2019年01月

約40年前に活躍、日本中の誰もがみんな知っている最後のボクシングヒーロー具志堅用高(辰吉丈一郎や亀田兄弟の瞬間最大風速は具志堅レベルでしたが、その風の質は明らかに違いました)。

そして、リング誌評価で70年代の10年ディケイドPFPで9位にランクされた具志堅に対して、1980年からスタートした年間PFPで6位(2018年)にその名を刻んだ井上尚弥

日本のボクシングファンが異論なしでその時代の最高選手と評価する2人の激突、Mythical Matchups 二連戦です。
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まず、階級は具志堅が世界戦15試合全てをその体重で戦った105ポンド、ジュニアフライ級に設定します。

井上にとっては最初に世界を取ったクラスで、拳の故障に悩み、何より過酷な減量に苦しんだ階級です。
 



注目の第1試合の舞台は日本武道館!

当日計量、グローブは6oz、具志堅のオーダーメイドで二人はリングイン。

時空を超えた「議論する余地のない世界ジュニアフライ級タイトルマッチ」は、やはり具志堅の慣れ親しんだ15回戦で戦われます。

 

井上の頰は見るからにこけ、肌もかさかさ、当日計量のダメージは明らかです。

一方、ほとんど減量の必要がない具志堅は、いつもの当日軽量。ウォーミングアップを十分にこなして汗の光る精悍な表情から調子の良さが伺えます。

日本記録の13度防衛のうちKO勝利が8度。

当時の最軽量級ジュニアフライで破格のパワーを見せつけていたカンムリワシは「今の選手が非力なわけじゃない。一番大きいのはグローブの差。6ozと8ozとでは攻撃はもちろん、防御でもまったく違ってくる」と語っています(ボクシングマガジン平成17年6月号付録「拳雄たちの記憶〜具志堅用高)。

「大きな8ozだとガードすると顔が全部隠れちゃう。あれじゃ、守りを固めたらまともなパンチはもらわないよ。小さな6ozだとどんなにガードしても、拳を立てたり角度をつけたら(パンチがガードを)抜けるからね。しかも軽い分、スピードも速い。私は相手との駆け引きの中で、常にパンチの抜け道を探っていたんだ」。

大きく重たい8ozのグローブで戦う現代のボクサーに同情していた具志堅ですが、階級と団体が増殖したとはいえ、世界戦12試合全勝11KOの井上は現代の突然変異に映るのではないでしょうか。



…大歓声に試合開始ゴングがかき消される中、第一ラウンドの火ぶたが切られます。

小さなグローブに違和感があるのか、慎重な井上に対して具志堅はいつものように右のリードから左の強打をつないできます。

具志堅のスピードと、強い踏み込みから放たれる6ozの拳に井上は防戦一方に。

二人のグローブは、もちろんウィニング。シューズも同じミズノ製ですが、具志堅はクラシックな「Mライン」、井上はスタイリッシュな「ランバード」。

20世紀と21世紀のヒーローが火花を散らします。

拳を交えた二人の想いは、奇しくも(当然?)全く同じものでした。

「こいつ、俺が怖くないのか?」


一片の迷いもなく一気の踏み込みから左ストレートを放つ具志堅は、井上のキャリアでは経験したことのない〝異物〟です。

その左に右をかぶせるタイミングがつかめなかった井上は劣勢のままラウンドを重ねてしまいます。

それでも、中盤からショートカウンターで応戦する井上。

試合中に表情を変えることのない具志堅が、驚いたような表情を見せます。

「ファン・グスマンよりもパンチが強い。6ozの扱い方に上手に順応してる。大きなグローブしかはめたことがないはずのに、この子は6ozが怖くないのか?」。

渡辺剛トレーナーは「井上はお前を怖がっている。何度もビデオで勉強したシュガー・レイ・ロビンソンのように戦え」と具志堅の耳元で囁き、GOサインを出します。
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インタバルでコーナーの戻った井上は「あの人、強い」と笑います。

「何を言ってるんだ!?具志堅と戦ってるんだぞ、強いなんて最初からわかりきってたことだろ!」と怒鳴る慎吾トレーナーに井上は「ずっと、ひりひりする戦いがしたいと思い続けてきたけど、まさかここまでひりひりする相手と巡り会えるなんて。それが具志堅用高なんて」と楽しそうに独りごちます。

慎吾トレーナーは「ナオ!具志堅はジュニアフライ級史上最も危険なボクサーだ。それに、お前…薄い6ozで拳も痛めてるだろ?具志堅と15ラウンドを戦うなんて無理だ。」と棄権をほのめかします。

