ノニト・ドネアは100万ドルの報酬を手にしたことがありましたが、それはゴールデン・ボーイ・プロモーションズの引き抜き工作から、トップランクがなりふり構わず取り戻した〝契約上の出来事〟です。
フェルナンド・モンティエルとの一戦で初めてHBOデビューしたフィリピンの閃光が、ウェルター級やヘビー級のビッグネームと同じ人気を勝ち得ていたからではありません。
そして、そんな特殊事情が絡んでも100万ドルです。
現在進行中のWBSSにしても〝高額賞金〟トーナメントという謳い文句「優勝賞金1000万ドル、賞金総額5000万ドル」というのは詐欺的なまでのハッタリです。
先日内定?した井上尚弥vsエマニュエル・ロドリゲスも、その舞台はスコットランド、ポジションは前座です。マイナー階級の外国人である井上とロドリゲスの報酬は、日本円で500万円もないでしょう。
今ではさすがに「決勝はMGMグランドアリーナのような大会場でやってほしい」なんて妄想を巡らす人は少ないでしょう。
フェザー級まで目を向けると、MGMグランドアリーナで堂々メインで100万ドルを軽く超えるメガファイトを繰り広げたボクサーもいますが、それはアントニオ・マルコ・バレラやエリック・モラレスです。
テテやロドリゲスは論外、100万ドルがやっとのレオ・サンタクルスやカール・フランプトンですら次元の違うグレートです。
WBSS主催者側は「決勝まで日本でやりたい」 というのが本音でした。
しかし、日本のファンは「高額報酬」「井上の世界進出」と信じ込んでいました。
ボクシングには胡散臭い話が多いとはいえ、まともなファンなら誰でもわかる「バンタムで高額賞金」に騙される方も悪いのです。
よく「ミドル級やウェルター級、フェザー級でもWBSSを開催して欲しい」という意見を目にしますが、それはありえません。逆説的に言えば「米国の人気階級ではないからWBSSが出来る」のです。
実際に、カレ・ザウアーランドは「ジュニアフライやフライ、ジュニアフェザーでやりたい」とまたまたマイナー階級を口にしています。
欧米での軽量級は歴史的に人気が低く、彼らにとってそれは、日本におけるスーパーミドルやライトヘビー、クルーザー級と同じ「シンパシーを全く感じない」階級なのです。
前置きが長くなりましたが、欧米における軽量級で「高い実力評価(リング誌のBEST FIGHTER POLL )と報酬(100万ドル)」を両立させたボクサーは過去に存在したのでしょうか?
まだボクシング人気の残り火がチロチロしていた1980年代の軽量級は、欧米(中米)に大きく偏っていました。
インターネットなど言葉もなかった時代、アジアの軽量級はそのレベルの高さが全く評価されていませんでした。
80年代にトップ10にランクされた軽量級は張正九、カオサイ・ギャラクシー、ウィルフレド・ゴメス、ジェフ・チャンドラー、サルバドール・サンチェス(フェザー級)、エウセビオ・ペドラサ(フェザー級)、アントニオ・エスパラゴサ(フェザー級)で、最高位はサンチェスの4位(1982年)。
サンチェスは1981年の年間最高選手ですから、4位でも過小評価な気もします。