約40年前に活躍、日本中の誰もがみんな知っている最後のボクシングヒーロー具志堅用高(辰吉丈一郎や亀田兄弟の瞬間最大風速は具志堅レベルでしたが、その風の質は明らかに違いました)。
しかし、その言葉は25歳になった息子には届きません。
「大丈夫。6ozは結構自分に合ってるかも…。それに…あ!そっか!15ラウンド制だから、あと3ラウンドも、具志堅さんと戦えるってことか!」。
そして。
井上が生涯初めて聞く、第13ラウンド開始のゴングが鳴ります。
井上が勢い良く青コーナーを飛び出しました。
赤コーナーの具志堅はゆっくりと腰を上げると、渡辺トレーナーに向かってボソッとつぶやいてから若い挑戦者を迎え撃ちました。
「俺よりあの子の方がロビンソン先生に近いかもしれない」。
…第二試合の舞台は、井上のホーム、横浜アリーナ。
前日計量、グローブも8oz。〝モンスター〟のフォーミュラにカンムリワシが降り立ちます。
そして、リング誌評価で70年代の10年ディケイドPFPで9位にランクされた具志堅に対して、1980年からスタートした年間PFPで6位(2018年)にその名を刻んだ井上尚弥。
日本のボクシングファンが異論なしでその時代の最高選手と評価する2人の激突、Mythical Matchups 二連戦です。
まず、階級は具志堅が世界戦15試合全てをその体重で戦った105ポンド、ジュニアフライ級に設定します。
井上にとっては最初に世界を取ったクラスで、拳の故障に悩み、何より過酷な減量に苦しんだ階級です。
注目の第1試合の舞台は日本武道館!
当日計量、グローブは6oz、具志堅のオーダーメイドで二人はリングイン。
時空を超えた「議論する余地のない世界ジュニアフライ級タイトルマッチ」は、やはり具志堅の慣れ親しんだ15回戦で戦われます。
当日計量、グローブは6oz、具志堅のオーダーメイドで二人はリングイン。
時空を超えた「議論する余地のない世界ジュニアフライ級タイトルマッチ」は、やはり具志堅の慣れ親しんだ15回戦で戦われます。
井上の頰は見るからにこけ、肌もかさかさ、当日計量のダメージは明らかです。
一方、ほとんど減量の必要がない具志堅は、いつもの当日軽量。ウォーミングアップを十分にこなして汗の光る精悍な表情から調子の良さが伺えます。
日本記録の13度防衛のうちKO勝利が8度。
当時の最軽量級ジュニアフライで破格のパワーを見せつけていたカンムリワシは「今の選手が非力なわけじゃない。一番大きいのはグローブの差。6ozと8ozとでは攻撃はもちろん、防御でもまったく違ってくる」と語っています(ボクシングマガジン平成17年6月号付録「拳雄たちの記憶〜具志堅用高)。
「大きな8ozだとガードすると顔が全部隠れちゃう。あれじゃ、守りを固めたらまともなパンチはもらわないよ。小さな6ozだとどんなにガードしても、拳を立てたり角度をつけたら(パンチがガードを)抜けるからね。しかも軽い分、スピードも速い。私は相手との駆け引きの中で、常にパンチの抜け道を探っていたんだ」。
大きく重たい8ozのグローブで戦う現代のボクサーに同情していた具志堅ですが、階級と団体が増殖したとはいえ、世界戦12試合全勝11KOの井上は現代の突然変異に映るのではないでしょうか。
…大歓声に試合開始ゴングがかき消される中、第一ラウンドの火ぶたが切られます。
小さなグローブに違和感があるのか、慎重な井上に対して具志堅はいつものように右のリードから左の強打をつないできます。
具志堅のスピードと、強い踏み込みから放たれる6ozの拳に井上は防戦一方に。
二人のグローブは、もちろんウィニング。シューズも同じミズノ製ですが、具志堅はクラシックな「Mライン」、井上はスタイリッシュな「ランバード」。
20世紀と21世紀のヒーローが火花を散らします。
拳を交えた二人の想いは、奇しくも(当然?)全く同じものでした。
「こいつ、俺が怖くないのか?」
一片の迷いもなく一気の踏み込みから左ストレートを放つ具志堅は、井上のキャリアでは経験したことのない〝異物〟です。
その左に右をかぶせるタイミングがつかめなかった井上は劣勢のままラウンドを重ねてしまいます。
それでも、中盤からショートカウンターで応戦する井上。
試合中に表情を変えることのない具志堅が、驚いたような表情を見せます。
「ファン・グスマンよりもパンチが強い。6ozの扱い方に上手に順応してる。大きなグローブしかはめたことがないはずのに、この子は6ozが怖くないのか?」。