しかし、その言葉は25歳になった息子には届きません。

「大丈夫。6ozは結構自分に合ってるかも…。それに…あ!そっか!15ラウンド制だから、あと3ラウンドも、具志堅さんと戦えるってことか!」。

そして。

井上が生涯初めて聞く、第13ラウンド開始のゴングが鳴ります。

井上が勢い良く青コーナーを飛び出しました。



赤コーナーの具志堅はゆっくりと腰を上げると、渡辺トレーナーに向かってボソッとつぶやいてから若い挑戦者を迎え撃ちました。

「俺よりあの子の方がロビンソン先生に近いかもしれない」。 




…第二試合の舞台は、井上のホーム、横浜アリーナ。

前日計量、グローブも8oz。〝モンスター〟のフォーミュラにカンムリワシが降り立ちます。
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ボクシングと他のプロスポーツの大きな違いの一つに、過去へのリスペクトが大きいということが挙げられます。

「殿堂」に代表されるように、米国スポーツはその多くが過去に対して大きな尊敬を見せています。

もちろんボクシングにも殿堂はあります。

しかし、優秀な実績を残した選手への待遇だけを見るとボクシングとベースボールとの間には喜劇的なほど大きな格差があります。

MLBが完全統括するベースボールは、選手年金の制度など実績を残したプレイヤーの引退後にも手厚いサポートを用意しています。

一方で、世界的な統括団体が存在しないボクシングには年金制度などそもそも存在しません。

承認団体が元王者に年金をを送るケースはありますが、それでも月額100ドル程度。

一方でMLBでは、メジャー10年在籍選手で年間21万ドルが生涯支給されます。

年間21万ドル。世界王者になっても軽量級なら日本人やほんの一握りの人選手を例外に現役ピーク時でも手に出来ない大金です。

イチローや松井秀喜らがこの〝満額年金〟対象者です。
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シュガー・レイ・レナードとフロイド・メイウェザーがもし戦わば?!そんな発想をしょっちゅうしているスポーツファンはボクシングファンだけです。 ※このカバーは2018年9月号から。

それなら「ボクシングは他のスポーツよりも過去へのリスペクトが大きい」なんて嘘じゃないか?

確かに「グレートな王者ですら引退後の補償が全くない」という点では、過去へのリスペクトは微塵もありません。

プロボクシングはこの一点でも、後進スポーツです。

これは本当に由々しき問題です。

しかし、ファンの楽しみ方やメディアの思考回路という点では、過去へのリスペクトは他のスポーツよりも間違いなく大きいのです。

リング誌2月号で「COMPARING TODAY'S FIGHTERS WITH THE PAST」(現代と過去のボクサーを比較検証する」という特集が組まれています。

「ベースボールファンが『マイク・トラウトは1950年代のミッキー・マントルには及ばない』と考えることはありえない」が、ボクシングにおいては「それが日常的に行われている」のです。

歴代PFPなんて概念がファンのお遊びとして定着しているのも、ボクシングならではです。

ボクシングファンは他のスポーツのファンと比べても、特別に〝時間旅行〟が大好きな人種なのです。

そんなボクシングファンが、PFPと並んで好んで遊ぶのが「Mythical Matchups」(ありえない対決)です。

リング誌などの読者投稿でも Mythical Matchups は、記者や専門家に投げられる挨拶のようなものになっています。

デオンティ・ワイルダーvsマイク・タイソン、 マニー・パッキャオvsアーロン・プライアー、井上尚弥vsカルロス・サラテ…こんなマッチアップを見てワクワクするのはボクシングファンならではです。

ベースボールファンは大谷翔平vsベーブ・ルースと聞いても、ゾクゾクしたりもムラムラしたりもしません。 

今夜の Mythical Matchup は、やっぱり井上尚弥です。

二本立てです。

vs具志堅用高(当日軽量108ポンド=ジュニアフライ級/6ozグローブ) 

vs具志堅用高(前日軽量108ポンド=ジュニアフライ級/8ozグローブ)

明日の夜に?続きます。 
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ナックルボールは永遠の魔球です。

体格や筋力で劣る女子が、男子と同レベルで野球のプレイヤーになることはトップレベルでは不可能です。

しかし、彼女がもしナックルを投げることが出来たら、話は別です。

この魔球を投げるのに必要なのは、体格でも筋力でもありません。 

しかし無軌道に揺れ落ちる無回転のボールを投げることが出来るかどうかは、神様のくれたギフトです。

どんな器用なピッチャーが全身全霊で探求しても、習得することは出来ません。 

習得できたように見えても、多くは「シェイク」など〝偽名〟で呼ぶしかないバッタもんです(小宮山悟投手、すみません)。
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最古の〝魔球〟カーブもまた、21世紀になってその効果が大きく見直されています。ボクシングも野球もより速くはなっています。しかし、本質的に進化しているのかどうか?その問いには言葉を詰まらせるしかありません。エディー・シーコットのナックルを打てる打者は、現在でもいない——その事実にはどんな現代贔屓の専門家やファンでもうなずくしかありません。

1910年代にホワイトソックスで活躍したエディ・シーコットが発明したナックルは、100年以上経た現在でも魔球であり続けているのです。

「キャッチャーが捕れないボールを打てるわけがない」。

不規則にゆっくりと揺れて落ちるナックルボールは、ベースボール史上最も厄介なボールです。

そしてストレート(ファーストボール)を含めて、あらゆるボールは続けて投げると打たれるリスクが高まりますが、ナックルに限っては全てのボールがそれであっても打者は打つことが出来ません。

