プログレイス(ちょうど先ほど勝利を収めましたが)の二人は、確かに奇抜なランキングです。

しかし、上位でもリング誌とESPNがキングに推しているワシル・ロマチェンコを3位に、カネロを抑えて井上尚弥をトップ5に数えているのも異彩を放っています。

アイオラさんのPFPの尺度は「純粋拡大縮小思考」の〝PFP原理主義者〟。軽量級のように素早く動き回る重量級を想定、重量級のパワーを軽量級でも還元するという考え方です。

それならそれで、もっと軽量級ボクサーをランキングさせているはずなのですが…。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ドネアのボクシング勘は鈍ってます。経年劣化でしょう。

しかし、逃げ回るしか能のないヤングを仕留めるのは時間の問題でした。

"I know both guys are amazing, but there was an unspoken thing with me and Japan, and how much I respect and love Japan, as well there was an unspoken respect between me and Naoya Inoue, that we were going to go to the finals,"

「ナオヤもロドリゲスも凄いボクサーだ。私は日本がとにかく大好きだし、ナオヤも尊敬してる。選べるならナオヤと戦いたい」。

日本のファンに人気があるわけです。 

グローブはエバーラストでしたが、トランクスとシューズはミズノ・ランバード、シンプルな出で立ちもいつものドネアです。

それにしても、腰の引けた挑戦者はどうしようもないですね。逃げ回る小さな獲物はドネアの大好物です。

ヤングが2ラウンドのインタバルで口をゆすいだ時に、真っ赤な水を吐き出してましたから1ラウンドから口内を切ってしまったようです。 

最初のインタバルで肩で息をしてましたから、ドネアのプレッシャーがよほどキツかったのでしょう。

2ラウンドにヤングがワンツーをヒットさせましたが、腰が引けたパンチです。このラウンドでもヤングが取ったとは思えません。

3ラウンドにはドネアの左のダブルから右ショートがクリーンヒット、ヤングは鼻からも出血。 ダメージは明らかです。
IMG_2696
IMG_2697
 6ラウンド。心身とも消耗したヤングに、ドネアの速くてコンパクトな左フックをかわす反射は残っていませんでした(もともとそんな能力はなかった?)。

 それにしても、ドネアの左フックはドンピシャでした。
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

WBAスーパー・バンタム級王者ノニト・ドネアvs挑戦者ステフォン・ヤング

前日計量はドネア117.6ポンド、ヤング117.3ポンドでクリア。
フェザー級まで上げて二階級振り戻したドネアは減量が厳しいのではという憶測もありましたが、その心配はなさそうです。 

ドネア(171㎝/リーチ173㎝)と並ぶと、ヤング(165㎝/170㎝)はかなり小さいですね。

KO率31.8% と非力で小さなヤングは、ドネアにとってテイラーメイドの相手に思えますが、さてどんな展開になりますやら!?

試合予想を拾おうとしてますがリング誌、ESPNをはじめどのメディアでも残念ながら見当たりません…。昨日のシーサケット・ソールンビサイvsファン・フランシスコ・エストラーダは、軽量級にしては注目度が高く、いくつか見つけることが出来ましたが…。

ドネアの試合も日本でやった方が間違いなく興行規模はでかくなりますね。井上がリング下で解説とか、ついでにロドリゲスも呼んじゃうとか…すごく盛り上がるはずですが。

ロブ・ブラントをわざわざ呼んで試合決定の地味な会見をするよりも、こっちにもおカネを使って欲しいものですね。 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

↑このページのトップヘ