渡辺剛トレーナーは「井上はお前を怖がっている。何度もビデオで勉強したシュガー・レイ・ロビンソンのように戦え」と具志堅の耳元で囁き、GOサインを出します。
インタバルでコーナーの戻った井上は「あの人、強い」と笑います。
「何を言ってるんだ!?具志堅と戦ってるんだぞ、強いなんて最初からわかりきってたことだろ!」と怒鳴る慎吾トレーナーに井上は「ずっと、ひりひりする戦いがしたいと思い続けてきたけど、まさかここまでひりひりする相手と巡り会えるなんて。それが具志堅用高なんて」と楽しそうに独りごちます。
慎吾トレーナーは「ナオ!具志堅はジュニアフライ級史上最も危険なボクサーだ。それに、お前…薄い6ozで拳も痛めてるだろ?具志堅と15ラウンドを戦うなんて無理だ。」と棄権をほのめかします。
日本記録の13度防衛のうちKO勝利が8度。
当時の最軽量級ジュニアフライで破格のパワーを見せつけていたカンムリワシは「今の選手が非力なわけじゃない。一番大きいのはグローブの差。6ozと8ozとでは攻撃はもちろん、防御でもまったく違ってくる」と語っています(ボクシングマガジン平成17年6月号付録「拳雄たちの記憶〜具志堅用高)。
「大きな8ozだとガードすると顔が全部隠れちゃう。あれじゃ、守りを固めたらまともなパンチはもらわないよ。小さな6ozだとどんなにガードしても、拳を立てたり角度をつけたら(パンチがガードを)抜けるからね。しかも軽い分、スピードも速い。私は相手との駆け引きの中で、常にパンチの抜け道を探っていたんだ」。
大きく重たい8ozのグローブで戦う現代のボクサーに同情していた具志堅ですが、階級と団体が増殖したとはいえ、世界戦12試合全勝11KOの井上は現代の突然変異に映るのではないでしょうか。
…大歓声に試合開始ゴングがかき消される中、第一ラウンドの火ぶたが切られます。
小さなグローブに違和感があるのか、慎重な井上に対して具志堅はいつものように右のリードから左の強打をつないできます。
具志堅のスピードと、強い踏み込みから放たれる6ozの拳に井上は防戦一方に。
二人のグローブは、もちろんウィニング。シューズも同じミズノ製ですが、具志堅はクラシックな「Mライン」、井上はスタイリッシュな「ランバード」。
20世紀と21世紀のヒーローが火花を散らします。
拳を交えた二人の想いは、奇しくも(当然?)全く同じものでした。
「こいつ、俺が怖くないのか?」
一片の迷いもなく一気の踏み込みから左ストレートを放つ具志堅は、井上のキャリアでは経験したことのない〝異物〟です。
その左に右をかぶせるタイミングがつかめなかった井上は劣勢のままラウンドを重ねてしまいます。
それでも、中盤からショートカウンターで応戦する井上。
試合中に表情を変えることのない具志堅が、驚いたような表情を見せます。
「ファン・グスマンよりもパンチが強い。6ozの扱い方に上手に順応してる。大きなグローブしかはめたことがないはずのに、この子は6ozが怖くないのか?」。
渡辺剛トレーナーは「井上はお前を怖がっている。何度もビデオで勉強したシュガー・レイ・ロビンソンのように戦え」と具志堅の耳元で囁き、GOサインを出します。
インタバルでコーナーの戻った井上は「あの人、強い」と笑います。
「何を言ってるんだ!?具志堅と戦ってるんだぞ、強いなんて最初からわかりきってたことだろ!」と怒鳴る慎吾トレーナーに井上は「ずっと、ひりひりする戦いがしたいと思い続けてきたけど、まさかここまでひりひりする相手と巡り会えるなんて。それが具志堅用高なんて」と楽しそうに独りごちます。
慎吾トレーナーは「ナオ!具志堅はジュニアフライ級史上最も危険なボクサーだ。それに、お前…薄い6ozで拳も痛めてるだろ?具志堅と15ラウンドを戦うなんて無理だ。」と棄権をほのめかします。
しかし、その言葉は25歳になった息子には届きません。
「大丈夫。6ozは結構自分に合ってるかも…。それに…あ!そっか!15ラウンド制だから、あと3ラウンドも、具志堅さんと戦えるってことか!」。
そして。
井上が生涯初めて聞く、第13ラウンド開始のゴングが鳴ります。
井上が勢い良く青コーナーを飛び出しました。
赤コーナーの具志堅はゆっくりと腰を上げると、渡辺トレーナーに向かってボソッとつぶやいてから若い挑戦者を迎え撃ちました。
「俺よりあの子の方がロビンソン先生に近いかもしれない」。
…第二試合の舞台は、井上のホーム、横浜アリーナ。
前日計量、グローブも8oz。〝モンスター〟のフォーミュラにカンムリワシが降り立ちます。