ナックルは不規則に変化するボール、つまりバッター目線では全てのボールが独立した全く違う変化球なのです。

「最も打ちにくいボールは不規則に変化するボール」という真理を100年前に見抜いたシーコットは、スピットボール(唾液などで濡らす)やエメリーボール(表面を傷つけたボール)、シャインボール(表面をツルツルにする)など、反則球の使い手でもありました。

その不正投球の研究過程で、シーコットは「ボールの表面を加工することなく、正攻法で不規則に変化するボールを投げることが出来ないものか?」と常に考え続けてきました。

そして、ついに編み出したのがナックルボールです。

ナックルボールはその握り方から、投げ方、メカニクスが全て解明されています。

それなのに、完全にマスターしたナックルボーラーはフィルとジョーのニークロ兄弟、松井秀喜も手玉に取られたティム・ウェイクフィールドらほんの一握りしかいません。

比較的マスターしやすいフォークボールなどスプリット系のボールと、いったい何が違うのか?

その謎は、科学のメスを積極的に入れ続けているMLBでも明らかにできていません。

いつの日か、この魔球の秘密が解明される日が来るのでしょうか? 

そして、ボクシングの世界にも〝ナックルボール〟が存在します。

やはり、中途半端なモノマネが横行している幻の技術。

そうです。ショルダーロールです。 
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日本人初のリング誌単独カバーを飾った井上尚弥。

そのリング誌2月号の4ページにわたる特集を拙訳します。


MAN ON FIRE

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ワン・ツー。

世界中のボクシングジムで、最初に教えるコンビネーションだ。

まさにボクシングのABC。

多くのボクサーが、練習で美しくつなぐことが出来る簡単なコンビネーションがワン・ツーだ。

それでも、試合では最も予測されやすい、このコンビネーションがを美しくつながれることはあまりない。

さらに、それが衝撃的な破壊力を伴って、劇的に試合を終わらせてしまうとなると、そんな光景は滅多やたらに見られるものではない。

しかし、昨年10月7日の横浜アリーナで、その滅多やたらに見ることができないスペクタルが起きた。

最も不幸だったのは1万5000人の大観衆だったかもしれない。

あの会場にいた誰もが、その瞬間に何が起こったのかを把握できなかっただろう。

そのワンツーを放った25歳の日本人以外は。

ファン・カルロス・パヤノが背中からゆっくり倒れる様子を目の当たりにして、ドミニカ人の意識を完全に飛ばす途轍もないパンチが放たれたことに、もしかしたら最も近くで目撃していた両コーナーですらそのとき初めて気づいたかもしれない。

マリオネットの糸を断ち切ったように、部屋の電気を消したように、パヤノはパッタリと倒れた。

スローで見ても、そんな強烈なパンチには見えない。

しかし、ひたすらにコンパクトで、鋭いパンチが恐るべきタイミングでパヤノを捉えていたことは、VTRが伝えてくれる。

もはや〝習慣的〟にすらなった、破壊的な勝利は、どうして生み出されるのか?

ジュニアフライ級で世界王者になり、ジュニアバンタム、そしてバンタムと三階級制覇を果たしている井上が爆発的なパンチングパワーを失わないままクラスを上げて来たのは驚きでしかない。

世界的な名伯楽、ルディ・エルナンデスは「私のPFP1位は井上。彼は特別で、攻撃に関しては全てを持ち合わせている。そして、彼はまだ発展途上、我々はまだ井上のベストを見ていない」。

ルディの井上評は天井知らずだ。

「本当に優れたボクサーは誰が指導しようが関係ない。元々、そういうふうに生まれてくるのだ。シュガー・レイ・ロビンソンやモハメド・アリ、シュガー・レイ・レナード、ロイ・ジョーンズJr.。彼らはそういう選ばれし者だ。そして、おそらく井上も」。

その〝chosen one〟(選ばれし者)井上は、父親の慎吾の指導を受けてきた。

慎吾は短いアマチュア経験しか持っていない、その意味ではプロフェッショナルではない。

しかし、ボクシングへの情熱を断ち切ることができず、二人の息子、尚弥と拓真にその沸騰する想いを注いできた。

井上は「ボクシングの基本は父親から学んだ。特にディフェンスに関しては。父親から受けた影響は計り知れない」「6歳のときから練習を重ねてきたが、特別なことは何もしていない。基本的なことを磨いてきた。その過程で自分のタイミングを習得することができた」と語る。
 
これまで数多くの日本人ボクサーを指導し、現在は伊藤雅雪をコーチするエルナンデスはタイミングについて「教えることは難しい。相手と自分の空間で起こるすべてのことを把握することはもちろん、正確に予測までしなければならない」と、教えることではなく、自分で習得するしかない種類のものだと明かしている。

「井上の動きを見れば、彼には自分と相手の空間で何が起きているのかを瞬時に把握し、その次に何が起こるのかを正確に予測できていることがわかる。自分がいるべき場所と、絶対にいてはいけない場所をわかっているのだ。それはフロイド・メイウェザーが持っている能力と同じ種類のものだ」。



では、井上は世界的なスターになれるのか?

実は、日本ですら井上のポジションはスターとは言えないかもしれない。

日本で人気があるスポーツは野球とサッカー。ボクシングはその他スポーツの一つに過ぎない。 

さらに、日本ではミドル級での五輪金メダリストで、セカンドタイトルとはいえWBA王者の村田諒太の存在が あまりにも大きかった。

しかし、村田の陥落と井上のWBSSでの衝撃的なKO勝利は、二人の立場を逆転させるかもしれない。

もちろん、バンタム級の井上が、王者時の村田と同等のスポンサーを集めることは不可能だが。 

それでも「ホリプロと契約したことで井上の露出は、テレビのバラエティ番組や雑誌の表紙などで劇的に増えている」(ボクシングライター宮田有里子)。

リング誌の表紙を飾ったことも、日本では大ニュースとなった。 


井上にかけられた夢。アジアから世界のスーパースターへ。

それは極めて狭き門だが、この超難関を突破したファイターが一人だけいる。

宮田は「1998年にマニー・パッキャオが後楽園ホールで寺尾新を粉砕した現場にいたが、パッキャオが世界的なスーパースターになるとは想像できなかった」と述懐している。

また、ルディも「パッキャオは特別の中の特別だ。彼のバックグラウンドやカリスマは、誰にも真似はできない」と、フィリピン上院議員は例外だと指摘している。

パッキャオはどんな試合にも快諾し、満面の笑みをふりまいてリングに入場すると、スピードあふれる面白い試合を創造し、観客やテレビの視聴者をたちまちファンに取り込んだ。

そして、彼は英語をマスターすることで、自らをプロモートする術も持っていた。井上は英語を一切話せない。

もちろん、ロベルト・デュランも英語を話せなかったから、それがスターダムへの大きな障害になるとは限らない。

今年の前半に井上はIBF王者エマニュエル・ロドリゲスと最強トーナメントの準決勝を戦う。そして、大方の予想通りに勝つだろう。
決勝の相手はゾラニ・テテとノニト・ドネアの勝者。

井上が優勝したときモハメド・アリ杯とともにWBA(ファーストタイトル)、WBC、IBF、WBOの4つのアルファベットタイトルに加えて、リング誌の118ポンド王者のベルトも腰に巻いているはずだ。

ルディも「バンタム級には敵はいない」と太鼓判を押している。

井上は、彼が憧れるパッキャオの高みにまで登ることは出来ないだろう。

しかし、彼が従前の日本やアジアのボクサーの枠を超えて、世界的な名声を手に入れる可能性は、インターネットや地球規模の情報伝達によって、極めて高いだろう。

衝撃的なKOを演出するリングを降りると、幼い子供とカラオケを楽しむこともある井上は「日本でボクシングをもっとメジャーにするという使命は、大きなモチベーションになっている。まだまだやらなければならないことが山積しているが、子供達が自分に憧れてボクシングを始めてくれたら、こんなに嬉しいことはない」。

モンスターなら、きっとその使命を全うするはずだ。
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2015年、ついに実現したフロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ。

この試合は興行としての成功と、試合内容の期待を裏切るつまらなさ、その深いギャップで永遠に語り継がれるでしょう。
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それでも、約100ドルの史上最高値を付けたPPVのセールスは460万世帯、興行規模は6億ドル、報酬は両者合わせて3億ドルを超えたこの試合は「スポーツ史上最大のメガファイト」として記録されています。

確かに、個々の数字を見ればその通りです。

しかし、モハメド・アリは40年前には1000万ドルファイターでした。 シュガー・レイ・レナードも30年前に2000万ドルを超える報酬を手にしていました。

もしかしたら、彼らの時代と貨幣価値が大きく変わった2015年のメガファイトは、数字だけの史上最高で、実質的にはそうではなかったのかもしれません。

さらに、世間的な知名度まで考慮するとパックメイとアリやレナードでは勝負になりません。

彼らは、劇場観戦のクローズドサーキットの時代で、PPVは存在していませんでしたが、もしアリやレナードの時代にそれがあったのなら「460万世帯販売」は簡単に超越していたことも間違いありません。

日曜日の午後、テキサス州ヒューストンで大番狂わせを期待しながら 米国Yahoo!sports からのお届けです。


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Boxing Power Rankings: Pay-per-view projections for historic fights 〜ボクシング パワーランキング:歴史的メガファイトを現在のPPVに換算する〜 


マニー・パッキャオは、B級ボクサーでPPV初体験のエイドリアン・ブローナー相手に40万世帯ものセールスを記録した。

全盛期に100万世帯を当たり前に超えていたスーパースターでも、キャリア最晩年の現在ではその人気もスケールダウンしていると見られていたが、PPV未経験のB級相手で40万セールスはその人気が健在であることを裏付けた。

PPVという効率的な集金システムがなかった時代にも、メガファイトは数多く行われてきた。 

史上に残るメガファイト11試合が、もし現在のPPVシステムで行われていたら一体どれほどのセールスを記録したのか?

メガファイトのパウンド・フォー・パウンドを考察する。


第11位:1951年10月26日マジソン・スクエア・ガーデン ロッキー・マルシアノvsジョー・ルイス

経済的な理由からリングに戻ってきたルイスは、37戦全勝のマルシアノの拳に叩きのめされてしまいました。

試合後の記者会見で「アイドルを殴るのは辛かった」と涙を流したマルシアノ。

ルイスは、その後2度とグローブをはめることはありませんでした。生涯戦績66勝52KO3敗。

出世試合を鮮烈な勝利で飾ったマルシアノは米国ボクシング全盛の50年代を代表するアイコンとして、49戦全勝43KOの記録を残して伝説となりました。

【推定PPV売り上げ=620万世帯】



第10位:1980年11月25日 ニューオーリンズ スーパードーム シュガー・レイ・レナードvsロベルト・デュラン

5ヶ月前の雨のモントリオールで、まさかの敗北を喫したレナードが石の拳に雪辱を果たした伝説の名勝負。

「ノー・マス」は今なお語り継がれているだけでなく、「ノマスチェンコ」(相手をことごとく棄権に追い込むワシル・ロマチェンコが自称)など〝最も有名なボクシング用語〟として生き続けています。


【推定PPV売り上げ=650万世帯】



第9位:1987年4月6日 ラスベガス シーザースパレス マービン・ハグラーvsシュガー・レイ・レナード

実質5年のブランクからチューンナップなしで、PFPキングに挑んだレナード。

多くのメディアは、試合が決まる前は「レナードの健康に関わる重大な犯罪」とボブ・アラムとWBCを批判、試合決定後も「おぞましい公開処刑にしかなりえない」と報道しましたが…。


【推定PPV売り上げ=675万世帯】



第8位:1910年7月4日 ネバダ州リノ 特設スタジアム ジャック・ジョンソンvsジェームス・J・ジェフリーズ

人種差別が公認されていた時代に世界王者に君臨していたジョンソンは〝優性人種〟白人にとって、どうしても打ち倒さなければならない敵でした。

1904年に引退していたジェフリーズは、この白人の夢のためにカムバック。

大きな期待を背負った〝The Great White Hope〟でしたが、漆黒の巨人の拳に何度も打ちのめされ、ついに15ラウンド、沈められてしまいました。


【推定PPV売り上げ=710万世帯】



第7位:1970年10月26日 アトランタ シティ・オーディトリアム モハメド・アリvsジェリー・クォーリー

徴兵拒否でライセンスと王座を剥奪されたアリの復帰第1戦。

当時のアリは、すでにボクシングやスポーツ界を超えた、世界で最も有名な人物の一人になっていました。

時代は1970年、米国ボクシングは緩やかに坂を下り始めていましたが、それでもモハメド・アリだけは別格でした。


【推定PPV売り上げ=840万世帯】



第6位:1927年9月22日 シカゴ ソルジャー・フィールド ジャック・デンプシーvsジーン・タニー

有名な「ロングカウント」事件の、あの試合です。

7ラウンドに痛烈なダウンを奪ったデンプシーでしたが「ダウンを奪った選手はコーナーで待機する」という新ルールを失念、レフェリーから注意を受けてコーナーに下がりました。

しかし、このロスタイムで20秒以上もの回復時間を得たタニーが、その後反撃、勝利をもぎ取りました。

このメガファイトは、10万4943人の大観衆を集め、2万9000ドル(現在の貨幣価値で41万5000ドル)のゲート収入を記録しました。


【推定PPV売り上げ=950万世帯】



第5位:1951年2月14日 シカゴ スタジアム シュガー・レイ・ロビンソンvsジェイク・ラモッタ
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これまた有名な「聖バレンタインの虐殺」です。

この試合のリングに121勝1敗2分けの信じ難いレコードで上がったロビンソン。その唯一の黒星は、ラモッタにつけられたものでした。

この試合までに両者は5試合を戦い、ロビンソンの4勝1敗。しかし、その内容はいずれも大激闘でした。

やはり戦争となった第6戦を、シュガー・レイは13ラウンドでカタをつけました。

【推定PPV売り上げ=970万世帯】


 
第4位:1938年6月22日 ニューヨーク ヤンキースタジアム  ジョー・ルイスvsマックス・シュメリング
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ジョー・ルイスとデオンティ・ワイルダーとの間には約80年もの長き時間が横たわっていますが、わずか6人のボクサーで繋がっています。ルイスが戦ったマルシアノはアーチー・ムーアと戦い…ムーアはアリと、アリはフォアマンと、フォアマンはブリッグスと、ブリッグスはリャコビッチと、そのリャコビッチはワイルダーと戦っているのです。

1938年、昭和13年。世界はファシズムと民主主義が、不可避の激突に向かって疾駆していた時代です。

このメガファイトは、まさにその代理戦争でした。

ヤンキースタジアムに詰めかけたのは7万人の大観衆。世界一有名な球団の本拠地が最もヒートアップしたのはベースボールではなく、このメガファイトです。

【推定PPV売り上げ=1010万世帯】



第3位:1997年6月28日 MGMグランドガーデンアリーナ マイク・タイソンvsイベンダー・ホリフィールド

悪名高き〝The Bite Fight〟です。

第1戦で24−1という圧倒的不利のオッズをひっくり返したホリフィールドは、第2戦でも優勢に試合を進めて、弱い相手には滅法強いのに強い相手には弱いタイソンを丸裸にした試合でした。

現実のこの試合のPPV売り上げは199万世帯でしたが、当時はSNSもケーブルテレビも今ほど充実していない時代でした。

もし、現在この二人が因縁の再戦をおこなうとなったら、全く異なるプロモーションによって、もっと大きな成功を収めていたはずです。

【推定PPV売り上げ=1040万世帯】

 

第2位:1978年9月15日 ニューオーリンズ スーパードーム モハメド・アリvsレオン・スピンクス

試合を放送したABCの視聴者数は約9000万人、過去のあらゆるスポーツイベントも凌駕するものでした。

この試合は地上波無料放送で、9000万という数字も人数であって世帯ではありません。

しかし、米国の敵であったアリが最も尊敬されていた時代のメガファイトです。

当時もマンモス級の人気を呼びましたが、現在ならさらに空前の話題となったでしょう。

【推定PPV売り上げ=1210万世帯】



第1位:1971年3月8日マジソン・スクエア・ガーデン モハメド・アリvsジョー・フレイジャー

 無敗のヘビー級王者同士(アリはリネラル王者でフレージャーは議論する余地のない王者)が激突した、正真正銘の「世紀の対決」。

もし、この試合が2019年に行われていたらアリはTwitterやFacebook、Instagram、Snapchatで何を語り、世界をどれほど煽ったでしょうか?

【推定PPV売り上げ=1250万世帯】
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米国テキサス州ヒューストン トヨタセンター 

メインイベントのハイメ・ムンギアvs井上岳志。昨日の一方的なオッズは、さらにとんでもない数字になっています。

ムンギア勝利1.01倍は額面は変わらないものの1/66→1/100まで広がり、井上勝利は20倍へ。

しかし試合が始まると、井上の攻勢と粘りが試合の先行きを不透明に。

2ラウンド終了時点でムンギア勝利は3/100、1.04倍。井上勝利は10倍へ。

井上、いい眼をしてます。前へ、前へ。

ムンギアのボディ、強烈に見えますが、井上はひるみません。3ラウンド終了時点で、ムンギア勝利は1.81倍、1/25へ。

4ラウンドも、前に出る井上をムンギアが迎え撃つ展開。両者とも決定打はない。

ポイントとなると、ここはテキサス。全部取られているでしょう。

5ラウンド、1分過ぎにメキシコ人のパンチに井上の前進が止まる。ダメージが心配。

6ラウンド。ムンギアの左アッパーで井上が顔面を突き上げられる。下がったら絶対にダメ。押し込め。

ムンギアもやりたいボクシングは出来ていない。

ムンギア勝利は1/8、井上11/2。オッズは接近したものの、勝利への糸口はまだ見えません。
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7ラウンド。ムンギアが足を使って、距離をとる。井上はムンギアを追い回すものの、迎撃される。

オッズはメキシカン勝利4/50へ。

8ラウンド。ムンギアが疲れている。井上の右が再三ヒット。ポイントを取ったかもしれませんが、もう判定勝ちはありえません。行くしかありません。

それにしてもムンギアは、自分が押し込まれる展開は想像できなかったはず。

9ラウンド。後ろ重心で逃げるムンギア。井上はタフ。しかし、このラウンドは取られた。ムンギアはやりにくいだろうが、あと3ラウンド。

10ラウンド終盤。ムンギアのパンチに井上が膝をついたか?ダウンは取られない。

11ラウンド。井上の手数が目に見えて減ってしまった。

しかし、ムンギアキャリア最大の苦戦。

12ラウンド。井上は気持ちが強い。しかし、ボクシングはムンギアが上。

原功の言う通りです。「井上はやりたいことをやった」。根性見せました。

Jamie Munguia defeated Takeshi Inoue by unanimous decision to retain his WBO junior middleweight title in a fight that seemed to be closer than the scorecards showed. 

ESPNも「公式スコアよりも接近した内容だった」と井上の頑張りを評価してくれています。

ただ、惜敗ではないです。完敗です。

120−108×2/119−109。

試合後のインタビュー。ムンギア「井上は想像通りのタフで気持ちの強いファイターだった。誰もが簡単な相手と言ったが、難しい試合になることは覚悟していた」。

しかし、ムンギアの顔は綺麗です。

疲労は見せましたが、決定打はもらわなかった、いいボクサーです。ただ、22歳のメキシカンは若さも見せました。難攻不落じゃないですね。




 ★WBAフェザー級タイトルマッチ ★(スーパー王者:レオ・サンタクルスが存在するため、このタイトルはセカンド、正規の世界王座ではありません)

ヘスス・M・ロハス(プエルトリコ)vsツァン・シュー(中国)

 プエルトリコの強打者ロハスのセカンドタイトルに、中国の新星シューが挑む一戦。

モンスターの異名を持つもう一人のアジア人が、1−4のオッズをひっくり返してロハスを攻略。

118−110/117−111/116−112。ユナニマスデジション。

英国とメキシカンがひしめく、軽量級唯一の人気階級であるフェザー級戦線に中国人スターが誕生しました。

このクラスに日本人も絡んで欲しいとことですが…。
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政治や宗教、そんな所詮は真理の存在しようがないもの、必然的に独り善がりにしかなりえないもの。そういうものを超越しうるものがあるとしたら、それは芸術です。

もちろんスポーツも、その芸術の一端を担っています。

至近距離やテレビ画面でリアルタイムで、その感動を受け止めることが出来るスポーツは、スタジアムやテレビ画面の観客との間で作り上げられる〝双方向で感応し合う〟リアルタイムの芸術です。

それゆえ、他の芸術にはない「現場」で差別の問題も、差別の問題も頻発してきました。

独断と偏見で暴走する、このブログですから読んでしまって不愉快な思いをしてしまった方も多いと思います。

ただでさえ、ブレブレな私が酔っぱらった電車の中とかで書くことが多いので、誤謬・誤認だらけだと思います。

ご指摘いただければ、誤謬・誤認なら、お詫びさせていただきます。

お詫び文面は目に入ると思いますので、記事は間違ったままに晒しています。

あらゆるコメント、お返事は削除いたしません。

全て受け入れます。気にくわないこと、間違ってると思われたら、いくらでも書き込んで下さい。

異論、反論、誹謗中傷、質問、大歓迎です。


ナはChinaと同じ意味なので差別用語ではないですよ。

前回、私の書き方がまずかったかもしれませんが「シナは純然たる差別用語ではありませんが、使う人物によって明らかな差別用語になりえます」。


もし、安倍晋三が中国を「シナ」と呼べば大きな外交問題に発展することは間違いありません。

「シナはchinaに由来する言葉で差別用語ではない」という弁解は通用しません。

謝罪ではなく、そんな弁解が口から出てくる時点で意図的な差別感情があるのは明らかです。

もちろん、影響力がない一般人が個人の会話の中で使う分には問題はありませんが、もしそんな人物が身近にいたら一度注意します。

是正できないようなら、お付き合いをやめるまでです。



界中でシナと呼んでいるのを日本にだけは許さないというのもまた差別では?


世界中で呼称されているのはチャイナであってシナではありません

前回も触れましたが、ラーメン職人が店のメニューに「支那そば」を入れるのまで差別とは思いません。

それを「差別だから〝中華そば〟に改めろ」と迫るのは見当違いです。

ただ、影響力のある人でなくとも中国をわざわざシナと呼ぶ人がいるとしたら、その人はよほどの無知か差別主義者です。


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それにしても、住みにくい世の中、時代になってしまいました。

本当はみんなが大坂なおみのように、おおらかな気持ちで細かい差別に敏感に反応しない世の中が理想だと思います。

戦後しばらくは、そんな時代もありました。

自由な発想から企業が黒人キャラクターを起用したり、ちびくろサンボを楽しんだり、原子力で動くAI鉄腕アトムが空を飛び、水爆打線が火を噴いていた時代。

ただ、一人でも敏感な人がいたら、その人の心は守られるべきです。
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クリーブランド・インディアンスは今シーズンから、長年親しまれてきた球団キャラクター、ワフー酋長の使用を廃止します。

その意味でも「おおらかな時代」は2度と訪れることはありません。

むしろ、どんどん敏感に、差別の芽をアラ探しする世の中が深まっていくのでしょう。


「カルピスのキャラクター」や「ちびくろサンボ」を駆逐したのは、差別されている人たちの正常なエネルギーではなくて、歪んだ正義感を振りかざす部外者たちでした。

そして、愛すべき彼らが駆逐されたということは、それは歪んだ正義などではなく、それがこの時代の正義だということです。 
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 WBO世界ジュニアミドル級タイトルマッチ。

王者ハイメ・ムングイアに井上岳志が挑みます。

現時点のオッズはとんでもないことになっています。
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ペーパー上は、井上の勝利はありえません。

井上の勝利は14倍、KOなら25倍。そのKOラウンドごとの倍率は全て100倍です。

燃えるしかないオッズです。

100倍!こりゃ、いい燃料になりますね。

派手に燃やしましょう!!!!!!!!!!!! 
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何も言うことはないです。

21歳の偉大なアスリートが、このまま年間グランドスラムを達成したとして、誰が驚きますか?
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Australian Open champion Naomi Osaka will become the first tennis player from Japan to reach No. 1 in the rankings. Cameron Spencer/Getty Images


かっこいーーーーーーー!!!!!!!



「日本人初の世界ランキング1位」。

世界のメジャースポーツで、これはとんでもない偉業です!



どこまでも突き抜けて欲しいです。

コートの中ではスーパーヘビー級の野獣、コートから外れたらどこまでもシャイな21歳。

「スポーツファンが最もメロメロにされるパターン」(ESPN)です。 

誤解を恐れずに書くと「亀田兄弟」の逆ですね。

亀田兄弟は3人とも十分な才能を発揮して、世界王者になったトップアスリートです。

そして、リングの中では地味、リングの外では派手という〝エイドリアン・ブローナー〟型でした。

彼らが犯罪やルール違反を犯したときは糾弾、軽蔑、唾棄しても構いません。

しかし、それ以外の場面では、ブローナーのように勇気を放棄した試合を見せたら見放せばいいだけです。

亀田兄弟は、あらゆる試合で勝とうとしてました。その一点だけでも、ブロイラー・ブローナー(ブロイラー=負け犬以下の食肉用の鶏)よりもはるかにマシです。

Osaka became the first woman since Jennifer Capriati to win both of her first two Grand Slam finals. Capriati did so at the 2001 Australian and French opens.

 大坂は、2001年のジェニファー・カプリアティ(全豪〜全仏)以来、キャリア初のグランドスラム制覇から次のグランドスラムを制覇した。

テニスは社会人になりたての頃、運動不足を痛感してかじりました。ちょうどその頃、まさに全盛期だったカプリアティの衝撃は、はっきり覚えてきます。

カプリアティはその後、規律から外れた生活に堕落。

ツアーで転戦中の日本で電化製品を万引きをして逮捕されるなど、ファンを失望させてしまします。

まさに、ラケットを握ったマイク・タイソンでした。


そんな昔の名前を、思い出させてくれる、これもまた偉大なアスリートが偉大なる所以です。

カプリアティ、あの時代の大昔のスポイラを引っ張り出してしまおうかと思っちゃいます。


来週?再来週?

大坂なおみをカバーした「スポーツイラストレイテッド」や「ESPNマガジン」の到着が待ち遠しい!!!! 
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マニー・パッキャオが2年ぶりに米国リングに戻ってきた、エイドリアン・ブローナーとの一戦。

16000人キャパのMGMグランドガーデンアリーナに詰めかけた観客は、13025人。

主催者は「チケットは完売した」と強気ですが、後部座席に空席も目立ちました。

しかし、専門家が32万5000から35万世帯と予想していたPPV売り上げは40万を突破。

単価79.99ドル(約8,000円)ですから、約3200万ドル(約32億円)を売り上げた計算です。

ここにMGMグランドが支払った招致フィー(800〜1000万ドル)に、スポンサー収入、ゲート収入などが加算された総計が興行規模になります。

ボクシングの実力評価は低いものの、一定の人気のあるブローナーはHBOやShowtimeで高い視聴率をマーク、今回がキャリア初のPPVの大舞台でした(そしておそらくこれが最後)。

「この数字からはっきりわかることは、フロイド・メイウェザーとの再戦なら200万世帯(第1戦は460万世帯)、キース・サーマンや、エロール・スペンスJr.vsマイキー・ガルシアの勝者となら40万を軽く超えてくるだろうということ。パッキャオはキャリア最晩年の現在ですら、カネロ・アルバレスと並ぶボクシング界最大のスター」(Yahoo!sport)。

ボクシングを素材にした作品も多いアーティスト、テイラー・ストリーターも大のパックマニア。しかし、メイウェザーがレイジェスをはめることは絶対にありません。

個人的にはパッキャオのファンですが、この試合は世界タイトルマッチといってもリング誌やESPNなどまともなメディアは「セカンドタイトル」と世界王座とは認めていない〝マイナータイトル〟でした。

しかも、相手はとっくの昔に化けの皮が剥がれたエイドリアン・ブローナー、WOWOWや日本のファンは勘違いしていますが正真正銘のB級ファイターです。

PPVが売れたのはパッキャオの名前があったから、それだけです。

それにしても、米国のファンはどうなのかな、と思ってしまいます。

昨年12月1日のヘビー級タイトルマッチ。リネラル王者タイソン・ヒューリーvsWBC王者デオンティ・ワイルダーの、今がプライムタイムの実力者が激突した試合のPPV売り上げが32万5000世帯でした。

この、二つのメガファイト。

後者は「未来のヘビー級を語る試合」。これから坂の上の雲を目指す物語です。

そして前者は「パッキャオのカウントダウン興行です」。伝説のエピローグです。

どちらもボクシングファン必見の一戦でしたが、昇る太陽に、沈む夕陽が興行的に圧勝してしまうというのは…没落する一方の米国ボクシングの闇を見る思いで、少し寂しくなります。
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